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  • [Bio-Edu] タンパク質の「イオン交換体」による精製原理 – 目的タンパク質の物性を知る必要性 [2021/02/25]

    [Bio-Edu] タンパク質の「イオン交換体」による精製原理 – 目的タンパク質の物性を知る必要性 [2021/02/25]

    はじめに

    タンパク質の精製とは、どのような作業をするのでしょうか? 精製とは目的物と異なる物質を取り除き、目的物質の割合を上げること、すなわち純度を高めることです。

    ここでは、イオン交換体を用いたタンパク質の精製の原理について解説します。

    イオン交換体

    先ず、イオン交換について説明します。その前に,タンパク質はアミノ酸の数珠繋ぎで作られています(ポリペプチド)。具体的には,アミノ酸のアミノ基と隣のアミノ酸のカルボキシル基とがペプチド結合してポリペプチドを作っています.

    このポリペプチドの末端や側鎖(アミノ酸ごとの)には,フリーのアミノ基やカルボキシル基は、溶液のpHに応じてイオン化しています。そのイオン化によって、アミノ基(NH2)は、Hが一つ増えてNH3+になり正に荷電します。カルボキシル基(COOH)は、逆にHが減ってCOOになり負に荷電します。Hを増やすためには、塩酸などの酸を添加します.

    1. -NH3+ ⇌ -NH2 + H+
      • (アミノ基は弱塩基であり水に溶けると右の式に傾く)
      • (右の式に塩酸を添加してH+濃度を上げるとアミノ基に戻る)
    2. -COOH2+ ⇌ -COOH + H+
      • (カルボキシル基は弱酸であり水に溶けると上記左の式に傾くカルボキシラートイオンになる)
      • (左の式に塩酸を添加してH+濃度を上げるとカルボキシル:-COOH2+基に戻る)

    Hを減らすには、NaOHなどの塩基を添加します。アミノ基とカルボキシル基がいずれもイオン化していない状態、すなわちNH2とCOOHになっているpHを等電点(pI)といい、荷電していない状態です。

    1. NH2 →(NaOH adding)→ NH- (アミノ基が正荷電する)
    2. COOH →(HCl adding)→ COOH (カルボキシル基が負荷電する)

    イオン交換体は、負に荷電する合成化合物、または、正に荷電する合成化合物を樹脂(レジン)に結合させているものを言います。陰イオン交換では、陰イオンとイオン結合が可能な正に荷電した合成化合物を結合させたレジンを使用します。

    タンパク質の溶解液のpHを調節して、その目的のタンパク質が負に荷電するか正に荷電するかを設定し、それに応じたイオン交換体を用いて、そのレジンにタンパク質を結合させることで、目的のタンパク質を効率よく回収することができます。具体的には、イオン交換体に結合させたタンパク質は、今度はそのレジンから解離させるために、そのイオン結合を切る条件にレジンの環境を変えてやります。すると、目的のタンパク質がレジンから溶出さされます。

    イオン交換クロマトグラフィ

    レジンの置かれる環境を変化させるために、緩衝液(パッファ)をレジンに添加したり、バッファのみを取り除いたりすることで、レジンの置かれている環境の変化を作ってやります。

    具体的には、バッチ法とカラム法があります。以下にそれぞれ説明していきます。

    バッチ法

    レジンに緩衝液を添加してスパテルでかき混ぜて、レジンの環境の均一化を行います。次に、

    編集履歴
    2020/06/22 はりきり(Mr)

    条件の基本は、電気伝導度とpH

    conductivityとpHの組み合わせ条件を網羅的に実験します。最初は、吸着条件です。その後、洗浄条件も必要ですが、簡便さを追求する場合は、吸着条件の実験データから目的タンパク質の部分的精製条件とすることも可能です。

    • レジンの選定
      • 陽イオン交換
      • 陰イオン交換
      • 疎水担体
      • マルチモーダル
    • 電気伝導度(conductivity)
    • pH
    • その組み合わせ
    • レジンの選定

    検討の概要

    • 陽イオン・陰イオン交換レジン及び疎水担体では、pHとNaCl濃度の組み合わせ
    • ハイドロキシアパタイト(HA)では、NaCl濃度とリン酸(K2HPO4)の組み合わせ
    • Adhere、MMCでは、陽イオン・陰イオン交換レジンと同様、pHとNaCl濃度の組み合わせを使いますが、遠濃度は、高めの範囲を設定します。

    実験方法

    レジンの準備
    • レジンの洗浄(酸・アルカリ、中和、最後に水に平衡化)
    • 遠心してWet volumeを測定
    • その一部を採取して、数日乾燥させて、前後の重さを測定
    • レジンのwet volume(g)を使用した時、含まれる水の量を見積もる(計算しておく)
    出発材料の準備
    • 培養上清
    • 組成が不明でも良い
    • 培養液を水で希釈系列を作る
      • 1倍(希釈無し), 0.1mLを調製
      • 1.5倍, 0.1mLを調製
      • 2.0倍, 0.1mLを調製
      • 5.0倍, 0.1mLを調製
      • 10倍, 01mLを調製
    吸着反応とアッセイ
    • 培養液の希釈系列にレジンを添加
      • 96 well microplateで(プレートミキサー)も良い
      • 蓋つき試験管でも良い(サクラローターで攪拌)
      • 室温, 1hr
    • 分析
      • SDS-PAGE
      • 特異的アッセイ
    • 希釈率を決定

    編集履歴

    2021/02/25, Mr.HARIKIRI

  • [Bio-Lab] 実験の自動化 –  小型PLCでUF/DF工程を低コストで自動化する [2020/05/25]

    [Bio-Lab] 実験の自動化 – 小型PLCでUF/DF工程を低コストで自動化する [2020/05/25]

    はじめに

    バイオの実験でUF/DFは、結構面倒です。メーカーからは、大袈裟な装置が市販されています。もっとシンプルに簡単に低コストで、サンプルを調製することが可能です。

    PLCとは

    PLCとは、三菱電機は、「シーケンサー」と言っています。業界では、Programable Logic Controller (PLC)といいます。ラダー言語で、リレーのON/OFF、タイマーをプログラミングすることで、シーケンシャルな自動制御を行うことを担うコントローラーです。

    シーケンス制御は、JISでも定義されています。至る所で密かに使用されています。AIではないので、学習はしません。

    編集履歴
    2020/05/25 はりきり(Mr) 図などは、また今度、追加します。

    シーケンス制御

    予め定められた順序又は手続きに従って制御の各段階を逐次進めていく制御 (JIS Z 8116:1994 自動制御容疑 一般)

    用途

    とにかくどんなところにも使用されています。

    • 自動販売機
    • 自動ドア
    • エレベーター
    • 洗濯機
    • FA (ファクトリーオートメーション)
      • 大規模工場のマシンからのデータの収集 (→ネットに載せる)
    • 発電所、変電所

    Bioの実験に応用する

    自作でクロマトグラフィー装置もUF/DFシステムも構築できます。

    • 液体クロマトグラフィー装置
    • UF/DF System
    • ろ過システム

    必要な機材

    • PLC
      • Omron PLC: 1万円~
      • 入力は、5V~24Vのトランジスタ入力
      • 出力は、100V ACが可能なリレー接点
      • 100V AC可能なリレー接点
    • PLC プログラミングソフトウェア
      • Omron : 5千円
    • 送液ポンプ
      • MasterFlex Pump (600rpm, ヤマト化学)
        • 10万円~20万円
    • 延長タップ
    • 液面センサー
      • KEYENCE FUシリーズ
      • KEYENCE アプユニット

    組み立て

    組み立ては、以下の通りシンプルです。

    • PLCに100Vコンセントプラグの接続
    • PLCの出力リレーと100Vを接続して、延長タップ(メス)に接続
    • 送液ポンプの100Vコンセントを、前述の延長タップ(メス)に接続
    • 液面センサーとアンプユニットを接続
      • 赤外線がアンプから1つ出ている。
      • センサーに繋ぎ、センサーからの戻りをアンプに繋ぐ(センサーのファイバー2本をアンプに繋ぐ)
      • アンプは、12~24Vの電源に繋ぐ
      • アンプの設定により、センサーの感度を設定する

