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  • [Bio-Culture] 大腸菌; E.coliの増殖率は細胞長の増大に関わる [2021/02/27]

    [Bio-Culture] 大腸菌; E.coliの増殖率は細胞長の増大に関わる [2021/02/27]

    大腸菌の増殖率

    一般的に、大腸菌の増殖率(growth rate)、1時間あたり1未満であり、それを超える増殖率になってくると、大腸菌の長さが増大するのだという。

    大腸菌の1時間あたりの増殖率を近似して1だとすると、1時間経てば、大腸菌は2倍に増えることになる。実際には1未満であるので、2倍に増える時間は、1時間より1割増しないし、2割増し程度の見積もりとなる。

    一方、大腸菌のダブリングタイムは20分という文献もあり、この文献との整合性については、今後確認したい。

    Data from: Threshold effect of growth rate on population variability of Escherichia coli cell lengths (2018)

    https://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=en&tl=ja&u=https%3A%2F%2Fdatadryad.org%2Fstash%2Fdataset%2Fdoi%3A10.5061%2Fdryad.2bs69&anno=2&prev=search

    編集履歴

    2021/02/27 Mr.HARIKIRI
  • [Bio-Edu] 組換え大腸菌で造らせたタンパク質のリフォールディングおよび、その後の精製手順  [2020/08/19]

    [Bio-Edu] 組換え大腸菌で造らせたタンパク質のリフォールディングおよび、その後の精製手順 [2020/08/19]

    はじめに

    研究段階のタンパク質の取得は、組換え大腸菌(E.coli)から取得することが多いですが、そのタンパク質は、un-foldingしていることが殆どです。可溶性として取得できたとしても、その活性は非常に低いことも良く知られています。そこで、Re-foldingという手法により、un-foldeしたリコンビナント・タンパク質を立体構造として自然な状態に巻き戻してあげます。巻き戻すという表現は、タンパク質が複数のアミノ酸が1本の鎖状になった構造をしていることから用いられます。

    Re-foldingは、バッファー組成が一般的な組成に置換できて、初めて成功です。置換で濁るようではRe-foldingは失敗です。

    Re-foldingできたタンパク質は、クロマト・レジンを使用して精製します。

    Refoldingとは

    タンパク質は、アミノ酸の数珠つなぎでできています。酵素が活性化するときは、一般的には、ある活性化酵素によって、その前駆体の酵素のどこか一か所が切断され、二本鎖と呼ばる構造になり、立体構造が変化して活性化します。

    タンパク質の機能は、構造にあるということです。

    そのタンパク質が、その本来の機能を発揮するには正しい立体構造になっている必要があります。立体構造を構成する要素はいくつかあります。キーワードは、αヘリックス、βシート、SS結合などです。

    • アミノ酸配列のαヘリックスとβシートのインタラクションによる構造
    • システインとシステインによるSS結合による強固な構造

    組換え大腸菌の産生タンパク質

    組換え大腸菌でタンパク質を産生させると、ほとんどが不溶化してInclusion Bodyと呼ばれる不溶物として大腸菌内に溜まります。これをリフォールディング(refolding)する方法を以下に示します。

    1. ただし、refoldingできるタンパク質の分子量に制限があります。分子量が10kDa未満のInsulinなどは、比較的簡単です。
    2. 分子量20kDa程度のInterferonは、refoding可能です
    3. 分子量が30kDaに近づくとrefolding効率は次第に低下してしてきます。

    Inclusion bodyの回収

    インクルージョンボディは、大腸菌の菌体内に存在します。インクルージョンボディーを取得するには、まず大腸菌を破砕して、大腸菌の細胞内からイングルジョンボディーを細胞外に出てくるようにします。細胞を破砕した後は、遠心により不溶性のインクルージョンボディーを沈殿として回収します。

    1. 組換え大腸菌の培養
    2. 菌体の回収
    3. 菌体の破砕(以下のいずれか)
      1. 超音波処理(粘度がなくなるまで十分に)
      2. フレンチプレス(圧力で破砕)
      3. ダイノミル(ビーズで砕く)
    4. 遠心によるpptを回収(Inclusion body)

    可溶化とrefolding

    • Inclusion bodyに6M 塩酸グアニジンや8M 尿素で溶解
    • 遠心または清澄ろ過
    • His-tagを付けていて、もしも純度が低ければ、Ni-NTA Sepharoseなどでbinding/elutionにて精製します。
      • 1M Imidazole(pH調整不要、pH8程度)を添加して25mM最終
      • Niカラムに添加
      • 25mM Imidazole, 6M 塩酸グアニジンで洗浄
      • 0.1M Imidazole, 6M 塩酸グアニジンで溶出
    • Niカラム精製してななければ
      • 1M Tris-HCl pH8を添加して20mM最終
    • 1M DTT添加して50mM最終 (還元剤)
      • refoldingで重要なSS結合は、pH8.3で最も効率的が高まります
    • 1M シスタミン(2塩酸塩)を添加して100mM最終 (酸化剤)
      • 後に希釈した際、DTT濃度が低下するとともに、タンパク質が本来の立体構造に戻ろうとします。その際、本来のSS結合としてシステイン同士が近づきますが、それを酸化して強固な立体構造にします
    • 即、水で6倍希釈
      • 1M 塩酸グアニジン
      • 8.3mM DTT
      • 16.7mM システイン2塩酸塩
    • 室温または15℃、あるいは4℃で一晩静置
      • 分解しやすい場合は、適宜、低温にする
      • あるいは、NaClを最終濃度として、0.15Mから0.5Mの範囲で添加すると分解酵素が抑制できる
    表 Buffer preparation
    Buffer Name調製方法
    1M ImidazoleImidazoleを水に溶かして1Mとする
    6M 塩酸グアニジン塩酸グアニジンを水に溶かして1Mとする
    1M Tris-HCl, pH8Trisを1Mとなる水より少ない量で溶かして、1M HClでpH8とし、水を追加して1Mとする
    1M DTTDTTを水に溶かして1Mとする
    1M Cistamine (2HCl)シスタミン2塩酸塩を水に溶かして1Mとする

