製造業では、不具合が発生してから対策するのではなく、設計・工程の段階でリスクを予測し、未然に防ぐ考え方が重要になっています。
その代表的な手法が FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析) です。
FMEAは、製品や製造工程に潜む「故障モード」、すなわち、どのような失敗・不具合が起こり得るかを洗い出し、その影響、原因、発生しやすさ、検出しやすさなどを評価して、優先順位を付けて対策するための手法です。
ASQでは、FMEAを、設計、製造・組立工程、製品、サービスにおける潜在的な故障を特定し、優先順位づけする体系的なリスク分析手法として説明しています。
近年は、FMEAを単なる品質文書として作成するだけでなく、過去の不具合、設計意図、工程上の注意点、検出方法、対策履歴などを組織全体で再利用できる 品質ナレッジ として活用する流れが強まっています。
つまり、FMEAは「リスクを点数化する表」ではなく、設計・製造・品質保証に関する経験や判断を、組織の知識として蓄積するための仕組みでもあります。

FMEAの基本的な考え方
目次
- FMEAの基本的な考え方
- FMEAは「表を作ること」が目的ではない
- 設計FMEAと工程FMEAの違い
- RPNとは何か
- Action Priority(AP)の考え方(2ページ)
- 製造DX時代のFMEA:ナレッジとして蓄積する(2ページ)
- FMEAを品質ナレッジ化するメリット(2ページ)
- FMEAの実施タイミング(2ページ)
- FMEA導入・見直し時の実務ポイント(2ページ)
- FMEAの限界(3ページ)
- 他のリスク分析手法との使い分け(3ページ)
- 医薬品・バイオ医薬品分野でのFMEAの応用(3ページ)
- GMPにおけるFMEAの使いどころ(3ページ)
- FMEAと変更管理・逸脱・CAPA・バリデーションの連動(4ページ)
- バイオ医薬品製造でのFMEAの特徴(4ページ)
- FMEAの簡単な例:包装工程のラベル誤貼付(4ページ)
- まとめ(4ページ)
- 注意点・例外(4ページ)
- 参考文献・出典(5ページ)
FMEAでは、主に次のような観点でリスクを整理します。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 故障モード | 何が、どのように失敗する可能性があるか |
| 影響 | その失敗が製品、工程、顧客、安全性などにどのような影響を与えるか |
| 原因 | なぜその失敗が起こるのか |
| 現行管理 | 現在どのような予防策・検出策があるか |
| リスク評価 | 重大度、発生度、検出度などで優先順位を決める |
| 対策 | リスクを下げるために何を実施するか |
| 対策後評価 | 対策によりリスクが下がったかを確認する |
従来のFMEAでは、重大度、発生度、検出度を掛け合わせた RPN(Risk Priority Number:リスク優先数) が使われることが多くありました。
一方、近年のFMEAでは、単純にRPNの数値だけを見るのではなく、重大性を重視して対策の優先順位を決める考え方も重視されています。特に、安全性、法規制、患者・顧客への影響が大きいリスクでは、発生頻度が低くても優先的に管理すべき場合があります。
FMEAは「表を作ること」が目的ではない
FMEAでよくある失敗は、審査対応や顧客要求への対応として、Excel表を作ること自体が目的になってしまうことです。
しかし、本来のFMEAの目的は、次のようなものです。
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| 不具合の未然防止 | 失敗が起こる前にリスクを見つけ、対策する |
| 設計・工程の弱点発見 | 製品や工程のどこに弱点があるかを明確にする |
| 対策の優先順位付け | 影響が大きいリスクから対策する |
| 過去トラブルの再発防止 | 過去の不具合を次の設計・工程に反映する |
| 部門間の共通理解 | 設計、製造、品質保証、購買などでリスク認識を共有する |
つまり、FMEAは「記録文書」ではなく、不具合を起こさないための思考プロセス です。
表はあくまで結果を整理するための道具であり、重要なのは、どのような故障モードを想定し、どのような影響があり、どの管理が有効なのかを関係者で議論することです。
設計FMEAと工程FMEAの違い
FMEAには大きく分けて、設計FMEAと工程FMEAがあります。
| 種類 | 主な対象 | 目的 |
|---|---|---|
| 設計FMEA(DFMEA) | 製品設計、構造、機能 | 製品そのものの設計上のリスクを洗い出す |
| 工程FMEA(PFMEA) | 製造工程、作業、設備、検査 | 製造工程で起こり得る不具合を未然に防ぐ |
設計FMEAでは、製品の機能や構造に起因する故障モードを検討します。たとえば、強度不足、誤作動、部品選定ミス、使用環境への不適合などが対象になります。
工程FMEAでは、製造工程における作業ミス、設備条件のばらつき、検査漏れ、異品混入、組付け不良、洗浄不備、ラベル誤貼付などを対象にします。
設計FMEAと工程FMEAは、別々の文書として作られることが多いものの、本来は連動しているべきです。設計上の重要なリスクが工程上の管理項目に落とし込まれ、工程で見つかった問題が設計改善にフィードバックされることで、品質保証の仕組みは強くなります。
RPNとは何か
FMEAでは、リスクの優先順位を決めるために RPN が使われることがあります。
RPNは、次の3つの数値を掛け合わせて算出します。
RPN = 重大度 × 発生度 × 検出度
| 評価項目 | 意味 |
|---|---|
| 重大度 | 不具合が発生した場合の影響の大きさ |
| 発生度 | 不具合が発生する可能性 |
| 検出度 | 不具合が流出する前に検出できる可能性 |
| RPN | 重大度、発生度、検出度を組み合わせたリスク指標 |
RPNが高いものほど、優先して対策する候補になります。
ただし、RPNは便利な指標である一方、万能ではありません。
たとえば、重大度が非常に高いリスクでも、発生度や検出度の点数が低いと、RPNとしては中程度に見えることがあります。この場合、数値だけを見ると、本来優先すべき重大リスクを見落とす可能性があります。
また、RPNは掛け算であるため、同じRPNでもリスクの意味が異なる場合があります。
たとえば、以下のようなケースです。
| ケース | 重大度 | 発生度 | 検出度 | RPN |
|---|---|---|---|---|
| A:重大影響だが発生頻度は低い | 10 | 2 | 4 | 80 |
| B:中程度の影響だが発生しやすい | 5 | 4 | 4 | 80 |
どちらもRPNは80ですが、意味は同じではありません。
ケースAは発生頻度が低くても、安全性や法規制に関わる重大リスクかもしれません。したがって、RPNの大小だけではなく、重大度が高いリスクを個別に確認することが重要です。
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