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  • [Bio-Edu] CHO細胞培養プロセス – スケールアップ – 温度シフトの検討は欠かせない [2020/10/30]

    [Bio-Edu] CHO細胞培養プロセス – スケールアップ – 温度シフトの検討は欠かせない [2020/10/30]

    はじめに

    培養規模をスケールアップする目的は、コンスト低減化、需要対応などが上げられます。スケールアップした結果、生産性や品質を維持できない場合があります。それは技術移管が失敗したか、そもそもロバストネスな培養条件ではなかった可能性があります。

    この記事では、スケールアップする場合の技術移管の考慮点を解説し、パラメータとして生産性や品質にどのように関わっているかも一部示したいと思います。

    培養のスケールアップ

    バイオロジクスの製造では、商用化に備えてコマーシャル製造に対応した製造所での製造を行うことになります。そうすると、開発サイトからコマーシャルサイトへの技術移管のプロスセか発生します。

    大半の場合、その技術移管には、コマーシャルでの需要が増えることを見越してスケールアップが伴うことがほとんどです。

    今回、Sartoriusの発表を解説します。プロス開発(15mL培養スケール)から生産規模(2000Lスケール)までの培養スケーラビリティの確保は、Sartoriusが開発したscale-convert toollを使うコトで容易であるとのことです。

    基本的な制御パラメータは、以下の投稿をご参照ください。

    目的

    スケールアップの目的は、実製造スケールまでのスケーラビリティを確認する事です。その後、コマーシャルでのスケールアップもあるかも知れませんが、スケールアウトの手法を取ることもあります。スケールアウトとは、例えば、2,000Lでのスケールアップが確認できているとして、その2,000Lでの実製造をマルチに実施する手法です。

    スケールアップの結果、以下のことは、最低限必要な事項です。

    • 設計品質 (QbD)の維持
      • 品質が変わらないこと
    • Key Performance Indicator (KPI)とCritical Process parameter (CPP)に悪影響を与えない

    考慮事項

    インプット因子

    • 製造所の違い (Location) : 培養における外部環境的な影響
    • スケールの違い (Scale up) : スケーラビリティに影響
    • Bioreactorのデザイン (geometry and design) : スケーラビリティに影響
    • 攪拌方法(agitation, impeller type) : 細胞の生育
    • ガス供給方法(gassing and sparging) : 細胞の生育
    • 温度/pH : グリカン・プロファイル(CQA)に影響
      • プロダンション培養において、途中37℃の培養温度をそれより低い温度(37℃/pH7.0→31℃/pH7.0)にシフトさせることで、mAbの生産性を高めることができる。その場合、pH6.8では生産性の改善効果はあまり見られず、pH7.0で著名な改善が見られたref 2)
    • 重要品質特性(Critical Quality Attribute; CQA)

    温度シフト

    組換え大腸菌において、温度シフトして低温にすることは、目的産物の増量が可能であることが知られており、一般的に採用されている。

    動物細胞においても、培養の途中で低温にすることで目的産物の増量が見られる。その原理については、多数の文献からある程度の理解が進んでいる3)

    • 哺乳類細胞における生理学的温度以下でのmRNA翻訳とタンパク質合成が増加する
    • 生理学的温度でない場合、細胞全体的におけるタンパク質合成速度が低下するように考えられるが、コールドショック時に、グローバルなmRNAの翻訳と代謝が減少し、代謝負荷の減少と、mRNAの安定性の増加/分解の減少が相まって、組換えタンパク質のmRNA量が増加する
    • まとめると、タンパク質合成自体は減少しますが、翻訳およびタンパク質の折り畳み/分泌機構に関して、組換えmRNAと内因性mRNAとの競合が少なくなる。したがって組換えタンパク質の収量が向上します。
    • ただし、哺乳類細胞からの組換えタンパク質収量の潜在的な増加を支えるメカニズムは、以下で説明するように、これよりもはるかに複雑です。
    • 開始因子eIF2αのリン酸化を介したmRNA翻訳とタンパク質合成の全体的な減少に加えて、哺乳類細胞のコールドショックはストレス顆粒(SG)と呼ばれる細胞質構造の形成につながると報告されている。
    • 最近のデータでは、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化によってタンパク質合成も並行して弱められ、ミトコンドリア機能障害の結果としてmTORシグナル伝達が阻害されることを示唆している。
    • さらに、マイクロRNA(miR)の発現は、生理学的温度に移行するとCHO細胞でも調節されるが、これらの小さな非コードRNAは、主にターゲットmRNAの3′-UTRに結合することにより、特定のmRNAターゲットの翻訳の負の調節因子として機能する。 このようなmiRの人工的な操作は、CHO細胞に機能的な効果をもたらす。
    • 特に、内因性miR-7の発現は、37°C​​で維持された細胞と比較して、培養で経時的に低温にシフトしたCHO細胞で大幅に減少することが示されていますが、miR-7が37°Cで一時的に過剰発現した場合 これにより、細胞増殖が効果的にブロックされたが、miR-7量の阻害は細胞増殖に影響を与えなかった。 しかし、37°C​​でのmiR-7の過剰発現は、細胞特異的な生産性の増加をもたらす。
    • miR-7を過剰発現するCHO細胞のプロテオームに関するその後の研究では、miR-7の過剰発現により93個のタンパク質の発現が減少し、74個のタンパク質の発現が増加することが示された。 翻訳制御、RNAおよびDNAプロセシングに関与するタンパク質は、発現が減少したタンパク質に富んでおり、タンパク質の折り畳みおよび分泌に関与するタンパク質は、上方制御されたカテゴリーに富んでいた。
    • グローバルな内因性タンパク質合成は哺乳類細胞の生理学的温度以下で減少するが、特定のタンパク質の合成はアップレギュレートされると報告されている。おそらくこれらはコールドショックに対する細胞応答と生存に必要または不可欠なタンパク質です。
    • 伝えられるところによると、2つの哺乳類の低温誘導CSP、Rbm3(RNA結合モチーフタンパク質3)とCIRBP(低温誘導性RNA結合タンパク質)があり、これらは細菌のCSPと配列相同性がありません。生理学的温度以下で哺乳類細胞で発現が変化する20以上の追加の遺伝子とタンパク質を説明する報告がある。
    • 低温ショックによって誘発されるタンパク質のアップレギュレーションを定義する際には注意が必要です。タンパク質分解は生理学的温度以下でも低下するため、タンパク質発現の増加ではなく、代謝回転の低下によりタンパク質量が明らかに増加する可能性もあります。
    • これら2つの効果(タンパク質合成の増加と存在量の増加)の寄与は、新生ポリペプチド鎖の代謝放射性標識によって研究があり、それによると、新たに合成された材料と総タンパク質溶解物の標準タンパク質分析を決定できることを利用して、37°C​​と32°Cで合成されるタンパク質の範囲はほぼ同じであることがわかったが、32°Cでは37°Cと比較して全体的なタンパク質合成が減少するが、発現するポリペプチドは、いくつかある場合を除きます。 増加しているものもある。

    温度を低くすることで、以下の具体的な影響が考えられる 3)

    • CHO cell phenotype : Response upon subphysiological temperature culturing
    • Cell proliferation : ↓
    • Biomass accumulation : ↓
    • Cell viability : 延びる
    • Apoptosis : ↓
    • Culture duration : 延びる
    • Metabolism : ↓(lactateなど)
    • Tolerance to shear stress : ↑
    • Cell-specific and volumetric productivity : ↑ or →
    • Protein folding : おそらく改善
    • Product quality : 増量可能

    アウトプット因子

    • 主要プロセス指標(KPI)
      • 生細胞濃度(VCC) : mAb生産性
      • 細胞生存率 : 不純物含量
      • 細胞直径 : (?)
      • 製品力価
      • グリカン : 品質

    手段

    スケールダウンモデル(Scale-down Model; SDM)では、以下に示すパラメータが、スケールアップや、その他、Bioreactorの違いなどに応じて変更が生じる可能性がある。

    scale-convert toolは、Sartoriusのバイオリアクター製品に応じて、それぞのパラメータを提案する。

    • 体積ガス流量(VVM)
    • 単位体積あたりの電力(P/V)
    • 物質移動係数(KLA)
    • ガス転送速度
    • 攪拌速度

    Bioreactorのスケールアップ

    Sartoriusのバイオリアクター製品は、スケールアップを容易にするためにH/D比を合わせている。

    • Bioreactorの高さ vs 直径 (H/D)の類似性は、パラメータを類似させる
    • 攪拌における電力入力 (W/m3)

    ambrを使用したスケールアップ・パラメータの設定

    ambr15は、sartoriusのミニチュア・バイオリアクターです。スケールアップでの実験計画法 (Design of Experiments; DoE)による検討によく使われています。