    バッファ組成の置換

    バッファ置換により還元剤を取り除き、構造を確定させます。Refoldingがうまくいっているかの最初の判定としては、可溶性を維持しているかにかかっています。ほとんどのケースでは、説明した方法でRefoldingは問題ないはずですが、場合によっては可溶性が維持できず、バッファ組成の置換において不溶化します。そうなると結構厄介ですね。検討時間がなければ、このまま行きましょう。

    Refoldingの評価

    • UF/DF工程でバッファ置換しても可溶性を維持している
    • RP-HPLC (逆相クロマト)分析で、シングルピークであること(ミス・フォールドしていると2峰性のピークを示すことが多いので、それで判定できる)

    UF/DFの手順

    • UF/DF (タンジェンシャル・フロー)によるバッファ置換
      • 元のボリュームに戻す(6倍濃縮)
      • この濃度(ボリューム)を維持しながらDiafiltrationを実施
        • 透析バッファの例示
          • 10mM Histidine-HCl pH7
          • 10mM Tris-HCl pH8
          • 33mM Sodium Acetate pH5
        • 塩は入れない方が不溶化しないことが多い
      • 1000倍以上の希釈を目指す(8 diavolumeで1000倍希釈の計算となる)

    タンパク質の精製

    タンパク質の精製を行います。決して、二度目のNiカラム精製はNGです。精製特製が同じクロマトの使用は意味がありません。

    1. 陰イオン交換体による精製
      1. タンパク質の等電点pIが中性以下なら、その等電点より高いpHでパススルーさせるだけでも、DNAやEndotoxinが取り除けます。
      2. 回収率が悪い場合は、NaClの添加濃度を検討します
    2. ハイドロキシアパタイトによる精製
      1. BIO-RADのCHTが多用される
      2. リン酸が含まれていないバッファなら、取り敢えず、タンパク質は吸着します
      3. K2HPO4濃度(1M K2HPO4-HCl, pH7)を1mM, 5mM 10mM, 20mM 50mM 100mMと順番に、ステップワイズで処理します。どこかで、タンパク質が出てきます.
      4. 十分な濃度のK2HPO4にはせず、最低必要濃度に設定します
      5. その後、回収率や不純物の分布を知るために、0.3M K2HPO4でpost eluation/回収します。
      6. 更に、6M GuHClを1カラムボリュム(CV)添加、5 CVの水を添加して押し出してpost elution/回収します(なべく低いGuHClとしたいので。SDS-PAGEサンプルバッファーでGuHClが析出しますが、お湯で加熱して可溶化したら即、SDS GEL WellにInjectionできます。Wellで析出しても分析を強行します。多少の泳動の乱れは気にしません)
      7. 更に、0.1N NaOHを1カラムボリュム(CV)添加、5 CVの水を添加して押し出してpost elution/回収します(酢酸でpH中生にする)

    編集履歴

    2020/07/06 Mr.はりきり
    2020/07/10 追加(Buffer preparation)
    2020/07/11 追記(Refoldingの結果の評価)
    2020/08/19 追記(「はじめに」を追加、ハイドロキシアパタイト;CHT操作の追加、SDS-PAGE分析の注意点)

    以上

  • [Bio-Edu] Plasmid – バイオロジクスには欠かせない遺伝子組換え技術、そして rAAVを作るまで! – AAV Vector配列の例 [2020/08/05]

    [Bio-Edu] Plasmid – バイオロジクスには欠かせない遺伝子組換え技術、そして rAAVを作るまで! – AAV Vector配列の例 [2020/08/05]

    はじめに

    rAAV: recombinant Adeno Associated Virus による遺伝子治療薬の開発には、遺伝子組換え技術が使われている為、この知識がなくてはならい。

    rAAVを作るには、これまでのタンパク質を作ることとは、何倍も複雑かつ多数の手間が掛かっている。

    遺伝子組換え技術からrAAVを作るまでの基礎知識を解説する。

    編集履歴
    2020/04/07 はりきり(Mr) まずは、遺伝子組換え技術
    2020/06/21 追記(rAAV作成に必要なベクター製品)
    2020/08/04 追記(必要なPlasmidとその機能)

    まずは、遺伝子組換え技術

    1) 遺伝子工学の技術

    遺伝子工学の技術 – 福岡大学 –

    http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/genetech.htm

    以下の用語は、同義である。

    • 遺伝子工学 (gene technology, genetic engineering)
    • 遺伝子操作 (gene manipulation)
    • 遺伝子組換え技術 (recombinant DNA technique)

    これら技術は、1970年代に発見された以下の要素で構成されている

    • 制限酵素 (遺伝子の特定部位を切断する酵素)
    • 逆転写酵素 (DNAからmRNAが作られるが、逆に、mRNAからDNA(cDNA)を作る(転写する)酵素
    • リガーゼ (別々のDNA断片にそれぞれ、認識特異配列を認識してDNAを繋ぐ酵素)

    ベクター

    有用と考えた遺伝子配列を細胞に組込む場合、先ず、ベクターという器にその遺伝子配列を載せなければならない。ベクターには、以下のものがある。

    • ファージ
    • ウイルス
    • プラスミド (Plasmid) : 多くのバクテリアの核外の遺伝子で、組換技術用にデザイン・改変された鋳型となるPlasmidが市販されている)
    • コスミド
    • 酵母人工染色体

