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  • [Bio-Edu] 抗体のFc Domainに強い結合親和性を持つStaphylococcus aureus protein A (通称 Protein A)について – ID3817 [2019/12/03]

    [Bio-Edu] 抗体のFc Domainに強い結合親和性を持つStaphylococcus aureus protein A (通称 Protein A)について – ID3817 [2019/12/03]

    Protein A

    抗体のFc領域に強い結合親和性を持つStaphylococcus aureus protein Aを一般にProtein Aと呼んでいる。ここでは、Pronte A (SpA)と称する。

    SpAは、IgMのFabに対しても結合親和性がある。

    Crystal structure of a Staphylococcus aureus protein A domain complexed with the Fab fragment of a human IgM antibody: Structural basis for recognition of B-cell receptors and superantigen activity

    2次構造

    E-D-A-B-C

    3次構造

    • Protein A 3D構造 :
      • 1DEE : SpA bound to human IgM Fab
    • Protein A (B-domain)
      • 1BDD : SpA B-domain (3 x Helix)
      • 5U4Y : SpA B-domain (3 x Helix) bound to IgG Fc
      • 1BDD : SpA B-domain (3 x Helix)
      • 4NPF : Two tandem B-domain
    • Protein A (C-domain)
      • 4WWI : bind to IgG Fc
  • [Bio-Edu] バイオロジクスのプロダクション培養において – 細胞内で起こる蛋白質の酸素を要する糖化(Glycosylation)と、還元酵素による分解に関する解説 – ID3160 [2021/01/20]

    [Bio-Edu] バイオロジクスのプロダクション培養において – 細胞内で起こる蛋白質の酸素を要する糖化(Glycosylation)と、還元酵素による分解に関する解説 – ID3160 [2021/01/20]

    はじめに

    バイオロジクス(バイオ医薬品)の製造には、一般的に動物細胞が宿主として用いられている。特にCHO細胞(チャイニーズハムスターの卵胞細胞)が使用されることが多い。本培養過程で、細胞内でコードした組換え遺伝子により、目的のタンパク質が生産される。ここでは、一般的な抗体医薬を前提に考える。

    培養条件の違いにより、細胞の代謝は微妙に異なることでも、mRNAから翻訳されたタンパク質の翻訳後修飾としての糖化は異なってくる。バイオシミラー開発では腕の見せ所となるし、商用生産では、いかに同等の糖鎖修飾となるロバストな培養条件の設定が必要である。

    また、培養過程で細胞の生存率の低下は、産生された抗体の分解を誘発し、収量低下の原因となることも考慮する必要がある。

    以上、いずれも細胞内の酵素に起因している。

    グルコシル化

    Creative Biolabs社のHigh-Affi™テクノロジーを使用したグリコシル化特異的抗体産生サービスのサイトから、蛋白質に対する生体内での糖化についての説明をまとめた。サイトのページの背景には、美しい抗体(Antibody)の立体構造図があるので、そちらもどうぞ見てください。

    その前に,クルコシル化について一般情報を以下に確認します.

    • グルコシル化とは,炭水化物が,別の分子のヒドロキシル基またはその他の官能基に結合する反応.特に,グリカンをタンパク質または有機分子に結合させる酵素的プロセスを指す
    • 非酵素的の場合もある
    • タンパク質の翻訳後修飾が基本であるが,同時翻訳もある
    • グリカンは,細胞膜,分泌タンパク質において構造的・機能的な役割を果たす
    • タンパク質は,粗面小胞体(ER)で合成され酵素により部位特異的にグリコシル化を受け,タンパク質のリフォールディングにおける品質管理チェックポイントを仲介しています
    • 一部のタンパク質では,グリコシル化されていないと正しく折りたたまれません.例えば,特定のアスパラギン残基のアミド窒素で結合したオリゴ糖を含まないと安定化しません
    • 溶解度が高いグリカンによる物理安定化効果の可能性があります
    • グリコシル化によりレクチンを介した細胞間接着に関与します
    • ウイルスのエンベロープにおいては,免疫系から逃れることに使われます.例えばヒト免疫不全ウイルスのエンベロープの高密度グリカンシールドがそれです.

    Creative Biolabs社のHigh-Affi™テクノロジーを使用したグリ

    https://www.creative-biolabs.com/glycosylation-specific-antibody-production-services.html?gclid=cjwkcaia1uhsbrbueiwakbctzuoaxgfot08zradpljk9vs9yuqyslqv3w8a7iqg6_x-sbb6mkektlbocvdmqavd_bwe

    グリコシル化は、酸素を要しない糖化とは違い、酵素による部位特異的な反応であり、(1)酵素グリコシルトランスフェラーゼと(2)グリコシダーゼがこの反応を生じさせる酵素です。

    5つのカテゴリ

    修飾されたアミノ酸の種類と糖鎖の特性に基づいて、グリコシル化は次の5つのカテゴリに分類できます。

    いずれの反応も細胞内の小胞体(Endoplasmic Riticulum: ER)とゴルジ体(Golgi apparatus or Golgi body: Golgi)を順次、蛋白質が移動しながら糖付加反応が進む。

    1) N-linked glycosylation

    (N-結合型グリコシル化; N-glycosyl)
    タンパク質のアスパラギン(Asn)またはアルギニン(Arg)のアミド窒素原子へのオリゴ糖分子の付加です。

    • N-glycosylでは、AsnとArgに糖が以下のように付加されます。リン酸ドリコールという脂質の関与が必要(wikipedia)
      • Asnでは、以下の4種の糖が付加
        • GlcNAc
        • GalNAc
        • Glc
        • Rha
      • Argでは、Glcが付加
        • Glc

    糖鎖の略号

    動物と酵母では、以下の10種類

    • グルコース(Glc)
    • ガラクトース(Gal)
    • マンノース(Man)
    • N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)
    • N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)
    • フコース(Fuc)
    • シアル酸(Sia、NeuAc)
    • キシロース(Xyl)
    • グルクロン酸(GlcA)
    • イズロン酸(IdoA)

    植物の特有の糖鎖

    • ラムノース(Rha)
    • アラビノース(Ara)
    • ガラクツロン酸(GalA)
    • アピオース(Api)など

    糖鎖って? – 糖鎖医工学研究センター

    https://unit.aist.go.jp/brd/jp/GTRC/ci/rcmg/jp/what%27s_tousa/what%27s_tousa1.html

    下図には、IgG1のFc領域に共通してあるAsnに対して付加される糖鎖の模式図を示します。

    Influence of N-glycosylation on effector functions and thermal stability of glycoengineered IgG1 monoclonal antibody with homogeneous glycoforms, 2019

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6380427/

    2) O-linked glycosylation

    (O-結合型グリコシル化; O-glycosyl)
    単糖またはオリゴ糖分子がタンパク質のアミノ酸残基の酸素原子に結合。 この反応は、真核生物のゴルジ体で起こり、古細菌や細菌でも見られる。 これは、対応するグリコシルトランスフェラーゼによって転移されたセリン(Ser)またはスレオニン(Thr)残基へのN-アセチルガラクトサミン、フコース、グルコースまたはマンノースの付加から始まります。次に、炭水化物鎖が伸び、続いて他の炭水化物(ガラクトースやシアル酸など)が続きます。

