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[Bio-Edu] タンパク質(蛋白質)の精製 – 基礎編 – 不純物の定義、Refoldingから膜精製、タンパク質精製の定石まで – ID686 [2020/07/07]※

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[Bio-Edu] タンパク質(蛋白質)の精製 – 基礎編 – 不純物の定義、Refoldingから膜精製、タンパク質精製の定石まで – ID686 [2020/07/07]※
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蛋白質の精製 (基礎)

編集履歴
2019/07/11 はりきり(Mr)
2020/05/09 文言整備
2020/06/13 追記(平膜とボローファイバーの比較)
2020/07/07 Update

蛋白質の精製 (purification of protein)とは、不純物と混在している目的蛋白質を一定の性質を利用して物理化学的に分別して、最終的に目的の蛋白質のみを取り出すことです。

蛋白質の精製の具体例とて、水溶液の状態でタンパク質が溶けているとします。その溶液には、その目的タンパク質以外のタンパク質、脂質、糖質、原材料由来のDNAなどの不純物を含んでいるとします。

そのタンパク質液の成分(塩濃度、pH、有機溶剤濃度)を調節することで、担体(resin)と呼ばれる固定物への脱着、沈殿精製による不純物との分離(上清/沈殿)、活性炭への不純物吸着など、を実施可能となり、タンパク質を精製することができます。

しかし、用いる出発材料に含まれる目的タンパク質の含有率が精製効果に強く影響します。目的タンパク質の含有量が多いに越したことはありません。昔の出発材料では、目的タンパク質の含有量が、現在と比べて1桁、2桁低かったため、その精製は非常に大変でした。

最近の抗体医薬では、培養液での生産性は、5g/Lなど、一昔前と比べて10倍~50倍以上となり、相対的に不純物との比較で含有率の改善がなされています。そのため、昔と比較して精製の難易度は非常に低くなりました。

このように出発材料の品質が高まったことで、抗体医薬の精製は、プラットフォーム化が可能になりました。すなわち、単純な精製方法でも精製することができると言うことです。もしも、出発材料の品質が低い場合は、もっと複雑な精製工程を組まなければ精製できないことになります。

  • 出発材料に含まれる目的タンパク質は、主たる成分量でなければ、精製することは難しい
  • 相対的な不純物の混入量は、少ない程、精製はしやすくなる。

不純物とは (Impurity)

バイオ医薬品では、動物細胞や大腸菌など人ではない細胞に目的の蛋白質の遺伝子を導入して、これらを培養することで目的の蛋白質を分泌させるという培養工程がある。

以下、不純物の発生源を示す。

  • 培養中に死んでしまう細胞の中味が培養液中に放出される
  • 培養に使用する培地に含む添加物
  • 目的蛋白質の分解物(類縁物質)

菌や動物細胞は、それらが生きていくための蛋白質などを生産しつつ、目的の蛋白質も生産してくれる。目的の蛋白質でない物質を不純物と定義する。不純物の種類には、宿主細胞由来の蛋白質や脂質、DNAなどが含まれる。

  • 蛋白質 (細胞質由来)
  • 糖質 (細胞由来の糖、endotoxinも含む)
  • 脂質 (細胞膜)
  • DNA (細胞の核由来)
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出発材料

現在では、遺伝子組み換えによる生産が主流となっているが、遺伝子組換え技術が開発されるまでは、目的蛋白質を生産してくれる菌や動物細胞を偶然見つけたりして特に選択していた。

選択した細胞を培養し、ある程度の細胞濃度に増殖させた後、刺激剤を使ったりして目的の蛋白質を生産させていた。例えば、夢の薬と言われたインターフェロン (interferon)は、血液中の白血球を集めて培養し、刺激剤を添加するとInterferonを分泌した。株化細胞を使う場合は、Namalwa細胞ATCCというlymphoblastを使い、刺激剤は、仙台ウイルスを使用してInterferonを分泌されていた。もう、今から40年以上の昔の話である。