    大腸菌とPlasmid

    • 大腸菌(E.coli)は、2μmのソーセージの形をしていて、至適な環境では25分で2倍に分裂増殖する。4μmに成長すると中央がくびれて2個になる。菌の中央に位置する染色体DNAは、4000個の遺伝子をコードしており2本鎖で環状である
    • 多くの大腸菌株には、染色体DNA以外に小さい環状の2本鎖DNAを持ち、これをPlasmidといいい、染色体DNAと同様に分裂増殖する際に複製される
    • Plasmidの種類として大きく分けてR (resistant)-Plasmid, F (fertility)-Plasmid (雄株が持つ)がある。
      • Rプラスミド: 薬剤耐性の遺伝子を含む
      • Fプラスミド: 雌株に接合してFプラスミドを伝達する機能
    • 雄の大腸菌は、雌の大腸菌の細胞内に自分のPlasmidを挿入する過程で自分の染色体DNAを伝達することがあり、遺伝子の交雑が起こる
    • 以上の現象などから、遺伝子組換え技術が考案され、大腸菌間の遺伝子組換えを人為的に行える技術が確立されできた。
      • 自然界にPlasmidが存在する
      • そのPlasmidの機能を利用するのが、遺伝子組換え技術

    制限酵素

    遺伝子組換え技術における「ハサミ」である。ThermoFisherには概説。制限酵素の一覧は、TaKaRaを参照

    • それぞれ種々の配列を認識して切断する多数の制限酵素が知られている
    • EcoRI (図1参照)は、GAATTCと相補的(CTTAAG)に結合しているDNAを選択的に、「のり代」のある形に切断する
      • G-AATTC (CTTAA-G) : ‘-‘で切断
    2) 大腸菌と組み換えDNA技術

    大腸菌と組み換えDNA技術

    京都 WEB マガジン 現代アートとサイエンス No.11

    https://plasmid.med.harvard.edu/PlasmidRepository/file/map/pAAV-MCS.pdf

    DNAリガーゼ (ligase)

    遺伝子組換え技術における「のり;糊」であるsource

    • Plasmid (環状DNA)の一部の領域に制限酵素により「のりしろ」付き状態にしたところに、目的遺伝子(同様に「のりしろ」状態)を結合させて、環状DNA(Plasmind)にする酵素
    • DNAの末端同士をリン酸ジエステル結合させる

    大腸菌にタンパク質を作らせる

    • 最も初期の遺伝子組換え技術の応用例として、糖尿病治療薬のインスリン、ウイルス抑制因子のインターフェロンの大腸菌による生産がある
    • 天然のPlasmidを鋳型として、適切な位置にインスリンやインターフェロンをコードした遺伝子配列を挿入し、デザインしたPlasmidを作る
      • まず、

    Competent Cell

    Competent Cellとは、Plasmidを細胞内に導入しやすいようにダメージ処理が施され安定保存された細胞のことsource、wikipedia

    • カルシウムイオン存在下で冷却処理(膜透過性の増大)
    • 凍結保存(-80℃以下)

    製品

    XL-Blue Competent Cells(Agilent)

    • XL2-Blue UltraCompetent Cells
    • XL1-Blue SuperCompetent Cells
    • XL1-Blue Electroporation-Competent Cells
    • XL1-Blue Competent Cells
    • XL-2-Blue Subcloning Grade Competent Cells

    特徴

    • プラスミドベクター/ラムダファージベクターの両ベクターの増幅に両できる菌株
    • 表現系: EndA(-)
    • Plasmid DNAの増幅/回収に適したCompetent Cell
    • Blue/White スクリーニング、ファージミドDNAのsingle-strandレスキューが可能
    • F7エピソームは、抗生物質耐性
    • XL1-Blue : エレクトロポレーション・コンピテント・セル(>=1e9)
      • 遺伝子型: recA1 endA1 gyrA96 thi-1 hsdR17 supE44 relA1 lac [F’proAB lacIqZ△M15 Tn10 (Tetr)]
    • XL2-Blue : ウルトラコンピテント・セル(>=5e9)
      • 遺伝子型: recA1 endA1 gyrA96 thi-1 hsdR17 supE44 relA1 lac [F’proAB lacIqZ△M15 Tn10 (Tetr) Amy Camr]a
    • カルタヘナ対応が必要

    rAAVを作る

    必要なPlasmidとその機能

    ベクタープラスミドとヘルパープラスミドには、共通する塩基配列があると、相同性組換えによって野生型のウイルスの出現の可能性が高まるため、共通配列が存在しないようにデザインする。

    • ベクタープラスミド (Vector Plasmid)
      • 目的は、目的遺伝子の挿入
      • 両端のITRのみを残し、目的遺伝子を挿入
    • Rep/Cap プラスミド (Rep/Cap Plasmid)
      • 目的は、DNA複製タンパク質とカプシドタンパク質をコードする遺伝子の挿入
    • ヘルパープラスミド (Helper Plasmid)
      • 目的は、AAVの増殖に必要なadenovirus由来遺伝子の挿入 (宿主のHEK293には、更に必要となるE1A, E1Bを持っているため、これらは必要ない)
      • E2A, VA, E4 or f6
    3) AAVを利用した遺伝子治療

    4. AAVを利用した遺伝子治療 – ウイルス 第57巻 第1号 pp.47-56, 2007 –

    http://jsv.umin.jp/journal/v57-1pdf/virus57-1_047-056.pdf

    Vector製品

    Vectorは、Plasmid構造になっています。「運び屋」の別名を特に付けている訳です。

    Agilent社のベクター製品

    recombinant AAVを生産させるための材料として、どのようなものが必要なのか理解することができる。

    (1)目的遺伝子ベクター、(2)rep/capベクター、および(3)Helperベクター、の3つのベクターを、感染性AAV粒子を作るために必要な補間遺伝子をコードするHEK293細胞に同時感染させ、感染性recombinant AAV (rAAV)を作成するための製品群。