    プログラミグ

    PCにソフトウェアをインストールして、プログラミングします。

    確認事項

    • 入力リレーのアドレス
    • 出力リレーのアドレス

    ラダー

    • 左と右に縦線があります
    • 最小単位は、左から右にプログラミグします
      • 入力リレー(ロード命令)を配置する
      • その右側に、出力リレーを配置する
      • 以上で、1行です。
      • 基本的にこれで制御は可能です。
      • 入力リレーがONの場合、出力リレーがONとなります
    • でも、これでは、チャチリングします。入力リレーがONになってから、数秒間のタイマーを入れます。その間は、無条件に出力リレーを維持します。
    • 基本的には、以上で完了です

    UF/DFに使用する

    濃縮段階

    • ビーカーに濃縮したいサンプル溶液を入れます。
    • ファイバーセンサーをビーカーの側面において、スライドさせて、液が有る/無しで、リレーがON/OFFするように、感度を調節します
    • 濃縮の完了位置に、センサーをビニールテープで固定してします
    • この状態では、出力リレーはONになっているので、ポンプは稼働状態になっているはずです
    • 濃縮が進んで、液面が下がり、ファイバーセンサーに達した時に入力リレーはOFFになり、出力リレーもOFFになり、ポンプは停止します。

    以上で、濃縮段階での自動化は、完成しました。

    UF/DF段階

    上記の完了状態から、もう一台用意していた送液ポンプ(2)で、用意していたバッファーを、サンプルのビーカーに送液します。すると、液面が上がり、ファイバーセンサーが反応して、濃縮が開始されます。送液ポンプ(2)の流速をろ過流量より小さく設定しておくことで、バッファー交換の自動化運転が行われることになります。

    以上が基本的ですが、安全装置も必要です。以下にシンプルにできるかも課題なので、以下のようなアイデアも有るので、ご参考にしてください。もちろん、フル構築も可能です。

    以上

  • [Bio-Edu] 沈殿化法によるタンパク質の回収・分離 – 検討方法 –  ID4376 [2020/12/11]

    [Bio-Edu] 沈殿化法によるタンパク質の回収・分離 – 検討方法 – ID4376 [2020/12/11]

    はじめに

    Ribonuclease Aのアセントン沈殿の条件検討につい、学生さんが精力的に実施されている文献の紹介をして、その後、昔から知られている一般的な沈殿法について紹介してします。

    Ribonuclease Aの沈殿精製

    界面活性剤による沈殿生成とアセトンによる 沈殿溶解を利用したタンパク質の回収・分離 - 新居浜工業高等専門学校 第51号 (2014)

    逆ミセル抽出法

    • 逆ミセル
      • 無極性溶媒中、極少量の水をコアとして、界面活性剤が会合したナノスケールの分子の集合体
      • 微小水槽が、界面活性剤分子によって、有機溶媒から隔離されている状態
      • この状態では、タンパク質は変性することなく逆ミセルの内部にとじこめられる
    • 操作法
      • タンパク質水溶液を用意
      • 逆ミセルを形成した有機溶液を用意
      • 2つを接触させる
    • タンパク質の逆ミセルへの移行の原理
      • タンパク質と界面活性剤の親水基との静電的相互作用

    逆ミセルからタンパク質の抽出

    • タンパク質を含む逆ミセルに
    • 水溶液を接触させ、界面活性剤との相互作用を弱くする
    • タンパク質は、水層に移動するが、その効率は低い

    逆ミセル抽出法の改良 (Shinらの方法)

    検討タンパク質 : 鶏卵白リゾチーム (14.3kDa, pI:11), 牛膵臓リボヌクレアーゼ(13.7kDa, pI9.6)

    • 界面活性剤による沈殿形成
      • 原理 : タンパク質は水中でイオン性界面活性剤により沈殿形成する
      • 2-エチル(ヘルシル)スルホコハク酸Na(AOT)
      • 等量(5mL)を5sec混和、静置→遠心→ppt→蒸留水で洗浄→Acetone 1vol(5mL)で溶解→0.1M NaCl 10μL→沈殿化→静置→遠心→ppt→Acetone洗浄→乾燥→蒸留水溶解
    • 極性有機溶媒による回収
      • 形成した沈殿を溶解
      • acetone (solubilization◯、precipitation◯)
      • 1-propanol, 2propanol (solubilization◯、precipitation×)
      • ethanol/ethylene glycol (solubilization△/×、precipitation-/-)
    • 電解質水溶液を極少量添加
      • NaCl 水溶液(電解遮断効果、濃度が高いほど沈殿↓)
      • 極性有機溶媒は、タンパク質から外れ、界面活性剤は、極性有機溶媒と混和
      • タンパク質は沈殿のまま回収できる
    • 低い界面活性剤の濃度で処理可能

    硫安、アセトン、TCAなど、タンパク質の沈殿法プロトコールまとめ – ThermoFisher -より

    https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/protocols-of-protein-precipitation/

    トラディショナルな沈殿法

    • 硫酸アンモニウム(硫安)沈殿法
      • マイルドなタンパク質沈殿化法
      • 飽和硫安濃度33%でIgGが沈殿、アルブミンは50%程度で沈殿する
    • アセトン沈殿法
      • 昔の血漿分解製剤で使用
    • トリクロロ酢酸(TCA)沈殿法
      • 酸性等電点を持つタンパク質に適用できる
      • グリシン塩酸法
    • TCA/アセトン沈殿法
    • クロロホルム/メタノール
      • SDSなどを除けるMS(質量分析)用のタンパク質の回収
    • 酸性pH処理
      • pH3~pH5にすることで、沈殿するものもあります。DNAなどの核酸が沈殿します。DNAでなくタンパク質も沈殿するものもあります
      • DNAとタンパク質が共沈したとしても、その他の不純物と分離ができていれば、よしとします。後の処理でDNAとの分離を考えましょう
      • 添加する酸は、タンパク質にマイルドな酢酸を使用します。塩酸は決して使ってはいけません。タンパク変性しやすいためです
    • 食塩(NaCl)添加
      • 3~5MのNaCl溶液を少ない量から適当添加していく方法で、スモールスケールの検討を行います。
      • 酢酸を添加して酸性pHにしても沈殿が生じない場合に、追加的にNaClの添加をすると沈殿することもあります
    • EtOH分画
      • 血漿分画製剤で使用される実製造に使われている
      • この技法は高度である。再現性を得るには、温度管理、pH管理、及び伝導度管理を厳密に制御する必要がある

    参考

    タンパク質精製は、SDS-PAGE分析で検出できる狭雑タンパク質の分離だけでは不十分です。endotoxnや核酸も不純物です。タンパク質から核酸を除去する目的ではないですが、沈澱法としてCTAB沈澱法についても以下に紹介します。この方法も昔から行われていた沈澱法です。

    • CTABによるplasmid DNAとRNA/endotoxinの分離 2)

    検討方法

    マイクロサイズ法

    沈澱化の検討は、200μL程度のガラス製のバイアルを使えば効率的です。Biacore用のサンプルチューブがいい感じに使えます。透明度と数百μLで検討ができて、サンプル量も効率的です。

    操作法

    • 100μLのサンプルをGlass vialに分注
    • 酢酸原液を数μLずつ添加
    • 別途、添加量とpHを確認しておく
    • 酢酸は、タンパク質の溶解性を高めるので、入れすぎは逆効果です
    • ですが、酢酸で低pHのタンパク質溶液にNaClを添加して塩濃度を高めると疎水性がより高まるためタンパク質が沈澱化しやすくなります
    • 分子量が大きいて沈澱化効率は高まります
    • 以上のことを踏まえて、沈殿化条件を決定していきます。

    分析

    • UVスペクトル(A200~700, NanoDropが便利)
      • A260/A280比率は、タンパク質と核酸のコンタミ具合の指標
    • SDS-PAGEによるタンパク質の純度分析
      • 目的物の分子量を指標に評価
    • Endotoxin分析 (option)
      • LAL法 (Kit)
    • DNA分析 (option)
      • PicoGreen (Kit)

    1) Glass vials

    Borosilicate glass vials in a range of sizes and volumes. For use with Biacore systems.

