[Bio-Edu] ラクダが持っている抗体は、一般的なIgGとは異なる構造の重鎖抗体 – ID2300 [2019/09/21]

ラクダの重鎖抗体

一般的にラクダ抗体は、通常の抗体IgGとは異なる構造の重鎖抗体と呼ばれる少し分子量が小さい抗体をある比率で持っている。

特にラクダ科のアルパカでは抗体の内50%は、この重鎖抗体を占めるという。結合ドメインは一般的な抗体では2本鎖なので2個のドメインだが、重鎖抗体は、軽鎖がないので1個のドメインで結合ドメインとして機能する。

重鎖抗体の構造

重鎖抗体の形状は、一般的なIgGから軽鎖(CL-VL)が外れて、更に重鎖のCH1ドメインが欠落したY字構造である。

分子量は150kDa(各ドメインの分子量を単純割合で12.5kDaとする)から軽鎖の50kDa(2x(2×12.5)kDa)を引いて100kDaとなり、更にCH1の2×12.5kDa = 25kDaを引いて、75kDaであると簡単に推定される。

  • IgGの分子量 : 150kDa
  • 重鎖抗体の分子量 : 75kDa

nanobody/VHH抗体

重鎖抗体を産業上の利用を容易にする目的で、可変領域のみに改変したものを、VHH抗体又はNanobodyと呼ぶ.

  • nanobodyの分子量 : 12.5kDa(上記の計算による理論値)

一般的な抗体(IgG)では、2個のドメイン(Y字の1の手に2つの指:(VHとVL)で抗原に結合する。

ラクダ抗体では、軽鎖がないので、1個のドメイン(VH)で抗原と結合できるシンプルな構造となっているため、産業利用が進められてきた。

最近では、更に抗原結合部位のみ、即ち、VHのみを使った研究が多く進められている。

遺伝子治療などのバイオ医薬品(バイオロジクス)の開発には、欠かせないアフィニティ(Affinity)として、nanobodyが製品がされている(参照)。

ラクダ抗体の産業利用

参考文献

アルパカが持つ不思議な抗体の魅力: https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9604/9604_index.pdf

編集履歴

2020/04/28 文言整備、追記(産業利用製品)
2021/11/02 追記(アイキャッチ画像変更)