    • O-glycosylでは、以下のように付加されます。
      • Hypに付加される糖鎖
        • GlcNAc
        • Gal
        • Ara
      • Serに付加される糖鎖
        • Glc
        • FucNAc
        • Xyl
        • Gal
      • Thrに付加される糖鎖
        • Man
        • GlcNAc
        • Glc
        • Gal
      • Tyrに付加される糖鎖
        • Gal
        • Glc
      • Hylに付加される糖鎖
        • Gal
      • Ser/Thrに付加される糖鎖
        • GlcNAc
        • GalNAc
        • Gal
        • Man
        • Fuc
        • Pse
        • DIAcTridH

    3) Phospho-serine glycosylation

    (ホスホセリンのグリコシル化; P-glycosyl)
    ホスホセリンのグリコシル化は、ホスホジエステル結合を介した糖のタンパク質への付加。 GlcNAc、キシロース、マンノース、フコースがこの種のグリコシル化に関与している。

    • Serに付加される糖鎖
      • GlcNAc-1-P
      • Man-1-P
      • Fuc-1-P
      • Xyl-1-P

    4) C-Mannosylation

    (C-マンノシル化; C-glycosl)
    C-マンノシル化とは、C-C結合を介してシーケンスW-X-X-W(Wはトリプトファンを示し、Xは任意のアミノ酸)の最初のトリプトファン残基C-2にマンノース糖を付加することを指します。 これまでのところ、この結合は、RNase2、トロンボスポンジン、インターロイキン-12、プロペルジンなどの哺乳類タンパク質で発見されている。

    • Trpに付加される糖鎖
      • Man

    5) Glypiation(GPI)

    グリピエーション(GPI)
    グリピエーション(GPI)は、タンパク質がグリカン鎖を介して脂質アンカーに結合する特殊な形態のグリコシル化です。 この種のグリコシル化は、トリパノソームやThy-1抗原などの重要な細胞表面糖タンパク質に広く分布している。

    • C-term
      • EthN-6–P-Man

    ERとGolgiによる修飾過程

    ERとGolriの詳細な図は、以下の文献を参照

    Role of Chinese hamster ovary central carbon metabolism in controlling the quality of secreted biotherapeutic proteins

    細胞代謝によるタンパク質の還元分解の原理

    GlucoseからPyruvateまでの代謝では、NADPHが合成されるが、その反応には、Thioredoxin Systemが関わっておいる。CHO細胞の培養によるバイオロジクスの本培養において、細胞生存率が著しく低下した場合、以下の原因により産生タンパク質の還元が生じる結果、SS結合が切断されて低分子化が見られることがある。

    1. 細胞死による細胞質の各種酵素がの培養液中に漏出
    2. 漏出した酵素には、Thioredoxinが存在
    3. Thioredoxinにより、抗体の分子内SS結合が切断
    4. その結果、HHL, HH, HL, H, L (H: Heavy chain, L: Light chain)で表される分子が生じる

    GlucoseからPyruvateまでの代謝

    GlucoseからPyruvateまでの代謝系には、(1) ED, (2) EMP および (3) PPPの3つが存在する。

    NADPH-generating systems in bacteria and archaea 2015)

    Glucose→Glucose-6-P→Fructose-6P→Glyceraldehyde-3-P→Pyruvateまでの反応には、3つのパスウェイがある。グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)および6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6PGDH)によるNADPHの生成。 実線と破線は、それぞれ単一反応と集中反応を示します。

    経路の略語

    ED、Entner–Doudoroff経路(緑色)

    EMP、Embden–Meyerhof–Parnas経路(青色)

    PPP、ペントースリン酸経路(酸化相は赤、非酸化相は黄色)。

    GAPデヒドロゲナーゼによるNADPHの生成。 実線の矢印と破線の矢印は、それぞれ単一の酵素反応と集中定数の酵素反応を表しています。 代謝物(通常のテキスト)および酵素(太字)の略語:GAP、グリセルアルデヒド3-リン酸; 1,3-BPG、1,3-ビスホスホグリセリン酸; 3-PG、3-ホスホグリセリン酸; GAPOR、GAP:フェレドキシンオキシドレダクターゼ; GAPDH、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ; GAPN、非リン酸化GAPDH; PGK、ホスホグリセリン酸キナーゼ。

    https://europepmc.org/article/pmc/pmc4518329

    Pentose Phosphate Pathway

    Pentose Phosphate Pathway (PPP) には、Thioredoxinも関わっている。PPPは、細胞がGlucoseをエネルギー原として使っている代謝系は3つある。PPPは、その内の1つである。

    Thioredoxin System

    Physiological functions of thioredoxin and thioredoxin reductase (2001)

    チオレドキシン系のオキシドレダクターゼ活性のスキーム。 チオレドキシンレダクターゼ(TrxR)とNADPHによる、酸化型チオレドキシン(Trx-S2)の活性部位ジスルフィドの還元型チオレドキシン(Trx-(SH)2)のジチオールへの還元を模式的に示す。 Trx-(SH)2は、その一般的なオキシドレダクターゼ活性によってタンパク質のジスルフィドを還元し、Trx-S2を生成する。 チオレドキシンレダクターゼは、E.coliチオレドキシンレダクターゼによって還元されるNrdHレドキシンなどの相同チオレドキシン以外の基質、または哺乳類のチオレドキシンレダクターゼによって直接還元されるチオレドキシンに加えて多くの基質を持っている可能性がある。

    Thioredoxin System : thioredoxin: チオレドキシン、thioredoxin reductase: チオレドキシンレダクターゼおよびNADPHの反応系を指す。チオレドキシンシステムは、古細菌から人に至るまで存在する。ジチオール/ジスルフィド活性部位(CGPC)を持つチオレドキシンは、主要な細胞タンパク質ジスルフィドレダクターゼであり、リボヌクレオチドレダクターゼ、チオレドキシンペルオキシダーゼ(ペルオキシレドキシン)、およびメチオニンスルホキシドレダクターゼなどの酵素の電子供与体としても機能する気は年。 Glutaredoxins: グルタレドキシンは、チオレドキシンの機能と重複し、グルタチオンレダクターゼを介してNADPHからの電子を使用して、グルタチオンジスルフィド酸化還元を触媒します。 チオレドキシンアイソフォームはほとんどの生物に存在し、ミトコンドリアには別個のチオレドキシンシステムがあります。 植物には葉緑体チオレドキシンがあり、これはフェレドキシン-チオレドキシンレダクターゼを介して光によって光合成酵素を調節します。 チオレドキシンは、タンパク質機能の酸化還元調節とチオール酸化還元制御を介したシグナル伝達に重要です。 NF-κBやRef-1依存性AP1を含む転写因子の数は増え続けており、DNA結合のためにチオレドキシンの還元が必要です。 細胞質ゾルの哺乳類チオレドキシンは、胎児に致死的であり、酸化ストレスに対する防御、成長およびアポトーシスの制御において多くの機能を持っていますが、分泌され、コサイトカインおよびケモカイン活性も持っています。 チオレドキシンレダクターゼは、細菌、真菌、植物に含まれる特定の二量体70 kDaフラボタンパク質であり、酸化還元活性部位がジスルフィド/ジチオールです。 対照的に、高等真核生物のチオレドキシンレダクターゼはより大きく(112–130 kDa)、幅広い基質特異性を持つセレン依存性二量体フラボタンパク質であり、ヒドロペルオキシド、ビタミンC、亜セレン酸塩などの非二硫化物基質も還元します。 すべての哺乳類チオレドキシンレダクターゼアイソザイムはグルタチオンレダクターゼと相同であり、システイン-セレノシステイン配列がレドックス活性セレネニルスルフィド/セレノールチオール活性部位を形成する保存されたC末端伸長を含み、ゴールドチオグルコース(オーロチオグルコース)および他の臨床的に使用される薬剤によって阻害されます。


    https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1046/j.1432-1327.2000.01701.x