    沈殿化検討に使用する透明なガラスバイアル。ゴム栓も購入できるので、それを使えばしばらく保存が可能。検討である程度たまったら写真を撮ってから廃棄です。

    https://www.cytivalifesciences.com/en/us/shop/protein-analysis/spr-label-free-analysis/accessories-vial/glass-vials-p-05546

    2) Milligram scale parallel purification of plasmid DNA using anion-exchange membrane capsules and
    a multi-channel peristaltic pump (2007)

    低濃度CTAB (0.1-4g/L) 沈殿法によるpDNAとRNA/Endotoxinの分離 : 2g/L or 10g/L CTAB/50mM NaCl溶液を添加し、Incubation20分, cfg(38,000xg 20min, 20℃)/pptを70% EtOHで洗浄し、0.6M NaCl, 25mM Tris-HCl, 1mM EDTA, pH7.4で氷冷下で溶解。

    https://www.researchgate.net/profile/Stefan_Schmidt15/publication/6232344_Milligram_scale_parallel_purification_of_plasmid_DNA_using_anion-exchange_membrane_capsules_and_a_multi-channel_peristaltic_pump/links/59de01f545851557bde325bd/Milligram-scale-parallel-purification-of-plasmid-DNA-using-anion-exchange-membrane-capsules-and-a-multi-channel-peristaltic-pump.pdf?origin=publication_detail

    まとめ

    今回、タンパク質の沈殿化方法の色々を紹介しました。これらの方法で、タンパク質を純度よく精製するには、条件をもっと厳密にコントロールしなければなりませんが、今回紹介した中では、そこまで条件を詰めて設定されたものはありません。

    沈殿化法で、更にタンパク質の精製を極めたいと思っているなら、エタノールを使用した沈殿化による血漿タンパク質の精製方法として、Cohn Ethanol Fractionationが知られているので、それを当たるのも手です。Cohn法では、厳密な条件のコントロールが必要です。例えば、温度(4℃)、pH(酸性から中性に徐々に上げていく)、塩濃度、EtOH濃度(徐々に上げいく)により、血漿から段階的にタンパク質画分を沈殿させていきます。大雑把に言うと、最初に沈殿化する画分には、高分子(Fibrinogenなど)、続いて免疫グロブリン(IgGなど)、最後に、血漿タンパク質として最も多いアルブミムです。少しの条件設定のミスで、純度・回収率が悪化したり、タンパク変性したりします。機会があれば、Cohn Ethanol Fractionについてもご紹介したいと思います。

    今回、紹介したタンパク質の沈殿化法でも、回収率が悪いとか、純度が悪いとかいった場合は、pH, 塩濃度、温度などを見直してみてください。

    編集履歴
    2020/04/09 はりきり(Mr)
    2020/05/23 追記 (はじめに、まとめ)
    2020/09/23 追記 (酢酸の添加、NaClの添加、検討方法)
    2020/11/05 追記 (CTAB沈殿法によるpDNAとRNA/endotoxinの分離)
    2020/12/11 追記 (操作法 by Mr.HARIKIRI)

    以上

  • [Bio-Edu] 細菌・ウイルスをフィルターろ過で除去する[2020/05/25]

    [Bio-Edu] 細菌・ウイルスをフィルターろ過で除去する[2020/05/25]

    はじめに

    バイオ医薬品の製造において、製品段階では細菌が含まれないことを保証する必要があります。

    ウイルスにおいても、どれくらいの確率で含まれないかを証明する根拠となる予備データと、その確率を保証できる条件でろ過したことを保証する必要があります。

    ウイルスに関しては、少々コストを要することになります

    細菌のろ過による除去

    バイオ医薬品は蛋白質です。細菌との大きさの違いを利用して、フィルターによるろ過により細菌をフィルターに捕捉して除去します。

    • 細菌を除去する工程の実施
    • 細菌が含まれないことを示すテストの実施

    細菌をタンパク液から除去するには、0.22μmのフィルターを使用します。

    • 大きい
    • 細菌(5μm)
    • フィルターろ過 (サイズ: 0.22μm)
    • タンパク質 (~10nm)
    • 小さい

    ウイルスのろ過による除去

    ウイルスの除去については、細菌の除去のようには、簡単ではありません。理論的には、ウイルスは1個であれば感染すると考えられます。ウイルスの測定も簡単ではありません。ウイルス除去は、ウイルス・クリアランス試験という項目があり、詳しい説明はそちらに任せます。

    簡単な説明は、以下の通りです。

    バイオ医薬品の世界では、ウイルス除去フィルターが市販されています。公称としては、20nm, 30nmなどの孔径(ポアサイズ)がありますが、バッファー条件、温度、ろ過速度なでど、ウイルスの運動・形状などか変化するため、除去効率は変化してしまいます。

    • 大きい
    • 細菌(5μm)
    • フィルターろ過 (サイズ: 0.22μm)
    • ウイルス (20nm~100nm)
    • ウイルス除去フィルター(20nm, 30nm, etc)
    • タンパク質 (~10nm)
    • 小さい

    まとめ

    細菌もウイルスもろ過による除去方法は、基本的にその大きさを利用しています。ただし、ウイルスの場合は、その大きさが、細菌と比べて相当小さく、タンパク質に近いため、サイズによる分別除去は簡単ではありません。ウイルスを除去するためには、フィルターのポアサイズを厳密にコントロールできる高度な製造方法を要するためです。

    バイオロジクスにおけるウイルスの除去に関しては、ウイルス・クリアランス試験という項目が設定されています。ちらもご参照ください。

    編集履歴

    2020/03/07 はりきり(Mr)
    2020/05/25 追記(ウイルス濾過)

    以上

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  • [Bio-Lab] マニュアル式のラボスケール・カラムクロマトで蛋白質精製の条件を検討する – ID3106 [工事中]

    [Bio-Lab] マニュアル式のラボスケール・カラムクロマトで蛋白質精製の条件を検討する – ID3106 [工事中]

    はじめに

    タンパク質精製の戦略

    高価な装置が無くても始められる蛋白質の精製について解説する。

    予算が少ない大学の研究室や高価な装置を整備できないベンチャーでの蛋白質精製について、タンパク質精製に関して初期教育、原理を理解しながらの目的蛋白質の精製サンプルの取得が可能である。

    取り敢えず、1mLカラムでのスモールスケールによるサンプル調製から、400mLカラム程度のスケールアップも可能です。

    初期のサンプル調製においては、クロマト装置は重厚長大です。使用前と後のシステムの洗浄など、結構面倒です。こんな初期に使うものではありません。

    AKTAの出番は、その先に待っています。そもそもタンパク質精製は、集中して条件設定を実施し短期間で片付けるのです。

    編集履歴
    2019/11/10 はりきり(Mr)
    2020/06/19 追加 (未完)

    準備

    情報収集

    精製しようとしているタンパク質はなんですか? 精製タグは付いていますか? Refoldingは必要ないですか? 分子量を把握していますか? 等電点は? 疎水性?

