まとめ
iPS細胞製品などの再生医療等製品では、製造所における製造管理・品質管理にはGCTP省令が適用されます。
医薬品ではGMP省令が製造所管理の基準になりますが、再生医療等製品ではGCTP省令が対応する基準になります。
したがって、制度上は「GMPにGCTPを加味する」というよりも、再生医療等製品ではGCTP省令に基づく製造管理・品質管理体制を構築することが正確です。
ただし、GCTPにはGMPと共通する品質システムの考え方が多く含まれています。そのため、実務上は、GMP的な品質保証の考え方を踏まえながら、再生医療等製品の特性を反映したGCTP体制を整備すると理解するとよいでしょう。
一方、GCTP省令は製造所側の基準であり、製造販売業者の品質管理責任を代替するものではありません。
再生医療等製品であっても、製造販売業者にはGQP省令に基づく品質管理体制が必要です。
さらに、製造販売後安全管理としてGVP、製造販売後調査・使用成績評価としてGPSPも関係します。
つまり、再生医療等製品の品質・安全性管理は、次のように整理できます。
GMPは医薬品等の製造所管理、GCTPは再生医療等製品の製造所管理、GQPは製造販売業者の品質管理、GVPは製造販売後安全管理、GPSPは製造販売後調査・使用成績評価の基準である。
再生医療等製品では、細胞・組織・遺伝子改変技術などを扱うため、原材料管理、ドナー管理、無菌性、保存・輸送、トレーサビリティ、変更管理、製造販売後のデータ収集が特に重要になります。
注意点・例外
この記事は、薬機法上の再生医療等製品に関する制度整理です。
医療機関で実施される再生医療、自由診療、臨床研究、特定細胞加工物の提供などは、再生医療等安全性確保法の対象となる場合があり、薬機法上の再生医療等製品とは制度が異なります。
また、再生医療等製品本体の製造管理・品質管理はGCTP省令で整理されますが、原材料、培地成分、添加剤、ウイルスベクター、併用される医薬品・医療機器、試験用試薬、保管・輸送資材などについては、GMP、QMS、原薬GMP、医薬品添加剤GMP、GDP的管理などが関係する可能性があります。
そのため、個別品目では、再生医療等製品本体はGCTPで管理しつつ、関連する原材料・供給品・併用製品について、どの基準・品質取決め・供給者管理を適用するかを整理する必要があります。
実際のGQP手順書、品質取決め、GVP/GPSP体制、条件及び期限付承認後の調査計画、PMDA相談資料、承認申請資料の作成については、薬事・品質保証・安全管理の専門家に確認が必要です。
参考文献・出典
- GMP/QMS/GCTP適合性調査業務|PMDA
- GMP適合性調査業務|PMDA
- GCTP適合性調査|PMDA
- 再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(GCTP省令)
- 医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令(GQP省令)
- 再生医療等製品に係る薬局等構造設備規則、GCTP省令、GQP省令等の取扱いに関する通知
- 再生医療等製品|PMDA
【確実性: 高】
厚生労働省省令・通知およびPMDA公開情報に基づく制度整理です。個別品目の体制設計、GQP/GVP/GPSP手順書、品質取決め、承認後調査計画への落とし込みは品目特性により変わるため、専門家確認が必要です。
用語集
| 用語 | 読み・英語 | 意味 | 本記事での位置づけ |
|---|---|---|---|
| 再生医療等製品 | さいせいいりょうとうせいひん / Regenerative Medical Products | 細胞加工製品、組織加工製品、遺伝子治療用製品など、薬機法上の製品区分 | 本記事の主対象 |
| iPS細胞由来製品 | induced Pluripotent Stem Cell-derived Product | iPS細胞から分化誘導した細胞などを用いる再生医療等製品 | 再生医療等製品の代表例 |
| 細胞加工製品 | Cell-processed Product | 細胞を採取、培養、加工、分化誘導などして製品化したもの | GCTP管理の重要対象 |
| 遺伝子治療用製品 | Gene Therapy Product | 遺伝子導入、ウイルスベクター、遺伝子改変細胞などを用いる製品 | 再生医療等製品に含まれる場合がある |
| 薬機法 | 医薬品医療機器等法 / PMD Act | 医薬品、医療機器、再生医療等製品などを規制する日本の法律 | 再生医療等製品の制度上の根拠 |
| 再生医療等安全性確保法 | Act on the Safety of Regenerative Medicine | 医療機関で行われる再生医療等の提供計画、細胞培養加工施設などを規制する法律 | 薬機法上の再生医療等製品とは別制度 |
| GMP | Good Manufacturing Practice | 医薬品・医薬部外品の製造所における製造管理・品質管理の基準 | 医薬品側の製造所管理基準 |
