iPS細胞などの再生医療等製品にもGQP体制は必要か?GMP・GCTP・GQP・GVP・GPSPの違いを整理する[2026/06/03]

まとめ

iPS細胞製品などの再生医療等製品では、製造所における製造管理・品質管理にはGCTP省令が適用されます。

医薬品ではGMP省令が製造所管理の基準になりますが、再生医療等製品ではGCTP省令が対応する基準になります。

したがって、制度上は「GMPにGCTPを加味する」というよりも、再生医療等製品ではGCTP省令に基づく製造管理・品質管理体制を構築することが正確です。

ただし、GCTPにはGMPと共通する品質システムの考え方が多く含まれています。そのため、実務上は、GMP的な品質保証の考え方を踏まえながら、再生医療等製品の特性を反映したGCTP体制を整備すると理解するとよいでしょう。

一方、GCTP省令は製造所側の基準であり、製造販売業者の品質管理責任を代替するものではありません。

再生医療等製品であっても、製造販売業者にはGQP省令に基づく品質管理体制が必要です。

さらに、製造販売後安全管理としてGVP、製造販売後調査・使用成績評価としてGPSPも関係します。

つまり、再生医療等製品の品質・安全性管理は、次のように整理できます。

GMPは医薬品等の製造所管理、GCTPは再生医療等製品の製造所管理、GQPは製造販売業者の品質管理、GVPは製造販売後安全管理、GPSPは製造販売後調査・使用成績評価の基準である。

再生医療等製品では、細胞・組織・遺伝子改変技術などを扱うため、原材料管理、ドナー管理、無菌性、保存・輸送、トレーサビリティ、変更管理、製造販売後のデータ収集が特に重要になります。

注意点・例外

この記事は、薬機法上の再生医療等製品に関する制度整理です。

医療機関で実施される再生医療、自由診療、臨床研究、特定細胞加工物の提供などは、再生医療等安全性確保法の対象となる場合があり、薬機法上の再生医療等製品とは制度が異なります。

また、再生医療等製品本体の製造管理・品質管理はGCTP省令で整理されますが、原材料、培地成分、添加剤、ウイルスベクター、併用される医薬品・医療機器、試験用試薬、保管・輸送資材などについては、GMP、QMS、原薬GMP、医薬品添加剤GMP、GDP的管理などが関係する可能性があります。

そのため、個別品目では、再生医療等製品本体はGCTPで管理しつつ、関連する原材料・供給品・併用製品について、どの基準・品質取決め・供給者管理を適用するかを整理する必要があります。

実際のGQP手順書、品質取決め、GVP/GPSP体制、条件及び期限付承認後の調査計画、PMDA相談資料、承認申請資料の作成については、薬事・品質保証・安全管理の専門家に確認が必要です。

参考文献・出典

【確実性: 高】
厚生労働省省令・通知およびPMDA公開情報に基づく制度整理です。個別品目の体制設計、GQP/GVP/GPSP手順書、品質取決め、承認後調査計画への落とし込みは品目特性により変わるため、専門家確認が必要です。