    • 15mLのミニチュアバイオリアクターであるため、複数の検討を同時に実施することが可能であり、DoEの実施に向いている
    • DO、pHの測定、その他のKPIの測定(サードパーティ製の統合化可能モジュールで自動測定)も自動で測定可能
    • ambrソフトウェア
      • データの自動集積
      • SIMC多変量解析(MVDA)
      • 重要プロセスパラメータ(CPP)の特定
      • 最適化範囲とロバストネスな範囲の特定

    検討内容

    15mLから2,000Lのバイオリアクターにおいて、Sartoriusが開発したscale-convert toolが、培養スケールの違いがあっても、同等な培養が可能で同等な品質のmAbを得られるかの検証内容。

    • 細胞株
      • ヒトIgG1 mAb (Cellca CHO DG44 (Sartorius)
      • 工業的に使用(イギリス、アメリカ)されているホストセル
    • ambr15と250mLから2,000L SUBへのスケーリング
    • KPIとCQAへの影響を確認
    • 攪拌の最適化
      • スケール変換ツール(by Sartorius)使用により15mLから2000LのSUBでの双方向なスケーラビリティを確保するアルゴリズム
      • 剪断力の最小化
      • 均一な細胞の混合
      • 電力入力(P/V)
      • 攪拌翼の速度
      • レイノルズ数(Re) : 攪拌速度を必要とする
    • スケーラブルなガス処理戦略
      • kLa : DECHEMAガイドライン1)に従い、ambr/UniVesselおよびBiostat STR Bioreactorにおいて決定されている
      • 特定のDO設定でのガス調整で81 L/hのスケーラブルなkLaの算定
    • スモールスケール・バイオリアクター
      • ambr15 (15mL) : 2L~7Lのベンチトップ・スケールを模倣
      • ambr250 (250mL) : スケールアップ開発に適する(H/D比)
        • 1000Lを模倣可能な結果が得られた
    • ベンチトップ・バイオリアクター
      • UniVessel (5L)ガラス・バイオリアクター(Sartorius)
    • 商業規模バイオリアタクー
      • BIOSTAT STR SUB (50L, 200Lおよび2,000L)
      • H/D比は同一 : 2/1
      • インペラーとbag直径の比は同一 : 0.38
      • bag : FlexSafe STR bag
        • Sartocheck 4 Plus : バッグのリークテスト
    • スケーラビリティ研究デザイン
      • ambr15, ambr250, BIOSTAT STR 50L, 200L, 2,000L
      • 履歴データソース : Sartoriusの米国データ、インドのデータ、米国のデータ
      • 検討項目 : スケール全体で比較
        • パフォーマンス
        • KPI
        • mAb力価
        • CQA
      • 条件抽出
        • 播種前の条件
          • 生産用培地の温度平衡(~36.8℃/4時間)と供給時間(1日)
        • プロダクション段階
          • 播種直前
            • BioPAT ViaMassセンターのゼロ調整
          • 攪拌とガス処理関連パラメータkLa = 81/hを満たすパラメータ設定
    • 続き(スケーラビリティ研究デザイン)
      • 続き(条件抽出)
        • 温度: 36.8℃
        • pH7.1
        • DO 60%
        • Re (>3,000)
        • Impeller 先端速度 : 0.6~1.25 m/s
        • 30~200 W/m3
      • 注(上記の表の説明)
        • 先端速度(Tip Speed)とReynolds Numberは、ambrの場合 < BIOSTAT STRの場合となります。そり理由は以下の通り
          • ambrのImpeller数は1枚
          • BIOSTAT STRのImpeller数は2枚はと比較して、低くなる
      • 培養は、Feedを使用した流加培養
      • 播種濃度 : 0.2e6 cells/mL (Seed stage), 0.3e6 cells/mL (Production Stage)
      • 種培養期間 : 3~4日間 (2.5e6 cells/mL)
      • プロダクション培養(9日間、流加培養)
        • Feed A
        • Feed B
        • 400 g/L Glucose to keep 3g/L for production
        • ambr15のFeedの方法 : workstation’s automated liquid-handling system
        • ambr25のFeedの方法 : syringe pumps built into the ambr workstation
        • 5Lベンチトップ/BIOSTAT STRのFeedの方法 : peristaltic pump
      • サンプリングと分析
        • 自動採取
        • ambr15/FlexSafe STRバッグ
          • 付属の光学シングルユースDO/pHセンサー
          • グルコース/乳酸 : BioProfile FLEX2自動細胞培養分析システム(Nova Biomedical)
          • 浸透圧 : Osmomat 030(Gonotec) or Cedex HiResアナライザー
        • ambr250
          • 光学式シングルユースDOセンサー、電気化学pHプローブ
          • グルコース/乳酸/浸透圧 : BioProfile FLEX2自動細胞培養分析システム(Nova Biomedical)
        • BIOSTAT/UniVesselバイオリアクタ
          • UniVesselバイオリアクターの電気化学センサー
          • グルコース/乳酸 : Radiometer ABL800基本システム(Radiometer,ドイツ)
          • VCC/細胞生存率/浸透圧 : BioPAT ViaMass or Cedex HiResアナライザー(Roche Diagnostics、ドイツ)
      • mAb生産性
        • 培養上清でmAb測定
        • N型グリカン・プロファイル分析(スコットランドのザルトリウすにある分析センター)
        • 最終的mAb力価は、12日目のサンプル(スコットランドのザルトリウすにある分析センター)
        • 補足分析 : LabChip GXII Touchタンパク質特性評価システム(Peerkin Elmer, Seer Green, UK)
    • Reference standard
      • 30のデータセット(Commercial IgG achieved)
        • ambr250のデータセット
        • UniVessel
        • BIOSTAT STR
        • VCCs : >20e6 cells/mL, 80 cell viability at the day of harvest

    検討結果

    結論

    ザルトリウスが開発したスケール変換ツール(scale-conversion tool)を使えば、ambr15から2,000L BIOSTAT STRバイオリアクターまでのスケールアップについて、単一の戦略を適応可能である。

    結果

    まとめ

    Sartoriusのバイオリアクター製品で統一することで、2,000Lまでのスケールアップは、scale-convert toolにより容易に実現可能であることがわかった。

    編集履歴
    2020/06/20 はりきり(Mr)
    2020/09/26 追記 (目的の内容を補充)
    0)

    A Rapid, Low-Risk Approach Process Transfer of Biologics from Development to Manufacturing Scale

    BioPreocess Internatioanl, 2020/03/24

    https://bioprocessintl.com/sponsored-content/biostat-str-bioreactors-a-rapid-low-risk-approach-process-transfer-of-biologics-from-development-to-manufacturing-scale/
    1)

    DECHEMA Guidline

    https://dechema.de/dechema_media/Downloads/Positionspapiere/SingleUse_ProcessEngineeringCaracterisation_2016.pdf
    2)

    プロダクション培養の温度を途中37℃から低い温度でシフトすることで、mAbの生産性が高まる。

    pH Condition in temperature shift cultivation enhances cell longevity and specific hMab productivity in CHO culture (2006)

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3449411/
    3)

    CHO細胞の培養条件として、温度のインパクトなどの文献レビュー。27~35℃は、mild subphysiological temperatureと表現されている。

    [Review] The impact of process temperature on mammalian cell lines and the implications for the production of recombinant proteins in CHO Cells (2014)

    https://www.openaccessjournals.com/articles/the-impact-of-process-temperature-on-mammalian-cell-lines.pdf
    4)

    CHO細胞における、pCO2、pHの培養バラメータは経験的に生産性を高めることが知られているとし、CHO細胞の代謝とエネルギーの代謝に関わっていると言っています。

    The Less the Better: How Suppressed Base Addition Boosts Production of Monoclonal Antibodies With Chinese Hamster Ovary Cells (2019)

    https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fbioe.2019.00076/full
  • [Bio-Edu] バイオ医薬品 (バイオロジクス)は、CHO細胞の技術革新と共に進展してきた [2020/08/05]

    [Bio-Edu] バイオ医薬品 (バイオロジクス)は、CHO細胞の技術革新と共に進展してきた [2020/08/05]

    バイオ医薬品とは

    バイオ医薬品は、英語でバイオロジクスと言います。バイオロジクスには、ヒトの体内に存在するタンパク性物質をターゲット(狭義)にしているため、よく知られている「抗体」以外のタンパク質も含まれます。