| GMP省令 | 医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令 | 医薬品・医薬部外品のGMPを定めた省令 | 再生医療等製品では主基準ではない |
| GCTP | Good Gene, Cellular, and Tissue-based Products Manufacturing Practice | 再生医療等製品の製造所における製造管理・品質管理の基準 | 再生医療等製品の製造所管理の主基準 |
| GCTP省令 | 再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令 | 再生医療等製品の製造管理・品質管理を定めた省令 | 本記事の中心用語 |
| GQP | Good Quality Practice | 製造販売業者が製品品質を確保するための品質管理基準 | 製造販売業者側の品質管理基準 |
| GQP省令 | 医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令 | 製造販売業者の品質管理基準を定めた省令 | 再生医療等製品にも適用される |
| GVP | Good Vigilance Practice | 製造販売後安全管理の基準 | 市販後安全性情報、有害事象、安全確保措置に関係 |
| GVP省令 | 製造販売後安全管理の基準に関する省令 | 製造販売後の安全管理体制を定めた省令 | GQPと連携が必要 |
| GPSP | Good Post-marketing Study Practice | 製造販売後調査・試験の実施基準 | 使用成績調査、承認条件評価などに関係 |
| QMS | Quality Management System | 医療機器・体外診断用医薬品の品質マネジメントシステム | GMP/GCTPとの比較対象 |
| QMS省令 | 医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令 | 医療機器等の品質管理基準を定めた省令 | 再生医療等製品ではなく医療機器側の基準 |
| 製造販売業者 | MAH / Marketing Authorization Holder | 製品を市場に出す責任を負う業者 | GQP、GVP、GPSPの主体 |
| 製造業者 | Manufacturer | 製造所で製品を製造する業者 | GCTPの主体 |
| 外国製造業者 | Foreign Manufacturer | 海外で製造を行う製造業者 | GCTP適合性調査の対象になり得る |
| 製造所 | Manufacturing Site | 実際に製造、試験、保管などを行う場所 | GCTP適合性調査の対象 |
| 総括製造販売責任者 | Marketing Supervisor-General | 製造販売業者における品質管理・安全管理を統括する責任者 | GQP/GVP体制の統括者 |
| 品質保証責任者 | Quality Assurance Manager | GQP業務を実務上管理する責任者 | 市場出荷、品質情報、回収等を管理 |
| 安全管理責任者 | Safety Management Supervisor | GVP業務を管理する責任者 | 安全性情報、安全確保措置を管理 |
| 製造管理者 | Manufacturing Manager | 製造所における製造管理・品質管理の責任者 | GCTP体制の現場責任者 |
| 市場出荷判定 | Market Release Decision | 製品を市場へ出荷してよいかを確認・判断すること | GQP側の重要業務 |
| 品質取決め | Quality Agreement | 製造販売業者と製造業者・委託先との責任範囲を定める文書 | 委託先管理の基本文書 |
| 委託先管理 | Supplier / Contractor Management | 製造、試験、保管、輸送などの委託先を管理すること | GQP上の重要業務 |
| GCTP適合性調査 | GCTP Compliance Inspection | 製造所がGCTPに適合しているか確認する調査 | 製造所側の確認でありGQPを代替しない |
| GMP適合性調査 | GMP Compliance Inspection | 医薬品等の製造所がGMPに適合しているか確認する調査 | 医薬品側の製造所確認 |
| 逸脱管理 | Deviation Management | 手順、規格、承認事項などから外れた事象を評価・処理すること | GMP/GCTP/GQPで重要 |
| 変更管理 | Change Control | 工程、設備、原材料、試験法などの変更影響を評価・管理すること | 再生医療等製品では特に重要 |
| 是正措置・予防措置 | CAPA / Corrective and Preventive Action | 不具合や逸脱の原因を是正し、再発を防止する活動 | 品質不良対応の基本 |