  • 組織由来株化細胞
  • ハイブリドーマ
  • 遺伝子組換え大腸菌
  • 遺伝子組換え動物細胞

沈殿精製

その頃の蛋白質精製には、いろんなバリエーションの沈殿化法が多用されていました。

  • アセトン沈殿 (結晶分画製剤)
    • 一部の血漿分画製剤の沈殿化に使用されていました
  • エタノール沈殿 (Cohnのエタノール分画が有名)
    • 血漿分画製剤の精製に使用されています。
    • 温度管理を厳密にしないとタンパク変性してしまいます
  • 硫安沈殿
    • 血清・血漿からIgGを粗精製に使用できます。ウサギに免疫し血清を取得してから、30%飽和濃度でIgGを沈殿化できます
  • PEG沈殿 (血漿分画製剤)
    • rAAV精製にも最近まで多用されていました。最近は、Thermo Fisher Scienceの抗AAV抗体レジンが、性能が良く代替的に使われるようになりました
  • グリシン塩酸沈殿(血漿分画製剤)
    • Fibrinogeの沈殿精製など、分子量の大きな凝固因子に使用されていました

再構成(refolding)

大腸菌で産生させたタンパク質の場合、立体構造の再構成(refolding)が殆どの場合必要です。

詳しい手順は、以下のページをご参照ください。

[Bio-Edu] 組換え大腸菌で造らせたタンパク質のリフォールディングおよび、その後の精製手順 – ID18567 [2020/08/19]※ はコメントを受け付けていません
[Bio-Edu] 遺伝子組換え大腸菌からタンパク質を精製する製造フロー概略 – ID6624 [2020/01/09] はコメントを受け付けていません

吸着精製

その他にも土や活性炭、イオン交換樹脂や多孔性のガラスビーズ(Controlled Pored Glass: CPG)などが蛋白質を吸着させる物質として使用されていた。これらの物質を吸着担体 (resin)と呼んだすりする。

  • 土(ミドライド)
  • 活性炭
  • イオン交換樹脂
  • 多孔性ガラスビーズ ( controlled pore glass; CPG )Merck

これらのトラディショナルな技術は、現在の技術にシームレスに生かされている。バイオ医薬品のハーベストに使用されるディプスフィルター(Depth Filter)には、土や活性炭が膜の素材と共に練りこまれている製品がある。

クロマト精製

ゲル濾過精製

もっぱら研究室では、分子量で分画するGel Filtration Chromatography (GPC)を汎用していた。3cmφ x 120cmのカラムにSephacryl S-200などのレジンを1日ががり充填、バッファーによる平衡化、夕方にサンプルをロードして翌日までオートサンプラーでフランジョンを分取していた。

アフィニティクロマト

特に純度を高めたい場合は、免疫用の抗原をなんとかして精製し、ウサギに免疫して抗体を取得して、抗体をクロマト担体にカップリングしてAffinity Columnを用意した。更に、今から40年以上も前でも、精製度の改善には定評があったのは、リン酸カルシウムの結晶であるハイドロキシアパタイトであった。

  • ゲル濾過(Gel Filtration Chromatograph; GFC), Size Exclusion Chromatography (SEC)などとも言う
  • 抗体カラム
  • ハイドロキシアパタイト (リン酸カルシウム)

ハイドロキシアパタイトは、通常は針状に結晶化したものをカラムに充填して使っていた。その針状結晶はもろいため、使用している間に粉砕が進み、繰り返し使用は難しかった。しかし、オリンパスがCeramix化に成功(人工骨の研究)したことで、蛋白質の精製に用途を広げて現在に至っている。

精製の戦略

精製の戦略 ( Purification Strategy )を考えてみる。

現在では、3種類の異なるモードのカラムクロマト精製で蛋白質の精製を行うのが主流である。

基本的な戦略は、(1)「キャプチャリング」、(2)「陰イオン交換体」、(3)「陽イオン交換体」の3つの特性の異なる担体を使った手法を用いれば、殆どの蛋白質は精製が可能である。

  1. キャプチャリング
  2. 陰イオン交換体
  3. 陽イオン交換体

抗体の場合のキャプチャリングであるAffinity精製は、Protein AやProtein Gなどを用いる。血液由来の凝固系因子のAffintiy精製では、Heparin担体が適用できることが多い。