    タンパク質の情報

    まずは、敵を知ることからです。情報を収集しましょう

    • アミノ酸配列 : 以下の情報を知るために必要です
      • 分子量
      • 等電点
      • 疎水性
    • 精製タグ : 精製タグは、最大でもHis-tag程度にしておきましょう。その他精製タグは、物性を変化させたり、活性にも影響します
      • His
      • GST
      • etc

    出発材料

    • 微生物
      • E.coli
      • 酵母
    • 動物細胞
      • CHO細胞
      • HEK細胞

    生産

    • 微生物培養 → Inclusion Body(この解説では、これを前提)
    • 動物細胞培養 → 培養上清

    検討準備

    目的蛋白質の測定法を考える (SDS-PAGE, ELISA, RPHA, 逆相HPLC、アフィニティカラム)

    目的蛋白質についてRefoldingが必要か検討する。ここでは、Refoldingについては記載していない。

    プレパックカラムは使わず、エンプティカラムにバルクのレジンを自己充填したカラムを使用する

    クロマト装置は、基本的に必要ではなく、ピペット操作かペリスタリックポンプを使う

    カラムサイズは、0.5mLから100mLを想定する。取得する蛋白質は、数mgから1g程度。

    小さいカラムサイズでは、自然落下でクロマトを行う。

    大きいカラムサイズではペリスタリックポンプを使用する

    装置

    SDS-PAGE装置
    UVメーター(A280, A260なとを測定)
    ピペット、チップ
    ペリスタリックポンプ
    • シリコンチュープ
    • シリコングリス
    pHメータ
    試験管
    • マルエムチューブSS14
    • 50mM遠心管

    手順

    1. 手順 – 装置、カラムの充填及びカラムの取り回し(マニュアル)

    GE HealthcareのEmpty Columnにレジンを充填(0.5mL or 1mL)

    カラムクロマトは、自然落下による(線速は大きくなるが、レジンの最大キャパシティより1/3程度低いアプライ量で行うため、クロマト自体に問題は少ないが、常に考慮する必要がある点である)。

    フラクション回収は、6カラムボリューム(CV)

    6CV分のバッファを調整しておき、順次カラムにアプライしてカラムからでる液をチューブで回収する

    2. 手順 – 吸着条件の決定

    各種バッファの準備

    水洗いしたバルクのレジンを使って0.5mLカラムの準備 30%から50%程度のスラリでカラム充填する

    カラムの洗浄と平衡化

    血漿や培養液の前処理してアプライサンプルを準備する : 水と酸及びアルカリにより電気伝導度とpHの調整

    アプライサンプルのロードとパスした未吸着画分の回収及び目的蛋白質の測定 : 身吸着画分の量が多い場合は、未吸着画分に更に水と酸及びアルカリを添加して吸着しやすく調整し、その未吸着画分をそのまま再アプライする。満足する未吸着画分量から、水と酸及びアルカリでの調整量を最終決定する。

    3. 手順 – 洗浄及び溶出条件の決定(1)

    アプライpHと同じpHで、塩濃度を確認する : ベースバッファを作成し、3M NaClで段階的になるよう塩濃度の異なるバッファを作成し、順次カラムにアプライしフラクションを回収する。蛋白質量を測定し、目的の蛋白質が洗浄画分に溶出されない条件を洗浄画分に決定、溶出が完了する条件を溶出条件に決定する。

    4. 手順 – 強固に結合した目的物と不純物の存在について心証をえるための操作

    6M 塩酸グアニジン(GuHCl)を0.5CVアプライ、水を5.5CVアプライし全てを回収する。この画分は、アプライサンプル、洗浄画分、溶出画分と一緒にSDS-PAGE分析を行う。目的蛋白質の染色バンドと同位置に対して、6M GuHCl画分にどれくらいの割合が含まれているか、不純物はどれくらいの割合が含まれているか確認する。

    6M GuHCl画分中に容認できない量の目的蛋白質が含まれていた場合、上述の手順で6M GuHClの手前までの手順を再度実施する。その後、以下の手順に従い最適な溶出pHを決定する。

    5. 手順 – 溶出条件の決定(2)

    pHを上げるか下げるか方針を決定する。カラム内の塩濃度を下げるために水6CV添加する。溶出条件の決定(1)で実施したようにバッファを作成するが、今度は、異なるpHでNaCl濃度を決定していく。最後に6M GuHCl画分を回収し、前回と同様にSDS-PAGEを行い溶出効果の違いを確認する。洗浄する場合のpH及び溶出する場合のpHを、この検討から決定することができる。もしかすると洗浄のpHは溶出のpHと異なることもある。

    今後、各手順の詳細や根拠は随時アップデートする予定、2019/11/10 by はりきり(Mr)

    高価な装置が無くても始められる蛋白質の精製

    マニュアル操作によるカラムクロマト条件の決定

    蛋白質の精製を行おうと思う時は、その必要性に迫られてのことだと思うので、原材料は準備されているとの前提で、以下話を進めます。装置の洗浄やその他準備が必要ないため小回りが効き短時間で条件設定し精製品を取得できる

    大学や高価な装置を整備できないベンチャーでの蛋白質精製についての初期教育はもとより目的蛋白質の精製品の取得に役立つ。例えば、ツール蛋白質の取得には有効である。

    準備

    目的蛋白質の測定法を考える (SDS-PAGE, ELISA, RPHA, 逆相HPLC、アフィニティカラム)

    目的蛋白質についてRefoldingが必要か検討する。ここでは、Refoldingについては記載していない。

    プレパックカラムは使わず、エンプティカラムにバルクのレジンを自己充填したカラムを使用する

    クロマト装置は、基本的に必要ではなく、ピペット操作かペリスタリックポンプを使う

    カラムサイズとして0.5mLから100mLは対応可能(数mgから1g程度まで取得可能。小さいカラムサイズでは、自然落下でクロマトを行う。大きいカラムサイズではペリスタリックポンプを使用する

    手順

    1. 手順 – 装置、カラムの充填及びカラムの取り回し(マニュアル)

    SDS-PAGE装置

    UVメーター(A280, A260なとを測定)

    ピペット、チップ

    ペリスタリックポンプ、シリコンチュープ、シリコングリス

    HORIBA ハンディpHメータ及び伝道度メータ

    マルエムチューブSS14, 50mM遠心管

    GE HealthcareのEmpty Columnにレジンを充填(0.5mL or 1mL)

    カラムクロマトは、自然落下による(線速は大きくなるが、レジンの最大キャパシティより1/3程度低いアプライ量で行うため、クロマト自体に問題は少ないが、常に考慮する必要がある点である)。

    フラクション回収は、6カラムボリューム(CV)

    6CV分のバッファを調整しておき、順次カラムにアプライしてカラムからでる液をチューブで回収する

    2. 手順 – 吸着条件の決定

    各種バッファの準備

    水洗いしたバルクのレジンを使って0.5mLカラムの準備 30%から50%程度のスラリでカラム充填する

    カラムの洗浄と平衡化

    血漿や培養液の前処理してアプライサンプルを準備する : 水と酸及びアルカリにより電気伝導度とpHの調整

    アプライサンプルのロードとパスした未吸着画分の回収及び目的蛋白質の測定 : 身吸着画分の量が多い場合は、未吸着画分に更に水と酸及びアルカリを添加して吸着しやすく調整し、その未吸着画分をそのまま再アプライする。満足する未吸着画分量から、水と酸及びアルカリでの調整量を最終決定する。

    3. 手順 – 洗浄及び溶出条件の決定(1)

    アプライpHと同じpHで、塩濃度を確認する : ベースバッファを作成し、3M NaClで段階的になるよう塩濃度の異なるバッファを作成し、順次カラムにアプライしフラクションを回収する。蛋白質量を測定し、目的の蛋白質が洗浄画分に溶出されない条件を洗浄画分に決定、溶出が完了する条件を溶出条件に決定する。

    4. 手順 – 強固に結合した目的物と不純物の存在について心証をえるための操作

    6M 塩酸グアニジン(GuHCl)を0.5CVアプライ、水を5.5CVアプライし全てを回収する。この画分は、アプライサンプル、洗浄画分、溶出画分と一緒にSDS-PAGE分析を行う。目的蛋白質の染色バンドと同位置に対して、6M GuHCl画分にどれくらいの割合が含まれているか、不純物はどれくらいの割合が含まれているか確認する。