用語集

用語読み・英語意味本記事での位置づけ
再生医療等製品さいせいいりょうとうせいひん / Regenerative Medical Products細胞加工製品、組織加工製品、遺伝子治療用製品など、薬機法上の製品区分本記事の主対象
iPS細胞由来製品induced Pluripotent Stem Cell-derived ProductiPS細胞から分化誘導した細胞などを用いる再生医療等製品再生医療等製品の代表例
細胞加工製品Cell-processed Product細胞を採取、培養、加工、分化誘導などして製品化したものGCTP管理の重要対象
遺伝子治療用製品Gene Therapy Product遺伝子導入、ウイルスベクター、遺伝子改変細胞などを用いる製品再生医療等製品に含まれる場合がある
薬機法医薬品医療機器等法 / PMD Act医薬品、医療機器、再生医療等製品などを規制する日本の法律再生医療等製品の制度上の根拠
再生医療等安全性確保法Act on the Safety of Regenerative Medicine医療機関で行われる再生医療等の提供計画、細胞培養加工施設などを規制する法律薬機法上の再生医療等製品とは別制度
GMPGood Manufacturing Practice医薬品・医薬部外品の製造所における製造管理・品質管理の基準医薬品側の製造所管理基準
GMP省令医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令医薬品・医薬部外品のGMPを定めた省令再生医療等製品では主基準ではない
GCTPGood Gene, Cellular, and Tissue-based Products Manufacturing Practice再生医療等製品の製造所における製造管理・品質管理の基準再生医療等製品の製造所管理の主基準
GCTP省令再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令再生医療等製品の製造管理・品質管理を定めた省令本記事の中心用語
GQPGood Quality Practice製造販売業者が製品品質を確保するための品質管理基準製造販売業者側の品質管理基準
GQP省令医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令製造販売業者の品質管理基準を定めた省令再生医療等製品にも適用される
GVPGood Vigilance Practice製造販売後安全管理の基準市販後安全性情報、有害事象、安全確保措置に関係
GVP省令製造販売後安全管理の基準に関する省令製造販売後の安全管理体制を定めた省令GQPと連携が必要
GPSPGood Post-marketing Study Practice製造販売後調査・試験の実施基準使用成績調査、承認条件評価などに関係
QMSQuality Management System医療機器・体外診断用医薬品の品質マネジメントシステムGMP/GCTPとの比較対象
QMS省令医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令医療機器等の品質管理基準を定めた省令再生医療等製品ではなく医療機器側の基準
製造販売業者MAH / Marketing Authorization Holder製品を市場に出す責任を負う業者GQP、GVP、GPSPの主体
製造業者Manufacturer製造所で製品を製造する業者GCTPの主体
外国製造業者Foreign Manufacturer海外で製造を行う製造業者GCTP適合性調査の対象になり得る
製造所Manufacturing Site実際に製造、試験、保管などを行う場所GCTP適合性調査の対象
総括製造販売責任者Marketing Supervisor-General製造販売業者における品質管理・安全管理を統括する責任者GQP/GVP体制の統括者
品質保証責任者Quality Assurance ManagerGQP業務を実務上管理する責任者市場出荷、品質情報、回収等を管理
安全管理責任者Safety Management SupervisorGVP業務を管理する責任者安全性情報、安全確保措置を管理
製造管理者Manufacturing Manager製造所における製造管理・品質管理の責任者GCTP体制の現場責任者
市場出荷判定Market Release Decision製品を市場へ出荷してよいかを確認・判断することGQP側の重要業務
品質取決めQuality Agreement製造販売業者と製造業者・委託先との責任範囲を定める文書委託先管理の基本文書
委託先管理Supplier / Contractor Management製造、試験、保管、輸送などの委託先を管理することGQP上の重要業務
GCTP適合性調査GCTP Compliance Inspection製造所がGCTPに適合しているか確認する調査製造所側の確認でありGQPを代替しない
GMP適合性調査GMP Compliance Inspection医薬品等の製造所がGMPに適合しているか確認する調査医薬品側の製造所確認
逸脱管理Deviation Management手順、規格、承認事項などから外れた事象を評価・処理することGMP/GCTP/GQPで重要
変更管理Change Control工程、設備、原材料、試験法などの変更影響を評価・管理すること再生医療等製品では特に重要
是正措置・予防措置CAPA / Corrective and Preventive Action不具合や逸脱の原因を是正し、再発を防止する活動品質不良対応の基本
バリデーションValidation工程や方法が期待どおり機能することを文書化して確認することGMP/GCTP共通の品質保証要素
ベリフィケーションVerificationあらかじめ定めた要求事項を満たしていることを確認することGCTPで重要な考え方
品質リスクマネジメントQuality Risk Management品質に関するリスクを評価・低減・管理する考え方GMP/GCTP共通の重要要素
無菌操作等区域Aseptic Processing Area無菌的な作業を行う区域再生医療等製品で重要
清浄度管理Cleanliness Control作業区域の微粒子・微生物汚染を管理すること無菌性確保に関係
無菌性Sterility生菌による汚染がないこと再生医療等製品の重要品質特性
エンドトキシンEndotoxinグラム陰性菌由来の発熱性物質投与製品の安全性に関係
マイコプラズマMycoplasma細胞培養で問題となる微生物汚染の一種細胞加工製品で重要な試験対象
ドナーDonor細胞や組織を提供する人または動物原材料・感染症リスク管理に関係
ドナー管理Donor Controlドナーの適格性、感染症リスク、由来情報などを管理することGCTP特有の重要論点
トレーサビリティTraceability原材料、細胞、ドナー、ロット、患者などの履歴を追跡できること再生医療等製品で重要
細胞生存率Cell Viability製品中の細胞のうち生存している細胞の割合細胞製品の品質判断に関係
細胞数Cell Number製品中に含まれる細胞の数投与量・規格に関係
同一性Identity製品が意図した細胞・成分であること品質試験の重要項目
純度Purity目的外細胞や不純物が少ないこと品質特性の一つ
力価Potency製品が意図した生物学的機能を有すること有効性に関係する重要品質特性
凍結・解凍条件Freezing and Thawing Conditions細胞製品の保存・使用時の温度や手順条件品質維持に重要
使用期限Expiry Date / Shelf Life製品を使用できる期限細胞製品では短い場合がある
品質情報Quality Information苦情、品質不良、逸脱、異常傾向などの品質関連情報GQPで処理する情報
品質不良Quality Defect製品品質に問題がある状態回収や安全性評価につながる可能性
回収Recall市場に出た製品を回収することGQP/GVP連携が必要
安全性情報Safety Information有害事象、副作用、感染症リスクなどの情報GVPで管理
有害事象Adverse Event製品使用後に発生した望ましくない医学的事象GVPの主要管理対象
安全確保措置Safety Measures使用上の注意改訂、情報提供、出荷停止、回収等の措置GVP上の対応
条件及び期限付承認Conditional and Time-limited Approval一定条件のもとで期限を付して承認する制度再生医療等製品で重要
使用成績調査Post-marketing Use-results Survey市販後に実使用下で有効性・安全性を調査することGPSPに関係
製造販売後データベース調査Post-marketing Database Study医療情報データベース等を用いた製造販売後調査GPSP関連
製造販売後臨床試験Post-marketing Clinical Trial承認後に実施する臨床試験承認条件評価等に関係
使用成績評価Use-results Evaluation承認後に収集した実使用データを評価すること条件及び期限付承認後に重要
同等性・同質性Comparability製造変更前後で品質・有効性・安全性が同等または同質と評価できること工程変更時に重要
ライフサイクル管理Lifecycle Management開発、承認、製造、市販後まで一貫して製品を管理する考え方再生医療等製品で重要

【注意点・例外】

この用語集は、ブログ読者向けにわかりやすく要約したものです。法令上の厳密な定義、通知上の用語、承認申請資料や手順書での記載では、正確な条文・通知・PMDA資料に基づく確認が必要です。

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