[BIOLOGICS] 「essentical QbD」の進め方からバイオ医薬品におけるプロセス開発(QTPP/ CQA/CPP/PPA/IPQA/PC/PPQ batchの位置づけも含めて),日本と米国との違い [2025/04/09]

世界で初めてのバイオ医薬

世界で初めてバイオ医薬品が承認されたのは1982年,ヒト・インスリンは組換え大腸菌を生産細胞として,培養プロセスで生産され精製プロセスで医薬品にされたものである.以後,酵母や動物細胞,昆虫細胞を用いた生産系も現れた.いずれの場合でも,安全性と有効性の観点から品質を保証できるかが重要なポイントであるが,メーカー側視点では「生産性」の高さも経済性の観点から重要なポイントである.

Essential QbD

「Essential QbD」は、ICHのガイドラインにおける正式な用語ではなく、実務や教育の現場、特に製薬業界において「QbDの本質的な要素や最低限必要な実装項目」を強調するために使われる概念的な表現である。

具体的には,フルスケールのQbDを全て実装するのはリソースが相当必要となるが,まずは,「Essential QbD」だけでも実施することで、申請・規制対応に十分な信頼性を確保することを目的としている.

PPQ(Process Performance Qualification)製造とPV(Process Validation)製造の違い、およびその日本と米国での取扱いの違いについて、以下にわかりやすくまとめます。


日米のPPQとPVの比較

PPQとPVは日米で「定義・タイミング・承認との関係」において違いがある.


基本用語の整理

用語意味米国での使われ方日本での使われ方
PV(Process Validation)プロセスが一貫して品質製品を生み出せることを示す全体活動ライフサイクル全体(Stage 1~3)バリデーション実施そのものを指す(狭義)
PPQ(Process Performance Qualification)商業製造規模での実製造による性能確認(PV Stage 2)FDAではPVの一部として位置づけ「日本では”PVの本体”」として扱われることが多い

米国(FDA)の考え方:PV = ライフサイクル

FDAの2011年 Process Validation ガイダンスでは、PVを以下の3ステージに分けられており製品ライフ策要るを示すものとなっている:

ステージ内容PPQとの関係
Stage 1プロセス設計QbD・CPP・CQAの設定
Stage 2PPQ製造(Process Qualification)実製造スケールでの検証:**「PPQバッチ」**が該当
Stage 3継続的プロセス検証(CPV)市販後のモニタリングと改善

➡ 米国ではPPQはPVの一部であり、「Stage 2のアクション」

特徴(米国):

  • PPQはBLA/NDA申請時に完了していなくてもよい
  • 承認前に**PPQ計画書(PPQ Protocol)**を提出し、評価される
  • 承認直前~承認後にPPQ実施 → 結果を審査官に報告
  • リアルタイムリリース」や暫定製造の扱いもあり

日本(PMDA)の考え方:PV = 承認前の確認中心

活動内容タイミング
PV(=PPQ)承認申請における最終的な製造プロセス検証原則として承認申請前に完了が必要
GMP適合性調査PVの実施結果や施設を確認する審査と並行、もしくは審査後に実施される
商業製造PVが完了してから開始原則:PPQ完了→承認→市販製造の順番

特徴(日本):

  • PV(PPQ)製造は承認申請時までに完了していることが強く望まれる
  • 申請前にPVバッチ3バッチ実施」という実務運用が一般的
  • 設備・プロセスの変更にはPMDAとの事前相談が重要

比較:PPQ製造・PVのタイミングと扱い

観点🇺🇸 米国(FDA)🇯🇵 日本(PMDA)
PVの定義ライフサイクル全体(Stage 1~3)狭義のバリデーション(実バッチ)
PPQの位置づけStage 2の一部、PV中の確認工程PVとほぼ同義(実施=バリデーション)
PPQ製造のタイミング原則、承認前でもよい(要計画提出)承認申請時点で完了が望ましい
PPQバッチ数通常2–3バッチ(統計的根拠に応じて調整)実務上は3バッチが多い(明文化なし)
承認との関係承認後に実施可能な場合も承認前に完了が原則(GMP適合性調査対象)
柔軟性高い(設計空間、パラメトリックリリースなど)やや保守的、事前相談が重要