    • pCMV-MCSベクター
      • 4.5kb
      • クローニング・ベクター
      • マルチクローニングサイトに目的遺伝子をクローニング → 「pAAV-CMV-MCSベクター」作成
        • 同時トランスフェクション
      • pAAV-MCS、pAAV-LacZへサブクローニグ可能
    • pAAV-LacZベクター
      • 7.3kb
      • クローニング・ベクター/コトロール・ベクター
      • LacZはレポーター
      • pAAV-MCSを作るため自立複製能を持たないAAVベクター
      • Not IでLacZカセットの切り出し、pCMV-MCSベクターから取り出した目的遺伝子カセットクローニングできる →「pAAV-MCSベクター」作成
        • 同時トランスフェクション
    • pAAV-RCベクター
      • 感染性があるrAAV2粒子を作るのに必要
      • rep/cap遺伝子 (DNA複製タンパク質/カブシドタンパク質)
      • 同時トランスフェクション
    • pHelperベクター
      • rAAV2発現用
      • AAV-293細胞との組み合わせで機能する
      • Adenovirus由来遺伝子(E2A, E4, VA RNAs)
      • AAVのlytic phaseの誘発
      • 同時トランスフェクション
    • AAV-293細胞
      • Adenovirus由来の遺伝子をコード(E1A, E1B)
      • トランスフェクション用細胞
    • AAV-HT1080細胞
      • ウイルスのタイター測定用細胞
    4) AAV Helper-Free System

    AAV Helper-Free System

    Agilent (ストラタジーン)

    https://www.chem-agilent.com/contents.php?id=300079

    AAV Vector

    Example

    図1. pAAV-MCS ベクター
    TypeNameDescriptionStart PositionEnd Position
    viral LTRITRAAV inverted terminal repeat00
    promoterCMVpCMV promoter for mammalian expression00
    gene fragmentbgexIIbeta-globin exon II fragment00
    gene fragmentbhIVSIIbgIVSII fragment00
    MCSMCSMCS (EcoRI, NotI, BamHI, SalI, XhoI, BlgII)00
    gene fragmentbgexIIIbgexIII fragment00
    viral LTRITRAAV inverted terminal repeat00
    ssDNA originF1 oriF1 origin for ssDNA production00
    selectable markerampRampicillin resistance gene00
    bacterial originColE1ColE1-type bacterial origin00
    https://plasmid.med.harvard.edu/PLASMID/GetVectorDetail.do?vectorid=221
    5) AAV – wikipedia

    AAV – wikipedia

    https://ja.wikipedia.org/wiki/アデノ随伴ウイルス
  • [Kw] 細菌にも性がある – 核外遺伝子: プラスミドを持っているものが雄

    [Kw] 細菌にも性がある – 核外遺伝子: プラスミドを持っているものが雄

    細菌の性

    細菌の細胞も動物の細胞も、細胞内に核があり、そこにはDNAがあります。このDNAを雌の菌に注入できるのが雄の細菌です。

    編集履歴
    2020/05/08 はりきり(Mr)

    雄には、Fプラスミドというリング状の遺伝子を持っています。このFプラスミドには、繊毛を作る遺伝子が含まれており、作られた繊毛が雌の菌を抱え込む装置となります。雌の細菌ょ抱え込んだあと、DNAを雌に注入します。

    まとめ

    大腸菌などの細菌にも、雌雄があることに驚きました。このFプラスミドの発見が、遺伝子組み換え技術に発展しました。

    Fプラスミドと最近の性 – 2015/01/07

    http://www.jarmam.gr.jp/situmon3/f-plasmid.html

    プラスミドは核外遺伝子であり、自己増殖し、細胞分裂の際に伝達される。プラスミドという名称は、195r2年、Lederbergによって提唱。1940年代には、細菌の性を決定するF因子が、1960年代には、薬剤耐性因子が、それぞれ精力的に研究された。1970年代中期からは、遺伝子操作ベクターとして盛んな研究が行われた。

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1962/41/9/41_9_652/_pdf

    プラスミドとは、細胞質性遺伝子であり、細菌の核にある染色体とは別ものとして存在する輪っか状のDNA分子
    – 遺伝子の組換え – 高木康敬, 有機合成化学 第36巻第11号 (1987)

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/36/11/36_11_982/_pdf/-char/ja
  • [Bio-Edu] インスリン: Insulinの製法 – ID9405

    [Bio-Edu] インスリン: Insulinの製法 – ID9405

    インスリン

    http://www.madehow.com/Volume-7/Insulin.html

    insulinは、preproinsulinから酵素による分解を受けてproinsulinとなり、更にある酵素により22個のアミノ酸(A鎖)と30個のアミノ酸(B鎖)に分解され、2本の鎖がSS結合してinsulin (5,807Da)となり完成する。

    • preproinsulin →
    • proinsulin →
    • insulin (2本鎖)

    生産

    遺伝子組換えによる製造において、製造メーカーにもよるが、以前は、proinsulinを遺伝子組み換えで製造し、別途製造した酵素によりproinsulinを切断してinsulinにする方法が使われていたようで、最近は、A鎖とB鎖を別々に組換え大腸菌で製造し、それぞれを混ぜてco-refoldingすることでfoldしたinsulinを得ているものもあるようです。この条件の詳細についても製造メーカーの技術の見せ所であり、当然、バリエーションが存在しているでしょう。このバリエーションが研究者・技術者の腕の見せ所ですね。

    その他、酵母による分泌系・培養→精製・活性化の手順も使い得るでしょうが、酵母の場合、酵母由来の糖鎖の付加の問題が厄介なので、シンプルに大腸菌で生産するのが戦略的には間違いないと考えられます。

    編集履歴

    2020/02/14 Mr.HARIKIRI
    2021/10/23,文言整備

  • [Bio-Edu] 遺伝子組換え大腸菌からタンパク質を精製する製造フロー概略 – ID6624 [2020/01/09]

    [Bio-Edu] 遺伝子組換え大腸菌からタンパク質を精製する製造フロー概略 – ID6624 [2020/01/09]

    製造方法の概要

    1. 大腸菌に目的蛋白質の遺伝子を導入
    2. 大腸菌の培養
    3. 刺激剤(IPTG)添加
    4. 低温培養
    5. 大腸菌の最大増殖(蛋白質は大腸菌内に蓄積)
    6. 蓄積した蛋白質は、立体構造が異常(Inclusion body)
    7. Inclusion bodyは不溶性
    8. 蛋白変性剤(塩酸グアニジン、尿素)により可溶化処理
    9. ランダムなSS結合を切断するために還元剤の添加
    10. 最大希釈により、添加剤の濃度を薄める
    11. 立体構造が再構成される不溶性から可溶性になる
    12. 緩衝液の置換処理
    13. 各種レジンによるクロマト精製
    14. 緩衝液の置換処理と濃度調整
    15. 原薬の分注

