5. UF/DFによる濃縮・バッファー交換
UF/DFは、Ultrafiltration / Diafiltrationの略です。日本語では限外ろ過・透析ろ過などと説明されます。
UFでは目的物質を濃縮し、DFでは目的物質の周囲のバッファー成分を置き換えます。たとえば、精製工程後の中間液を、原薬として適した濃度、pH、塩濃度、添加剤組成に調整する目的で行われます。
この工程では、膜への吸着、濃縮による粘度上昇、凝集体形成、せん断ストレス、処理時間、温度管理などが重要になります。
6. 原薬工程としての最終調整
DSPの終盤では、必要に応じて濃度調整、ろ過、バイオバーデン管理、無菌ろ過、保管条件の設定などが行われます。
バイオ医薬品はタンパク質などの高分子であることが多く、温度、pH、光、酸化、界面、せん断などの影響を受けやすいという特徴があります。ICH Q5Cでは、バイオテクノロジー応用医薬品・生物起源由来医薬品の安定性試験において、タンパク質やポリペプチドが環境因子の影響を受けやすいことが説明されています。
そのためDSPでは、精製できればよいだけでなく、精製中に目的物質を壊さないことも重要です。
DSPで管理すべき品質リスク
DSPでは、多くの単位操作が連続して行われます。それぞれの工程で品質リスクが異なります。
不純物除去
DSPの中心的な役割は、不純物を除去することです。とくにHCP、HCDNA、凝集体、分解物、ウイルス、Protein A漏出物などは、製品品質や安全性に影響する可能性があります。
ただし、不純物を強く除去しようとすると、目的物質の回収率が低下することがあります。したがって、DSPでは「純度」と「収量」のバランスが重要になります。
回収率
DSPでは、各工程で少しずつ目的物質が失われます。たとえば、フィルターへの吸着、カラムへの不可逆吸着、洗浄時の流出、凝集体化による除去などです。
各工程の回収率が低いと、USPで高い発現量を達成しても、最終的な原薬量は少なくなります。
凝集体・分解物の増加
タンパク質医薬品では、精製中のpH変化、塩濃度変化、温度変化、濃縮、界面接触、せん断などにより、凝集体や分解物が増えることがあります。
そのため、DSPでは不純物を取り除くだけでなく、目的物質を安定な状態に保つ設計が必要です。
スケールアップ時の変動
ラボスケールで成立したDSPが、そのまま製造スケールで再現できるとは限りません。
カラム径、線速度、滞留時間、圧力、膜面積、処理時間、ホールド時間、温度管理などが変わると、品質や回収率に影響することがあります。
FDAのプロセスバリデーションガイダンスでは、プロセスバリデーションをライフサイクルの考え方で捉え、工程設計、工程適格性確認、継続的工程検証の考え方が示されています。DSPもこの枠組みの中で、工程理解と管理戦略を構築する対象になります。
DSPとUSPはどちらが重要か
結論から言えば、どちらも重要です。
USPが不安定であれば、目的物質の量や品質が変動します。その結果、DSPに入る原料の性状が変わり、精製工程の負荷が変わります。
一方、DSPが弱いと、USPで十分な量の目的物質を作れても、不純物を除去できない、回収率が低い、凝集体が増える、ウイルスクリアランスが不足するなどの問題が生じます。
NIHの生物製品に関するRegulatory Knowledge Guideでも、堅牢で一貫した上流工程は、堅牢で一貫した下流工程と生物製品のために重要であると説明されています。
したがって、USPとDSPは「前工程と後工程」ではなく、「相互に影響する一体の製造プロセス」として理解する必要があります。