    バイオロジクスは、当初、血漿分画製剤で知られているように血液から得られていましたが、技術革新により現在では、その目的物である医薬品は遺伝子組換えCHO細胞により得られるようになって久しく、正にバイオロジクスは、CHO細胞に関する技術革新とともに進展してきたと言えます。

    以下、バイオロジクスについて、CHO細胞を使うアドバンテージをまとめました。ただし、CHO細胞が完全勝利ではありません。目的によっては、インスリン製剤など低分子量のタンパク質では、大腸菌が使用されています。

    • 現在、バイオロジクスの代表は、「抗体」である
    • その原材料は、
      • 「血液、19世紀末・戦後 ~」、ジフテリアや破傷風などの感染症治療法として弱毒化毒素のウマへの投与によるマウ血清が感染症治療に高い効果があることがベーリング(behring)と北里柴三郎らにより明らかにされた
      • 「B細胞のハイブリドーマ細胞化 (抗体に限る)、1975年~」、B細胞は、細胞ごとに単一の抗体を産生するが不死化させるためにミエローマ細胞を用いたハイブリドーマ技術が発展した。得られた抗体をmonolconal antibodyという。
      • 「遺伝子組換え細胞」へと展開してきた
      • source: Pharmacokinetics of Monoclonal Antibodies
      • source : 抗体医薬とは, 熊谷泉 – 化学と教育 68巻 7号 (2020)
    • 原材料として
      • 「血液」
        • 動物由来の場合では異種高原であることによる免疫原性の問題
        • オリジナル機能のタンパク質を取得できる(血漿分画製剤)
        • 量的制限
        • ウイルス安全性に問題
      • 「ハイブリドーマ」細胞
        • 動物への抗原免疫(抗体作成)、脾臓(B細胞)とホスト細胞(ミエローマ)とのハイブリドーマ作製、など煩雑であり抗体に限定
      • 「遺伝子組換え技術」
        • キメラ化 : 動物由来の可変領域とヒト抗体の定常領域を結合
        • ヒト化抗体 : 動物由来のCDR (Complementarity Determining Region, VHとVLにそれぞれ3箇所ずつ存在)のみをヒト抗体に移植することで、約95%がヒト由来構造を維持
        • 製造技術の進展による大量製造
        • 実績としてのウイルス安全性(CHO細胞)
        • 宿主細胞に関わる糖鎖(CHO細胞は実績として克服)
        • 現在では様々な課題を克服できている
    • 遺伝子組換え技術での生産細胞
      • 分子量が大きな抗体の産生細胞として、殆ど全てがCHO細胞が選択される
      • 分子量が小さいインスリンやインターフェロンなどの産生細胞には微生物(大腸菌、酵母など)が使われる。
      • CHO細胞
        • バイオロジクス市販品で30年の実績
        • ヒト型に近い糖鎖を付加でき、その他不純物に関する安全性の蓄積
        • 立体構造を再現できる
        • 高い培養生産性技術が蓄積(最大10g/L)
      • 大腸菌
        • 医薬品上の問題点
          • 糖鎖を付加できないため糖タンパク質には不向き
          • 高い産生量にするとInclusion body(不溶性)になる
          • 立体構造をオリジナルに再現できない
        • 対策
          • 糖鎖問題は、目的タンパク質を限定
          • 立体構造は、Refolding技術による正常化
      • 酵母
        • 1990年代に盛んな研究
        • 医薬品上の問題点
          • 糖鎖を付加できるが、ヒト型ではないため、抗原性の問題がある。
          • 強力な蛋白分解酵素により目的タンパク質の分解問題
        • 対策
          • 糖鎖問題
            • 目的タンパク質を限定する
            • 糖鎖付加が無いタンパク質
            • 糖鎖遺伝子のノックアウト
            • 医薬品でない酵素など
          • 分解問題
            • 培養技術及ひ精製技術で対応
            • プロテアーゼ遺伝子のノックアウト

    CHO細胞・エニジニアリング

    現在のバイオロジクス、特に抗体に関する遺伝子組み換え技術を使ったCHO細胞による生産性改善と取り組みは、以下の参考文献が概説として参考になります。

    • 目的タンパク質の遺伝子組込み、得られる細胞の多様性(糖鎖修飾)
    • 細胞株構築期間の長さ
    • 得られた細胞株の培養最適化
    • 比生産速度 pAB と 生細胞濃度 Xvの積分 = 生産濃度 P (IVC) (完全に理解できていません。今後要検証)

    バイオ医薬品生産におけるプロダクションサイエンス (2013)
    https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9109/9109_tokushu_3.pdf

    生産細胞の培養技術

    産生株が高い生産能力があったとしても、その培養条件がマッチしていなければ高い生産性は達成できません。抗体医薬品の場合、投与される量が多いため培養生産性は課題の一つになります。

    安定産生株の樹立と、その培養条件の開発の概説として、以下の文献が参考になります。

    • 安定発現株
    • 培養スケールアップ
    • 培養プラットフォーム
    • 電荷的多様性の制御
    • 培養終了の判断

    抗体医薬品生産培養技術の課題と展望 (2013)
    https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9109/9109_tokushu_4.pdf

    抗体医薬品・Fc融合タンパク質

    抗体医薬品について学ぶには、以下の項目を押さえておくことが重要です。「国立医薬品食品衛生研究所」のサイトに、「抗体」医薬品と「Fc融合タンパク質」について、まとめられたサイトがあります。

    抗体医薬品について全体像を把握することができます。

    抗体医薬品・Fc融合タンパク質
    国立医薬品所品衛生研究所・生物薬品部
    http://www.nihs.go.jp/dbcb/mabs.html

    抗体の分子的特徴として「Fc」と呼ばれる領域があります.Fcには抗原に対する結合機能は無く別の機能を持っていますが,抗原結合能を持っていないことから,この領域に,例えばPEGなどを結合させて,抗体自体の血中半減期を延ばしたり,がん抑制化学物質を結合させて,がん治療薬として機能を増強させたりと,このFc領域は利用されます.

    https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/btomail/17/12/19/00339/

    バイオシミラーの基礎知識

    バイオシミラーの基礎知識について、厚生労働省取材のセミナー資料があります。最近の情報であるためバイオロジクスに関しても最新情報を得ることができます。

    バイオ医薬品とバイオシミラーの基礎知識 – 厚生労働省主催講習会「バイオ医薬品とバイオシミラーを正しく理解していただくために」- 2020年1月11日 (大阪科学技術センター 大ホール
    https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496079.pdf

    抗体医薬の品質について

    日本における規制当局からのガイダンスがあります。

    抗体医薬品の品質評価のためのガイダンス (2012)
    https://www.pmda.go.jp/files/000206143.pdf

    CHO細胞以外の哺乳類細胞

    バイオロジクスで使用される動物細胞は、CHO細胞が殆ど全てと述べましたが、用途によってはラッド由来の細胞の使用が試みられています。2020/6現在、日本で上市されているYB2/0由来抗体は、0、SP2/0は4つ、NS0は5つ、CHOは57つです。以下の課題は依然として残ります。

    臨床段階で、YB2/0細胞由来の抗体医薬があります。YB2/0細胞は、フコース付加低減化が可能でADCC活性を高めることが可能な細胞株です。しかし、CHO細胞を代表する動物細胞の実績は、YB2/0細胞にはありません。YB2/0細胞は、2020/6現在、臨床試験が1社によって走っているのみです。新規参入企業には、ハードルは高いでしょう。

    • YB2/0細胞での生産性(?)
    • 不純物等に関わる安全性の実績(?)
    • レギュレトリーでのハードル(?)
    • 市販に対応できる自社及委託先の製造設備と技術

    高い細胞傷害活性を有する抗体医薬品の YB2/0 細胞を用いた効率的な物質生産研究 2011

    https://gair.media.gunma-u.ac.jp/dspace/bitstream/10087/6623/1/Ph.D%20E-428.pdf

    セルラインの種類

    研究用としては、以下のように種々の細胞株が使われます。Creative Labより

    •  CHO cell lines: GS system, DHFR system;
    •  BHK cell line;
    • Mouse myeloma cell lines: NS0SP2/0, etc.
    • Rat myeloma cell lines: YB2/0, etc.
    •  Human cell lines: HEK293 and its derivatives, HT-1080Huh-7PER.C6 , etc.