    6M GuHCl画分中に容認できない量の目的蛋白質が含まれていた場合、上述の手順で6M GuHClの手前までの手順を再度実施する。その後、以下の手順に従い最適な溶出pHを決定する。

    5. 手順 – 溶出条件の決定(2)

    pHを上げるか下げるか方針を決定する。カラム内の塩濃度を下げるために水6CV添加する。溶出条件の決定(1)で実施したようにバッファを作成するが、今度は、異なるpHでNaCl濃度を決定していく。最後に6M GuHCl画分を回収し、前回と同様にSDS-PAGEを行い溶出効果の違いを確認する。洗浄する場合のpH及び溶出する場合のpHを、この検討から決定することができる。もしかすると洗浄のpHは溶出のpHと異なることもある。

    今後、各手順の詳細や根拠は随時アップデートする予定、2019/11/10 by はりきり(Mr)

  • [Bio-Edu] タンパク質の沈殿化法の原理 [2022/12/20]

    [Bio-Edu] タンパク質の沈殿化法の原理 [2022/12/20]

    はじめに

    無機塩の高濃度添加は、タンパク質を沈殿させる基本です。タンパク質溶液に対して塩を添加することで、タンパク質の疎水性という物理的性質の強度を溶液中で強めることができます。疎水性が高まると、そのタンパク質の成分である疎水性のアミノ酸や疎水性の領域が、水を避けて互いにより集まり結合します。その性質の違いは、そのタンパク質固有のアミノ酸の含有比率に応じて、タンパク質毎に沈殿化する塩の種類、濃度、溶液pH、及び当該タンパク質のタンパク質濃度などの組み合わせに応じて重合化し、やがて沈殿化します。

    • タンパク質濃度
      • 沈殿とは分子同士が互いに寄り添い凝集することです。その基本原理からすると、沈殿させたいタンパク質の濃度が高いほど、沈澱しやすくなることは容易に理解できます。
    • タンパク質の分子量
      • 分子量が大きいほど、疎水性のアミノ酸の総数は一般論として多くなることは理解できます。すなわち、疎水性アミノ酸が増えるので沈殿になりやすいのです。
    • タンパク質のアミノ酸組成の比率
      • これは、上述のタンパク質の分子量から推定するよりは、直接的に評価できる指標です。ただし、分子の立体構造上で表面に出ている疎水性のアミノ酸として多いほどという条件も付きます。
    • タンパク質のフォールディング(立体構造)の状況
      • タンパク質のフォールディングの状態とはなんでしょうか。タンパク質は、基本的に1本のペプチドの鎖が、巻き、折畳まることで、その天然の立体構造としての状態になります。この状態が、最も血液に溶けやすくなっているのです。すなわち、疎水性のアミノ酸は内側に、親水性のアミノ酸は外側に配置されることになります。ミスフォールディングすると、その状態が不整合しているため疎水性アミノ酸が外側に多く出ている状態が起こり得て、そのため分子間での疎水性同士の結合インタラクショにより沈殿形成しやすくなります。
    • 溶液のpH
      • これは、私の経験則ですが、理由をよく考えると理解ができるものと思っています。ただ、今までよく考えて小なったので、経験則だけで説明します。バッファ組成を酸性にすると疎水性が高まり、逆にアルカリ性にすると疎水性が低下します。
      • この原理を利用して、クロマトグラフィのカラムのレジンの洗浄・再生処理には、強アルカリ性のバッファが使われます。
    • 溶液の温度
      • 反応論や溶解度の話になります。温度が高いと分子のブラウン運動が大きくなり、溶解度は一般的に高くなります。逆に、温度が低くなるとブラウン運動は低下し、溶解度は低くなります。すなわち、温度が低いほど沈澱になりやすいと推察されます。しかし、反応論的には、反応しずらくなるため、疏水性を利用する疏水クロマトにおいては、タンパク質のレジンに対する反応としての吸着性は低下するため、低い温度での疎水クロマトはワークしなくなります。
    • 溶液の初期の塩濃度
      • 塩析させる場合、塩濃度を高めるので、単純に初期の濃度を問題にしているだけです。
    • 無機塩の種類と濃度
      • 塩析させやすい塩が知られています。硫酸アンモニウムがそれです。でも、疏水クロマトにはあまり相性が良くありません。そこで、もっとマイルドなNaClや、クエン酸(Na)などが使われます。

    塩を添加する方法による沈殿化の手法は、タンパクの精製に適するレジン(樹脂)がなかった昔に多用された技術です。この技術にはデメリットもあります。沈殿化したタンパク質は、沈澱を作る過程から状態を維持する過程で、タンパク質変性のリスクが高まります。理由は、沈殿化により、必要以上に強固に寄り集まったタンパク質が、水溶液に戻すときに再溶解しない場合がある事です。再溶解時に溶解しやすいようにする添加剤としての補助的に働くものがあります。グリシンなどのアミノ酸などは、その一種と考えられます。

    タンパク質の沈殿化法による精製手法の代替法が存在します。以下の課題について解決し得る方法です。それは、疏水クロマトグラフィー(HIC)です。ここでは、HICについては論じていません(はりきり)。

    沈殿化法の課題

    • 沈殿化したタンパク質には,条件によっては再溶解の困難性というリスクがあること.
    • いれまでは,工業的に遠心機は使用しにくかったが,最近では連続遠心と自動的に沈殿画分を回収できる機種も開発されている

    ホフマイスター系列

    1888年からのHofmeisterらの色々な塩を使った塩析実験から得られた塩析の強さは、ホフマイスター系列と呼ばれます。塩析効果の高い塩は利尿作用があり、逆溶解させる塩は下痢作用があると記述があります。

    タンパク質の凝集剤としての塩・有機溶媒・高分子 (2015), 生物工学, 第93巻

    https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9305/9305_tokushu_1.pdf

    デバイ – ヒュッケル理論

    静電相互素作用が主たる原理であるとするとデバイーヒュッケル理論で説明できる。しかし、実際には、タンパク質の塩析曲線はベルシェイプを示し、塩の種類によって異なる曲線を示すとの報告(1932年のGreenら)がある。すなわち、静電相互作用だけでは説明がつかず、別の相互作用や水の構造変化が影響していとる予想されていた。

    イオンは水の水素結合ネットワーク

    しかし、イオンは水の水素結合結合ネットワークに影響を与えないという論文が報告(2003)され、溶液中の水の構造を変えるのではなく、タンパク質の表面にある水和水に影響して、タンパク質の性質に影響しているのであろうと考えられた。

    その理屈は、コスモトロープが水和水の秩序化→表面張力の増加→溶液は表面を減らす→タンパク質が凝集する。この理論は、リゾチームの凝集速度と溶液の表面張力の間に、正の相関があるとの結果と矛盾しない。

    塩の種類により水和水の量に変化を生じさせていることについては、選択的相互作用の量として定義すると、

    選択的相互作用の量 =塩(溶質)がタンパク質に結合している量 − 水和水により脱離してしまつた溶質の量、と定義する。値が正であれば、結合している溶質の量の方が多い、負であれば、結合している水和水の量の方が多い。

    硫化物イオンの選択的相互相互作用の量は、塩化物イオンより小さい値を示すし、硫化物イオンは、塩化物イオンと並べて、タンパク質表面から選択的に排除されていることになる。

    ホフマイスター系列

    塩析する能力を示す。

    塩析しやすい (コスモトロープ) > CO3 > SO4 > H2PO4 > F > Cl > I > SCN > NH4 > K > Na > Li > Ca > Mg > 溶解 (カオトロープ)

    ホフマイスター系列は、周期表との規則性が見られる。

    ハロゲン属では、 周期表順に同じく、

    塩析しやすい > F > Cl > Br > I > 溶解

    である。

    アルカリ金属のカチオンでは、前述の逆となっている。したがって、沈殿材傾向は、イオンの半径や電子密度、質量で説明できることを示唆している。ただし、硫酸イオンやグアニジウムイオンなど複雑なイオンとは別の説明が必要と考えられる。

    タンパク質の溶解度

    一般的に、タンパク質の溶解度は、イオン濃度を増加させると増加し、それは極大値があり、ベルシェイプを示す。

    デバイーヒュッケルの理論

    デバイーヒュッケル理論で説明すると、塩を添加していくと、溶解から凝集まで一直線に状態変化する。低濃度では、静電遮蔽によってタンパク質の分子間の反発力が静電遮蔽により弱まる→分子の容積が減る→溶解度が増す、と説明できる。更に塩を加えていくと、タンパク質間のファンデンワールス力や疎水性相互作用などの引力が強まる→凝集する、と説明できる。しかし、実際には、溶解→凝集→溶解なるため矛盾がある。

    コスモトロープ

    コスモトロープ; kosmotropeは,水の水素結合ネットワークを秩序化(コスモス)する。Structure Makerとも呼ぶ.

