移行先の宿主細胞
出発材料を天然の原材料から遺伝子組換え細胞に変更した理由は、もちろん生産性が高いためですが、生産性が高いだけでは、変更はできません。
生産した後の精製工程で歩留まりも問題になってきます。歩留まりに関しては、タンパク質のフォールディングの問題が含まれてきます。
組換え体として大腸菌を選んだ場合と動物細胞を選んだ場合で、問題となる課題が異なってきます。
低分子量のタンパク質の場合
比較的低分子であるインスリンやインターフェロンでは、スムーズに天然型から遺伝子組換え型に移行しています。
インスリン(6kDa)の場合は、豚や牛由来(膵臓)から・・・
インターフェロン(13kDa ~ 21kDa)の場合は、白血球や株価細胞から・・・
それぞれ大腸菌を宿主とする遺伝子組換え蛋白質に移行しています。
高分子量のタンパク質の場合
血栓溶解剤のウロキナーゼ(uPA, 31kDa)も、尿由来から・・・
増血因子であるエリスロポエチン(34kDa)も、尿由来から・・・
動物細胞を宿主とする遺伝子組換え体に移行しています。
遺伝子組換え技術と生産株のマッチ
- 低分子量の蛋白質(分子量: ~20kDa)では、組換え大腸菌での高生産が比較的容易に達成でき、低分子量蛋白質であることから再構成(Refolding)も比較的最適化しやすい。そのため、定分子量のタンパク質では、遺伝子組換え大腸菌に原材料を移行できたと考えられます
- 高分子量の蛋白質(分子量が30kDa以上の蛋白質)では、Refolding効率が著しく低く、大腸菌で産生させたとしても立体構造の正しいフォールディングになっていないことが多く、そのアンフォールドからフォードを元に戻すことは、工業的な歩留まりを維持しながらは、現在の技術ではほとんど不可能です。そのため、高分子量のタンパク質では、大腸菌ではなく、動物細胞の組換え体に原材料を移行したと考えられます
編集履歴
2020/01/09 はりきり(Mr)
2020/06/25 文言整備
Insulin human
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Insulin-human
インターフェロン アルファ(BALL-1)、分子量は13kDa~21kDaのサブタイプからなる
http://www.nihs.go.jp/dbcb/Biologicals/interferon-alpha-ball.html
昔は、尿由来の医薬品も現在では、ほとんどが、遺伝子組換え体に移行しています。
https://www.chem-station.com/blog/2019/04/urine.html
インスリン製剤の 変遷をたどる
http://www.saitama-med.ac.jp/uinfo/mnaika4/pdf/ditn01-11.pdf