    以上

  • [Bio-Edu] 今昔 – 天然型から遺伝子組換え型への移行圧力 – ID6626 [2020/01/09]

    [Bio-Edu] 今昔 – 天然型から遺伝子組換え型への移行圧力 – ID6626 [2020/01/09]

    天然原材料のリスク

    血漿由来の蛋白製剤は、ヒト由来病原性の混入リスクがあるため、遺伝子組換え型への移行が望まれている。

    ある遺伝子組換えアルブミン(Albumin)の酵母による医薬品開発は、その最たる事例である。血漿分画製剤の中では、ウイルス感染のリスクは最も低い.

    これまでに血漿分画製剤のAlbuminでの感染症発症の事例は無いものの,国内における自給自足の面からは,献血のみでは量的に賄えない

    Albuminの分子量は,55kDaであり,それほど大きく無いこと、および、翻訳後の糖鎖修飾がない(アミノ酸配列に翻訳後修飾される領域が無い)ことから、世界では、2社で酵母による開発が行われた。

    酵母では、大腸菌とは異なり、菌体内に蓄積する事なく、細胞外に分泌するとともに、立体構造も天然と同じでいる。

    酵母を宿主細胞として,その他の組換え蛋白質に応用することは、実は限定的である。真菌類では、翻訳後修飾により、これら宿主由来の糖鎖を,産生した蛋白質に付加してしまう。異種の糖鎖は、ヒトにおいて抗原性を発揮し、免疫原性を生じてしまう。

  • [Bio-Edu] 高分子蛋白質の組換え宿主細胞として大腸菌、酵母に勝るCHO細胞 – ID6629

    [Bio-Edu] 高分子蛋白質の組換え宿主細胞として大腸菌、酵母に勝るCHO細胞 – ID6629

    大腸菌

    大腸菌では、翻訳後修飾における糖鎖付加機能がないものの、糖鎖の付加がされないタンパク質で、且つ比較的分子量が小さいバイオロジクス製品に採用されている。その理由は、不溶化(Inclusion Body)するほど高い生産性、低分子でのRefoldingは確立されているためである。

    ただし、抗体医薬などの高分子蛋白質においては、Re-folding技術は確立されておらず用途はこれらに限られる。

    • 原核生物に属する細菌 (染色体DNAが、裸で細胞内に存在する)
    • 倍化時間 : 20分
    • 生産性は、酵母より数倍高いと考えられる
    • 糖鎖付加しない
    • 産生タンパク質は、細胞内に留まる(Inclusion Body)
    • 糖タンパク質でない医薬品として、数十年の実績がある

    酵母・カビ

    酵母では、翻訳後修飾における糖鎖付加機能はヒトと同様にあるものの、付加される糖鎖は巨大な酵母型であり、ヒトにおいて免疫原性のリスクがある。ヒト型糖鎖付加の研究は地道になされているようであるが、道のりは長い。

    • 動物細胞と同じ真核生物である真菌(違いは、硬い細胞壁)
    • 倍化時間 : 2時間(酵母)
    • 高い生産性(Pichia Pastoris: >10g/L、カビ: >100g/L)
    • 酵母・カビ由来の巨大な糖鎖付加
    • 生産タンパク質は、菌外に分泌される
    • 医薬品として実績が殆どない

    酵母とシステムバイオロジー
    岡山屋大学

    https://tenure5.vbl.okayama-u.ac.jp/HM_blog/?p=97

    動物細胞

    CHO細胞では、哺乳細胞のであることから付加される動作はヒト型に類似していたものの、生産性が現在と比べて1/100 ~ 1/1000と低くコスト高であった。しかし、CHO細胞の改変と培養技術や培養用培地の改良された。

    • 倍化時間 : 24時間
    • ヒト型の糖鎖付加
    • 生産性は、抗体医薬で10g/Lの報告がある
    • 生産物は、細胞外に分泌される
    • 医薬品として数十年の実績がある

    細胞株

    商用化されている抗体医薬では、以下の細胞株が使われている。日本において70程度の抗体医薬品が薬価収載されているが、80%程度は、CHO細胞である。残りは、SP2/0とNS0であ。

  • [Bio-Edu] タンパク質(蛋白質)の精製 – 基礎編 – 不純物の定義、RefoldingからUF膜精製、タンパク質精製の定石まで – そしてタンパク質を知る – ID686 △[2021/06/03]

    [Bio-Edu] タンパク質(蛋白質)の精製 – 基礎編 – 不純物の定義、RefoldingからUF膜精製、タンパク質精製の定石まで – そしてタンパク質を知る – ID686 △[2021/06/03]

    蛋白質の精製 (基礎)

    蛋白質の精製 (purification of protein)とは、不純物と混在している目的蛋白質を一定の性質を利用して物理化学的に分別して、最終的に目的の蛋白質のみを取り出すことです。

    蛋白質の精製の具体例とて、水溶液の状態でタンパク質が溶けているとします。その溶液には、その目的タンパク質以外のタンパク質、脂質、糖質、原材料由来のDNAなどの不純物を含んでいるとします。

    そのタンパク質液の成分(塩濃度、pH、有機溶剤濃度)を調節することで、担体(resin)と呼ばれる固定物への脱着、沈殿精製による不純物との分離(上清/沈殿)、活性炭への不純物吸着など、を実施可能となり、タンパク質を精製することができます。

    しかし、用いる出発材料に含まれる目的タンパク質の含有率が精製効果に強く影響します。目的タンパク質の含有量が多いに越したことはありません。昔の出発材料では、目的タンパク質の含有量が、現在と比べて1桁、2桁低かったため、その精製は非常に大変でした。

