FSMA用語と医薬品GMP概念の比較
以下の表は、FSMAを医薬品GMP経験者が理解するための補助表です。
用語の対応表ではありません。
| FSMA・食品側の用語 | 医薬品GMP・ICHで比較できる近い概念 | 注意点 |
|---|---|---|
| Food Safety Plan | 1対1対応なし。PQS、SOP、工程管理、リスク管理、記録、回収手順などに分散 | 医薬品GMP用語ではない |
| Hazard Analysis | ICH Q9のHazard Identification、Risk Assessment | 食品安全上の危害分析である |
| Preventive Controls | 工程管理、汚染防止管理、管理戦略の一部 | Control Strategyと同義ではない |
| Monitoring | 工程モニタリング、工程内管理 | 対象は食品安全上の管理点 |
| Corrective Actions / Corrections | 逸脱処理、是正措置、CAPAの一部 | CAPAと同義ではない |
| Verification | 確認、照査、検証活動 | 文脈により意味が変わる |
| Validation | バリデーション | 用語は共通するが対象が異なる |
| Supply-chain Program | 供給者管理、原材料管理 | 食品安全上の供給網管理 |
| Recall Plan | 回収手順 | 比較可能 |
| Records | 記録 | 考え方は近いが、要求事項や保存期間は規制ごとに異なる |
Hazard Analysisは医薬品GMP経験者にも理解しやすい
FSMAのHazard Analysisは、食品に関する既知または合理的に予見可能な危害を特定し、その危害に予防管理が必要かどうかを判断する考え方です。
医薬品GMP経験者であれば、ICH Q9の品質リスクマネジメントにおけるHazard IdentificationやRisk Assessmentに近いものとして理解できます。
ただし、目的は異なります。
FSMAでは、食品安全上の危害、たとえば微生物、化学物質、アレルゲン、異物などが中心になります。
医薬品GMPでは、製品品質、患者安全、有効性、安全性、汚染、交叉汚染、規格不適合などが中心になります。
ICH Q9(R1)は、品質リスクマネジメントを医薬品品質に対するリスクの評価、管理、コミュニケーション、レビューの体系的プロセスとして説明しています。
Preventive ControlsとControl Strategyは同じではない
FSMAのPreventive Controlsは、食品安全上の危害を予防または低減するための管理手段です。
代表的には、以下のような管理が含まれます。
- 工程管理
- アレルゲン管理
- 衛生管理
- サプライチェーン管理
- リコール計画
一方、医薬品分野で使われるControl Strategyは、原材料特性、重要品質特性、重要工程パラメータ、工程内管理、規格、モニタリングなどを通じて、製品品質を保証するための管理戦略です。
両者は、リスクに基づいて管理するという点では近い概念です。
しかし、FSMAのPreventive Controlsは食品安全上の危害を管理するためのものであり、医薬品のControl Strategyと同義ではありません。
ブログ記事では、次のように書くのが安全です。
FSMAのPreventive Controlsは、医薬品GMP経験者にはControl Strategyの一部に近い考え方として理解できる。ただし、FSMAでは食品安全上の危害を予防または低減する管理であり、医薬品のControl Strategyと同一ではない。
Corrective ActionsとCAPAも同じではない
FSMAでは、Corrective ActionsやCorrectionsという用語が使われます。
これは、予防管理や工程に問題が生じた場合に、影響を受けた食品を適切に扱い、問題を是正し、必要に応じて再発を防ぐための対応を行う考え方です。
医薬品GMPでは、CAPAという用語が広く使われます。
CAPAは、Corrective Action and Preventive Actionの略で、逸脱、苦情、監査指摘、品質不良、トレンド異常などを起点として、原因究明、是正、予防、効果確認までを含む品質システム上の重要な仕組みです。
したがって、FSMAのCorrective ActionsをCAPAと完全に同じ意味で扱うのは不正確です。
次の表現が適切です。
FSMAのCorrective Actionsは、医薬品GMPでいう逸脱対応やCAPAの一部に近い。ただし、CAPAと完全に同じ用語体系ではないため、同義語として扱うべきではない。
ValidationとVerificationは用語が似ていても対象が違う
FSMAにもValidationとVerificationがあります。
Validationは、設定した予防管理が食品安全上の危害を実際に管理できることを確認する文脈で使われます。
Verificationは、管理が継続的に実施され、機能していることを確認する文脈で使われます。
医薬品GMPでもValidationやVerificationは重要ですが、対象はより広範囲です。
たとえば、医薬品では以下のような対象があります。
- 製造工程バリデーション
- 洗浄バリデーション
- 分析法バリデーション
- コンピュータ化システムバリデーション
- 設備適格性評価
- 継続的工程確認
したがって、ValidationやVerificationという用語が共通していても、同じ手順や同じ証拠で足りるとは考えない方がよいです。
コメントを残す