    Glycosylation

    https://en.m.wikipedia.org/wiki/Glycosylatiion

    編集履歴

    2020/10/31 追記:還元酵素によるタンパク質分解について
    2021/01/20 追記:wikepediaより,一般情報をまとめた
  • [Bio-Edu] 抗体医薬の脱アミド化を抑制するためのアミノ酸添加剤に関する特許出願 (アクテムラ)- 高濃度抗体含有溶液製剤, 2012 – ID3138 [2021/06/06]

    [Bio-Edu] 抗体医薬の脱アミド化を抑制するためのアミノ酸添加剤に関する特許出願 (アクテムラ)- 高濃度抗体含有溶液製剤, 2012 – ID3138 [2021/06/06]

    脱アミド化を予防する製剤組成

    抗IL-6受容体抗体に対して、50mM以上のアルギニン、メチオニンを含む溶液、更にヒスチジンを含む溶液により二量体化、脱アミド化を抑制する。

    • アルギニン (arginine)
    • メチオニン (methionine)
    • ヒスチジン (histidine)

    高濃度抗体含有溶液製剤に関する特許出願

    クレーム1(請求項1)が最も重要なので、以下に解説する。

    アルギニン及びメチオニンを含有するとあるので、両方の含有が特許範囲である。さらに、クレーム2では、ついてきにヒスチジンを含有することとありので、アルギニン、メチオニン、ヒスチジンを含有することが特許範囲である。

    【特許請求の範囲】【請求項1】

     アルギニン及びメチオニンを含有することを特徴とする、安定な抗体含有溶液製剤。
    【請求項2】

     さらにヒスチジン緩衝剤を含む、請求項1に記載の溶液製剤。

    タイトル:特許公報(B2)_高濃度抗体含有溶液製剤
    出願番号:2009548102
    年次:2012
    IPC分類:A61K 39/395,A61K 9/08,A61K 47/18,A61P 43/00

    特許広報(B2)となっていることから、特許が権利かされている。優先権主張日は、2007/12/27となっている。ただし、その他の特許にあるように、5年の特許期間の延長がアクテムラに対して認められている(H29から5年の2022年まで)。

    日本の特許検索サイト – J-Platpat

    https://www.j-platpat.inpit.go.jp

    脱アミド化は、アスパラギンがあると起こりやすいため、抗体の結合ドメインであるCDRにアスパラギンがあると、活性低下のリスクが高まる。ある発明では、アスパラギンをリジンに置き換える方法(抗体安定化方法, 2006)も開発されている。

    編集履歴

    2019/11/12, Mr. Harikir
    2021/06/06, 内容整備(アクテムラが対象であること)
  • [Bio-Lab] マニュアル式のラボスケール・カラムクロマトで蛋白質精製の条件を検討する – ID3106 [工事中]

    [Bio-Lab] マニュアル式のラボスケール・カラムクロマトで蛋白質精製の条件を検討する – ID3106 [工事中]

    はじめに

    タンパク質精製の戦略

    高価な装置が無くても始められる蛋白質の精製について解説する。

    予算が少ない大学の研究室や高価な装置を整備できないベンチャーでの蛋白質精製について、タンパク質精製に関して初期教育、原理を理解しながらの目的蛋白質の精製サンプルの取得が可能である。

    取り敢えず、1mLカラムでのスモールスケールによるサンプル調製から、400mLカラム程度のスケールアップも可能です。

    初期のサンプル調製においては、クロマト装置は重厚長大です。使用前と後のシステムの洗浄など、結構面倒です。こんな初期に使うものではありません。

    AKTAの出番は、その先に待っています。そもそもタンパク質精製は、集中して条件設定を実施し短期間で片付けるのです。

    編集履歴
    2019/11/10 はりきり(Mr)
    2020/06/19 追加 (未完)

    準備

    情報収集

    精製しようとしているタンパク質はなんですか? 精製タグは付いていますか? Refoldingは必要ないですか? 分子量を把握していますか? 等電点は? 疎水性?

    タンパク質の情報

    まずは、敵を知ることからです。情報を収集しましょう

    • アミノ酸配列 : 以下の情報を知るために必要です
      • 分子量
      • 等電点
      • 疎水性
    • 精製タグ : 精製タグは、最大でもHis-tag程度にしておきましょう。その他精製タグは、物性を変化させたり、活性にも影響します
      • His
      • GST
      • etc

    出発材料

    • 微生物
      • E.coli
      • 酵母
    • 動物細胞
      • CHO細胞
      • HEK細胞

    生産

    • 微生物培養 → Inclusion Body(この解説では、これを前提)
    • 動物細胞培養 → 培養上清

    検討準備

    目的蛋白質の測定法を考える (SDS-PAGE, ELISA, RPHA, 逆相HPLC、アフィニティカラム)

    目的蛋白質についてRefoldingが必要か検討する。ここでは、Refoldingについては記載していない。

    プレパックカラムは使わず、エンプティカラムにバルクのレジンを自己充填したカラムを使用する

    クロマト装置は、基本的に必要ではなく、ピペット操作かペリスタリックポンプを使う

    カラムサイズは、0.5mLから100mLを想定する。取得する蛋白質は、数mgから1g程度。

    小さいカラムサイズでは、自然落下でクロマトを行う。

    大きいカラムサイズではペリスタリックポンプを使用する

    装置

    SDS-PAGE装置
    UVメーター(A280, A260なとを測定)
    ピペット、チップ
    ペリスタリックポンプ
    • シリコンチュープ
    • シリコングリス
    pHメータ
    試験管
    • マルエムチューブSS14
    • 50mM遠心管

    手順

    1. 手順 – 装置、カラムの充填及びカラムの取り回し(マニュアル)

    GE HealthcareのEmpty Columnにレジンを充填(0.5mL or 1mL)

    カラムクロマトは、自然落下による(線速は大きくなるが、レジンの最大キャパシティより1/3程度低いアプライ量で行うため、クロマト自体に問題は少ないが、常に考慮する必要がある点である)。

    フラクション回収は、6カラムボリューム(CV)

    6CV分のバッファを調整しておき、順次カラムにアプライしてカラムからでる液をチューブで回収する

    2. 手順 – 吸着条件の決定

    各種バッファの準備

    水洗いしたバルクのレジンを使って0.5mLカラムの準備 30%から50%程度のスラリでカラム充填する

    カラムの洗浄と平衡化

    血漿や培養液の前処理してアプライサンプルを準備する : 水と酸及びアルカリにより電気伝導度とpHの調整

    アプライサンプルのロードとパスした未吸着画分の回収及び目的蛋白質の測定 : 身吸着画分の量が多い場合は、未吸着画分に更に水と酸及びアルカリを添加して吸着しやすく調整し、その未吸着画分をそのまま再アプライする。満足する未吸着画分量から、水と酸及びアルカリでの調整量を最終決定する。

    3. 手順 – 洗浄及び溶出条件の決定(1)

    アプライpHと同じpHで、塩濃度を確認する : ベースバッファを作成し、3M NaClで段階的になるよう塩濃度の異なるバッファを作成し、順次カラムにアプライしフラクションを回収する。蛋白質量を測定し、目的の蛋白質が洗浄画分に溶出されない条件を洗浄画分に決定、溶出が完了する条件を溶出条件に決定する。