    以上

    編集履歴

    2020/05/23 はりきり(Mr) 2020/06/09 文言整備 2020/06/20 追記 (細胞株、日本で市販される抗体医薬の細胞株の数) 2020/08/05 追記 (ヒト化抗体)
    2022/10/23 文言整備: Fc領域の活用による機能付加について

  • [Bio-Edu] Fcエフェクター活性 – ADCC活性を増強するafucosylation技術 [2020/05/22]

    [Bio-Edu] Fcエフェクター活性 – ADCC活性を増強するafucosylation技術 [2020/05/22]

    ID15631

    はじめに

    ADCC活性は、NK細胞などの免疫エフェクター細胞(immune effector cells)上に存在する抗体のFc領域に対するレセプターであるRcγRIIIaが関与しています。

    IgG1のFc領域は、FcγRIIIaと結合親和性があり、その結合強度によってADCC活性が増強されます。この結合親和性の強さに影響するのが、Fc領域の糖鎖です。一般的にFc領域には、糖鎖結合部位がありますが、付加されている糖鎖として「フコース; fucose」含有量が少なければ、立体構造上から結合力が増加してADCC活性(エフェクター機能)が高まることが知られています。

    fucoseは、Fc領域の糖鎖負荷領域のN型結合グリコシル(N-linked glycosylation)に付加されます。

    ADCC活性とCDC活性

    抗体のFc領域を介した生体反応は、(1) IgG1のFc領域と補体系のC1分子と作用する古典経路の活性化を惹起します(CDC)。また、(2) IgG1のFc領域とFc受容体(FcγIIIa)を介して貪食細胞の動員による作作用経路の活性化(ADCC)を惹起します。

    • CDC (complement-dependent cytotoxicity)
    • ADCC (Antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)

    FcとRcγレセプターの結合親和性

    FcγIIIaは、Fc領域にあるヒンジ部とCH2ドメインと相互作用します。

    この相互作用は、CH2ドメインのAsn297 (N297)に付加される糖鎖構造に左右されます。この糖付加をできなくするアミノ酸の変異により、FcγRIを除くFcγRs (FcγRII, FcγRIII)への結合親和性は完全に消失します。

    ヒトにおける天然のIgGの付加糖鎖は非常に不均一です。そのfucosylation研究では、フコシル化(afucosylation)のレンジは、1.3%~19.3%でした2)。CHO細胞から作られているモノクローナル抗体のフコシル化は、90%程度です。この差によるADCCやCDCに関わる活性の違いが生じています。

    FcγIIIの遺伝子は2つ

    FcγIIIの遺伝子は、2つあり、FcγIIIa (細胞の膜貫通型;殆どのエフェクター*)細胞で発現 )とFcγIIIb (好中球でのみGPIアンカー型タンパク質として発現)です。その配列相同性は97%ですが、FcγIIIbのADCCはありませ。しかし、貪食に関する役割を持つ可能性があります。

    • FcγIIIa (殆どのエフェクター細胞)
    • FcγIIIb (好中球のみ)
    編集履歴
    2020/05/22 はりきり(Mr) 参考文献1)を基に解説

    FcγIIIaの対立遺伝子*)には、Val(V158)とPhe (F158)が知られていますが、FcγIIIa-V158では、より高いIgG1結合親和性(10倍)を持っています。anti-epidermal growth factor receptor (EGFR)、anti-CD20で、その観察結果が出ています。

    • V185
    • F185

    関連する抗体医薬 (ADCCによる癌細胞の破壊)

    • リツキシマブ (rituximab, Anti CD20 mAb)
    • トラスツズマブ (trastuzumab, Anti HER2 mAb)

    Protein fucosylation in mammalian system

    Fucose (6-deoxycholate-L-galactose)は、哺乳動物細胞におけるN及びO型グリカンの共通成分です。

    Fucose付加反応を担う酵素は、ヒトでは13種類のフコシルトランスフェラーゼ : FUT (fucosyltransferase)が知られています。

    FUTは、fucose residue (フコース残基)をGDPフコース (GDP-β-L-フコース: 細胞室内(cytoplasm)で合成、フコシル化反応の基質)からアクセプター基 (acceptor substrate)に転移します。

    細胞室内のGDP-fucoseの合成には、de novo経路が大半を担い、salvage pathway (生体でのフコースの再利用)はその一部を担っています。

    • de novo回路 → GDP-fucose → (cytoplasm) → fucose residue

    de novoは更に、GDP-mannoseからGDP-fucoseに変換する反応も担っています。

    • GDP-mannose →(by GDP-mannose 4,6 dehydrates (GMD) and GDP-keto-6-deoxymannose 3,5-epimerase/4 reductive)→ GDP-fucose
    • GDP-fucose → ( Golgi apparatus or endoplasmic reticulum (ER) )
      • GDP-fucose transporter (GFT), encoded by the Slc35cl gene (Solute Carrier family 35), この遺伝子の変異は、白血球接着不全II型(LADII)、重度の免疫不全、精神遅滞、成長鈍化(グリコシル化IIc型の先天疾患)の発症につながります。
    FUT機能
    1fucose residue →(転移)→ terminal galactose
    α1,2 linkageの形成
    2同上( same as above)
    3α1,3/α1,4 – fucosyltrasferase (Lewisa, Lewisb合成と関連構造に関わる)反応
    4 – 7α1,3 – fucosyltransferase (ABHとLewis抗原の合成)
    8α1, 6 – fucosyltransferase (fucose – innermost(最も内側) N-acetylglucosamin on N-glycans)
    肝臓以外の組織で広く発現しているが、肝細胞癌 (HCC)でアップレギュレーとされる
    9 – 11α1,3 – fucosyltransferase (ABHとLewis抗原の合成)
    (POFUT1)O-fucosyltransferase
    Ser/Thr残基にfucoseを直接付加 (ER内)
    (POFUT2)O-fucosyltransferase
    Ser/Thr残基にfucoseを直接付加 (ER内)

    ガン抗原としてのLewis構造

    Lewis抗原は、癌細胞が血管内皮 (vascular endothelium)へ接着する際に機能します(血行性移転)

    Lewis関連の3糖または4糖 (ルイス抗原)は、炎症反応におけるリンパ球のホーミング中に白血球の接着に重要な役割を果たします。

    Lewis構造

    • ルイス抗原 type-1 (Lewis)
      • Lewisa (Lea)
      • sialyl-Lewisa (SLea) : ガン抗原CA 19-9と共に腫瘍マーカーとして一般的に使用
      • Lewisb (Leb)
    • ルイス抗原 type-2 (Lewisb)
      • Lewisx (Lex)
      • sialyl-Lewisx (Slex)
      • Lewisy (Ley) : ヒトの消化管粘膜のO型結合グリカンと類似

    ADCCの増強

    • 抗体のFc領域 – FcγRIIIa の結合をトリガーとする
    • FcγIIIaを持つ免疫細胞は、NK細胞
    • 標的細胞を殺すサイトカイン/細胞溶解剤の放出
    • ADCC活性は、FcのN-グリカンの影響を受ける
    • CHO細胞由来のIgGでは、そのN-グリカンのコア位置に付加されたフコース残基は、異種の2分岐複合型であり、N-グリカンには、シアル酸は殆ど含まれない
      • G0 galactose residue
      • G1 galactose residue
      • G2 galactose residue
    • CHO Lec13細胞由来IgG1抗体と野生型CHO細胞由来との比較研究では(Shields er al.)、
      • CHO Lec13細胞は、GMD遺伝子変異があり、非フコシル化N型糖鎖の含有率が高い
      • CHO Lec13細胞で作ったIgG1のFcγIIIaへの結合親和性は、50倍増強(NK細胞/PBMC)
    • ガラクトースやバイセクティングGlcNacの存在ではなく、フコースの不存在がADCCを高める(Shinkawa er al.)
    • 別の研究では、コアフコースの除去が最大のADCC活性をは達成すると示唆した (コアフコースの除去と、S229D / D298A / I1332Eのミューテーションでは、ADCC活性の増強の差は無かった)
    • FcγRIIIのアミノ酸変異 (Asn162Gly)とIgGとの結合研究によるADCC活性の増強の比較
      • IgG-フコースフリーとFcγRIIIa-Asn162 >> IgGネイティブグリカンとFcγRIIIa-Gln162 > IgGネイティブグリカンとFcγRIIIa-Asn162
    • Fcのガラクトシル化とシアリル化によるADCC増強は、コアフコース除去と比較して限定的だが、Alanineスキャンにより増強効果が確認された。
    • Fcエンジニアリング(IgG1)
      • FcγRIIIaとの相互作用最大1倍の増強(増強しない)(T256A、K290A、S298A、E333A、K334A)
      • FcγRIIIaとの相互作用最大169倍 (S239D or I332E、S239D and I332E、S239D and I332E and A330L
      • 「活性化FcγRIIIa」と「阻害性RcγRIIb」との結合比を最大9倍 (S239D and I332E and A330L): Xencorによるヒト化の抗CD19抗体(XmAb5574: 広範囲のBリンパ腫および白血病の細胞株に対するADCC活性増強、患者由来急性リンパ牙球性白血病とマントル細胞リンパ腫細胞のタイルADCC活性増強)

    afucosilated 抗体の生産戦略

    GDP-fucoseの生合成酵素

    CHO Lec13細胞は、内因性(endogenous)のGDP-mannose 4, 6 – dehydratase (GMD) 遺伝子を欠乏しています。GMDは、de novo GDP-2 fucose生合成3経路 (biosynthesis pathway)の最初のステップの触媒を担っています。