    タンパク質表面の水和水について考えてみると、溶解状態のタンパク質液が、凝集するまでのイベントは、以下の様になる。

    「秩序化」→「気液界面の表面張力を増加させる」→「広くなった界面は不安定になる」→「溶液は安定化させようとする」→「表面を枯らそうとする→タンパク質はより集まる」→「凝集する」

    カオトロープ

    カオトロープ; chaotropeは,水の水素結合ネットワークを無秩序化(カオス)する。溶解する理論すは、上述の逆の理屈である。Structure breakerとも呼ぶ.

    水構造緩和に対するコスモトロープとカオトロープ塩の影響

    https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/33031702

    表面張力

    水和を理解するための指標の一つ。surface tension, 表面をできるだけ小さくしようする性質。

    有機溶剤

    古くからDNA/RNAの沈殿材として用いられてきた。タンパク質への応用はアルコールによる血漿タンパク質の沈殿法から始まっている。

    原理は、水溶液の伝導率を低下させ、タンパク質間の静電反発力を強める結果、溶解度が減少するといわれるが、それだけではなく、有機分子とタンパク質の相互作用についても考慮する必要がある。

    エタノールとジオキサンの検討では、アミノ酸やペプチドの有機溶剤に対する溶解度を調べた論文では、疎水性側鎖を安定化させ、親水性の側鎖やペプチド結合を不安定化させることがわかっている。

    還元Albの検討では、エタノールは、タンパク質の疎水性部分と相互作用し変性させながら溶解度を上げるが、荷電残基の影響によりタンパク質の溶解度は低下した。

    ハロゲン系アルコールの検討では、50%トリプルオロエタノール中では、主鎖の間にできる水素結合が弱められる結果、αベリックス構造に富んだ構造に変性するが、溶解度は高くなり、最終的には、透明なゲルになる。

    エタノール中でのタンパク質の凝集の制御は、わずかなpHシフトにより可能である。凝集を防ぐにはpHをpIから外すことである。

    ①構造変化を伴う疎水性の変化

    ②溶液の伝導率の低下

    ③相互の非極性領域の相互作用

    ④相互の荷電残基の相互反発

    高分子

    高分子の中でもPEGは無毒であり、よく使用され、無荷電である。PEGは、タンパク質の選択的水和を促す。

    芳香属アミノ酸では、その溶解度は増加する。高分子が存在すると、タンパク質が存在できる空間が狭くなる。これを排除体積効果という。

    PEGは、以下の2つの作用を有する。

    ① 排除体積効果によるタンパク質の安定化と凝集

    ②弱い変性作用(疎水性アミノ酸に結合)によるタンパク質の不安定化と溶解促進

    また、高分子は、タンパク質のFoldingにも影響し、高濃度のPEGや多糖では、変性状態を不安定化させるので、ネイティブ構造が安定化し、Folding速度が増加する。

    編集履歴

    2020/11/02 追記 : はじめに
    2021/05/21 文言整備
    2021/06/01,追記(「はじめに」の説明を更に補充)
    2022/09/04,文言整備(課題として「取扱いとして液状での操作が悪いこと」を削除,遠心機は自動連続遠心機などの機種が開発されてきたことから,遠心機の取り扱い上の課題は低くなっていること,を追記)
    2022/11/24,文言整備
    2022/12/20,追記(カオトロープ,コスモとロープの英単語)
  • [Bio-Edu] タンパク質(蛋白質)の精製 – 基礎編 – 不純物の定義、RefoldingからUF膜精製、タンパク質精製の定石まで – そしてタンパク質を知る – ID686 △[2021/06/03]

    [Bio-Edu] タンパク質(蛋白質)の精製 – 基礎編 – 不純物の定義、RefoldingからUF膜精製、タンパク質精製の定石まで – そしてタンパク質を知る – ID686 △[2021/06/03]

    蛋白質の精製 (基礎)

    蛋白質の精製 (purification of protein)とは、不純物と混在している目的蛋白質を一定の性質を利用して物理化学的に分別して、最終的に目的の蛋白質のみを取り出すことです。

    蛋白質の精製の具体例とて、水溶液の状態でタンパク質が溶けているとします。その溶液には、その目的タンパク質以外のタンパク質、脂質、糖質、原材料由来のDNAなどの不純物を含んでいるとします。

    そのタンパク質液の成分(塩濃度、pH、有機溶剤濃度)を調節することで、担体(resin)と呼ばれる固定物への脱着、沈殿精製による不純物との分離(上清/沈殿)、活性炭への不純物吸着など、を実施可能となり、タンパク質を精製することができます。

    しかし、用いる出発材料に含まれる目的タンパク質の含有率が精製効果に強く影響します。目的タンパク質の含有量が多いに越したことはありません。昔の出発材料では、目的タンパク質の含有量が、現在と比べて1桁、2桁低かったため、その精製は非常に大変でした。

    最近の抗体医薬では、培養液での生産性は、5g/Lなど、一昔前と比べて10倍~50倍以上となり、相対的に不純物との比較で含有率の改善がなされています。そのため、昔と比較して精製の難易度は非常に低くなりました。

    このように出発材料の品質が高まったことで、抗体医薬の精製は、プラットフォーム化が可能になりました。すなわち、単純な精製方法でも精製することができると言うことです。もしも、出発材料の品質が低い場合は、もっと複雑な精製工程を組まなければ精製できないことになります。

    • 出発材料に含まれる目的タンパク質は、主たる成分量でなければ、精製することは難しい
    • 相対的な不純物の混入量は、少ない程、精製はしやすくなる。

    不純物とは (Impurity)

    バイオ医薬品では、動物細胞や大腸菌など人ではない細胞に目的の蛋白質の遺伝子を導入して、これらを培養することで目的の蛋白質を分泌させるという培養工程がある。

    以下、不純物の発生源を示す。

    • 培養中に死んでしまう細胞の中味が培養液中に放出される
    • 培養に使用する培地に含む添加物
    • 目的蛋白質の分解物(類縁物質)

    菌や動物細胞は、それらが生きていくための蛋白質などを生産しつつ、目的の蛋白質も生産してくれる。目的の蛋白質でない物質を不純物と定義する。不純物の種類には、宿主細胞由来の蛋白質や脂質、DNAなどが含まれる。

    • 蛋白質 (細胞質由来)
    • 糖質 (細胞由来の糖、endotoxinも含む)
    • 脂質 (細胞膜)
    • 核酸 (細胞の核由来DNA、付随するヒストンなど)

    出発材料

    現在では、遺伝子組み換えによる生産が主流となっているが、遺伝子組換え技術が開発されるまでは、目的蛋白質を生産してくれる菌や動物細胞を偶然見つけたりして専用に選択していた。