    最近の抗体医薬では、培養液での生産性は、5g/Lなど、一昔前と比べて10倍~50倍以上となり、相対的に不純物との比較で含有率の改善がなされています。そのため、昔と比較して精製の難易度は非常に低くなりました。

    このように出発材料の品質が高まったことで、抗体医薬の精製は、プラットフォーム化が可能になりました。すなわち、単純な精製方法でも精製することができると言うことです。もしも、出発材料の品質が低い場合は、もっと複雑な精製工程を組まなければ精製できないことになります。

    • 出発材料に含まれる目的タンパク質は、主たる成分量でなければ、精製することは難しい
    • 相対的な不純物の混入量は、少ない程、精製はしやすくなる。

    不純物とは (Impurity)

    バイオ医薬品では、動物細胞や大腸菌など人ではない細胞に目的の蛋白質の遺伝子を導入して、これらを培養することで目的の蛋白質を分泌させるという培養工程がある。

    以下、不純物の発生源を示す。

    • 培養中に死んでしまう細胞の中味が培養液中に放出される
    • 培養に使用する培地に含む添加物
    • 目的蛋白質の分解物(類縁物質)

    菌や動物細胞は、それらが生きていくための蛋白質などを生産しつつ、目的の蛋白質も生産してくれる。目的の蛋白質でない物質を不純物と定義する。不純物の種類には、宿主細胞由来の蛋白質や脂質、DNAなどが含まれる。

    • 蛋白質 (細胞質由来)
    • 糖質 (細胞由来の糖、endotoxinも含む)
    • 脂質 (細胞膜)
    • 核酸 (細胞の核由来DNA、付随するヒストンなど)

    出発材料

    現在では、遺伝子組み換えによる生産が主流となっているが、遺伝子組換え技術が開発されるまでは、目的蛋白質を生産してくれる菌や動物細胞を偶然見つけたりして専用に選択していた。

    選択した細胞を培養し、ある程度の細胞濃度に増殖させた後、刺激剤を使ったりして目的の蛋白質を生産させていた。例えば、夢の薬と言われたインターフェロン (interferon)は、血液中の白血球を集めて培養し、刺激剤を添加するとInterferonを分泌した。株化細胞を使う場合は、Namalwa細胞ATCCというlymphoblastを使い、刺激剤は、仙台ウイルスを使用してInterferonを分泌されていた。もう、今から40年以上の昔の話である。

    • 組織由来株化細胞
    • ハイブリドーマ
    • 遺伝子組換え大腸菌
    • 遺伝子組換え動物細胞

    沈殿精製

    その頃の蛋白質精製には、いろんなバリエーションの沈殿化法が多用されていました。

    • アセトン沈殿 (結晶分画製剤)
      • 一部の血漿分画製剤の沈殿化に使用されていました
    • エタノール沈殿 (Cohnのエタノール分画が有名)
      • 血漿分画製剤の精製に使用されています。
      • 温度管理を厳密にしないとタンパク変性してしまいます
    • 硫安沈殿
      • 血清・血漿からIgGを粗精製に使用できます。ウサギに免疫し血清を取得してから、30%飽和濃度でIgGを沈殿化できます
    • PEG沈殿 (血漿分画製剤)
      • rAAV精製にも最近まで多用されていました。最近は、Thermo Fisher Scienceの抗AAV抗体レジンが、性能が良く代替的に使われるようになりました
    • グリシン塩酸沈殿(血漿分画製剤)
      • Fibrinogeの沈殿精製など、分子量の大きな凝固因子に使用されていました

    再構成(re-folding)

    大腸菌で産生させたタンパク質の場合、立体構造の再構成(re-folding)処理が殆どの場合必要です。一般的にタンパク質は、アミノ酸が数珠繋ぎになっている一本の糸のようなものです。その糸がどのように絡まるかが、そのタンパク質の機能が発揮される条件です。その正しい絡まり方を導くことが、Re-foldingと言います。正しい絡まり方ができなかった結末の場合、それは、mis-foldingと言います。mis-foldingしたタンパク質を一旦解いてfoldingし直すには、Re-foldingが必要です。

    詳しい手順は、以下のページをご参照ください。

    [Bio-FAQ] Refoldingとはなんですか? [2022/11/16]

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    [Bio-Edu] 組換え大腸菌で造らせたタンパク質のリフォールディングおよび、その後の精製手順 [2020/08/19]

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    [Bio-Edu] 遺伝子組換え大腸菌からタンパク質を精製する製造フロー概略 – ID6624 [2020/01/09]

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    吸着精製

    その他にも土や活性炭、イオン交換樹脂や多孔性のガラスビーズ(Controlled Pored Glass: CPG)などが蛋白質を吸着させる物質として使用されていた。これらの物質を吸着担体 (resin)と呼んだすりする。

    • 土(ミドライド)
    • 活性炭
    • イオン交換樹脂
    • 多孔性ガラスビーズ ( controlled pore glass; CPG )Merck

    これらのトラディショナルな技術は、現在の技術にシームレスに生かされている。バイオ医薬品のハーベストに使用されるディプスフィルター(Depth Filter)には、土や活性炭が膜の素材と共に練りこまれている製品がある。

    クロマト精製

    ゲル濾過精製

    もっぱら研究室では、分子量で分画するGel Filtration Chromatography (GPC)を汎用していた。3cmφ x 120cmのカラムにSephacryl S-200などのレジンを1日ががり充填、バッファーによる平衡化、夕方にサンプルをロードして翌日までオートサンプラーでフランジョンを分取していた。

    アフィニティクロマト

    特に純度を高めたい場合は、免疫用の抗原をなんとかして精製し、ウサギに免疫して抗体を取得して、抗体をクロマト担体にカップリングしてAffinity Columnを用意した。更に、今から40年以上も前でも、精製度の改善には定評があったのは、リン酸カルシウムの結晶であるハイドロキシアパタイトであった。

    • ゲル濾過(Gel Filtration Chromatograph; GFC), Size Exclusion Chromatography (SEC)などとも言う
    • 抗体カラム
    • ハイドロキシアパタイト (リン酸カルシウム)