    GMD遺伝子を欠乏しているにも関わらず、フラスコ培養で培養した結果、フコシル化抗体の比率は、50~70%になったという研究があります。

    mRNAレベルでGMDが少なからず発現しており、別の発現パスウェイがあると考えられます。

    GDP-keto-6-deoxymannose 3,5-epimerase/4 reductive (FX) – ノックアウト CHO細胞を用いて、完全にフコシル化を抑えたという研究もあります。

    FUT8

    Fut8遺伝子の発現レベルが低いYB2/0細胞を使用した研究 (CHO細胞との比較, Arakawa er al.)

    • humamized anti-human interleukin-5 receptor (IL-5) IgG1 antibody (KM8399) in YB2/0 cell
    • core fucose of KM8399 was lower level
    • 産生したIgG1は、いずれの細胞でも同様の抗原結合性を示した
    • YB2/0細胞由来では、コアフコースのレベルが低くく、ADCC活性は、約50倍であった
    • YB2/0細胞のFUT8 mRNAレベルは、有意に低くかった

    FUT8遺伝子の不活化(Yamane er al.)

    • 抗CD20抗体産生CHO細胞 DG44細胞株
    • FUT8対立遺伝子ともにゲノム領域からのノックアウト(FUT8 -/-)
    • 同様の培養増殖曲線と、同様の生産性
    • 完全な非フコシル化抗体の産生
    • 親株との比較で2倍のADCC増強

    siRNAを使用したCHO DG44細胞の培養

    • 60%の非フコシル化抗体の産生

    CHO細胞のGDP-fucose transporter (GFT)を除去

    • ゴルジ体のGDP-fucose transporter (GFT)遺伝子(Slc35c1)のノックアウトによるゴルジ体でのフコシル化反応を止める
    • zinc-finger mucleases (ZFNs)、transcription activator-like effector nucleases (TALENs)及びCRISPR-Cas9、などの技術を用いた
    • fluorescence-activated cell sorting (FACS)で分別 (Aleutian aurantia lectin (AAL) )
    • 得られた細胞は、CHO-gmt3 (CHO-glycosylation mutant3)
    • EPO-Fc融合タンパク質とIgG1抗体において、core fucoseは、完全に欠落していた
    • この手法により、無血清培地、細胞増殖率、生存細胞密度についての安定株を2ヶ月で樹立することが可能
    • CHO-K1細胞は、そのtranscriptome dataから、Golgi fucosyltransferaseの内、FUT8のみを発現していることが示されています
    • Fut8よりもSut35c1をノックアウトする方(Stc35c1 -/-)が利点があると筆者は述べています。
    • CHO細胞に適用した結果、培養増殖率、生存率、抗体産生などが同等であった

    Bisecting GlcNac

    β-1, 4-mannosyl-glycoprotein 4-β-N-acetylglucosaminyltransferase (GnT-III)は、普通CHO細胞では発現されません。

    以下の2つの過剰発現のCHO細胞株は、抗CD20抗体GA101の宿主株として成功しています。最高レベルの(1) bisecting、(2) afucosylated glycansを、IgGで実現しました

    • GnT-IIIの過剰発現
      • これのみでCHO細胞でのFcコアのフコシル化が減少
    • Golgi α-mannosidase II (αManII)の過剰発現

    GnT-IIIは、以下を触媒します。

    • 以下を結合 (β1,4)させて、bisecting GlcNAcを作る
      • GlcNAc
      • N-glycansのtrimannosyl coreのβ結合型mannose

    GDP-フコース de novo経路

    [GDP-fucose de novo(advice)経路]では、GDP-mannoseは、GKDMに変換される。

    • GDP-mannose → (GDP-mannose-4,6-dehydratase)→ GDP-4-keto-6-deoxy mannose (GKDM)
    • GKDM → (several downstream emzymatic reactions) →GDP-fucose

    [バクテリア]では、GKDMはGDP-rhamnose形態に還元できます。GDP-rhamnoseは、細菌の一般的な細胞膜表面グリカンの1種です。

    • GKDM → (GDP-4-keto-6-deoxy mannose reductase (RMD) )→ GDP-rhamnose

    [CHO細胞]の細胞質内に、このRMDを異種発現することで、[GDP-Fucose de novo経路]がバイパスされるため、afucosylated IgGが作られます。最終産物であるGDP-rhamnoseは、GMDの阻害剤である可能性があります。

    • GKDM → (GDP-4-keto-6-deoxy mannose reductase (RMD) )→ GDP-rhamnose

    フコシル化阻害剤

    遺伝子改変ではないアプローチとして、Okeley et al.による阻害剤研究があります。

    • 2-fluorofucose
    • 5-alkynylfucose

    その作用機序は、以下のことが考えられます

    • 細胞内GDP-fucoseの枯渇化 → de novo経路の遮断
    • FUT8の阻害

    植物細胞と後処理

    植物細胞の利用

    植物細胞では、以下の糖鎖が欠落します。

    • α1,6-fucose
    • β1,4-galactose
    • α2,3-sialic acid

    植物細胞では、通常、N-glycanは、(1)以下の糖鎖が付加されますが、(2)大きな糖鎖(哺乳動物でも稀に見られる)が付加されることもあります。

    1. Man3GlcNAc2コアに以下のもので糖鎖修飾
      • β1,2-xylose ( mammalian では不要であり免疫原性がある)
        • コアxhloseは、献血ドナーから抗体が検出される
      • α1,3-fucose
        • この糖鎖を含むGnGnXF3構造(免疫原性)
        • コアα1,3-fucoseは、健常人献血ドナーから抗体が検出される
    2. Large complex type N-glycans
      • Lewisa構造
        • α1,4-fucose
        • β1,3-galactose
    Strategy to overcome this immunogenicity

    植物由来の糖鎖の免疫原性を克服するには、以下戦略があります。

    • RNAi knockdown of α1,3-fucosyltransferase (FucT) in plant
    • β1,2-xylosyltransferase (XylT) in plant
    • FucT/XylT-knowckout lines

    水草のLemna minorで作ったafucosylated anti-CD30 monolclonal antibody

    • 得られたG0構造のこの抗体は、CHO細胞由来と比べてADCC活性が改善されました

    Anti-HIV 2G12 from XylT/FucT – knockdown N.benthamiana

    • 得られたG0構造は、N-acetylglucosamine末端において、以下の糖鎖を欠落してさせることができました
      • xylose
      • α1,3-fucose

    付加糖鎖を後処理で除去

    • endo-β-N-acetylglucosamidaseなどのEndo SでN-glycanを切断
    • その後、exoglycosidaseであるfucosidaseで、core fucoseを除去
    • 残ったmono-GlcNAcは、不均一であるので、desialylated complex型のoxazolineの存在下、Endo Sベースのglycosynthases(グリコシンセターゼ)によるtransglycosylation (糖転移反応)を行う
    • この方法は、コストがかかります