  1. Protein Aカラム
  2. Heparinカラム
  3. Tag精製(His-tabを付加している場合)

どうしてもAffinityが使えない場合は、出来るだけAffinity精製と同等な精製方法を探索しなければ、精製は困難になってくる。

その探索に注力する必要も生じるが、吸着キャパシティから選択するならば、陽イオン/陰イオンを使った条件設定に注力することも必要である。

タンパク質の精製では、同じモードの精製方法は重ねてはいけない。それぞれのモードで除去できる不純物の特性はある程度一定であるため、同じモードを重ねても効率が悪く回収率の低下を招くばかりである。

  • 同じ精製モードは重ねないこと
  • 精製モードは、まんべんなく組み合わせること
  • 最初の精製工程は、キャプチャリングであることを意識する
  • バッファー組成は、次の工程への繋がりがよいこと
  • UF/DFも多用しないこと

更に、純度がどうしても上がらない場合、疎水モードやマルチモーダルの使用も考慮する。

  • 親和性担体 (Affinity resin)
  • 陰イオン交換体 (Anion Exchange Resin)
  • 陽イオン交換体 (Cation Exchange Resin)
  • 疎水担体 (Hydrophobic Resin)
    • Phenyl Resin: 低分子か疎水性が弱い蛋白質用
    • Butyl Resin: 疎水性が強すぎる蛋白質用
  • マルチモーダル (Multi Modal Resin)
    • ハイドロキシアパタイト (BIO-RAD): 陰陽の両方のモードをもち、少なくとも塩濃度、リン酸濃度、pHの3つのパラメータを駆使できる
    • capto Adhere (GE Healthcare): 陰イオンと疎水性のモード持つ
    • MMC (GE Healthcare)

クロマト精製と組合わせ技

沈殿化処 (precipitation)

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概要

沈殿による精製方法も使える状況は多い。例えば、沈殿化しやすい蛋白質の場合、それを活用するのが効率的な場合もある。人工的にデザインした、ある蛋白質の部分的なドメインを精製する場合、そのドメインは自然界には無い人工的な物質であることで、物理化学的性質が通常とは異なっていることが想定される。

そのような物質であるケースでは、少しの食塩の添加により電気伝導度(conductivity)が上がっただけで、沈殿化する場合がある。これは、しめたもんだ。喜んで沈殿物を回収して、その純度を確認しよう。

塩濃度を上げて沈殿化させる場合、pHは低い方が沈殿化しやすい。これも活用できる。

  • 食塩の添加
  • pHを5以下に下げる

物性を活用する

沈殿法の原理について確認しておこう。厳密な定義はないものの、アミノ酸が数珠つなぎになったもので、数十個程度ではペプチド (Peptide)と呼ばれ、更に大きくなり分子量が5000 (5kDa)以上で蛋白質 (Protein)と呼ばれる。

アミノ酸の種類により塩基性、酸性、疎水性の特性があり、これらの数珠つなぎとしての全体の特性が、ある蛋白質の総体的な物性を示すことになる。蛋白質は、絡まない紐のように存在しているのではなく、折れ曲がったり、巻いていたり、アミノ酸同士の物性に応じた相互的に引き合って入り反発しあっていたりと関係性が生じており、その状況は、存在している溶液中の塩濃度、pHや共存している溶剤の影響をうけて、その立体的な構造が形作られる。

そのためアミノ酸の配列依存的に、その立体構造が確定するものの、周りの状況により影響をうけるため、一意的に決まるものではない。まさに、それこそがある蛋白質の物性ということである。セントラルドグマなどいいう言葉も聞いたことがあるが、僕は、そのような理論はよく知らない。

沈殿法の種類

  • 塩析
    • 飽和劉安
    • NaCl
    • リン酸カリウム
    • グリシン塩析
  • 有機溶剤による沈殿
    • EtOH沈殿 : CORN Ethanol Fractionationが有名である。
    • アセトン沈殿
  • pHを下げる
    • pH6より低いpHに調整
    • 蛋白質によっては、中性pHで沈殿化するためpH8などのアルカリ性にする場合もある

 沈殿法(参考ページ)

BIOLOGICS, education, purification
[Bio-Edu] タンパク質の沈殿化法の原理 – ID2669 [2019/10/10]

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膜で不純物を吸着除去

Depth filterという製品群がある。当然、日本製では製品はないが、外国製のPall MilliporeやSartorius Stedim, 3M, GE Helthcareなどのメーカーを当たれば良い製品が見つけられる。