まとめ

ポイント米国(FDA)日本(PMDA)
PPQ製造のタイミング承認前でも、承認後実施もあり得る原則承認申請前に完了が必要
PVの定義ライフサイクル全体狭義の製造検証に集中
運用柔軟性高い(計画+事後報告可)保守的(申請資料で完結が基本)

さらに考察:

日本の「従来型開発(実験中心)」と、「QbD(Quality by Design)アプローチ」には、開発の目的・手法・考え方**において本質的な違いがあります。

ここでは両者の違いを、比較表+具体例+背景の考察でわかりやすく整理します。


1. 全体的な比較(従来型 vs QbD)

観点従来型開発(実験中心)QbDアプローチ
開発の目的承認に必要なデータを集めることプロセスと製品を科学的に理解・制御すること
プロセスの捉え方「ブラックボックス」的に操作条件を決定原材料・工程パラメータの因果関係を理解・モデル化
変更管理条件変更は申請対応・再試験が必要になりやすい設計空間内の変更は申請不要(柔軟対応可能)
リスク評価経験則や既知知識に依存FMEAやQRM(ICH Q9)に基づく定量的評価
実験の使い方試行錯誤・経験ベースDoE(実験計画法)など体系的手法を使って因果関係を解明
管理戦略工程試験や最終試験で品質確保Control Strategy(CPP/IPQA/CPA)で予測的に品質を保証
文書の構造結果中心の記述(試験値)設計意図・根拠・因果関係の記述が中心(科学的ストーリー)

2. 具体例で比較:打錠製剤の溶出プロファイルを開発する場合

🔹 従来型開発の場合:

  • 溶出が期待通りにならないときに賦形剤や造粒条件を変更して実験を繰り返す
  • 経験的に「この条件なら溶出が速くなる」と判断
  • 試験に合格すればそれで完了
  • 変更は申請が必要になることが多い

🔹 QbDアプローチの場合:

  • 初めにQTPPとCQA(溶出)を設定
  • 賦形剤濃度・造粒時間・湿度などをDoEで多変量解析
  • どの因子が溶出に影響するかをモデル化(→CPP選定)
  • 結果を設計空間として申請資料に明示
  • 一部変更なら設計空間内として事前申請不要

3. プロセス開発の日本での傾向と背景

項目内容
実情日本では依然として「従来型開発」が多数(特に後発品・一般製剤)
導入の壁DoE・統計解析に慣れていない、QRMの文化が浅い、リソース・時間的制約
導入が進む分野バイオ医薬品、新薬、大手製薬企業のグローバルプロジェクトなどではQbD導入が増加中
PMDAの姿勢QbDは義務ではないが、「導入すれば科学的妥当性がより明確に説明できる」として評価対象に含む方針

4. プロセス開発における実務対応のポイント

開発フェーズ対応の違い(従来型 vs QbD)
CQAの設定経験+ガイドライン参照 vs. リスク評価+QTPPからの論理導出
プロセス条件決定実験→判断→再実験の繰り返し vs. DoEで効率的に条件最適化
製造変更結果を確認して対応 vs. 事前に設計空間内で柔軟対応可能
CTDの書き方試験結果中心の記述 vs. 理由や因果関係に基づく記述が増える

まとめ:プロセス開発における従来型とQbD開発の違い

目的アプローチメリットデメリット
従来型実験→結果→最適条件短期対応に強い再現性や変更対応に弱い
QbD科学的理解→設計→管理再現性、変更耐性、申請柔軟性導入に時間・教育が必要

以上,日米でQbDの位置づけ,プロセス開発におけるPPQ,PVの定義の違いがあることから,以下のEssential QbDに関する解説では,日本の場合に必ずしも当てはまらない記載があることを認識しながら理解を進めてほしい.


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