    4. 手順 – 強固に結合した目的物と不純物の存在について心証をえるための操作

    6M 塩酸グアニジン(GuHCl)を0.5CVアプライ、水を5.5CVアプライし全てを回収する。この画分は、アプライサンプル、洗浄画分、溶出画分と一緒にSDS-PAGE分析を行う。目的蛋白質の染色バンドと同位置に対して、6M GuHCl画分にどれくらいの割合が含まれているか、不純物はどれくらいの割合が含まれているか確認する。

    6M GuHCl画分中に容認できない量の目的蛋白質が含まれていた場合、上述の手順で6M GuHClの手前までの手順を再度実施する。その後、以下の手順に従い最適な溶出pHを決定する。

    5. 手順 – 溶出条件の決定(2)

    pHを上げるか下げるか方針を決定する。カラム内の塩濃度を下げるために水6CV添加する。溶出条件の決定(1)で実施したようにバッファを作成するが、今度は、異なるpHでNaCl濃度を決定していく。最後に6M GuHCl画分を回収し、前回と同様にSDS-PAGEを行い溶出効果の違いを確認する。洗浄する場合のpH及び溶出する場合のpHを、この検討から決定することができる。もしかすると洗浄のpHは溶出のpHと異なることもある。

    今後、各手順の詳細や根拠は随時アップデートする予定、2019/11/10 by はりきり(Mr)

    高価な装置が無くても始められる蛋白質の精製

    マニュアル操作によるカラムクロマト条件の決定

    蛋白質の精製を行おうと思う時は、その必要性に迫られてのことだと思うので、原材料は準備されているとの前提で、以下話を進めます。装置の洗浄やその他準備が必要ないため小回りが効き短時間で条件設定し精製品を取得できる

    大学や高価な装置を整備できないベンチャーでの蛋白質精製についての初期教育はもとより目的蛋白質の精製品の取得に役立つ。例えば、ツール蛋白質の取得には有効である。

    準備

    目的蛋白質の測定法を考える (SDS-PAGE, ELISA, RPHA, 逆相HPLC、アフィニティカラム)

    目的蛋白質についてRefoldingが必要か検討する。ここでは、Refoldingについては記載していない。

    プレパックカラムは使わず、エンプティカラムにバルクのレジンを自己充填したカラムを使用する

    クロマト装置は、基本的に必要ではなく、ピペット操作かペリスタリックポンプを使う

    カラムサイズとして0.5mLから100mLは対応可能(数mgから1g程度まで取得可能。小さいカラムサイズでは、自然落下でクロマトを行う。大きいカラムサイズではペリスタリックポンプを使用する

    手順

    1. 手順 – 装置、カラムの充填及びカラムの取り回し(マニュアル)

    SDS-PAGE装置

    UVメーター(A280, A260なとを測定)

    ピペット、チップ

    ペリスタリックポンプ、シリコンチュープ、シリコングリス

    HORIBA ハンディpHメータ及び伝道度メータ

    マルエムチューブSS14, 50mM遠心管

    GE HealthcareのEmpty Columnにレジンを充填(0.5mL or 1mL)

    カラムクロマトは、自然落下による(線速は大きくなるが、レジンの最大キャパシティより1/3程度低いアプライ量で行うため、クロマト自体に問題は少ないが、常に考慮する必要がある点である)。

    フラクション回収は、6カラムボリューム(CV)

    6CV分のバッファを調整しておき、順次カラムにアプライしてカラムからでる液をチューブで回収する

    2. 手順 – 吸着条件の決定

    各種バッファの準備

    水洗いしたバルクのレジンを使って0.5mLカラムの準備 30%から50%程度のスラリでカラム充填する

    カラムの洗浄と平衡化

    血漿や培養液の前処理してアプライサンプルを準備する : 水と酸及びアルカリにより電気伝導度とpHの調整

    アプライサンプルのロードとパスした未吸着画分の回収及び目的蛋白質の測定 : 身吸着画分の量が多い場合は、未吸着画分に更に水と酸及びアルカリを添加して吸着しやすく調整し、その未吸着画分をそのまま再アプライする。満足する未吸着画分量から、水と酸及びアルカリでの調整量を最終決定する。

    3. 手順 – 洗浄及び溶出条件の決定(1)

    アプライpHと同じpHで、塩濃度を確認する : ベースバッファを作成し、3M NaClで段階的になるよう塩濃度の異なるバッファを作成し、順次カラムにアプライしフラクションを回収する。蛋白質量を測定し、目的の蛋白質が洗浄画分に溶出されない条件を洗浄画分に決定、溶出が完了する条件を溶出条件に決定する。

    4. 手順 – 強固に結合した目的物と不純物の存在について心証をえるための操作

    6M 塩酸グアニジン(GuHCl)を0.5CVアプライ、水を5.5CVアプライし全てを回収する。この画分は、アプライサンプル、洗浄画分、溶出画分と一緒にSDS-PAGE分析を行う。目的蛋白質の染色バンドと同位置に対して、6M GuHCl画分にどれくらいの割合が含まれているか、不純物はどれくらいの割合が含まれているか確認する。

    6M GuHCl画分中に容認できない量の目的蛋白質が含まれていた場合、上述の手順で6M GuHClの手前までの手順を再度実施する。その後、以下の手順に従い最適な溶出pHを決定する。

    5. 手順 – 溶出条件の決定(2)

    pHを上げるか下げるか方針を決定する。カラム内の塩濃度を下げるために水6CV添加する。溶出条件の決定(1)で実施したようにバッファを作成するが、今度は、異なるpHでNaCl濃度を決定していく。最後に6M GuHCl画分を回収し、前回と同様にSDS-PAGEを行い溶出効果の違いを確認する。洗浄する場合のpH及び溶出する場合のpHを、この検討から決定することができる。もしかすると洗浄のpHは溶出のpHと異なることもある。

    今後、各手順の詳細や根拠は随時アップデートする予定、2019/11/10 by はりきり(Mr)

  • [Bio-Edu] バイオロジクス高濃度化製剤, Sanofi (2015) – ID2711 [2019/10/14]

    [Bio-Edu] バイオロジクス高濃度化製剤, Sanofi (2015) – ID2711 [2019/10/14]

    高濃度化する理由

    静脈注射(IV)より皮下注射(SC)の方が便利: デバイスにより自宅で投与可能,少ない投与量,高投与量に対応(>500mg投与の製品も多い)

    SC投与は実際には0.5-1 mLに限定されない: Manual Injectionでは~2 mLは可能,2~10mL Deviceの使用も可能,ヒアルロン酸分解酵素技術でHerceptinは5mL投与

    SC*製剤の製品

    • Enbrel(1998), 50mg/mL, Lyo
    • Humira(2002), 50mg/mL, PFS
    • Xolair(2003), 125mg/mL, Lyo
    • Simponi(200), 100mg/mL, PFS
    • Ilaris(2013), 150mg/mL Lyo
    • Herceptin(2014), 120mg/mL, PFS

    * 巻末を参照

    高濃度処方

    • Aggregation
    • Viscosilty
    • pH shifts
    • Appearance of the drug product

    Aggregation

    Lumry-Eyring aggregation model: (1) Monomeric coformational changes: 立体構造上の変化, (2) Reversible oligomerization: changed conformationと重合における平衡関係, (3) Irreversible rearrangement: 重合の態様の変化, (4) Aggregate growth by monomer addition: (1)が追加されて重合体が成長,(5) Aggregate growth by aggregate-aggregate assembly: monomerが無くても重合体同士で成長,(6) Aggregate breakage: Aggregateが壊れる