    選択した細胞を培養し、ある程度の細胞濃度に増殖させた後、刺激剤を使ったりして目的の蛋白質を生産させていた。例えば、夢の薬と言われたインターフェロン (interferon)は、血液中の白血球を集めて培養し、刺激剤を添加するとInterferonを分泌した。株化細胞を使う場合は、Namalwa細胞ATCCというlymphoblastを使い、刺激剤は、仙台ウイルスを使用してInterferonを分泌されていた。もう、今から40年以上の昔の話である。

    • 組織由来株化細胞
    • ハイブリドーマ
    • 遺伝子組換え大腸菌
    • 遺伝子組換え動物細胞

    沈殿精製

    その頃の蛋白質精製には、いろんなバリエーションの沈殿化法が多用されていました。

    • アセトン沈殿 (結晶分画製剤)
      • 一部の血漿分画製剤の沈殿化に使用されていました
    • エタノール沈殿 (Cohnのエタノール分画が有名)
      • 血漿分画製剤の精製に使用されています。
      • 温度管理を厳密にしないとタンパク変性してしまいます
    • 硫安沈殿
      • 血清・血漿からIgGを粗精製に使用できます。ウサギに免疫し血清を取得してから、30%飽和濃度でIgGを沈殿化できます
    • PEG沈殿 (血漿分画製剤)
      • rAAV精製にも最近まで多用されていました。最近は、Thermo Fisher Scienceの抗AAV抗体レジンが、性能が良く代替的に使われるようになりました
    • グリシン塩酸沈殿(血漿分画製剤)
      • Fibrinogeの沈殿精製など、分子量の大きな凝固因子に使用されていました

    再構成(re-folding)

    大腸菌で産生させたタンパク質の場合、立体構造の再構成(re-folding)処理が殆どの場合必要です。一般的にタンパク質は、アミノ酸が数珠繋ぎになっている一本の糸のようなものです。その糸がどのように絡まるかが、そのタンパク質の機能が発揮される条件です。その正しい絡まり方を導くことが、Re-foldingと言います。正しい絡まり方ができなかった結末の場合、それは、mis-foldingと言います。mis-foldingしたタンパク質を一旦解いてfoldingし直すには、Re-foldingが必要です。

    詳しい手順は、以下のページをご参照ください。

    [Bio-FAQ] Refoldingとはなんですか? [2022/11/16]

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    [Bio-Edu] 組換え大腸菌で造らせたタンパク質のリフォールディングおよび、その後の精製手順 [2020/08/19]

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    [Bio-Edu] 遺伝子組換え大腸菌からタンパク質を精製する製造フロー概略 – ID6624 [2020/01/09]

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    吸着精製

    その他にも土や活性炭、イオン交換樹脂や多孔性のガラスビーズ(Controlled Pored Glass: CPG)などが蛋白質を吸着させる物質として使用されていた。これらの物質を吸着担体 (resin)と呼んだすりする。

    • 土(ミドライド)
    • 活性炭
    • イオン交換樹脂
    • 多孔性ガラスビーズ ( controlled pore glass; CPG )Merck

    これらのトラディショナルな技術は、現在の技術にシームレスに生かされている。バイオ医薬品のハーベストに使用されるディプスフィルター(Depth Filter)には、土や活性炭が膜の素材と共に練りこまれている製品がある。

    クロマト精製

    ゲル濾過精製

    もっぱら研究室では、分子量で分画するGel Filtration Chromatography (GPC)を汎用していた。3cmφ x 120cmのカラムにSephacryl S-200などのレジンを1日ががり充填、バッファーによる平衡化、夕方にサンプルをロードして翌日までオートサンプラーでフランジョンを分取していた。

    アフィニティクロマト

    特に純度を高めたい場合は、免疫用の抗原をなんとかして精製し、ウサギに免疫して抗体を取得して、抗体をクロマト担体にカップリングしてAffinity Columnを用意した。更に、今から40年以上も前でも、精製度の改善には定評があったのは、リン酸カルシウムの結晶であるハイドロキシアパタイトであった。

    • ゲル濾過(Gel Filtration Chromatograph; GFC), Size Exclusion Chromatography (SEC)などとも言う
    • 抗体カラム
    • ハイドロキシアパタイト (リン酸カルシウム)

    ハイドロキシアパタイトは、通常は針状に結晶化したものをカラムに充填して使っていた。その針状結晶はもろいため、使用している間に粉砕が進み、繰り返し使用は難しかった。しかし、オリンパスがCeramix化に成功(人工骨の研究)したことで、蛋白質の精製に用途を広げて現在に至っている。

    精製の戦略

    精製の戦略 ( Purification Strategy )を考えてみる。

    現在では、3種類の異なるモードのカラムクロマト精製で蛋白質の精製を行うのが主流である。

    基本的な戦略は、(1)「キャプチャリング」、(2)「陰イオン交換体」、(3)「陽イオン交換体」の3つの特性の異なる担体を使った手法を用いれば、殆どの蛋白質は精製が可能である。

    1. キャプチャリング
    2. 陰イオン交換体
    3. 陽イオン交換体

    抗体の場合のキャプチャリングであるAffinity精製は、Protein AやProtein Gなどを用いる。血液由来の凝固系因子のAffintiy精製では、Heparin担体が適用できることが多い。

    1. Protein Aカラム
    2. Heparinカラム
    3. Tag精製(His-tabを付加している場合)

    どうしてもAffinityが使えない場合は、出来るだけAffinity精製と同等な精製方法を探索しなければ、精製は困難になってくる。

    その探索に注力する必要も生じるが、吸着キャパシティから選択するならば、陽イオン/陰イオンを使った条件設定に注力することも必要である。

    タンパク質の精製では、同じモードの精製方法は重ねてはいけない。それぞれのモードで除去できる不純物の特性はある程度一定であるため、同じモードを重ねても効率が悪く回収率の低下を招くばかりである。

    • 同じ精製モードは重ねないこと
    • 精製モードは、まんべんなく組み合わせること
    • 最初の精製工程は、キャプチャリングであることを意識する
    • バッファー組成は、次の工程への繋がりがよいこと
    • UF/DFも多用しないこと

    更に、純度がどうしても上がらない場合、疎水モードやマルチモーダルの使用も考慮する。

    • 親和性担体 (Affinity resin)
    • 陰イオン交換体 (Anion Exchange Resin)
    • 陽イオン交換体 (Cation Exchange Resin)
    • 疎水担体 (Hydrophobic Resin)
      • Phenyl Resin: 低分子か疎水性が弱い蛋白質用
      • Butyl Resin: 疎水性が強すぎる蛋白質用
    • マルチモーダル (Multi Modal Resin)
      • ハイドロキシアパタイト (BIO-RAD): 陰陽の両方のモードをもち、少なくとも塩濃度、リン酸濃度、pHの3つのパラメータを駆使できる
      • capto Adhere (GE Healthcare): 陰イオンと疎水性のモード持つ
      • MMC (GE Healthcare)

    クロマト精製と組合わせ技

    沈殿化 (precipitation)

    概要

    沈殿による精製方法も使える状況は多い。例えば、沈殿化しやすい蛋白質の場合、それを活用するのが効率的な場合もある。人工的にデザインした、ある蛋白質の部分的なドメインを精製する場合、そのドメインは自然界には無い人工的な物質であることで、物理化学的性質が通常とは異なっていることが想定される。

    そのような物質であるケースでは、少しの食塩の添加により電気伝導度(conductivity)が上がっただけで、沈殿化する場合がある。これは、しめたもんだ。喜んで沈殿物を回収して、その純度を確認しよう。

    塩濃度を上げて沈殿化させる場合、pHは低い方が沈殿化しやすい。これも活用できる。

    • 塩の添加
      • NaClで沈殿化できればラッキー
      • その他、硫酸アンモニウム
    • pHを5以下に下げる
      • タンパク質溶液のpHを下げる場合、HClは希塩酸でも禁忌!。タンパク変性が強い
      • 酢酸(Acidic Acid)がマイルド。ただし、高濃度の酢酸は、逆に効果となる。

