FSMAとは何か:医薬品GMP経験者にもわかる米国食品安全強化法の基本と注意点

はじめに

目次

  1. はじめに
  2. FSMAは食品安全を「事後対応」から「予防管理」へ変えた制度
  3. FSMAの中心となる21 CFR Part 117
  4. 医薬品GMPとは目的が違う
  5. FSMAと医薬品GMPの用語を混同してはいけない
  6. Food Safety Planとは何か
  7. FSMA用語と医薬品GMP概念の比較(2ページ)
  8. Hazard Analysisは医薬品GMP経験者にも理解しやすい(2ページ)
  9. Preventive ControlsとControl Strategyは同じではない(2ページ)
  10. Corrective ActionsとCAPAも同じではない(2ページ)
  11. ValidationとVerificationは用語が似ていても対象が違う(2ページ)
  12. Supply-chain Programと供給者管理(3ページ)
  13. HACCP認証を取得すればFSMA対応になるのか(3ページ)
  14. 日本企業がFSMA対応で確認すべき事項(3ページ)
  15. 医薬品GMP経験者がFSMAを理解するためのポイント(3ページ)
  16. 誤解しやすい表現と修正版(3ページ)
  17. まとめ(4ページ)
  18. 注意点・例外(4ページ)
  19. 参考文献・出典(4ページ)

米国向けに食品、食品原料、健康食品、機能性素材、サプリメント関連原料などを輸出する企業にとって、理解しておきたい制度がFSMAです。

FSMAは、Food Safety Modernization Act の略で、日本語では米国食品安全強化法と呼ばれます。

FSMAの大きな特徴は、食品事故が起きた後に対応するのではなく、食品安全上の危害を事前に分析し、予防的に管理する制度であることです。

医薬品GMPの経験者から見ると、FSMAにはGMP、記録、モニタリング、是正措置、検証、バリデーションなど、見慣れた言葉が多く登場します。

しかし、ここで注意が必要です。

FSMAは食品安全の制度であり、医薬品GMPそのものではありません。

同じような用語が使われていても、目的、対象、要求される証拠、文書体系は異なります。


FSMAは食品安全を「事後対応」から「予防管理」へ変えた制度

FSMAは2011年に成立した米国の食品安全に関する法律です。

従来の食品安全管理では、問題が発生した後に調査し、回収し、是正するという対応が中心でした。

FSMAでは、考え方が大きく変わりました。

食品に関する危害をあらかじめ分析し、その危害を予防または低減するための管理を設計し、実施し、記録し、検証することが求められます。

つまりFSMAは、食品安全を予防型マネジメントへ転換した制度と理解できます。

米国FDAは、FSMAのPreventive Controls for Human Food規則について、食品施設が危害分析とリスクに基づく予防管理を含む食品安全計画を持つことを求める規則であると説明しています。


FSMAの中心となる21 CFR Part 117

FSMAの中でも、多くの食品製造施設に関係する重要な規則が、21 CFR Part 117です。

正式名称は、

Current Good Manufacturing Practice, Hazard Analysis, and Risk-Based Preventive Controls for Human Food

です。

この中には、Current Good Manufacturing Practice、つまりcGMPという言葉が含まれています。

ただし、ここでいうGMPは食品製造におけるGMPです。医薬品GMPと同じ言葉が使われていますが、対象は医薬品ではなく食品です。

21 CFR Part 117では、食品の製造、加工、包装、保管に関するcGMP、危害分析、リスクに基づく予防管理などが規定されています。


医薬品GMPとは目的が違う

医薬品GMPは、医薬品が意図した品質、有効性、安全性を満たすように、製造・品質管理を行うための制度です。

米国の完成医薬品GMPは、主に21 CFR Part 211に規定されています。

21 CFR Part 211は、完成医薬品の製造に関するcGMPであり、品質管理部門、建物・設備、原材料、製造・工程管理、包装・表示、保管・流通、試験、記録・報告などを規定しています。

したがって、FSMAと医薬品GMPは、どちらも「GMP」や「記録」「管理」「検証」といった言葉を使いますが、制度の目的は異なります。

FSMAの主目的は、食品安全上の危害を予防することです。

医薬品GMPの主目的は、医薬品の品質を保証し、患者の安全を確保することです。


FSMAと医薬品GMPの用語を混同してはいけない

FSMAを医薬品GMP経験者向けに説明するとき、最も注意すべき点は、用語の混同です。

たとえば、FSMAにはFood Safety Planという重要な文書体系があります。

これは食品安全計画と訳されます。

しかし、Food Safety Planは医薬品GMPの用語ではありません。

医薬品GMPでは、Food Safety Planという名称の文書は通常使いません。

医薬品GMP側では、PQS、品質リスクマネジメント、SOP、バリデーション、逸脱管理、CAPA、変更管理、回収手順、バッチ記録など、複数の仕組みに分かれて品質システムが構成されます。

そのため、

Food Safety Plan = 医薬品GMPの品質計画

と説明するのは不正確です。

正しくは、

Food Safety PlanはFSMAにおける食品安全上の文書体系であり、医薬品GMPに1対1で対応する単一文書はない

と理解すべきです。


Food Safety Planとは何か

FSMAにおけるFood Safety Planは、単なる計画書ではありません。

食品安全上の危害を分析し、必要な予防管理を設定し、それをどのように監視し、問題が起きたときにどう是正し、どのように検証し、記録するかをまとめた文書体系です。

21 CFR Part 117 Subpart Cでは、危害分析、予防管理、食品安全計画、モニタリング、是正措置、検証、記録などが規定されています。

医薬品GMP経験者が理解する場合は、Food Safety Planを、医薬品GMPの単一文書に置き換えるのではなく、以下のような複数の要素に近いものとして理解するとよいです。

FSMAのFood Safety Planに含まれる要素医薬品GMPで比較できる近い概念
危害分析品質リスクマネジメント
予防管理工程管理、汚染防止、管理戦略の一部
モニタリング工程モニタリング、工程内管理
是正措置逸脱対応、是正措置、CAPAの一部
検証照査、確認、検証活動
記録GMP記録、バッチ記録、試験記録
回収計画回収手順

ただし、これは概念比較であり、法令用語の1対1対応ではありません。


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