    • Theoretical calculation using spherical molecules of 150kDa and 11nm diameter
    • 200mg/mLlでは,理論上Surface-Surface distanceは,0になる.150kDaの理論上の直径は11nmである.
    • Aggretationには,2つの分子の衝突(collision)が必要で,それには,高い濃度条件に依存する
    • 分子混雑効果(molecular crowding effect)が熱力学均衡を動かし凝集体を増やす
    • 分子間距離を減らすとmAbs間の反応が変化する
    • 粘度
    • Primary particles -> Fractal elusters -> Interconnected clusters
    • Liu at al. 2005 Reversible self-assoiation increases the viscosity of a concentratd monoclonal antibody in aqueous solution. J Pharm Sci. 94, 1928-1940.mAb quasispherial model, by Ross and Minton (2005): monomer状態を維持できる条件ならば,その粘度の編曲的は,150g/Lである.
    • 温度が高いほど,粘度は高まる(Impact of aggregates formation on the vicosity of protein solutions Soft Matt (Nicoud et al. 2015. Soft Matt, DOI:10.1039)
    • アミノ酸,ポリオール,塩を使って添加剤を作る: 硫酸ナトリウムは,粘度を高める(Lilyestrom et al. 2013. Mnoclonal Antibody Sefl-Association, Cluster Formation, and Rheology at High COncentrations, J. Phys.Chem. B. 117, 6363-6384
    • 粘度は製造方法を複雑にする.製剤のデリバリーにもインパクトがある.

    pH shifts

    • タンパク質濃度に依存してタンパク質の自己バッファー能は増していく.
    • 60-80mg/mLの蛋白濃度において,10mM acetate bufferはpH4-6で一般的に使用され優れている.
    • pH shiftの起こるプロセスは,TFFと凍結融解である.

    Appearance of DP

    Drug Product (製剤)の色味です。

    • Placeboとの違いとして,色,粘度が考えられます。臨床試験の時に、Placeboなのか、薬剤なのか分かってしまうと「プラセポ効果」が起こり、臨床試験の結果に悪影響が症状るので良くありません。

    Case study of Bi-specific mAb

    • IgG4
    • 200kDa
    • Route of administration SC
    • Lyophilisate 100mg/vial
    • 100mg/mL, Phosphate/Tris, Sucrose, Proline, PS80
    • 5℃17day後,HMW Δ5.5% for 55 mg/mL, HMW Δ12% for 225mg/mL
    • 35 mg/mLの製剤の5℃安定性では,0timeで4%のDimerが30日後に13%になった

    Viscosity

    viscosityは粘度です。クリニカル組成で3w,室温保管の粘度を0tiemと比較した結果,150g/mLでは,数十から150 mPa.sに,175mg/mLでは,100から500 mPa.sに,200mg/mLでは,300から1,300 mPa.sに,225mg/mLでは,700から5300 mPa.sに粘度は増加した.

    Syringeability tests for subcutaneously

    • Needle gauge: 25-27G
    • Syringe volume: 1 mL
    • Injection time: 1 min
    • Force applied max: 10N
    • 150mg/mLを中心に±10%の濃度で検討.150mg/mLと135mg/mLでは5℃(17~23)から25℃(10~12)40℃(7~9)でのViscosityは同等,しかし,165mg/mLに高濃度となると2倍程度の増加を示した.

    文献

    High Concentrated Formulations of BIotheuraputices, Sanofi (2015): https://mabdelivery.fr/medias/fichier/sophie-carayon-mabdelivery_1436434476023-pdf?INLINE=FALSE?INLINE=FALSE

    編集履歴

    2019/10/14, Mr.Harikiri
    2021/11/01,記載整備

  • [Bio-Edu] 排除体積効果 – タンパク質を精製し濃縮する時に、知っておきたい知識 [2024/01/02更新] ID2701

    [Bio-Edu] 排除体積効果 – タンパク質を精製し濃縮する時に、知っておきたい知識 [2024/01/02更新] ID2701

    はじめに

    バイオ医薬など高分子を取り扱う場合,排除体積効果について知っておかなければならない.排除体積効果は,タンパク質の塩析の原理に関わる.また,高濃度のバイオ医薬品の処方組成(バッファ組成)をUF/DF(限外ろ過膜; Ultrafiltration/透析; Diafiltration)を用いてバッファ置換や濃縮,特に高濃度のタンパク質を調製する場合は,pH shift (Donnan effect)の対策のために理解しておかなければならない必須のナレッジである.

    抗体医薬では

    高濃度化するためにUltrafiltration Filter (UF)を用いて濃縮・バッファ組成置換を行うが、その際、濃縮過程で「排除体積効果」により組成が変化することでpHがシフトする現象が見られる場合がある。例えば、pH5の抗体溶液を30kDaのUFで濃縮していくと、あるバッファ組成ではpHは上昇していく。抗体分子の分子量は150kDa、バッファ成分は低分子であるため、抗体分子と比較してUF膜の濾過側へ濾過されやすい。濃縮前の抗体とバッファの成分との比率は、濃縮課程で「排除体積効果」により変化していく。抗体の等電点(pI)が塩基性の場合、バッファ成分が少なくなるため濃縮後の高濃度の抗体溶液のpHは濃縮前よりも高くなる。

    抗体医薬の高濃度化では、以上の現象が生じることを踏まえて濃縮およびバッファ組成置換のプロセス条件を構築することで製造工程の管理を行う必要がある (2024/01/02 by Mr.Harikiri)。

    排除体積効果

    排除体積効果を簡単にイメージすると、「体積の大きい分子が体積の小さい分子の居場所を無くす効果」となります。

    • 排除堆積効果とは、巨大分子(macromolecule)によって占有される空間体積における熱力学的効果です1)
    • 例えば、細胞内(細胞質)には、細胞の活動に必要なタンパク質(巨大分子)が局在状況(空間の体積を排除している状況)となっている1)
    • その結果、macromoleculeは、互いに接近しておりエントロピーが増加注)、また、分子間引力が働きやすくなり、分子同士の解離定数が減少(集合)する
    • macromoleculeが高密度で存在する環境では、その配置の多重度は増加する.すると分子同士が結合する状況も生まれる.エントロピーが最小になるように均衡していく.
    • その他、分子間に働いている力
      • イオン結合力
      • ファンデンワールス力
      • 水素結合
      • 疎水性相互作用
      • 枯渇力
      • source
    • 注) 重力と位置エネルギーの関係と同様の理屈で、重力すなわち分子間力が大きくなれば、位置エネルギーすなわち、分子の熱エネルギーが大きくなるsource

    液晶が並ぶ理由2)

    窮屈な状態には最も楽な状態になろうとする.ポイントは,①分子間力,②排除体積効果(),③パッキング(整列した方がよい,オーダーパラメータS=1は同じ方法,S=0はランダム),④温度(低い温度の方が安定),電気的力(+と+又は-と-よりは,+と-).

    活動係数4)

    高分子の活動係数は,濃度に影響を受ける.なぜなら,高分子であるが故,排除体積効果が無視できず,エントロピーが濃度により変化するためである.

    分子の濃度は,容積モル濃度(体積変化があるため温度に影響される),重量モル濃度(温度に影響されない),モル分率があり,熱力学を扱うには,モル分率表示が適する.希薄溶液の全モル予数を水分子のモル数に近似(55.5, 1kg)すると,溶液自身によるエントロピー変化,すなわち,アニタリー・エントロピー変化(ΔSu)を求めるられる.

    Gurney(1953)は,このΔSuの大小から,水素構造を壊すイオン(order-destorying ions)と水を構造化するイオン(order-producing inons)に分別した.