    治療用のafucosylated mAbs

    2018年現在で、3つのafucosylated mAbsが市場に、20以上が臨床試験にあります。

    name and companyTarget andformatcomment
    obinutuzumab/GA101/Gazyva
    Roche
    CD20
    Humanized IgG1 with low fucose content
    Marketed
    first glycoengineered therapeutic anti-CD20, in 2013 by FDA
    3 x Phase 1~3
    mogamulizumab/POTELIGEO/KM0761
    Kyowa Hakko Kirin
    CD chemokine receptor 4(CCR4) Humanized afucosylated IgG1Marketed in lymphoma
    first approved in 2013 in Japan for hematologic malignancies
    in 2014 for cutneous T-cell lymphoma (CTCL)
    in 2017, FDA granted itbreakthrough, FUT8-knockout CHO
    10 x Phase1~3
    Benralizumab/MDEI-563/Fasenra
    AstraZeneca
    IL-5Rα
    Humanized afucosylated IgG1
    Marketed in Asthma
    approved by FDA in 2017 for severe eosinophil asthma, FUT8-knockout CHO (Biowa Poteligent Technology), IL-5R
    9 x Phase1~3
    Inebilizumab/MEDI-551
    Medlmmune
    CD19
    Humanized afucosylated IgG1
    10 x Phase1,2 and 3 (lymphoma,myeloma)
    Ublituximab/TG1101/LFB-R603
    TG Therapeutics Inc
    CD20
    Chimeric IgG1, low fucose content
    10 x Phase 1,2 and 3 in lymphoma, leukemia
    TrasGEX/GT-MAB7.3-GEX/Glycooptimized Trastuzumab-GEXHER2
    Mumanized glyco-optimized (reduced fucosylated IgG1)
    Solid Tumors in Phase 1 (completed)
    SEA-CD40/Seattle Geneticshumanized afucosylated anti-CD40 IgG1Cancer and carcinomas in Phase 1
    その他多数、原書を参照のこと

    以上

    参考文献

    1)

    The “less-is-more” in therapeutic antibodies: Afucosylated anti-cancer antibodies with enhanced antibody-dependent cellular cytotoxicity, 2018

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6150623/
    2)

    Glycosilation engineering of therapeutic IgG antibodies: challenges for the safety, functionality and efficacy

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5777974/#!po=7.60870
    3)

    Improved in vitro and in vivo activity against CD303-expressing targets of the chimeric 122A2 antibody selected for specific glycosylation pattern, 2018

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5973763/
    4)

    細胞性免疫・エフェクター細胞 – 日本ガン免疫学会

    http://jaci.jp/patient/immune-cell/immune-cell-04/
    5)

    対立遺伝子

    https://mycode.jp/glossary/allele.html

    編集履歴

    2020/02/22, by Mr.Harikiri

  • [Bio-Edu] バイオ医薬品におけるウイルス・クリアランス試験 – モニターウイルス – 除去率 – [2020/08/23]

    [Bio-Edu] バイオ医薬品におけるウイルス・クリアランス試験 – モニターウイルス – 除去率 – [2020/08/23]

    はじめに

    Biologics (生物製剤)では、混入する可能性のあるウイルスについてリダクション能力を評価していることが必要であり、商用製品では、製造工程のウイルス・クリアランス試験が必須である*1。臨床サンプルについてもウイルス・クリアランス試験として、1~2種類のモデル・ウイルスを用いて実施されているのが実情である。

    ウイルス・クリアランス試験には、(1) エンベロープを有し比較的耐久性の低いレトロウイルスのモデル・ウイルスとしてX-MLV (MuLV: Xenotropic murine leukemia virus)、(2) エンベロープを持たず小型で耐久性の高いパルボウイルスのモデル・ウイルスとしてMVM (minute virus of mice:MVM = murine minute virus:MMV = Murine parvorirus source)の使用が多い。

    1. MLV (MuLV; MMLV) source:wiki
    2. MVM; Murine Minute Virus, MMV; Mice Minute Virus, Murine Parvovirus
    編集履歴
    2020/05/18 はりきり(Mr)
    2020/05/25 追記(ウイルス除去工程)
    2020/08/23 充実化(ウイルス除去工程)

    製造工程のウィルス・クリアランス試験など、求められる試験 – Eli Lilly and Company, CMC Strategy Forum, Europe, 2018 – より

    Modular Retrovirus Clearance in Support of Clinical Development, Bio-product Research & Development
    ウイルス記号ゲノムエンベロープサイズ (nm)抵抗性
    ネズミ白血病ウイルスMuLV *2single stranded RNA(+)80 – 110低い
    マウス微小ウイルスMVMsingle stranded DNA(-)18 – 24非常に高い
    ウイルスクリアランス事件の課題と事例検討 — 総ウィルスクリアランス指数(LRV)をどこまで追求するか — PDA Journal of GMP and Validation in Japan Vol.7, No.1 (2005)

    MLVのRNAをqPCRで定量

    ウイルス・クリアランス試験

    一般的なウイルス除去工程

    • 培養終了後のハーベスト
      • 清澄ろ過膜にAEXモードを持つフィルター機材を採用している場合は、ウイルス除去効果が期待される
    • Affinity Chromatography
      • 抗体医薬では、Protein Aのアフィニティ・カラムクロマト工程によるウイルス除去効果が期待される
    • AEX Chromatography
      • 陰イオン交換カラムクロマトの不純物除去工程によるウイルス除去効果が期待される
    • CEX Chromatography
      • 陽イオン交換カラムクロマトの不純物除去工程によるウイルス除去効果が期待される
    • Virus reduction Filtration
      • ウイルスの除去を目的としたウイルス除去ろ過工程
      • Planova 20NやViresolveが使用される

    評価方法

    • 除去率(Reduction Level; RL)は、Log10で表記
    • 各工程で、ウイルスの添加回収実験の実施
    • 各工程でのRLの総和を求めて、製造工程全体のクリアランス能力を算定する
    • 細胞アッセイ
    • 動物への投与
    • PCR
    • など

    ウイルス除去率の解釈

    関連するガイドラインには、ウイルスの除去率に関して考慮すべき要因が示されています1)。以下の要因について考慮することで、プロセスステップをウイルスの不活性化/除去において、以下のように見なすことができるかどうかを決定します

    • 有効
    • 適度に有効
    • 無効

    考慮する要因

    1. 使用したテストウイルスの適切性(セクション4を参照/工事中
    2. 検証研究の設計(セクション5を参照/工事中
    3. 除去率
      • 4 logまたはそれ以上の削減は、モニターウイルスにおいて明確な効果を示していると言える
    4. 不活化の速度論
      • 不活化は通常、単純な一次反応ではなく、多くの場合、最初の段階が速く、その後に遅い段階があります。 ただし、時間とともに不活性化率が劇的に低下する場合は、不活性化剤の有効性が失われていること、または残存ウイルス画分が不活性化剤に耐性があることを示唆している可能性がある
    5. 不活化/除去の性質
      • および特定のクラスのウイルスに対してのみ選択的かどうか。 プロセスステップは、一部のウイルスに対しては非常に効果的ですが、他に対しては効果がありません。たとえば、S / D処理は、脂質を含むが脂質を含まないウイルスに対しては効果的です
    6. プロセスパラメータの小さな変動に対するウイルスの不活性化/除去の影響は、ステップの信頼度に影響する
    7. アッセイ感度の限界

    何回か試験を実施して、異なる除去率が計算された場合、リスクを考慮して評価するなら低い方の値を採用する。

    ウイルス・アッセイの例示

    ウイルス・アッセイについて、以下の文献から例示として情報を抽出した。ウイルスに応じて感染効率の高い細胞を使用し、用いる細胞の培養に使用する培地についても参考になる。

    Cell

    • S+L- cell line on semisolid agar colony
    • 3T3FL cell for SV assay
    • C-182 cell line, a mixture of apparently normal 3T3FL cells and S+L- cells for MuLV assay

    media

    • McCoy’s 5a medium ( Grand Island Biological Co., Grand Island, N.Y.), 10% FCS and antibiotics
    • Eagle’s minimum essential amino acids
    • 10% FCS, antibiotics, 20mM thymidine
    • (Phenol Redを入れない場合が多い)

    Virus (MLV)

    • Moloney leukemia virus (MLV) from Electro-Nucleonics Laboratories, Inc., Bethesda, Md., as crude tissue culture fluid from MSV infected JLSV9 cells
      • 5 x10E5 FFU/mL to use for the superinfection of S+L- cells.
    • MLV from University Laboratories, Highland Park, N.J., as 10% spleen suspension from MLV-infected mice.
      • to use for the MSV assays as leukemia helper virus

    Virus assays

    • A rapid cell culture assay technique for MuLV
      • induction of foci in S+L- cells with superinfection
    • MSV focus-forming assay
    • Both sample are prepared
      • by freezing and thawing 3 times cells and supernatant fluids together followed by low-speed centrifugation to remove cell debris.
      • stored at -70 C prior to virus assays

    文献タイトル :
    Rescue of Murine Sarcoma Virus from a Sarcoma-Positive Leukemia-Negative Cell Line: Requirement for Replication Leukemia Virus

