― GMP/GCTPで混同しやすい「バリデーション」と「ベリフィケーション」を整理する ―
目次
- ― GMP/GCTPで混同しやすい「バリデーション」と「ベリフィケーション」を整理する ―
- 1. まず結論:ValidationとVerificationは「厳密さ」ではなく「評価範囲」が違う
- 2. Validationでは何を評価しているのか
- 3. Verificationでは何を評価しているのか
- 4. 通常医薬品では「毎ロットverification」とは一般に呼ばない(2ページ)
- 5. 再生医療等製品ではなぜVerificationが重視されるのか(2ページ)
- 6. 再生医療等製品のVerificationは「品質試験だけ」ではない(2ページ)
- 7. 再生医療等製品ではValidationをしなくてよいのか(2ページ)
- 8. 製造経験が増えたらVerificationをValidationに置き換えるべきか(2ページ)
- 9. 低分子医薬品で使われるCleaning Verificationとは(3ページ)
- 10. Continuous Process Verificationとは何か(3ページ)
- 11. 全体比較表:再生医療等製品と通常医薬品の違い(3ページ)
- 12. 実務上の使い分け(3ページ)
- まとめ(4ページ)
- 参考文献・出典(4ページ)
- 編集履歴(4ページ)
医薬品の製造管理・品質管理では、**Validation(バリデーション)とVerification(ベリフィケーション)**という用語がよく使われます。
どちらも「確認」「検証」と訳されることが多いため混同されやすいですが、GMP/GCTPの文脈では意味が異なります。
特に、低分子医薬品・通常のバイオ医薬品におけるverificationと、再生医療等製品におけるverificationは、同じ単語でも位置づけが異なるため注意が必要です。
この記事では、以下の点を整理します。
- validationとverificationは何が違うのか
- 再生医療等製品でverificationが重視される理由
- 低分子医薬品・バイオ医薬品でもverificationという言葉が使われるケース
- cleaning verificationやcontinuous process verificationの位置づけ
- 「verificationをvalidationに置き換える」という考え方は正しいのか
1. まず結論:ValidationとVerificationは「厳密さ」ではなく「評価範囲」が違う
ValidationとVerificationの違いは、単純に「どちらが厳密か」ではありません。
より正確には、評価している範囲と目的が異なると理解するのが適切です。
| 項目 | Validation | Verification |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 工程・設備・手順・管理方法が、期待される結果を恒常的に与えることを検証する | 実際に期待される結果が得られたことを確認する |
| 主な視点 | 「この工程で安定して作れるか」 | 「今回、または対象範囲で基準を満たしたか」 |
| 評価範囲 | 工程設計、設備、CPP、IPC、CQA、複数ロット、トレンド、管理戦略 | 当該ロット、当該工程、当該確認項目、当該試験結果 |
| 時間軸 | 事前評価、工程確立、変更時、継続的維持 | 製造ごと、変更後、清掃後、試験法導入時など |
| 目的 | 目的品質を恒常的に製造できることを示す | 得られた結果が基準に適合していることを確認する |
一言でいうと、
Validationは「作れることを証明する活動」
Verificationは「得られた結果が基準を満たすことを確認する活動」
です。
2. Validationでは何を評価しているのか
Validationは、単に最終製品試験に合格し得るかを設備,装置,システム,製造工程全体として,その製品の品質を安定して作り込めるかを確認する作業です。
具体的には、以下のような項目を評価します。
| 評価対象 | 具体例 |
|---|---|
| 最終製品品質試験(規格試験) | 含量、純度、不純物、力価、無菌、エンドトキシン、外観、溶出性など |
| 工程内試験 (IPC) | pH、導電率、細胞数、生存率、中間体濃度、粒度、水分、硬度、崩壊性など |
| 重要工程パラメータ | 温度、時間、撹拌数、圧力、流速、培養条件、乾燥条件、クロマト条件など |
| 設備・装置性能 | DQ、IQ、OQ、PQ、校正、保守、CIP/SIP、無菌操作性能など (Validation Studyを実施する前に確立されていること) |
| 原材料の影響 | 原料ロット差、重要原料の変動、培地、樹脂、フィルター、添加剤など (受け入れ試験のValidationが済んでおり,その試験に合格した原材料がValidationに使われる) |
| 複数ロットの一貫性 | 複数ロットで品質、収量、工程挙動が大きく変動しないか(日本では連続3ロット) |
| トレンド | 規格内であっても、工程が悪化傾向を示していないか |
| 逸脱・OOS・OOT | 工程設計や管理戦略に問題がないか |
| 管理戦略 | CPP、CQA、IPC、原料管理、設備管理、試験管理が適切に組み合わされているか |
したがって、validationは「品質試験の合格確認」だけではなく、工程全体の妥当性を科学的・文書的に示す活動です。
EU GMP Annex 15でも、qualificationとvalidationは施設、設備、ユーティリティ、工程についてライフサイクルを通じて管理するものとして整理されています。