Depth filterの用途は一般的に、清澄ろ過であるが、膜に土や活性炭を練りこんでいる製品もあり、清澄化とともに不純物の吸着除去も同時に実現できる。抗体医薬の場合、陰イオン交換体のDepth filterでろ過することで、DNAなど負荷電の不純物が吸着し、抗体はパススルーする。これらの製品は、昔、僕らが鉱物由来であるミドライトなど、粘土を使ってInterferon (IFN)を精製していた時の技術の焼き直しである。トラディショナルな技術は、今も息づいている。

濃縮とバッファ交換 (Concentration and Diafiltration)

40年より前では、ホローファイバーで目的の蛋白質などを濃縮していた。この技術は還元濃縮みかんジュースなどで、今でも使われている。40年前に当時のメンブランメーカーであったミリポア社が限外濾過膜で平膜を開発し、画期的な構造の濃縮装置を開発した。ホローファイバーを使用して濃縮した場合、1週間かかるところを、この装置を使うと2時間で濃縮が完了してしまうほどの破壊的な技術であつた。そう、この装置をベリコン (Pellicon)という。

短時間で濃縮が可能となると、これまでの濃縮に加え、溶液の組成置換も実施できるようになり、濃縮とバッファ置換は同義となった (Concentration and Diafiltration)。

限外濾過膜の濃縮側にEndotoxinを残し、目的タンパク質をろ過

実は、限外濾過処理を応用して、目的蛋白質と発熱製物質であるEndotoxinを分離分別可能である。Endotoxinは、ミセルを作っているので、見かけの分子量は100kDa以上になっているため、目的タンパク質が100kDa以下の場合、ろ過液に目的蛋白質を回収することができる。

限外ろ過膜 (ultrafilter)

  • 限外ろ過膜には、平膜,ホローファイバーがある
  • 処理目的は、膜が持つ性能である分画分子量以下の低分子画分をろ過しすることで、循環システムから排除する。高分子画分は、残留させることで、循環システムに残留させる
  • ホローファイバーは、製造方法から簡単であったことから従来から使用されていたが、1980年代に膜メーカーのmillipore者が平膜の限外濾過膜を開発してベリコン膜と呼ばれ普及した。
  • 平膜では膜面と並行に目的溶液を流しながら(クロスフロー: cross flow),膜面に圧力を掛けることで、膜の分画分子量より大きい分子量画分を膜面を滑らせるとともに、小さい分子量画分をろ過する.ウイルス除去処理用フィルターもmilliporeが開発している。
  • ホローファイバーでは,平膜と同様の原理を使えるが中空糸構造であることから,そのオリフィス径(液が通る断面積)は小さいため,濃縮による不溶性異物により目詰まりしてろ過効率が低下しやすいが、バイオ医薬品の製造では必須でいるウイルス除去ファイルターはボローファイバーが使用されている。その場合、デッドエンド法が使われ、ファイバーの先端から末端に向けて処理液を送液する際、末端をデッドエンドにして圧力をかけることでファイバーの外側に濾過液が滲み出る原理の方法である。細胞を含む培養液の成長ろ過にホローファイバーが使用される場合は、クロスフロー法が使用される。
平膜とホローファイバーの比較
比較follow fibercross flow
流路絶対的に狭い。ファイバーを増やしても内径は狭いまま理論的には膜幅と膜と膜との間隔だけ面積に相当する広い流路
循環流速早くできない早くできる
処理速度遅い早い
適用低い粘度の溶液処理。培養液の清澄ろ過低濃度から高濃度タンパク質のろ過・濃縮
製品Planova 20N (ASAHI-KASEI)Pellicon (Pall-Millipore), (Sartorius), (Novasep)

参考文献

minimate TFF capsule

タンパク質の立体構造

立体構造から、そのタンパク質の物性イメージをつかみます。

  • FabとIL-6のComplex : PDB
  • Fab (Rontlizumab) – Interferon-a2 : PDB
  • Infliximab (Fab) : PDB
  • AAV 5 : PDB

まとめ

この投稿では、タンパク質についてどのような精製があるかを解説した。実際に精製しようとすると、その具現化がまた骨の折れる作業となる。

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