    Kauzmann(1956)は,疎水性分子を非極性溶媒から水溶液に移動させたときのエントロピー変化から求めたΔSuは負(<0)になることを見出し疎水性分子の界面間の相互作用の一因と考えた(疎水結合).

    疎水性結合による会合メカニズム

    脂肪性炭化水素や芳香族炭化水素を非極性溶媒から水溶液を移した場合,ユニタリー・エントロピー変化(ΔSu)は,-24 ~ -16 e.u.,ユニタリー・自由エネルギー変化(ΔGu)は,+3~+5 kcal/mol増加した.構造化した水槽(ice-berg)が疎水性分子の表面に形成された結果である.この系の状態は,不安定である.不安定であるため,疎水性分子は,お互いに会合(水素結合)しようとして,ice-berg量(直接的な報告としては最も多い)を減らそうとすることになる.2003年の中性子,X線反射率を使用したの報告では,iced-bergは,1.5~2nmの構造があるとされる.

    AOモデルによる会合メカニズム(Asakura & Oosawa)

    立体モデルとして高分子を大きな球,小さい分子を小さな球とする.大きな分子が互いに接近しない環境下では,小さい分子の並進運動は,使用可能空間として最大になっている.もしも,大きい分子が接近して接触し会合したとすると,会合面周辺も含めて排除領域が小さくなるため,小さい分子の並進運動に利用できる空間容積が増加する.すなわち,並進運動エントロピー(traslational entropy)は,増加して,その結果,自由エネルギーは減少する.Kauzmannも出もAOモデルもエントロピーに基づいて結合を説明している 4)

    注) エントロピーが高い状態とは,散らかっている状態,低い状態とは,整頓されてい状態.分子が取りうる可能性の大きさ.

    注) 希薄溶液は,理想気体の理論に近似できる.ΔG = -TΔS 5)

    高分子鎖の広がりと排除体積効果 (1983)3)

    Werner Kuhn,P.J.Floryは,それを思索した.Kuhnは分子の形の問題に深い関心を持つ続け,糸状分子に関する論文(1934)では,両端と中央の比率6:2.3:1の楕円体に近似できることを明らかにし、式(2)のように見積もった.

    [η] = (5/2)(N/M)[1+(p2/75)]・・・(1)

    [η]に対する分子の広がりωと形pの効果

    • [η] :固有粘度は棒の長さの2乗に比例する
    • ω :分子実体
    • NA :Avogadro定数
    • M: モル質量または分子量
    • p :軸比
    • 大かっこ[]: 形状因子

    ω0=(1/36)(π/3)1/2<R2>03/2・・・(2)

    <R2>0: 2乗平均末端距離

    等価セグメントの数 (n)と長さ(b)で表すと,式(3)となる

    Staudinger則の指数a(すなわち[η])=2では,直線の糸状分子,0.5はある程度まとまりかけた分子,0は完全に糸まりとなった状態.Kuhnはこの糸まりの膨張が,理想気体の状態方程式にタイル巣van der waalsの排除体積補正と本質的に同じ原因でおこるものと考えた

    排除体積効果と第二ビリアル係数

    Staudinger則は,いまだ,低分子の一般粘度式で成立するが,Schulzらにより鎖状高分子溶液(数万以上の固有粘度と分子量の関係)の浸透圧測定法が確立された(1935)

    浸透圧事態は,第二ビリアル係数A2がMの違いに関わらないことが明らかにされた.低分子の場合,A2はMに反比例する

    編集履歴

    2019/10/13 はりきり(Mr)
    文献3)のクラスター展開法の解説以降は省略
    2020/06/25 追記(排除堆積効果の説明に具体例追加)
    2023/10/27 文言整備
    2024/01/02 追記(抗体医薬の高濃度化での事例)

    文献

    1) 排除体積効果

    https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2832.html

    2) 液晶が並ぶ理由

    https://www.rs.noda.tus.ac.jp/~furuelab/lc_align.html

    3) 高分子鎖の広がりと排除体積効果 (1983)

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/32/1/32_1_26/_pdf/-char/ja

    4) 生理現象と高分子排除体積効果(Excluded Volume Effect) ─高分子活量係数(I) (2006)

     http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/068010004.pdf

    5) エントロピーと自由エネルギー

     http://www.twmu.ac.jp/Basic/physics/entropy.pdf

  • [Bio-Edu] タンパク質の沈殿化法の原理 [2022/12/20]

    [Bio-Edu] タンパク質の沈殿化法の原理 [2022/12/20]

    はじめに

    無機塩の高濃度添加は、タンパク質を沈殿させる基本です。タンパク質溶液に対して塩を添加することで、タンパク質の疎水性という物理的性質の強度を溶液中で強めることができます。疎水性が高まると、そのタンパク質の成分である疎水性のアミノ酸や疎水性の領域が、水を避けて互いにより集まり結合します。その性質の違いは、そのタンパク質固有のアミノ酸の含有比率に応じて、タンパク質毎に沈殿化する塩の種類、濃度、溶液pH、及び当該タンパク質のタンパク質濃度などの組み合わせに応じて重合化し、やがて沈殿化します。

    • タンパク質濃度
      • 沈殿とは分子同士が互いに寄り添い凝集することです。その基本原理からすると、沈殿させたいタンパク質の濃度が高いほど、沈澱しやすくなることは容易に理解できます。
    • タンパク質の分子量
      • 分子量が大きいほど、疎水性のアミノ酸の総数は一般論として多くなることは理解できます。すなわち、疎水性アミノ酸が増えるので沈殿になりやすいのです。
    • タンパク質のアミノ酸組成の比率
      • これは、上述のタンパク質の分子量から推定するよりは、直接的に評価できる指標です。ただし、分子の立体構造上で表面に出ている疎水性のアミノ酸として多いほどという条件も付きます。
    • タンパク質のフォールディング(立体構造)の状況
      • タンパク質のフォールディングの状態とはなんでしょうか。タンパク質は、基本的に1本のペプチドの鎖が、巻き、折畳まることで、その天然の立体構造としての状態になります。この状態が、最も血液に溶けやすくなっているのです。すなわち、疎水性のアミノ酸は内側に、親水性のアミノ酸は外側に配置されることになります。ミスフォールディングすると、その状態が不整合しているため疎水性アミノ酸が外側に多く出ている状態が起こり得て、そのため分子間での疎水性同士の結合インタラクショにより沈殿形成しやすくなります。
    • 溶液のpH
      • これは、私の経験則ですが、理由をよく考えると理解ができるものと思っています。ただ、今までよく考えて小なったので、経験則だけで説明します。バッファ組成を酸性にすると疎水性が高まり、逆にアルカリ性にすると疎水性が低下します。
      • この原理を利用して、クロマトグラフィのカラムのレジンの洗浄・再生処理には、強アルカリ性のバッファが使われます。
    • 溶液の温度
      • 反応論や溶解度の話になります。温度が高いと分子のブラウン運動が大きくなり、溶解度は一般的に高くなります。逆に、温度が低くなるとブラウン運動は低下し、溶解度は低くなります。すなわち、温度が低いほど沈澱になりやすいと推察されます。しかし、反応論的には、反応しずらくなるため、疏水性を利用する疏水クロマトにおいては、タンパク質のレジンに対する反応としての吸着性は低下するため、低い温度での疎水クロマトはワークしなくなります。
    • 溶液の初期の塩濃度
      • 塩析させる場合、塩濃度を高めるので、単純に初期の濃度を問題にしているだけです。
    • 無機塩の種類と濃度
      • 塩析させやすい塩が知られています。硫酸アンモニウムがそれです。でも、疏水クロマトにはあまり相性が良くありません。そこで、もっとマイルドなNaClや、クエン酸(Na)などが使われます。

