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[Bio-Edu] タンパク質の沈殿化法の原理 – ID2669 [2019/11/02]

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はじめに

無機塩は、タンパク質を沈殿させる基本です。塩を添加することでタンパク質の疎水性という物理的性質の強度を溶液中で強めることが目的です。疎水性が高まると疎水性を示すタンパク質の領域が、親水を避けて互いにより集まり結合します。タンパク質のアミノ酸の含有比率に応じて、タンパク質毎に沈殿化する塩の種類、濃度、溶液pH、及び当該タンパク質のタンパク質濃度に応じて重合化し、やがて沈殿化します。

塩を添加する方法による沈殿化の手法は、タンパクの精製に適するレジン(樹脂)がなかった昔に多用された技術です。この技術にはデメリットもあります。沈殿化したタンパク質は、沈澱を作る過程から状態を維持する過程で、タンパク質変性のリスクが高まります。理由は、沈殿化により、必要以上に強固に寄り集まったタンパク質が、水溶液に戻すときに再溶解しない場合がある事です。再溶解時に溶解しやすいようにする添加剤としての補助的に働くものがあります。グリシンなどのアミノ酸などは、その一種と考えられます。

タンパク質の沈殿化法による精製手法の代替法が存在します。以下の課題について解決し得る方法です。それは、疏水クロマトグラフィー(HIC)です。ここでは、HICについては論じていません(はりきり)。

沈殿化法の課題

  • 沈殿化したタンパク質には再溶解の困難性というリスクがあること
  • 工業的に遠心機を使用しにくいこと
  • 取扱いとして液状での操作が悪いこと
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ホフマイスター系列

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1888年からのHofmeisterらの色々な塩を使った塩析実験から得られた塩析の強さは、ホフマイスター系列と呼ばれます。塩析効果の高い塩は利尿作用があり、逆溶解させる塩は下痢作用があると記述があります。

タンパク質の凝集剤としての塩・有機溶媒・高分子 (2015), 生物工学, 第93巻

https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9305/9305_tokushu_1.pdf

デバイ – ヒュッケル理論

静電相互素作用が主たる原理であるとするとデバイーヒュッケル理論で説明できる。しかし、実際には、タンパク質の塩析曲線はベルシェイプを示し、塩の種類によって異なる曲線を示すとの報告(1932年のGreenら)がある。すなわち、静電相互作用だけでは説明がつかず、別の相互作用や水の構造変化が影響していとる予想されていた。

イオンは水の水素結合結合ネットワーク

しかし、イオンは水の水素結合結合ネットワークに影響を与えないという論文が報告(2003)され、溶液中の水の構造を変えるのではなく、タンパク質の表面にある水和水に影響して、タンパク質の性質に影響しているのであろうと考えられた。

その理屈は、コスモトロープが水和水の秩序化→表面張力の増加→溶液は表面を減らす→タンパク質が凝集する。この理論は、リゾチームの凝集速度と溶液の表面張力の間に、正の相関があるとの結果と矛盾しない。

塩の種類により水和水の量に変化を生じさせていることについては、選択的相互作用の量として定義すると、

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選択的相互作用の量 =塩(溶質)がタンパク質に結合している量 − 水和水により脱離してしまつた溶質の量、と定義する。値が正であれば、結合している溶質の量の方が多い、負であれば、結合している水和水の量の方が多い。

硫化物イオンの選択的相互相互作用の量は、塩化物イオンより小さい値を示すし、硫化物イオンは、塩化物イオンと並べて、タンパク質表面から選択的に排除されていることになる。

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ホフマイスター系列

塩析する能力を示す。

塩析しやすい (コスモトロープ) > CO3 > SO4 > H2PO4 > F > Cl > I > SCN > NH4 > K > Na > Li > Ca > Mg > 溶解 (カオトロープ)

ホフマイスター系列は、周期表との規則性が見られる。

ハロゲン属では、 周期表順に同じく、

塩析しやすい > F > Cl > Br > I > 溶解

である。

アルカリ金属のカチオンでは、前述の逆となっている。したがって、沈殿材傾向は、イオンの半径や電子密度、質量で説明できることを示唆している。ただし、硫酸イオンやグアニジウムイオンなど複雑なイオンとは別の説明が必要と考えられる。

タンパク質の溶解度

一般的に、タンパク質の溶解度は、イオン濃度を増加させると増加し、それは極大値があり、ベルシェイプを示す。

デバイーヒュッケルの理論

デバイーヒュッケル理論で説明すると、塩を添加していくと、溶解から凝集まで一直線に状態変化する。低濃度では、静電遮蔽によってタンパク質の分子間の反発力が静電遮蔽により弱まる→分子の容積が減る→溶解度が増す、と説明できる。更に塩を加えていくと、タンパク質間のファンデンワールス力や疎水性相互作用などの引力が強まる→凝集する、と説明できる。しかし、実際には、溶解→凝集→溶解なるため矛盾がある。

コスモトロープ

水の水素結合ネットワークを秩序化(コスモス)する。

タンパク質表面の水和水について考えてみると、溶解状態のタンパク質液が、凝集するまでのイベントは、以下の様になる。

「秩序化」→「気液界面の表面張力を増加させる」→「広くなった界面は不安定になる」→「溶液は安定化させようとする」→「表面を枯らそうとする→タンパク質はより集まる」→「凝集する」

カオトロープ

水の水素結合ネットワークを無秩序化(カオス)する。溶解する理論すは、上述の逆の理屈である。

表面張力

水和を理解するための指標の一つ。surface tension, 表面をできるだけ小さくしようする性質。

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有機溶剤

古くからDNA/RNAの沈殿材として用いられてきた。タンパク質への応用はアルコールによる血漿タンパク質の沈殿法から始まっている。

原理は、水溶液の伝導率を低下させ、タンパク質間の静電反発力を強める結果、溶解度が減少するといわれるが、それだけではなく、有機分子とタンパク質の相互作用についても考慮する必要がある。

エタノールとジオキサンの検討では、アミノ酸やペプチドの有機溶剤に対する溶解度を調べた論文では、疎水性側鎖を安定化させ、親水性の側鎖やペプチド結合を不安定化させることがわかっている。

還元Albの検討では、エタノールは、タンパク質の疎水性部分と相互作用し変性させながら溶解度を上げるが、荷電残基の影響によりタンパク質の溶解度は低下した。

ハロゲン系アルコールの検討では、50%トリプルオロエタノール中では、主鎖の間にできる水素結合が弱められる結果、αベリックス構造に富んだ構造に変性するが、溶解度は高くなり、最終的には、透明なゲルになる。

エタノール中でのタンパク質の凝集の制御は、わずかなpHシフトにより可能である。凝集を防ぐにはpHをpIから外すことである。

①構造変化を伴う疎水性の変化

②溶液の伝導率の低下

③相互の非極性領域の相互作用

④相互の荷電残基の相互反発

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高分子

高分子の中でもPEGは無毒であり、よく使用され、無荷電である。PEGは、タンパク質の選択的水和を促す。

芳香属アミノ酸では、その溶解度は増加する。高分子が存在すると、タンパク質が存在できる空間が狭くなる。これを排除体積効果という。

PEGは、以下の2つの作用を有する。

① 排除体積効果によるタンパク質の安定化と凝集

②弱い変性作用(疎水性アミノ酸に結合)によるタンパク質の不安定化と溶解促進

また、高分子は、タンパク質のFoldingにも影響し、高濃度のPEGや多糖では、変性状態を不安定化させるので、ネイティブ構造が安定化し、Folding速度が増加する。

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