    ハイドロキシアパタイトは、通常は針状に結晶化したものをカラムに充填して使っていた。その針状結晶はもろいため、使用している間に粉砕が進み、繰り返し使用は難しかった。しかし、オリンパスがCeramix化に成功(人工骨の研究)したことで、蛋白質の精製に用途を広げて現在に至っている。

    精製の戦略

    精製の戦略 ( Purification Strategy )を考えてみる。

    現在では、3種類の異なるモードのカラムクロマト精製で蛋白質の精製を行うのが主流である。

    基本的な戦略は、(1)「キャプチャリング」、(2)「陰イオン交換体」、(3)「陽イオン交換体」の3つの特性の異なる担体を使った手法を用いれば、殆どの蛋白質は精製が可能である。

    1. キャプチャリング
    2. 陰イオン交換体
    3. 陽イオン交換体

    抗体の場合のキャプチャリングであるAffinity精製は、Protein AやProtein Gなどを用いる。血液由来の凝固系因子のAffintiy精製では、Heparin担体が適用できることが多い。

    1. Protein Aカラム
    2. Heparinカラム
    3. Tag精製(His-tabを付加している場合)

    どうしてもAffinityが使えない場合は、出来るだけAffinity精製と同等な精製方法を探索しなければ、精製は困難になってくる。

    その探索に注力する必要も生じるが、吸着キャパシティから選択するならば、陽イオン/陰イオンを使った条件設定に注力することも必要である。

    タンパク質の精製では、同じモードの精製方法は重ねてはいけない。それぞれのモードで除去できる不純物の特性はある程度一定であるため、同じモードを重ねても効率が悪く回収率の低下を招くばかりである。

    • 同じ精製モードは重ねないこと
    • 精製モードは、まんべんなく組み合わせること
    • 最初の精製工程は、キャプチャリングであることを意識する
    • バッファー組成は、次の工程への繋がりがよいこと
    • UF/DFも多用しないこと

    更に、純度がどうしても上がらない場合、疎水モードやマルチモーダルの使用も考慮する。

    • 親和性担体 (Affinity resin)
    • 陰イオン交換体 (Anion Exchange Resin)
    • 陽イオン交換体 (Cation Exchange Resin)
    • 疎水担体 (Hydrophobic Resin)
      • Phenyl Resin: 低分子か疎水性が弱い蛋白質用
      • Butyl Resin: 疎水性が強すぎる蛋白質用
    • マルチモーダル (Multi Modal Resin)
      • ハイドロキシアパタイト (BIO-RAD): 陰陽の両方のモードをもち、少なくとも塩濃度、リン酸濃度、pHの3つのパラメータを駆使できる
      • capto Adhere (GE Healthcare): 陰イオンと疎水性のモード持つ
      • MMC (GE Healthcare)

    クロマト精製と組合わせ技

    沈殿化 (precipitation)

    概要

    沈殿による精製方法も使える状況は多い。例えば、沈殿化しやすい蛋白質の場合、それを活用するのが効率的な場合もある。人工的にデザインした、ある蛋白質の部分的なドメインを精製する場合、そのドメインは自然界には無い人工的な物質であることで、物理化学的性質が通常とは異なっていることが想定される。

    そのような物質であるケースでは、少しの食塩の添加により電気伝導度(conductivity)が上がっただけで、沈殿化する場合がある。これは、しめたもんだ。喜んで沈殿物を回収して、その純度を確認しよう。

    塩濃度を上げて沈殿化させる場合、pHは低い方が沈殿化しやすい。これも活用できる。

    • 塩の添加
      • NaClで沈殿化できればラッキー
      • その他、硫酸アンモニウム
    • pHを5以下に下げる
      • タンパク質溶液のpHを下げる場合、HClは希塩酸でも禁忌!。タンパク変性が強い
      • 酢酸(Acidic Acid)がマイルド。ただし、高濃度の酢酸は、逆に効果となる。

    物性を活用する

    沈殿法の原理について確認しておこう。厳密な定義はないものの、アミノ酸が数珠つなぎになったもので、数十個程度ではペプチド (Peptide)と呼ばれ、更に大きくなり分子量が5000 (5kDa)以上で蛋白質 (Protein)と呼ばれる。

    アミノ酸の種類により塩基性、酸性、疎水性の特性があり、これらの数珠つなぎとしての全体の特性が、ある蛋白質の総体的な物性を示すことになる。蛋白質は、絡まない紐のように存在しているのではなく、折れ曲がったり、巻いていたり、アミノ酸同士の物性に応じた相互的に引き合って入り反発しあっていたりと関係性が生じており、その状況は、存在している溶液中の塩濃度、pHや共存している溶剤の影響をうけて、その立体的な構造が形作られる。

    そのためアミノ酸の配列依存的に、その立体構造が確定するものの、周りの状況により影響をうけるため、一意的に決まるものではない。まさに、それこそがある蛋白質の物性ということである。セントラルドグマなどいいう言葉も聞いたことがあるが、僕は、そのような理論はよく知らない。

    沈殿法の種類

    • 塩析
      • 飽和劉安
      • NaCl
      • リン酸カリウム
      • グリシン塩析
    • 有機溶剤による沈殿
      • EtOH沈殿 : CORN Ethanol Fractionationが有名である。
      • アセトン沈殿
    • pHを下げる
      • pH6より低いpHに調整
      • 蛋白質によっては、中性pHで沈殿化するためpH8などのアルカリ性にする場合もある

     沈殿法(参考ページ)

    はじめに 無機塩の高濃度添加は、タンパク質を沈殿させる基本です。タンパク質溶液に対して塩を添加することで、タンパク質の疎水性という物理的性質の強度を溶液中で強めることができます。疎水性が高まると、そのタンパク質の成分であ…
    はじめに タンパク質の精製とは、どのような作業をするのでしょうか? 精製とは目的物と異なる物質を取り除き、目的物質の割合を上げること、すなわち純度を高めることです。 ここでは、イオン交換体を用いたタンパク質の精製の原理に…
    はじめに Ribonuclease Aのアセントン沈殿の条件検討につい、学生さんが精力的に実施されている文献の紹介をして、その後、昔から知られている一般的な沈殿法について紹介してします。 Ribonuclease Aの沈…
    文献情報のみ A simplified purification method for AAV variant by polyethylene glycol aqueous two-phase partitioning …

