[Bio-Edu] 細胞・細菌・ファージ・ウイルスを増やす 簡単な解説 – ID20721 [2020/10/06] ID20721

はじめに

初学者を対象にして、バイオを研究するために必要な知識を提供する[Bio-Edu]です。この記事では、バイオ、すなわち組換え体として使用する細胞や細菌、さらに関連知識として必要な更に小さな生物であるファージとウイルスについて解説します。

生物

生物界での病気やバイオにおける基礎知識として、「宿主 (しゅくしゅ)」という概念があります。

ウイルスは生物ではないと考えられていましたが、最近では、生物であるともいわれます。

この定義は、自分で自分を複製できないものは、生物ではないとする定義です。

閑話休題 – 遺伝子の数 –
ヒトの遺伝子は3万、大腸菌は4千、ウイルスは10個程度であり、これら、動物細胞、細菌、ウイルスのそれぞれの粒子としての大きさは、遺伝子の数に依存しています。

ウイルスと細菌

http://www2.nupals.ac.jp/~fmfsc/Topics/uirusuto_xi_jun.html

生物と呼びにくい面々

細胞、細菌は、適切な条件のもとで栄養分さえ与えてやれば、自分自身で複製できます。

自分自身で複製できないものには、ウイルスの他にファージと呼ばれるものがあります。

ウイルス

ウイルスは、細胞に感染して細胞の生存機能を利用することで複製します。一方、ファージの感染対象が、細菌であることがウイルスと異なります。ウイルスは、通常丸い形をしていますが、ファージは、下図のように数十年前に初めてアメリカが月面着陸に成功した時に使用された「月面着陸宇宙船」の形にそっくりです。ファージについては、後述します。

ウイルスとファージの形の違いには意味があります。ウィルスとは、比較的柔らかい表面の動物の細胞に感染するためには、この形(機能)で十分です。ウイルスは、細胞の表面に「ソフト」に吸着します。細胞とウイルスの表面は、よく似た膜(脂質膜)で覆われた構造であるため、「シャボン玉」同士が接触して吸着し融合していくような感じです。生命の活動とは不思議なもので、目的である細胞に融合したウイルスは、その後、細胞中へ完全に入っていきます(感染)。

図1. 細胞とウイルス
細胞(左図)とウイルス(新型コロナウイルス-WHO特設サイト-、右図)

ファージ

ファージでは、細胞表面が硬い細菌に感染するために、「月面着陸宇宙船」の形(機能)をしています。

ファージの足の部分で、細菌に着陸(吸着)し、その後、胴体部で穴を開けて、スポイドの頭のような部分に保管されている自らの遺伝子を細菌の内部に注入します。

図2. 大腸菌とファージ
大腸菌(左図)とファージ(右図)

増殖の機構は同じ

ウイルスとファージの増殖は、細胞や細菌の生命活動を使って増殖します。細胞、細菌の中に自分の遺伝子が入ってしまえば、後はそれぞれの宿主(細胞、細菌)の生命活動の中でウイルス、ファージの独自の遺伝子が機能することにより、ウイルスやファージのパーツであるタンパク質が作られます。そのパーツから完全な形のウィルスやファージが作られ、宿主から飛び出ていきます。

増やす方法

細胞・細菌を増やす

栄養分を含む溶液(培地)に細胞や細菌を浸して、適度な条件 (温度、pH、浸透圧、酸素濃度、栄養素)で維持(培養という)してやると増殖します。

  • 動物細胞、大腸菌
  • 温度
  • pH
  • 溶存酸素濃度
  • 栄養

増殖は、1個が2個になる、中学生の頃にに学んだあの増殖です。1個が2個、2個が4個、4個が8個、8個が16個・・・。この2個になる時間を「ダブリングタイム」と言います。

ウイルス・ファージを増やす

ウイルスやファージは、「細胞を増やす」で増やした細胞・細菌を用います。細胞、細菌に、ウイルス、ファージを添加して感染させます。感染とは、前述したように細胞、細菌の中に入ることです。細胞に接触させるだけで、感染させることができます。

ウイルスやファージは、自分たちが増殖しやすい宿主を知っており、その宿主である細胞や細菌の表面に付着(これを知っていると表現)して、中に入り込みます。これを感染といいます。感染した後、宿主の細胞、細菌の生命活動を利用して自分自身のパーツをつくり、複製していきます。宿主を知っているとは、受容体が存在していると言い換えることができます。

受容体とは、相手方(細胞など)に自分(ウイルス)のある部分を認識して結合できるある部分(一番的にタンパク質)のことを一般的にそのように呼びます。受容体が存在しなけば、感染は成立しません。

まとめ

バイオの初学者向けに、細胞、細菌、ウイルス、ファージの増やす方法 (単に「培養」と呼んだりする)について解説しました。

以上

大腸菌のイラスト – 理研 –

http://rtcweb.rtc.riken.go.jp/DNA/sec/m1.html

ファージに関する情報です

ファージ — – ウィキペディア –

https://ja.wikipedia.org/wiki/ファージ

細胞培養の種類、培地、など詳細な基礎的な情報がえられます

細胞培養の基礎知識 – Merck –

https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/SAJ/Brochure/1/j_recipeecoli.pdf

線画培養からシングルコロー取得して液体培養までの必要な材料と手順などの情報が得られます

大腸菌培養 – Sigma Aldrich –

https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/SAJ/Brochure/1/j_recipeecoli.pdf

昆虫細胞の培養培地に関する製品情報です

昆虫細胞培養 – Thermo Fisher Scientific –

https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/cell-culture/insect-cell-culture.html

参考動画 – 細胞の説明

編集履歴

2020/03/27 Mr.Harikiri
2022/05/09 追記 (図)、文言整備
2020/10/06 追記 (培養用の培地情報)、文言整備
2022/11/08 追記(はじめに)、文言整備