    追記

    ウイルス液の清澄化は、低いGでの遠心上清、超遠心で濃縮する。

    レトロウイルス・系統樹

    図1(左)の系統樹をもとに、以下詳細にまとめた。

    • レンチウイルス属
      • EIAV (equine infectious anemia virus), ウマ
      • MVV (Mahdi-Visna virus), ヒツジ、ウマ
      • FIV (feline immunodeficiency virus), ネコ(免疫不全)
      • HIV-1
      • SIVAGM
      • HIV-2
    • スプーマウイルス属
      • FFV (feline foamy virus),ネコ,
      • HFV
    • アルファレトロウイルス属
      • ALV (avian leukosis virus),トリ
    • ベータレトロウイルス属
      • MMTV (Mouse mammary tumor virus), マウス
      • JSRV (jaagsiekte sheep retrovirus), ヒツジ,
      • MPMV
    • ガンマレトロウイルス属
      • MLV (murine leukemia virus; マウス白血病ウイルス), マウス
        • E-MLV (ecotropic:同種指向性)
        • X-MLV (xenotropic:異種指向性)
      • FeLV (feline leukemia virus), ネコ
      • GALV
      • PERV (porcine endogenous retrovirus), ブタ
    • デルタウイルス属
      • BLV (bovine leukemia virus)、ウシ
      • HTLV-1
      • HTLV-2
    • イプシロンウイルス属
      • WDSV
      • WEHV-1
      • WEHV-2
    • SnRV

    *2, MuLVは、MLVと同義

    The Retroviridae, 第2巻に、Murin type C virusesは、MuLV又はMLVのことであるとの記載がある。MuLVの中でも異種指向性をXenotropicといい、“X-“を冠する子で同種指向性(ecotropic)と区別している。

    パルボウイルス・系統樹

    • Proto-parvovirus
      • MVM (minute virus of mice)
    • Boca-parvovirus
      • HBoV
    • Erhthro-parvovirus
      • B19
    • Amdo-parvovirus
      • AMDV
    • Tetraparvorirus
      • BHoV
      • PHoV
      • PARV4_co
      • PARV4_ch
      • PARV4_2
      • PARV4_3
      • PARV4_1
    • Dependo-parvorirus
      • AAV_1
      • AAV_7
      • AAV_8

    *3 Advice<br>パルボウイルスの系統樹

    PARV4: An Emerging Tetraparvovirus

    Maloney murone leukemia virus: MolLVとMurine Leukemia virus: MLVAの違い

    MLVの実験室軽打により病原性が高いウイルス株としてSarcoma 37細胞から単離されたエコトロビックレス炉ウイルスである – 生物多様性影響評価書
    https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/06/dl/s0630-14f_0003.pdf

    感染様式

    レトロウイルスの感染様式

    図1(右)は、レトロウイルスの感染様式を示している。

    先ず、レトロウイルスは、細胞表面に非特異的に吸着し、その後、以下の機構のいずれかで細胞内に進入する

    1. 非特異的吸着
    2. レトロウイルスのエンベロープと細胞表面の受容体が結合

    次に細胞質内に以下の機構により侵入する

    • 直接膜融合
      • エンベロープの構造変化により、エンベロープを除くウイルス様粒子が、細胞質内取り込まれる
    • エンドサイトーシス
      • エンベロープごと裏返った細胞膜に覆われて、細胞質内に取り込まれる(エンドソソーム)
      • 直接膜融合により、エクンドソームから飛び出し、細胞室内に移動する。

    パルボウイルスの感染様式

    パルボウイルスは、細胞表面に吸着した後、endocytosisで細胞質内に入ります。その後、endosomeは、内部がpH4になったLysosomeに変換され、同時にphospholipase A2を活性かされて、Lysosomeの膜を破り、ウイルス粒子は細胞質内にでできます。その後、VP1を介して細胞核に入り込まれてゆきます。

    Advice パルボウイルスの感染様式<br>VIROLOGY JOURNAL, 2015

    Role of capsid proteins in parvoviruses infection

    1) ガイドライン

    The European Agency for the Evaluation of Medicinal Products<br>Human Medicines Evaluation Unit<br>London, 14 February, 1996 CPMP/BWP/268/95

    CPMP/BWP/268/95

    以上

    ウイルスクリアランス関連記事

  • [Bio-Edu] 細胞生存アッセイ – ID14011 [2020/04/22]

    [Bio-Edu] 細胞生存アッセイ – ID14011 [2020/04/22]

    細胞生存アッセイ

    細胞生存アッセイ – abcam – より

    https://www.abcam.co.jp/kits/cell-viability-assays-1
    • Cell viability assays
      • 細胞内の代謝能や酵素活性を測定
      • 細胞集団中におけるの生存細胞の割合の推定
    編集履歴
    2020/02/22 はりきり(Mr)
  • [Bio-Edu] DNAワクチンとは – 2008年までの論文から、免疫細胞へのプラスミドDNAの取り込みにより特異抗体が産生される – ID13931 [2020/04/21]

    [Bio-Edu] DNAワクチンとは – 2008年までの論文から、免疫細胞へのプラスミドDNAの取り込みにより特異抗体が産生される – ID13931 [2020/04/21]

    DNAワクチンとは

    1998年、2000年および2008年の論文から、DNAワクチンの作用機序を調査した。最近の論文調査は今後追加する。

    1998年現在

    1998年には、DNA vaccination, genetic immunizationと呼ばれている。作用機序は不明。

    • DNAワクチンの特徴としては強力な細胞性免疫の誘導能
    • 生ワクチンの長所と, 生きた病原体を使用しないため安全性が確保されるというペプチドワクチンの長所を具備
    • 合成が容易で保存性に優れ, 経済性, 長期にわたる免疫反応が持続するなどの面で従来のワクチンより優れている

    DNAワクチンの現状と展望 (1998) – J-STAGE – より

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsb1944/53/2/53_2_407/_article/-char/ja/#article-overiew-references-wrap

    2000年現在

    • アレルゲン遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを接種することによってアレルゲン特異的Th1細胞が誘導できる
    • アレルゲン特異的Th2細胞の応答を抑制でき, アレルギー反応を抑制することができると考えられる
    • DNAワクチン接種の際の条件, たとえば投与方法や投与部位の調節, あるいは, アジュバントや補助シグナル分子を発現するプラスミドDNAの併用により, 免疫応答を操作できることが明らかになってきている.

    DNAワクチン (2000) – J-STAGE – より

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/iryo1946/54/2/54_2_89/_article/-char/ja/

    免疫細胞と非免疫細胞 (2008)

    1. 免疫細胞が抗原特異的抗体を産生

    阪大の研究成果により、作用機序が明らかになってきた。

    • DNAの右巻きの二重らせん構造(B-DNA)注2)が細胞内でTank-Binding Kinase 1 (TBK1)注3)という酵素(シグナル伝達分子)を介して自然免疫系注4)を活性化
    • このことが、ワクチンの内因性アジュバント注5)として作用し、自然免疫系活性化のシグナルがDNAワクチンの効果発現に必須である
    • DNAワクチンの効果のうち、抗体の産生のためには樹状細胞などの免疫細胞でのTBK1依存性の自然免疫活性化が重要
    • T細胞による細胞性免疫の活性化のためにはDNAを取り込んだ筋肉細胞などの非免疫細胞でのTBK1の活性化も重要
    • この論文は、2008年2月7日(英国時間)発行の英国科学雑誌「Nature」に掲載
    • DNAワクチンとは、プラスミドDNAと呼ばれる細菌由来の環状DNAに抗原を発現する遺伝子を組み込んだもの
    • 生体に投与すると、その抗原に特異的な免疫反応を誘導
    • 製法が簡便でコストも抑えられる
    • 動物用ワクチンとしてウマの西ナイルウイルス感染症、養殖サケのウイルス感染症、ペット犬の悪性黒色腫(メラノーマ)に対するDNAワクチンが北米で認可され、実際に使用されている
    • DNAワクチンがなぜ効くのか解明はあまり進んでいません。
    • 特にDNAワクチンが持つアジュバント効果に関しては、ワクチンのプラスミドDNAに存在するCpGモチーフ注6)という特殊な配列がトル様(よう)受容体9(Toll-like receptor 9, TLR9)注7)によって認識されることで起こる自然免疫系の活性化によるものと思われていました(図1)
    • この自然免疫反応はDNAワクチンの効果に無関係であるとの報告がある。
    • 今回の研究成果
      • TLR9ノックアウトマウスでも、ワクチン効果があった
      • I型インターフェロン注9)の受容体遺伝子ノックアウト・マウスの場合では、ワクチン効果が顕著に低下
      • 従って、I型インターフェロンを誘導する経路が重要である。
    • 一方で、B-DNAがTLRを介さずに、TBK1というシグナル伝達分子(酵素)を介し、炎症性サイトカイン注10)やI型インターフェロンを産生することを発見
    • 核酸(DNA)の自然免疫賦活化作用はTLR9を介する病原体(細菌やウイルス, 塩基配列(CpGモチーフ)である
    • ウイルス、宿主細胞両方に見られるDNAの二本鎖DNAの右巻き構造が、TLRに依存しない強いインターフェロン産生能を持つことが示された。
    • 樹状細胞などの免疫細胞
      • TBK1遺伝子を持つマウスでは、(1)抗原特異的な抗体の産生(液性免疫)、(2)ヘルパーT細胞の誘導
      • TBK1遺伝子を持つマウスでは、細胞障害性T細胞(CTL)の誘導
    • 筋肉細胞などの非免疫細胞
      • 状況(1)と(2)のワクチン効果は、見られなかった。
      • TBK1遺伝子を持つマウスでは、細胞障害性T細胞(CTL)の誘導が見られる
    • (A) DNAワクチンによる抗体産生には樹状細胞などの免疫細胞でのTBK1依存性の自然免疫活性化経路が重要である
    • (B) 細胞性免疫誘導のためにはDNAが主に取り込まれる筋肉細胞などの非免疫細胞における、TBK1依存性の自然免疫活性化シグナルも働いていること、
    • (C) 免疫・非免疫細胞双方における自然免疫活性化が相互に作用し合っている