    物性を活用する

    沈殿法の原理について確認しておこう。厳密な定義はないものの、アミノ酸が数珠つなぎになったもので、数十個程度ではペプチド (Peptide)と呼ばれ、更に大きくなり分子量が5000 (5kDa)以上で蛋白質 (Protein)と呼ばれる。

    アミノ酸の種類により塩基性、酸性、疎水性の特性があり、これらの数珠つなぎとしての全体の特性が、ある蛋白質の総体的な物性を示すことになる。蛋白質は、絡まない紐のように存在しているのではなく、折れ曲がったり、巻いていたり、アミノ酸同士の物性に応じた相互的に引き合って入り反発しあっていたりと関係性が生じており、その状況は、存在している溶液中の塩濃度、pHや共存している溶剤の影響をうけて、その立体的な構造が形作られる。

    そのためアミノ酸の配列依存的に、その立体構造が確定するものの、周りの状況により影響をうけるため、一意的に決まるものではない。まさに、それこそがある蛋白質の物性ということである。セントラルドグマなどいいう言葉も聞いたことがあるが、僕は、そのような理論はよく知らない。

    沈殿法の種類

    • 塩析
      • 飽和劉安
      • NaCl
      • リン酸カリウム
      • グリシン塩析
    • 有機溶剤による沈殿
      • EtOH沈殿 : CORN Ethanol Fractionationが有名である。
      • アセトン沈殿
    • pHを下げる
      • pH6より低いpHに調整
      • 蛋白質によっては、中性pHで沈殿化するためpH8などのアルカリ性にする場合もある

     沈殿法(参考ページ)

    はじめに 無機塩の高濃度添加は、タンパク質を沈殿させる基本です。タンパク質溶液に対して塩を添加することで、タンパク質の疎水性という物理的性質の強度を溶液中で強めることができます。疎水性が高まると、そのタンパク質の成分であ…
    はじめに タンパク質の精製とは、どのような作業をするのでしょうか? 精製とは目的物と異なる物質を取り除き、目的物質の割合を上げること、すなわち純度を高めることです。 ここでは、イオン交換体を用いたタンパク質の精製の原理に…
    はじめに Ribonuclease Aのアセントン沈殿の条件検討につい、学生さんが精力的に実施されている文献の紹介をして、その後、昔から知られている一般的な沈殿法について紹介してします。 Ribonuclease Aの沈…
    文献情報のみ A simplified purification method for AAV variant by polyethylene glycol aqueous two-phase partitioning …

    膜で不純物を吸着除去

    Depth filterという製品群がある。当然、日本製では製品はないが、外国製のPall MilliporeやSartorius Stedim, 3M, GE Helthcareなどのメーカーを当たれば良い製品が見つけられる。

    Depth filterの用途は一般的に、清澄ろ過であるが、膜に土や活性炭を練りこんでいる製品もあり、清澄化とともに不純物の吸着除去も同時に実現できる。抗体医薬の場合、陰イオン交換体のDepth filterでろ過することで、DNAなど負荷電の不純物が吸着し、抗体はパススルーする。これらの製品は、昔、僕らが鉱物由来であるミドライトなど、粘土を使ってInterferon (IFN)を精製していた時の技術の焼き直しである。トラディショナルな技術は、今も息づいている。

    濃縮とバッファ交換 (Concentration and Diafiltration)

    40年より前では、ホローファイバーで目的の蛋白質などを濃縮していた。この技術は還元濃縮みかんジュースなどで、今でも使われている。40年前に当時のメンブランメーカーであったミリポア社が限外濾過膜で平膜を開発し、画期的な構造の濃縮装置を開発した。ホローファイバーを使用して濃縮した場合、1週間かかるところを、この装置を使うと2時間で濃縮が完了してしまうほどの破壊的な技術であつた。そう、この装置をベリコン (Pellicon)という。

    短時間で濃縮が可能となると、これまでの濃縮に加え、溶液の組成置換も実施できるようになり、濃縮とバッファ置換は同義となった (Concentration and Diafiltration)。

    限外濾過膜の濃縮側にEndotoxinを残し、目的タンパク質をろ過

    実は、限外濾過処理を応用して、目的蛋白質と発熱製物質であるEndotoxinを分離分別可能である。Endotoxinは、ミセルを作っているので、見かけの分子量は100kDa以上になっているため、目的タンパク質が100kDa以下の場合、ろ過液に目的蛋白質を回収することができる。

    限外ろ過膜 (ultrafilter)

    • 限外ろ過膜には、平膜,ホローファイバーがある
    • 処理目的は、膜が持つ性能である分画分子量以下の低分子画分をろ過しすることで、循環システムから排除する。高分子画分は、残留させることで、循環システムに残留させる
    • ホローファイバーは、製造方法から簡単であったことから従来から使用されていたが、1980年代に膜メーカーのmillipore者が平膜の限外濾過膜を開発してベリコン膜と呼ばれ普及した。
    • 平膜では膜面と並行に目的溶液を流しながら(クロスフロー: cross flow),膜面に圧力を掛けることで、膜の分画分子量より大きい分子量画分を膜面を滑らせるとともに、小さい分子量画分をろ過する.ウイルス除去処理用フィルターもmilliporeが開発している。
    • ホローファイバーでは,平膜と同様の原理を使えるが中空糸構造であることから,そのオリフィス径(液が通る断面積)は小さいため,濃縮による不溶性異物により目詰まりしてろ過効率が低下しやすいが、バイオ医薬品の製造では必須でいるウイルス除去ファイルターはボローファイバーが使用されている。その場合、デッドエンド法が使われ、ファイバーの先端から末端に向けて処理液を送液する際、末端をデッドエンドにして圧力をかけることでファイバーの外側に濾過液が滲み出る原理の方法である。細胞を含む培養液の成長ろ過にホローファイバーが使用される場合は、クロスフロー法が使用される。
    平膜とホローファイバーの比較
    比較follow fibercross flow
    流路絶対的に狭い。ファイバーを増やしても内径は狭いまま理論的には膜幅と膜と膜との間隔だけ面積に相当する広い流路
    循環流速早くできない早くできる
    処理速度遅い早い
    適用低い粘度の溶液処理。培養液の清澄ろ過低濃度から高濃度タンパク質のろ過・濃縮
    製品Planova 20N (ASAHI-KASEI)Pellicon (Pall-Millipore), (Sartorius), (Novasep)

    参考文献

    minimate TFF capsule

    タンパク質の性質を知ること

    PDB

    結晶解析により立体構造がわかっているタンパク質の場合、のプロテイン データペースに登録されています。

    立体構造から、そのタンパク質の物性イメージをつかみます。

    • FabとIL-6のComplex : PDB
    • Fab (Rontlizumab) – Interferon-a2 : PDB
    • Infliximab (Fab) : PDB
    • AAV 5 : PDB

    Helical Wheels

    アミノ酸が連なったものがペプチドであり、タンパク質です。その構造は、αヘリックス、ベータシート、ランダムシートに分けられます。そのアミノ酸の結合具合をαヘリックスの配置に模倣して、そのドメインがどのようなアミノ酸群、すなわち、疎水性や極性を持っているのかを、単位として理論的に簡略化する図が、Helical Wheelsです。

    どの当たるのアミノ酸配列が、

    Analysis of individual sequences

    http://www.bioinfo.org.cn/lectures/index-7.html

    Helical Wheel

    https://en.wikipedia.org/wiki/Helical_wheel

    解析ソフトの解説も参考になります。

    4.14.12 Helical Wheel – HULINKS –

    https://www.hulinks.co.jp/support/gi/tutorial/m041412.html

    まとめ

    この投稿では、タンパク質についてどのような精製があるかを解説した。実際に精製しようとすると、その具現化がまた骨の折れる作業となる。

    編集履歴

    2019/07/11 はりきり(Mr)
    2020/05/09 文言整備
    2020/06/13 追記(平膜とボローファイバーの比較)
    2020/07/07 Update
    2021/06/03,追記(Helical Wheel)