[BIOLOGICS] 「essentical QbD」の進め方からバイオ医薬品におけるプロセス開発(QTPP/ CQA/ CPP/P PA/ IPQA, PC/PPQ batch位置づけも含めて)その方法を学ぶ ID46273

世界で初めて

バイオ医薬品が承認されたのは1982年,人インスリンは大腸菌培養プロセスで生産されたものである.以後,酵母や動物細胞,昆虫細胞を用いた生産系も現れた.いずれの場合でも,安全性と有効性の観点から品質を保証できるかが重要なポイントである.メーカー側からは「生産性」の高さも同列に扱わなければならない経済性の観点である.

essential QbD

の手順は,以下の通りである.essential QbDは,バイオ医薬品におけるプロセス開発の最低限の活動である.

  1. 目的 : 原薬を製造するプロセスについて開発する
  2. 前提 : 製剤の特性は,原薬の特性と同一である
  3. 手順 : 目標をさだめてその前段階の必要要件を設定していくというボトムアップで進める
  4. (1) QTPPの設定 : 製剤(最終製品)の目標製品品質プロファイル(QTPP)
  5. (2) QTPPを保証できる適切な「限度内」,「範囲内」,「分布内」に,管理すべき特性を重要品質特性(CQA)としてリストする.具体的には規格試験項目に相当する.
    • 純度
    • 含有量
    • pH
    • conductivity
    • 規制要件(無菌皮下注射剤要件: 薬局方,ICHQ6)を含む
  6. (3) 管理範囲
    • 全プロセスに一貫して管理されるもの
    • 培養工程のみで管理されるもの
    • 原材料として管理されるもの
    • など
  7. (4) 製造プロセスのessential QbD
    • FDAが提唱するPVのアプローチに従う.
    • これは3つのステージで構成される.
    • (1) プロセス設計 ステージ
      • 原薬CQAの設定
      • 製造プロセスの設計
      • IPQA/PPA選定と重要度評価 (critical, key, non-key,後述)
      • Process Characterization (PC)試験
    • (2) プロセス検証 ステージ
      • 管理戦略の提案
      • プロセス検証
    • (3) 継続的プロセス検証のステージ
      • 承認申請時管理戦略の確定
      • 継続的プロセス検証
  1. *QTPP : quality target product profile
  2. *CQA : ciritical quality attribute

ステージの詳細

は,以下の3のステージに分けられる.

(1) プロセス設計

抗体医薬品のperformance attributeとは,工程毎に管理すべき管理特性のことである.

  • IPQA : in-process quality attribute
    • 原薬品質保証のために工程中で逐一,試験/管理する品質特性である.
    • 選定手順 : 「原薬CQA」の抽出 → 「IPQA」(工程毎の重要度評価により**)の選定 → IPQAを工程で管理する.
    • 重要度評価 :
    • ** 精製ステップがStep 1からStep 3あった時,Step 2での重合物の除去率がデータから高いとすると,Step 2がクリティカル(critical)であると評価し,Step 2をIPQAとして選定する.
    • ** また,データには反映されていなくても,原理的に重合体の生成/除去に関わりがあると考えられる場合は「key」,そうでない場合は「non-key」とする.
  • PPA : process performance atribute
    • 製造プロセスの恒常性保証の指標である.
    • ある工程が期待通りに終了したことを確認できる項目である.
    • 重要度評価 : 安全性に直接的に関与すると考えられる場合は「critical」,そうでなければ「key」とする(欧米規制当局ではこの3つの分類方法は否定的とある)
  1. *CQA : critical quality attribute
  2. *PA : performance attribute
  3. **PPA : process performance attribute
  4. **IPQA : in-process quality attribute
分類performance attribute
IPQA目的実質由来撫順物: 重合体,分解物,糖鎖非結合体
工程由来不純物 : 宿主由来DNA,異種タンパク質,バイオバーデン,エンドトキシン
精製工場製確認のための品質特性 : 糖鎖多様性
原薬での管理が必要な一般特性 : 政治用,活性
処方関連品質特性 : pH, 添加剤濃度
PPA生細胞数,生細胞密度,目的物質濃度,収率

PC

とは,process characterizationの略であり,開発したプロセスの頑健性を評価する試験である.

各工程には操作パラメータ(process parameter: PP)があり,このPPの組み合わせによりperformance attributeに影響を与える.PPの値とperformance attributeとの因果関係とバランスについて確認される.