| バリデーション | Validation | 工程や方法が期待どおり機能することを文書化して確認すること | GMP/GCTP共通の品質保証要素 |
| ベリフィケーション | Verification | あらかじめ定めた要求事項を満たしていることを確認すること | GCTPで重要な考え方 |
| 品質リスクマネジメント | Quality Risk Management | 品質に関するリスクを評価・低減・管理する考え方 | GMP/GCTP共通の重要要素 |
| 無菌操作等区域 | Aseptic Processing Area | 無菌的な作業を行う区域 | 再生医療等製品で重要 |
| 清浄度管理 | Cleanliness Control | 作業区域の微粒子・微生物汚染を管理すること | 無菌性確保に関係 |
| 無菌性 | Sterility | 生菌による汚染がないこと | 再生医療等製品の重要品質特性 |
| エンドトキシン | Endotoxin | グラム陰性菌由来の発熱性物質 | 投与製品の安全性に関係 |
| マイコプラズマ | Mycoplasma | 細胞培養で問題となる微生物汚染の一種 | 細胞加工製品で重要な試験対象 |
| ドナー | Donor | 細胞や組織を提供する人または動物 | 原材料・感染症リスク管理に関係 |
| ドナー管理 | Donor Control | ドナーの適格性、感染症リスク、由来情報などを管理すること | GCTP特有の重要論点 |
| トレーサビリティ | Traceability | 原材料、細胞、ドナー、ロット、患者などの履歴を追跡できること | 再生医療等製品で重要 |
| 細胞生存率 | Cell Viability | 製品中の細胞のうち生存している細胞の割合 | 細胞製品の品質判断に関係 |
| 細胞数 | Cell Number | 製品中に含まれる細胞の数 | 投与量・規格に関係 |
| 同一性 | Identity | 製品が意図した細胞・成分であること | 品質試験の重要項目 |
| 純度 | Purity | 目的外細胞や不純物が少ないこと | 品質特性の一つ |
| 力価 | Potency | 製品が意図した生物学的機能を有すること | 有効性に関係する重要品質特性 |
| 凍結・解凍条件 | Freezing and Thawing Conditions | 細胞製品の保存・使用時の温度や手順条件 | 品質維持に重要 |
| 使用期限 | Expiry Date / Shelf Life | 製品を使用できる期限 | 細胞製品では短い場合がある |
| 品質情報 | Quality Information | 苦情、品質不良、逸脱、異常傾向などの品質関連情報 | GQPで処理する情報 |
| 品質不良 | Quality Defect | 製品品質に問題がある状態 | 回収や安全性評価につながる可能性 |
| 回収 | Recall | 市場に出た製品を回収すること | GQP/GVP連携が必要 |
| 安全性情報 | Safety Information | 有害事象、副作用、感染症リスクなどの情報 | GVPで管理 |
| 有害事象 | Adverse Event | 製品使用後に発生した望ましくない医学的事象 | GVPの主要管理対象 |
| 安全確保措置 | Safety Measures | 使用上の注意改訂、情報提供、出荷停止、回収等の措置 | GVP上の対応 |
| 条件及び期限付承認 | Conditional and Time-limited Approval | 一定条件のもとで期限を付して承認する制度 | 再生医療等製品で重要 |
| 使用成績調査 | Post-marketing Use-results Survey | 市販後に実使用下で有効性・安全性を調査すること | GPSPに関係 |
| 製造販売後データベース調査 | Post-marketing Database Study | 医療情報データベース等を用いた製造販売後調査 | GPSP関連 |
| 製造販売後臨床試験 | Post-marketing Clinical Trial | 承認後に実施する臨床試験 | 承認条件評価等に関係 |
| 使用成績評価 | Use-results Evaluation | 承認後に収集した実使用データを評価すること | 条件及び期限付承認後に重要 |
| 同等性・同質性 | Comparability | 製造変更前後で品質・有効性・安全性が同等または同質と評価できること | 工程変更時に重要 |
| ライフサイクル管理 | Lifecycle Management | 開発、承認、製造、市販後まで一貫して製品を管理する考え方 | 再生医療等製品で重要 |
【注意点・例外】
この用語集は、ブログ読者向けにわかりやすく要約したものです。法令上の厳密な定義、通知上の用語、承認申請資料や手順書での記載では、正確な条文・通知・PMDA資料に基づく確認が必要です。
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