    塩を添加する方法による沈殿化の手法は、タンパクの精製に適するレジン(樹脂)がなかった昔に多用された技術です。この技術にはデメリットもあります。沈殿化したタンパク質は、沈澱を作る過程から状態を維持する過程で、タンパク質変性のリスクが高まります。理由は、沈殿化により、必要以上に強固に寄り集まったタンパク質が、水溶液に戻すときに再溶解しない場合がある事です。再溶解時に溶解しやすいようにする添加剤としての補助的に働くものがあります。グリシンなどのアミノ酸などは、その一種と考えられます。

    タンパク質の沈殿化法による精製手法の代替法が存在します。以下の課題について解決し得る方法です。それは、疏水クロマトグラフィー(HIC)です。ここでは、HICについては論じていません(はりきり)。

    沈殿化法の課題

    • 沈殿化したタンパク質には,条件によっては再溶解の困難性というリスクがあること.
    • いれまでは,工業的に遠心機は使用しにくかったが,最近では連続遠心と自動的に沈殿画分を回収できる機種も開発されている

    ホフマイスター系列

    1888年からのHofmeisterらの色々な塩を使った塩析実験から得られた塩析の強さは、ホフマイスター系列と呼ばれます。塩析効果の高い塩は利尿作用があり、逆溶解させる塩は下痢作用があると記述があります。

    タンパク質の凝集剤としての塩・有機溶媒・高分子 (2015), 生物工学, 第93巻

    https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9305/9305_tokushu_1.pdf

    デバイ – ヒュッケル理論

    静電相互素作用が主たる原理であるとするとデバイーヒュッケル理論で説明できる。しかし、実際には、タンパク質の塩析曲線はベルシェイプを示し、塩の種類によって異なる曲線を示すとの報告(1932年のGreenら)がある。すなわち、静電相互作用だけでは説明がつかず、別の相互作用や水の構造変化が影響していとる予想されていた。

    イオンは水の水素結合ネットワーク

    しかし、イオンは水の水素結合結合ネットワークに影響を与えないという論文が報告(2003)され、溶液中の水の構造を変えるのではなく、タンパク質の表面にある水和水に影響して、タンパク質の性質に影響しているのであろうと考えられた。

    その理屈は、コスモトロープが水和水の秩序化→表面張力の増加→溶液は表面を減らす→タンパク質が凝集する。この理論は、リゾチームの凝集速度と溶液の表面張力の間に、正の相関があるとの結果と矛盾しない。

    塩の種類により水和水の量に変化を生じさせていることについては、選択的相互作用の量として定義すると、

    選択的相互作用の量 =塩(溶質)がタンパク質に結合している量 − 水和水により脱離してしまつた溶質の量、と定義する。値が正であれば、結合している溶質の量の方が多い、負であれば、結合している水和水の量の方が多い。

    硫化物イオンの選択的相互相互作用の量は、塩化物イオンより小さい値を示すし、硫化物イオンは、塩化物イオンと並べて、タンパク質表面から選択的に排除されていることになる。

    ホフマイスター系列

    塩析する能力を示す。

    塩析しやすい (コスモトロープ) > CO3 > SO4 > H2PO4 > F > Cl > I > SCN > NH4 > K > Na > Li > Ca > Mg > 溶解 (カオトロープ)

    ホフマイスター系列は、周期表との規則性が見られる。

    ハロゲン属では、 周期表順に同じく、

    塩析しやすい > F > Cl > Br > I > 溶解

    である。

    アルカリ金属のカチオンでは、前述の逆となっている。したがって、沈殿材傾向は、イオンの半径や電子密度、質量で説明できることを示唆している。ただし、硫酸イオンやグアニジウムイオンなど複雑なイオンとは別の説明が必要と考えられる。

    タンパク質の溶解度

    一般的に、タンパク質の溶解度は、イオン濃度を増加させると増加し、それは極大値があり、ベルシェイプを示す。

    デバイーヒュッケルの理論

    デバイーヒュッケル理論で説明すると、塩を添加していくと、溶解から凝集まで一直線に状態変化する。低濃度では、静電遮蔽によってタンパク質の分子間の反発力が静電遮蔽により弱まる→分子の容積が減る→溶解度が増す、と説明できる。更に塩を加えていくと、タンパク質間のファンデンワールス力や疎水性相互作用などの引力が強まる→凝集する、と説明できる。しかし、実際には、溶解→凝集→溶解なるため矛盾がある。

    コスモトロープ

    コスモトロープ; kosmotropeは,水の水素結合ネットワークを秩序化(コスモス)する。Structure Makerとも呼ぶ.

    タンパク質表面の水和水について考えてみると、溶解状態のタンパク質液が、凝集するまでのイベントは、以下の様になる。

    「秩序化」→「気液界面の表面張力を増加させる」→「広くなった界面は不安定になる」→「溶液は安定化させようとする」→「表面を枯らそうとする→タンパク質はより集まる」→「凝集する」

    カオトロープ

    カオトロープ; chaotropeは,水の水素結合ネットワークを無秩序化(カオス)する。溶解する理論すは、上述の逆の理屈である。Structure breakerとも呼ぶ.

    水構造緩和に対するコスモトロープとカオトロープ塩の影響

    https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/33031702

    表面張力

    水和を理解するための指標の一つ。surface tension, 表面をできるだけ小さくしようする性質。

    有機溶剤

    古くからDNA/RNAの沈殿材として用いられてきた。タンパク質への応用はアルコールによる血漿タンパク質の沈殿法から始まっている。

    原理は、水溶液の伝導率を低下させ、タンパク質間の静電反発力を強める結果、溶解度が減少するといわれるが、それだけではなく、有機分子とタンパク質の相互作用についても考慮する必要がある。

    エタノールとジオキサンの検討では、アミノ酸やペプチドの有機溶剤に対する溶解度を調べた論文では、疎水性側鎖を安定化させ、親水性の側鎖やペプチド結合を不安定化させることがわかっている。

    還元Albの検討では、エタノールは、タンパク質の疎水性部分と相互作用し変性させながら溶解度を上げるが、荷電残基の影響によりタンパク質の溶解度は低下した。

    ハロゲン系アルコールの検討では、50%トリプルオロエタノール中では、主鎖の間にできる水素結合が弱められる結果、αベリックス構造に富んだ構造に変性するが、溶解度は高くなり、最終的には、透明なゲルになる。

    エタノール中でのタンパク質の凝集の制御は、わずかなpHシフトにより可能である。凝集を防ぐにはpHをpIから外すことである。

    ①構造変化を伴う疎水性の変化

    ②溶液の伝導率の低下

    ③相互の非極性領域の相互作用

    ④相互の荷電残基の相互反発

    高分子

    高分子の中でもPEGは無毒であり、よく使用され、無荷電である。PEGは、タンパク質の選択的水和を促す。

    芳香属アミノ酸では、その溶解度は増加する。高分子が存在すると、タンパク質が存在できる空間が狭くなる。これを排除体積効果という。

    PEGは、以下の2つの作用を有する。

    ① 排除体積効果によるタンパク質の安定化と凝集

    ②弱い変性作用(疎水性アミノ酸に結合)によるタンパク質の不安定化と溶解促進

    また、高分子は、タンパク質のFoldingにも影響し、高濃度のPEGや多糖では、変性状態を不安定化させるので、ネイティブ構造が安定化し、Folding速度が増加する。