3. Verificationでは何を評価しているのか
Verificationは、対象となる結果が、あらかじめ定めた基準に適合していることを確認する活動です。
ただし、verificationという言葉は文脈によって意味が変わります。
例えば、低分子医薬品や通常のバイオ医薬品では、次のような場面でverificationという語が使われます。
| Verificationの種類 | 内容 | |
|---|---|---|
| 1. Cleaning verification | 清掃後に、前製品や洗浄剤の残留が許容限度以下であることを確認する | EU GMP Annex 15 |
| 2. Ongoing process verification | バリデーション後も工程が管理状態を維持していることを継続的に確認する | EU GMP Annex 15 |
| 3. Continuous process verification | QbD、PAT、統計的工程管理などに基づき、従来型PVの代替または一部代替として工程性能を継続評価する | EU GMP Annex 15, ICH Q13 |
| 4. Method verification | 薬局方試験法や移管試験法が、自施設で適切に機能することを確認する | 薬局方一般原則/USP <1226>系の考え方, ICH Q2/Q14 |
| 5. IQ/OQ/PQ内のverification | 設備・装置が仕様どおりに据付・作動・性能発揮することを確認する | EU GMP Annex 15 |
| 6. Change verification | 変更後に意図した結果が得られ、品質影響がないことを確認する | ICH Q10, ICH Q9, PIC/S変更管理関連文書 |
このように、低分子医薬品や通常のバイオ医薬品でもverificationは使われます。
ただし、これは通常、プロセスバリデーションの代替としてのverificationではなく、バリデーション活動の一部、またはvalidated stateを維持するための確認活動です。
思考時間: 9s
【結論】
現在日付:2026-06-06 JST
ご指摘の「Verificationの種類」の表は、1つのガイドラインだけから作ったものではありません。
低分子医薬品・通常バイオ医薬品で使われる verification を、以下の複数のガイドライン・規制文書上の使われ方から整理したものです。
特に中心になる原典は、EU GMP Annex 15、FDA Process Validation Guidance、ICH Q13、ICH Q10/Q9、および分析法に関する薬局方・ICH Q2/Q14系の考え方です。
1. Cleaning verification ,Ongoing process verificationの原典
- Annex 15では、cleaning verification は、各バッチまたはキャンペーン後に、化学分析により前製品または洗浄剤の残留が最大許容キャリーオーバー量以下である証拠を集めることとして整理されています。
- また、洗浄バリデーションプログラムが完了するまで時間を要する場合に、各バッチ後のverificationを伴うvalidationが必要になる場合がある、という考え方も示されています。
- 初回バリデーション、変更後バリデーション、製造所移転、そしてongoing process verificationを含むとされています。
- これは、プロセスバリデーションが完了した後も、工程が管理状態を維持していることを継続的に確認する考え方です。
参考文献・出典
2. Continuous process verification の原典
- 従来型プロセスバリデーションの代替アプローチとして整理されています。
これは、QbD、PAT、統計的工程管理、工程理解に基づき、製造プロセスの性能を連続的または高頻度にモニタリング・評価する考え方です。
- また、ICH Q13では、連続生産におけるプロセスバリデーションの考え方として、continuous process verification approach が扱われています。ICH Q13は連続生産のガイドラインであり、工程管理、管理戦略、バッチ定義、逸脱時の物質管理などと関連してこの考え方を整理しています。
参考文献・出典
- European Commission:EU GMP Annex 15 Qualification and Validation
- ICH Q13:Continuous Manufacturing of Drug Substances and Drug Products
3. Continued process verification の原典
FDAのプロセスバリデーションガイダンスで使われる用語です。
FDAのProcess Validation Guidanceでは、プロセスバリデーションを以下の3段階で整理しています。
| Stage | 内容 |
|---|---|
| Stage 1 | Process Design |
| Stage 2 | Process Qualification |
| Stage 3 | Continued Process Verification |
Stage 3のcontinued process verificationは、商用生産中に、工程が管理状態に維持されていることを継続的に保証する活動です。
