FMEAとは?不具合を未然に防ぐ品質リスク分析の基本と実務活用

FMEAの限界

FMEAは有効なリスク分析手法ですが、万能ではありません。

FMEAは、想定した故障モードを起点にリスクを評価する手法です。そのため、そもそも想定できていない故障モードは評価対象から漏れる可能性があります。

また、重大度、発生度、検出度の評価は、担当者の経験や判断に左右される場合があります。評価基準が曖昧なまま実施すると、部門や担当者によって点数がばらつき、リスクの優先順位が不安定になります。

FMEAの限界として、次の点を理解しておく必要があります。

限界内容
想定外リスクに弱い洗い出されなかった故障モードは評価されない
評価が主観的になりやすい点数づけが担当者の経験に依存する
複合要因の評価が難しい複数の原因が組み合わさるリスクを扱いにくい
更新されないと形骸化する作成時点の情報のままでは実態とずれる
表作成が目的化しやすい本来のリスク低減につながらない場合がある

このため、FMEAを実施する際は、複数部門でレビューし、評価基準を明確にし、過去トラブルや実績データを反映することが重要です。

他のリスク分析手法との使い分け

FMEAは有効な手法ですが、すべてのリスク評価に最適とは限りません。対象や目的によっては、他の手法と組み合わせる方が適切です。

手法向いている場面
FMEA故障モードを起点に、影響・原因・管理策を整理したい場合
FTA重大な結果から原因をツリー状にさかのぼりたい場合
HAZOP工程条件の逸脱や運転条件のずれを体系的に検討したい場合
HACCP食品や衛生管理で危害要因と重要管理点を整理したい場合
チェックリスト法既知のリスクを簡易的に確認したい場合

たとえば、工程条件の「温度が高すぎる」「流量が低すぎる」「圧力が上がりすぎる」といった逸脱を体系的に検討したい場合は、HAZOPが適していることがあります。

一方、特定の故障モードについて、影響、原因、現行管理、追加対策を整理したい場合は、FMEAが使いやすい手法です。

医薬品・バイオ医薬品分野でのFMEAの応用

FMEAは自動車産業でよく知られている品質手法ですが、考え方自体は医薬品やバイオ医薬品の品質リスクマネジメントにも応用できます。

医薬品分野では、FMEAは単なる工程改善ツールではなく、GMP上の品質リスクマネジメントを具体化するための手段として利用できます。

ICH Q9(R1)では、品質リスクマネジメントについて、医薬品品質に関する科学的で実践的な意思決定を支援する体系的な考え方として整理されています。また、FMEAは品質リスクマネジメントで使用できる手法例の一つとして位置づけられています。

したがって、医薬品分野でFMEAを扱う場合は、FMEAそのものが品質リスクマネジメントのすべてではなく、品質リスクマネジメントを実施するための代表的手法の一つと考えるのが適切です。

たとえば、次のような対象に使えます。

対象FMEA的に検討できるリスク例
原材料管理規格外原料、取り違え、保管条件逸脱、供給者変更による品質変動
秤量工程秤量ミス、原料取り違え、秤量記録の誤記、交叉汚染
製造工程混合不足、温度逸脱、pH逸脱、ろ過不良、工程時間逸脱
無菌操作環境モニタリング異常、介入操作、滅菌不備、無菌接続不良
洗浄洗浄不足、残留物持ち越し、洗浄条件逸脱、洗浄記録不備
包装表示ラベル誤貼付、使用期限誤表示、ロット番号誤表示、添付文書の入れ違い
試験検査試料取り違え、測定条件ミス、標準品管理不備、判定ミス
設備校正不備、保守漏れ、センサー異常、アラーム未作動
データ管理記録漏れ、転記ミス、監査証跡未確認、アクセス権限不備
保管・出荷温度逸脱、出荷判定前出荷、保管区域誤り、輸送条件逸脱

医薬品分野でFMEAを使う場合、特に重要なのは、患者への影響 と 製品品質への影響 を明確にすることです。

たとえば、同じ「温度逸脱」であっても、原料保管中の一時的な逸脱なのか、製造中の重要工程パラメータの逸脱なのか、最終製品の安定性に影響する逸脱なのかによって、重大度は異なります。

GMPにおけるFMEAの使いどころ

GMPの実務では、FMEAの考え方はさまざまな場面で活用できます。

GMP実務FMEAの活用例
変更管理変更により新たな故障モードが生じないか評価する
逸脱管理逸脱の原因、影響、再発リスクを整理する
CAPA是正措置・予防措置の優先順位を決める
バリデーション重要工程パラメータや重要品質特性との関係を整理する
洗浄バリデーション残留、交叉汚染、洗浄失敗リスクを評価する
コンピュータ化システムデータインテグリティ、アクセス権限、監査証跡のリスクを評価する
供給者管理原材料・資材供給者の変更や品質不良リスクを評価する
教育訓練作業ミスが重大影響につながる工程を重点教育する

たとえば、変更管理では、変更内容そのものだけでなく、その変更が既存の工程管理、試験方法、バリデーション状態、製品品質にどのような影響を与えるかを評価する必要があります。

このとき、FMEAを使うと、変更によって追加される故障モード、既存の管理策で検出できるか、追加対策が必要かを整理しやすくなります。

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