[Bio-Edu] IgGの精製はProtein Aに対する親和性を利用する – 溶出バッファは何を使う? – ID7074 [2021/02/04]

IgGの精製

IgGという蛋白質は、Protein Aという蛋白質に対して強い結合親和性を持っている。この原理を利用してIgGを特異的に吸着させて集めることを専門用語でキャプチャリングという。

ヒトの皮膚などに常在しているStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌、以下S. aureus)の細胞表面から得られた蛋白質

IgGの構造は、FabとFc領域の2つに大きく分けることが出来る。Protein Aは、そのFc領域に対して強い親和性を持っている。

その理由は、IgGのFabは、免疫における細菌などを殺すための刃物のようなものであり、その向きを自分に向けさせないことで、自分を守るためと考えられる。

Streptococcus(レンサ球菌)の細胞表面蛋白質もprotein Aと同様に抗体に結合するProtein Gという蛋白質が知られている。Protein Aと結合特性がことなることから、これら2つは、IgGのサブクラスに応じてつか分けられる。

生化夜話 第31回:主語と目的語が逆でした – protein A

https://www.gelifesciences.co.jp/newsletter/biodirect_mail/chem_story/111.html

溶出バッファの種類は?

タンパク質の溶解性については、acetic acid (酢酸)が高いことは知られているところです。pHに関して、acetic acidのpHは3~ですが、citric Acid (クエン酸)は、pH2程度と低くなります。

伝導度に関して、acetic acidは、citric acidと比較して分子量が低いため、同じモル数でも低い伝導度になります。抗体は一般的に塩による伝導度が高いと疎水性が高まり凝集しやすくなります。以上の前提で、以下の参考文献を読み解きましょう。

本文献では、10mM~100mMのcitric acidとacetic acidの濃度で溶出させて、そのプールした溶出画分のpHや回収される液量および溶出パターンを比較しています。一点気になっているのは、citric acidのpHが3としている点です。通常はpH2程度のはずなので疑問です。

citric acidの溶出パターンは、ブロードになっているのが確認できます。この理由は、前述の前提から推測できす。citric acidは凝集しやすくなることが影響していると思われます。

Citric acid or acetic acid?

Understanding the impact of elution buffer on mAb purification processes – Merck Millipore –

https://www.merckmillipore.com/Web-NZ-Site/en_US/-/USD/ShowDocument-Pronet?id=201510.174

その他の溶出バッファ?

血液中のTransferinをAnti Transferin抗体カラムでbind/elutionする論文には、formic acid (ギ酸)が使われています。Protein Aと抗体の結合力は、抗原抗体に匹敵するためProteinAの溶出バッファとして使用可能と思われます。

蟻酸は、酢酸を少し単純化した構造ですwikipedia

ギ酸

学式CH2O2
モル質量46.025 g mol−1
示性式HCOOH
出典 : wikipedia

酢酸

化学式C2H4O2
モル質量60.05 g mol−1
示性式CH3COOH
出典 : wikipedia

Chromatographic Monoliths for High-Throughput Immunoaffinity Isolation of Transferrin from Human Plasma (2016)

https://hrcak.srce.hr/file/244999

編集履歴

2020/01/22 Mr.Harikiri
2021/02/04 追記 (溶出バッファとしてcitric acidとacetic acidの比較)