    編集履歴

    2020/11/02 追記 : はじめに
    2021/05/21 文言整備
    2021/06/01,追記(「はじめに」の説明を更に補充)
    2022/09/04,文言整備(課題として「取扱いとして液状での操作が悪いこと」を削除,遠心機は自動連続遠心機などの機種が開発されてきたことから,遠心機の取り扱い上の課題は低くなっていること,を追記)
    2022/11/24,文言整備
    2022/12/20,追記(カオトロープ,コスモとロープの英単語)
  • [Protein] Prothrombin; プロトロンビン/血液凝固因子 – ID2643 [2019/10/08]

    [Protein] Prothrombin; プロトロンビン/血液凝固因子 – ID2643 [2019/10/08]

    ヒトプロトロンビン 

    分子量 72,000 Da

    血中濃度 100mg~150mg/dl

    ドメインこうせい: 2つのKrigleドメインに続きセリンプロテアーゼドメインがつながる。

    文献

    Prothrombin: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat1973/23/10/23_10_567/_pdf

    【基礎】血液凝固 X 因子 -その周辺と展望-: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth/20/5/20_5_540/_pdf/-char/ja

    血液凝固のしくみ: https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/12/6/12_6_364/_pdf

    アンチトロンビン製剤: http://www.ketsukyo.or.jp/plasma/anti-thrombin/ant_03.html

  • [rAAV-Edu] rAAV9の精製方法 (ウイルスの一般的な精製方法を理解できる) – 特許,2018 – ID2559 [2023/10/23]

    [rAAV-Edu] rAAV9の精製方法 (ウイルスの一般的な精製方法を理解できる) – 特許,2018 – ID2559 [2023/10/23]

    rAAV9 vectorの精製方法

    培養液のバッファ組成をTFF処理で調整、硫安(AmSo4)沈殿処理と第4級アンモニウム陰イオン交換クロマトグラフィー(HiPrep Q XL)によるFlow through mode、最後にSECによる精製でrAAV9を得る

    rAAV9 vectorの調製方法

    1. Transfection by 3 plasmid (with PEI, FBS-free)
      • 遺伝子治療用としてウイルス・ベクターを使用するはに,目的遺伝子,ウイルスの殻,それてHelper因子,など必要なコンポーネントとしてそれぞれの遺伝子をウイルス増殖用の細胞内に挿入させる.
    2. Post culture
      • 遺伝子を挿入した生産用細胞を培養する.
    3. Harvest supernatant
      • 培養上清からウイルスを取得する場合は,遠心上清を回収する.細胞内に存在するウイルスを取得する場合は,遠心の沈殿画分を回収する.
    4. TFF process
      • バッファ組成を整えたり,ウイルス濃度を高めたり,更に,ろ過液に不純物を透過させて不純物除去したりする.
    5. 1/3 sut. concentration AmSO4 precipitation
      • 疎水性を高くして不純物の沈殿化させる工程(塩析)
    6. centrifuge
      • 33%飽和濃度の硫酸アンモニウム処理して遠心により沈殿化した不純物を沈殿へ分離し上清を回収する.
    7. 1/2 sut. concentration AmSO4 precipitation
      • 更に,硫酸アンモニウムを添加して50%飽和濃度にすることで,更に分割沈殿化させる.
      • 急な塩濃度の上昇は,共沈するのでそれを避けるために分割操作を行う.
    8. centrifuge
      • 遠心して上清を回収する.
    9. Dilution to 7.3 mS/cm
      • カラムクロマトで処理できる条件に整えるために,上清を水(でよい)で希釈して伝導度を下げる
    10. AEX
      • HiPress Q XL 16/10 column chromatograph with flow through mode
    11. TFF process
      • 30kDa : ウイルスの濃縮
    12. SEC column chromatography
      • HiLoad 16/60 Superdex 200, MNH pH6.5, 300mM NaCl, 0.01% F-68

    Highly Efficient Ultracentrifugation-free
    Chromatographic Purification of Recombinant
    AAV Serotype 9

    https://www.cell.com/molecular-therapy-family/methods/pdfExtended/S2329-0501(18)30111-6

    Improved methods for purification of recombinant aav vectors, EP2443233A1, 2009

    https://patents.google.com/patent/EP2443233A1/en

    編集履歴

    2019/10/15, Mr. Harikiri
    2023/10/23, 追記(永木の精製ステップについて日本語でコメント追加)

  • [血液凝固因子] Fibrinogen – ID2549 [2023/10/23]

    [血液凝固因子] Fibrinogen – ID2549 [2023/10/23]

    はじめに

    Fibrinogen (フィブリノゲン)は,巨大分子であること,タンパク分解酵素に分解されやすいこと,などから遺伝子組換え技術による医薬品レベルの製造がコストを度外視しても難しいタンパク質である.

    Fibrinogen

    フィブリノゲンは、血液中にある血液凝固因子である。血液の凝固の最終段階に関与している.フィブリノゲンは血液中では溶けているが,出血時にトロンビンと言う酵素からある部位に切断を受ける事で巨大な部分分子同士が絡むことが可能となり、不溶性のFibrin (フィブリン)線維となり物理的に出血を止める.

    検査

    フィブリノゲンの検査は、血液凝固の異常や出血傾向を調べるために行われる.フィブリノゲンの正常値は、約150~400mg/dL.フィブリノゲンの値が高いと、血栓ができやすくなり、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患のリスクが高まる.フィブリノゲンの値が低いと、出血が止まりにくくなり、貧血や出血性ショックなどの危険が高まる.

    高値になる原因

    1. 炎症性疾患(感染症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎など)
    2. 妊娠
    3. 喫煙
    4. 高コレステロール血症
    5. 糖尿病
    6. 肥満
    7. 避妊薬やホルモン補充療法の使用

    低値になる原因

    1. 先天性低フィブリノゲン血症(遺伝的にフィブリノゲンが少ない状態)
    2. 後天性低フィブリノゲン血症(出血や消費性凝固障害(DIC)などでフィブリノゲンが減少する状態)
    3. 肝機能障害(肝臓でフィブリノゲンが合成されるため)
    4. フィブリノゲン製剤や抗凝固剤の使用

    フィブリノゲン製剤

    フィブリノゲン製剤とは、先天性低フィブリノゲン血症や産科危機的出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症に対する治療薬.人の血液のプラズマ成分から精製されたフィブリノゲンを医薬品としたもの.点滴静注で投与される.

    立体構造

    下図に示すようにAα鎖,Bβ鎖およびγ鎖の3本のタンパク質が絡まった構造で真ん中にEドメインと呼ばれる球状部分と,両端にDドメインと呼ばれる小球状部分で,コイルドコイルという棒状部分で連結された構造を取っている.

    Aα鎖とBβ鎖のN末端には、それぞれフィブリノペプチドAとフィブリノペプチドBという小さなペプチドが付いいる.これらのペプチドはトロンビンによって切断されると、フィブリノゲンはフィブリンに変化し、重合反応を起こす.

    • Fibrinogen 3D structur : PDB

    文献

    Fibrinogen:

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat1973/23/9/23_9_505/_pdf/-char/ja

    低フィブリノゲン血症の患者数:

    https://www.shouman.jp/disease/details/09_22_037/

    フィブリノゲン – QLIFE –

    フィブリノゲンとは|病気の検査法を調べる – 医療総合QLife

    3. 血液凝固因子の分子進化 – フィブリノーゲンとvon Willebrand因子を中心に – 2008, 決戦止血誌

    日本血栓止血学会誌 第19巻 第2号 (jst.go.jp)

    編集履歴

    2019/10/14, Mr.Harikiri
    2023/10/23, 追記