EU/PIC/Sのongoing process verificationに近い位置づけですが、EU Annex 15のcontinuous process verificationとは区別した方がよいです。
参考文献・出典
4. Method verification の原典
主に薬局方試験法や移管済み試験法を、自施設・自製品・自試験条件で使う際に、適切に機能することを確認する文脈で使われます。考え方としては、以下に基づきます。
- 薬局方試験法は、通常、新たにフルバリデーションするのではなく、自施設で適切に実施できることを確認する。
- 分析法の性能評価は、ICH Q2/Q14の分析法バリデーション・分析法開発の考え方と関連する。
- 米国ではUSP <1226> “Verification of Compendial Procedures” が代表的な参照先です。
(USP本文は有料またはアクセス制限がある)
参考文献・出典
- USP:General Chapter <1226> Verification of Compendial Procedures
- ICH Q2(R2):Validation of Analytical Procedures
- ICH Q14:Analytical Procedure Development
5. IQ/OQ/PQ内のverification の原典
EU GMP Annex 15のQualification and Validationの中で整理できます。Annex 15では、qualificationとして以下が扱われます。
- Design Qualification, DQ
- Installation Qualification, IQ
- Operational Qualification, OQ
- Performance Qualification, PQ
例えばIQでは、設備、配管、ユーティリティ、計装などが、承認された設計・仕様・図面・供給者文書に従って据付されていることを確認します。これはqualificationの中で行うverificationと理解できます。
参考文献・出典
6. Change verification / effectiveness check の原典
変更後のverificationは、厳密には「change verification」という単一の公式用語で統一されているわけではありません。
しかし、ガイドライン上は、変更管理の中で、変更の実施後に意図した結果が得られたか、品質に悪影響がないか、有効性を確認することが求められます。
主な原典はICH Q10とICH Q9です。
ICH Q10は、医薬品品質システムの中で変更管理、CAPA、工程性能・製品品質モニタリング、マネジメントレビューを扱い、製品ライフサイクルを通じた継続的改善を重視しています。ICH Q10では、品質リスクマネジメントを使って品質リスクを科学的に評価・管理することが示されています。
ICH Q9(R1)は、品質リスクマネジメントの原則と方法を示しており、変更管理、逸脱、CAPA、バリデーション、供給者管理など多くのGMP活動に適用される考え方です。
また、PIC/S関連資料では、変更管理プロセスの中で change review や effectiveness checks が扱われています。
参考文献・出典
- ICH Q10:Pharmaceutical Quality System
- ICH Q9(R1):Quality Risk Management
- PIC/S:How to Evaluate / Demonstrate the Effectiveness of a Pharmaceutical Quality System in relation to Risk-based Change Management
Verification
【注意点・例外】
「verification」は公式文書で統一的に一つの意味だけを持つ用語ではありません。
特に、(1)GCTP上のベリフィケーション、(2)Annex 15のcleaning verification、(3)FDAのcontinued process verification、(4)ICH Q13のcontinuous process verification、(5)薬局方試験法のmethod verificationのそれぞれは、同じverificationでも文脈が異なります。
実務文書に使う場合は、何のverificationなのかを明記する必要があり、QA・薬事・バリデーション責任者など専門家に確認が必要です。
- European Commission:EU GMP Annex 15 Qualification and Validation
- FDA:Process Validation — General Principles and Practices
- ICH Q13:Continuous Manufacturing of Drug Substances and Drug Products
- ICH Q10:Pharmaceutical Quality System
- ICH Q9(R1):Quality Risk Management
- ICH Q2(R2):Validation of Analytical Procedures
- ICH Q14:Analytical Procedure Development
- USP:General Chapter <1226> Verification of Compendial Procedures
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