確認する方法は,small-scaleおよびpilot-scaleでのPC試験が用いられる.その試験法としてOFATまたはdesign of experiments(DoE)がある.試験結果から重要度を評価する.これらの結果は「commercial-scale」の製造条件として評価するのであるから,そのsmall-scaleやpilot-scaleは適格性が検証されていなければならない.PC試験の結果が不良である場合,プロセスの再設計も検討する必要性もあり得る.

  1. *PP : process parameter
  2. *PA : performance attribute
  3. 重要度評価には,リスクベースアプローチを含む
  4. 重要度評価は品質管理戦略の構築に大きな影響を与えるためスキームが重要

QTPP → PP →

(2) プロセス検証

このステージでは,管理戦略の設計も含まれる.

前ステージまでにperformance attribute (PP)が設計されている.この基準がcommercial-scale製造において適合しているかを「process performance qualification (PPQ)」という製造バッチで検証する.不備が確認されれば,プロセスの再設計も検討する.

  1. 設計したPPを用いる
  2. PPQを実施する
  3. 結果を検証する

(3) 継続的プロセス検証

とは,管理戦略に従い市販後の製品についてPPQで検証された状態が維持されていることを継続的に確認することである.更に,このステージにより製造プロセスの理解を深化させ知識管理体験を充実させることができる.

より進んだQbD

  1. 管理戦略を製品ライフサイクルを通じて製品と製造プロセスに適合させるアプローチ
  2. 市販後に想定される変更も管理戦略に含まれる
  3. 適応拡大,製造需要増大,剤形追加,
  4. 生産性やコスト

まとめ

  1. QbDとは,科学者が科学的に妥当だと考えられる範囲を正当に認可させ,その範囲内で柔軟に変更管理ができるようにするための基本的概念である.
  2. essential QbDは,バイオ医薬品開発における最低限の活動である.
  3. 医薬品の製造は,原薬の製造と製剤の製造の大きく2つに分類できる.
  4. 原薬の組成や特性は,そのまま製剤に受け継がけるため,バイオ医薬品の製剤のほとんどの特性は原薬の設計と製造プロセスの結果であると言える.
  5. バイオ医薬品では品質特性の多くで安全性/有効性への影響を完全に評価することはできない
  6. そのため,既に得られている情報/知識を活用する
    • 期間は,製品のライフサイクル全体
    • 対象は,開発初期で行うプロセス設計,プロセス性能,製品の評価などの品質とその戦略
  7. QbDとessential QbD
  8. QbDのためのデータ取得 (enhanced approach)にはコストがかかる.
  9. QbDで承認された「Gazyva」では相当量のdata packageが必要だった.
  10. Design Space (DS)の設計
  11. traditional approach
    • プロセス管理戦略の採用は必要
    • リスクベースアプローチの採用は必要
  12. enhanced approach
    • traditional approachをベースとしなから
    • QbD, DS
  13. 製品ライフサイクルを見据えたQTPPの設定は,Phase 2での有効性確認ができていない段階では難しい.すなわち,現状では,Phase 2の結果がでてから,QTPPが設定される.
  14. 現実的なプロセス開発は,当初に仮のQTPPと仮のCQAに従い開発をすすめてPC試験前のタイミングで長期的製品戦略に基づくQTPPの再設定の実施となる.そのためにプロセス開発機能と製品戦略機能の連携が必須である.
  15. 医薬品開発におけるPhase 3 pivotal ロットの製造プロセスは,市販後のものと同じである必要がある.

ガイダンス

ICHや各国規制当局は,医薬品開発の基本的な考え方としてQbDがまとめられている.

FDA

: Biological Products QbD Pilot Program (2008)

CMC Biotech Working Group (EU)

: A-Mab (case study, 2009)

PMDA

: QbD評価 プロジェクト

: EMA-FDAのQbD同時並行評価パイロットプログラムの延長に対するPMDAのオブザーバー参加について

参考文献

バイオ医薬品におけるQuality by Design の実践 – 協和発酵キリン(株) 生産本部バイオ生産記述研究所 - Vol.35 No.5 2017 ファルマシア, 最前線 –

ファルマシア・53巻・5号・435頁 (jst.go.jp)

1st ObD Approval for Biologics: Gazyva Design Space

https://qbdworks.com/qbd-biologics-gazyva-design-space/

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編集履歴

2024/01/25 Mr.HARIKIRI