    膜で不純物を吸着除去

    Depth filterという製品群がある。当然、日本製では製品はないが、外国製のPall MilliporeやSartorius Stedim, 3M, GE Helthcareなどのメーカーを当たれば良い製品が見つけられる。

    Depth filterの用途は一般的に、清澄ろ過であるが、膜に土や活性炭を練りこんでいる製品もあり、清澄化とともに不純物の吸着除去も同時に実現できる。抗体医薬の場合、陰イオン交換体のDepth filterでろ過することで、DNAなど負荷電の不純物が吸着し、抗体はパススルーする。これらの製品は、昔、僕らが鉱物由来であるミドライトなど、粘土を使ってInterferon (IFN)を精製していた時の技術の焼き直しである。トラディショナルな技術は、今も息づいている。

    濃縮とバッファ交換 (Concentration and Diafiltration)

    40年より前では、ホローファイバーで目的の蛋白質などを濃縮していた。この技術は還元濃縮みかんジュースなどで、今でも使われている。40年前に当時のメンブランメーカーであったミリポア社が限外濾過膜で平膜を開発し、画期的な構造の濃縮装置を開発した。ホローファイバーを使用して濃縮した場合、1週間かかるところを、この装置を使うと2時間で濃縮が完了してしまうほどの破壊的な技術であつた。そう、この装置をベリコン (Pellicon)という。

    短時間で濃縮が可能となると、これまでの濃縮に加え、溶液の組成置換も実施できるようになり、濃縮とバッファ置換は同義となった (Concentration and Diafiltration)。

    限外濾過膜の濃縮側にEndotoxinを残し、目的タンパク質をろ過

    実は、限外濾過処理を応用して、目的蛋白質と発熱製物質であるEndotoxinを分離分別可能である。Endotoxinは、ミセルを作っているので、見かけの分子量は100kDa以上になっているため、目的タンパク質が100kDa以下の場合、ろ過液に目的蛋白質を回収することができる。

    限外ろ過膜 (ultrafilter)

    • 限外ろ過膜には、平膜,ホローファイバーがある
    • 処理目的は、膜が持つ性能である分画分子量以下の低分子画分をろ過しすることで、循環システムから排除する。高分子画分は、残留させることで、循環システムに残留させる
    • ホローファイバーは、製造方法から簡単であったことから従来から使用されていたが、1980年代に膜メーカーのmillipore者が平膜の限外濾過膜を開発してベリコン膜と呼ばれ普及した。
    • 平膜では膜面と並行に目的溶液を流しながら(クロスフロー: cross flow),膜面に圧力を掛けることで、膜の分画分子量より大きい分子量画分を膜面を滑らせるとともに、小さい分子量画分をろ過する.ウイルス除去処理用フィルターもmilliporeが開発している。
    • ホローファイバーでは,平膜と同様の原理を使えるが中空糸構造であることから,そのオリフィス径(液が通る断面積)は小さいため,濃縮による不溶性異物により目詰まりしてろ過効率が低下しやすいが、バイオ医薬品の製造では必須でいるウイルス除去ファイルターはボローファイバーが使用されている。その場合、デッドエンド法が使われ、ファイバーの先端から末端に向けて処理液を送液する際、末端をデッドエンドにして圧力をかけることでファイバーの外側に濾過液が滲み出る原理の方法である。細胞を含む培養液の成長ろ過にホローファイバーが使用される場合は、クロスフロー法が使用される。
    平膜とホローファイバーの比較
    比較follow fibercross flow
    流路絶対的に狭い。ファイバーを増やしても内径は狭いまま理論的には膜幅と膜と膜との間隔だけ面積に相当する広い流路
    循環流速早くできない早くできる
    処理速度遅い早い
    適用低い粘度の溶液処理。培養液の清澄ろ過低濃度から高濃度タンパク質のろ過・濃縮
    製品Planova 20N (ASAHI-KASEI)Pellicon (Pall-Millipore), (Sartorius), (Novasep)

    参考文献

    minimate TFF capsule

    タンパク質の性質を知ること

    PDB

    結晶解析により立体構造がわかっているタンパク質の場合、のプロテイン データペースに登録されています。

    立体構造から、そのタンパク質の物性イメージをつかみます。

    • FabとIL-6のComplex : PDB
    • Fab (Rontlizumab) – Interferon-a2 : PDB
    • Infliximab (Fab) : PDB
    • AAV 5 : PDB

    Helical Wheels

    アミノ酸が連なったものがペプチドであり、タンパク質です。その構造は、αヘリックス、ベータシート、ランダムシートに分けられます。そのアミノ酸の結合具合をαヘリックスの配置に模倣して、そのドメインがどのようなアミノ酸群、すなわち、疎水性や極性を持っているのかを、単位として理論的に簡略化する図が、Helical Wheelsです。

    どの当たるのアミノ酸配列が、

    Analysis of individual sequences

    http://www.bioinfo.org.cn/lectures/index-7.html

    Helical Wheel

    https://en.wikipedia.org/wiki/Helical_wheel

    解析ソフトの解説も参考になります。

    4.14.12 Helical Wheel – HULINKS –

    https://www.hulinks.co.jp/support/gi/tutorial/m041412.html

    まとめ

    この投稿では、タンパク質についてどのような精製があるかを解説した。実際に精製しようとすると、その具現化がまた骨の折れる作業となる。

    編集履歴

    2019/07/11 はりきり(Mr)
    2020/05/09 文言整備
    2020/06/13 追記(平膜とボローファイバーの比較)
    2020/07/07 Update
    2021/06/03,追記(Helical Wheel)