4. 通常医薬品では「毎ロットverification」とは一般に呼ばない
低分子医薬品や通常のバイオ医薬品では、製造ロットごとに以下の確認が行われます。
- 製造記録照査
- 工程内試験結果の確認
- 最終製品試験結果の確認
- 逸脱、OOS、OOTの確認
- 変更の有無と品質影響評価
- 清掃記録確認
- ラインクリアランス
- QAによる出荷判定
しかし、これらを一般的に「ロットごとのverification」と呼ぶことは多くありません。
通常は、以下のように呼ばれます。
| 実施内容 | 一般的な呼び方 |
|---|---|
| 製造記録の確認 | バッチ記録照査、製造記録照査 |
| 試験結果の確認 | QC判定、規格適合確認 |
| QAによる出荷可否判断 | ロットリリース、出荷判定 |
| 工程状態の継続評価 | Continued/Ongoing Process Verification、APR/PQR |
| 清掃後の確認 | 清掃確認、ラインクリアランス、cleaning verification |
つまり、通常医薬品では、各ロットの確認は必須ですが、それをすべてverificationと呼ぶわけではありません。
5. 再生医療等製品ではなぜVerificationが重視されるのか
再生医療等製品では、GCTP省令の文脈でベリフィケーションが特別な意味を持ちます。
特に、自己細胞加工製品のような製品では、従来型のプロセスバリデーションを行いにくい場合があります。
主な理由は以下です。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 原料細胞の個体差が大きい | 患者ごと、ドナーごとに細胞の性質、増殖能、分化能、状態が異なる |
| ロット数が少ない | 一般医薬品のように多数ロットで統計的に工程能力を評価しにくい |
| 検体量が限られる | 倫理上・技術上、バリデーション用の追加検体を十分に確保できない |
| 製品寿命が短い | 全試験完了後に出荷する設計が難しい場合がある |
| 最終滅菌が困難 | 細胞製品では最終滅菌ができないため、無菌製造工程そのものの管理が重要 |
| 品質特性が複雑 | 細胞数、生存率、表面マーカー、機能、分化状態など多面的な評価が必要 |
GCTP省令のQ&Aでは、ヒト自己細胞加工製品のように、倫理上の理由による検体量の制限や技術的限界によりプロセスバリデーションが困難な製造工程について、ベリフィケーションを採用する場合の留意点が示されています。
また、PMDA資料では、再生医療等製品のベリフィケーションは単なる品質試験結果の確認ではなく、慎重な品質リスクマネジメントに基づく管理戦略により、製造ごとに求められる品質を確認する活動であると説明されています。
6. 再生医療等製品のVerificationは「品質試験だけ」ではない
再生医療等製品のverificationは、最終製品試験だけを確認するものではありません。
製造ごとに、工程全体の証拠を確認します。
| 確認対象 | 具体例 |
|---|---|
| 原料細胞 | 採取量、細胞数、生存率、受入基準、患者・ドナー情報との整合 |
| 培養・加工工程 | 培養期間、培地交換、添加因子、温度、CO₂、細胞密度、継代条件 |
| 工程内試験 | 細胞数、生存率、形態観察、表面マーカー、分化状態 |
| 無菌管理 | 環境モニタリング、無菌操作記録、培地充填試験との関係、汚染確認 |
| 最終製品試験 | 細胞数、生存率、確認試験、純度、力価、無菌、エンドトキシン、マイコプラズマ |
| 製造記録 | 手順逸脱、時間制限、保管条件、輸送条件、設備ログ |
| 逸脱・変更 | 当該ロットへの品質影響評価、出荷可否判断 |
したがって、再生医療等製品におけるverificationは、製造ごとに、工程管理・品質管理・記録・逸脱評価を総合して、その製品が目的品質に適合していることを確認する活動と理解できます。
7. 再生医療等製品ではValidationをしなくてよいのか
答えは、いいえです。
再生医療等製品でも、validationやqualificationは重要です。
例えば、以下のような項目は、事前に確認・検証すべき対象です。
| 対象 | 例 |
|---|---|
| 設備適格性評価 | DQ、IQ、OQ、PQ |
| 無菌操作工程 | 培地充填試験、環境モニタリングプログラム |
| 試験方法 | 細胞数測定、フローサイトメトリー、無菌試験、マイコプラズマ試験、力価試験 |
| 輸送条件 | 温度、時間、容器、振動、輸送中の逸脱対応 |
| 清掃・交叉汚染防止 | 清掃手順、ラインクリアランス、閉鎖系接続管理 |
| コンピュータ化システム | 電子記録、培養装置ログ、温度記録システム |
つまり、再生医療等製品では、
可能なものはvalidationする。
従来型のprocess validationが困難な部分は、verificationで補強する。
という構造になります。
8. 製造経験が増えたらVerificationをValidationに置き換えるべきか
この点は注意が必要です。
「製造経験が増えたらverificationをvalidationに完全に置き換える」と考えると、やや不正確です。
正しくは、
verificationで蓄積したデータを用いて、可能な範囲でvalidationの対象を拡大する。
ただし、患者・ドナー由来細胞の個体差などにより、製造ごとのverificationが残る場合がある。
という理解が適切です。
特に自己細胞製品では、製造実績が増えても、原料細胞が毎回異なるため、従来型の「同一条件で複数ロットを作り、再現性を示す」プロセスバリデーションには限界があります。
一方、同種細胞製品、iPS細胞由来製品、セルバンクを起点とする製品では、原料の均一性を比較的確保しやすいため、自己細胞製品よりもvalidationに寄せやすい場合があります。
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