    2. 副作用関連

    • DNAはいくつかの自己免疫疾患、たとえば全身性エリテマトーデス(SLE)(自己のDNAに対する抗体ができる原因不明の疾患)などの発症、増悪の機序に関与している可能性がある

    遺伝子(DNA)ワクチンの作用機序を解明(DNAワクチンの本格開発にはずみ)2008 – 大阪大学免疫学フロンティア研究所

    http://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/research/20080207-0524.htm

    細胞性免疫

    編集履歴

    2020/04/21 はりきり(Mr)
    2020/07/24 追記 (細胞性免疫)
  • [Bio-Edu] 沈殿化法によるタンパク質の回収・分離 – 検討方法 –  ID4376 [2020/12/11]

    [Bio-Edu] 沈殿化法によるタンパク質の回収・分離 – 検討方法 – ID4376 [2020/12/11]

    はじめに

    Ribonuclease Aのアセントン沈殿の条件検討につい、学生さんが精力的に実施されている文献の紹介をして、その後、昔から知られている一般的な沈殿法について紹介してします。

    Ribonuclease Aの沈殿精製

    界面活性剤による沈殿生成とアセトンによる 沈殿溶解を利用したタンパク質の回収・分離 - 新居浜工業高等専門学校 第51号 (2014)

    逆ミセル抽出法

    • 逆ミセル
      • 無極性溶媒中、極少量の水をコアとして、界面活性剤が会合したナノスケールの分子の集合体
      • 微小水槽が、界面活性剤分子によって、有機溶媒から隔離されている状態
      • この状態では、タンパク質は変性することなく逆ミセルの内部にとじこめられる
    • 操作法
      • タンパク質水溶液を用意
      • 逆ミセルを形成した有機溶液を用意
      • 2つを接触させる
    • タンパク質の逆ミセルへの移行の原理
      • タンパク質と界面活性剤の親水基との静電的相互作用

    逆ミセルからタンパク質の抽出

    • タンパク質を含む逆ミセルに
    • 水溶液を接触させ、界面活性剤との相互作用を弱くする
    • タンパク質は、水層に移動するが、その効率は低い

    逆ミセル抽出法の改良 (Shinらの方法)

    検討タンパク質 : 鶏卵白リゾチーム (14.3kDa, pI:11), 牛膵臓リボヌクレアーゼ(13.7kDa, pI9.6)

    • 界面活性剤による沈殿形成
      • 原理 : タンパク質は水中でイオン性界面活性剤により沈殿形成する
      • 2-エチル(ヘルシル)スルホコハク酸Na(AOT)
      • 等量(5mL)を5sec混和、静置→遠心→ppt→蒸留水で洗浄→Acetone 1vol(5mL)で溶解→0.1M NaCl 10μL→沈殿化→静置→遠心→ppt→Acetone洗浄→乾燥→蒸留水溶解
    • 極性有機溶媒による回収
      • 形成した沈殿を溶解
      • acetone (solubilization◯、precipitation◯)
      • 1-propanol, 2propanol (solubilization◯、precipitation×)
      • ethanol/ethylene glycol (solubilization△/×、precipitation-/-)
    • 電解質水溶液を極少量添加
      • NaCl 水溶液(電解遮断効果、濃度が高いほど沈殿↓)
      • 極性有機溶媒は、タンパク質から外れ、界面活性剤は、極性有機溶媒と混和
      • タンパク質は沈殿のまま回収できる
    • 低い界面活性剤の濃度で処理可能

    硫安、アセトン、TCAなど、タンパク質の沈殿法プロトコールまとめ – ThermoFisher -より

    https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/protocols-of-protein-precipitation/

    トラディショナルな沈殿法

    • 硫酸アンモニウム(硫安)沈殿法
      • マイルドなタンパク質沈殿化法
      • 飽和硫安濃度33%でIgGが沈殿、アルブミンは50%程度で沈殿する
    • アセトン沈殿法
      • 昔の血漿分解製剤で使用
    • トリクロロ酢酸(TCA)沈殿法
      • 酸性等電点を持つタンパク質に適用できる
      • グリシン塩酸法
    • TCA/アセトン沈殿法
    • クロロホルム/メタノール
      • SDSなどを除けるMS(質量分析)用のタンパク質の回収
    • 酸性pH処理
      • pH3~pH5にすることで、沈殿するものもあります。DNAなどの核酸が沈殿します。DNAでなくタンパク質も沈殿するものもあります
      • DNAとタンパク質が共沈したとしても、その他の不純物と分離ができていれば、よしとします。後の処理でDNAとの分離を考えましょう
      • 添加する酸は、タンパク質にマイルドな酢酸を使用します。塩酸は決して使ってはいけません。タンパク変性しやすいためです
    • 食塩(NaCl)添加
      • 3~5MのNaCl溶液を少ない量から適当添加していく方法で、スモールスケールの検討を行います。
      • 酢酸を添加して酸性pHにしても沈殿が生じない場合に、追加的にNaClの添加をすると沈殿することもあります
    • EtOH分画
      • 血漿分画製剤で使用される実製造に使われている
      • この技法は高度である。再現性を得るには、温度管理、pH管理、及び伝導度管理を厳密に制御する必要がある

    参考

    タンパク質精製は、SDS-PAGE分析で検出できる狭雑タンパク質の分離だけでは不十分です。endotoxnや核酸も不純物です。タンパク質から核酸を除去する目的ではないですが、沈澱法としてCTAB沈澱法についても以下に紹介します。この方法も昔から行われていた沈澱法です。

    • CTABによるplasmid DNAとRNA/endotoxinの分離 2)

    検討方法

    マイクロサイズ法

    沈澱化の検討は、200μL程度のガラス製のバイアルを使えば効率的です。Biacore用のサンプルチューブがいい感じに使えます。透明度と数百μLで検討ができて、サンプル量も効率的です。

    操作法

    • 100μLのサンプルをGlass vialに分注
    • 酢酸原液を数μLずつ添加
    • 別途、添加量とpHを確認しておく
    • 酢酸は、タンパク質の溶解性を高めるので、入れすぎは逆効果です
    • ですが、酢酸で低pHのタンパク質溶液にNaClを添加して塩濃度を高めると疎水性がより高まるためタンパク質が沈澱化しやすくなります
    • 分子量が大きいて沈澱化効率は高まります
    • 以上のことを踏まえて、沈殿化条件を決定していきます。

    分析

    • UVスペクトル(A200~700, NanoDropが便利)
      • A260/A280比率は、タンパク質と核酸のコンタミ具合の指標
    • SDS-PAGEによるタンパク質の純度分析
      • 目的物の分子量を指標に評価
    • Endotoxin分析 (option)
      • LAL法 (Kit)
    • DNA分析 (option)
      • PicoGreen (Kit)

    1) Glass vials

    Borosilicate glass vials in a range of sizes and volumes. For use with Biacore systems.

    沈殿化検討に使用する透明なガラスバイアル。ゴム栓も購入できるので、それを使えばしばらく保存が可能。検討である程度たまったら写真を撮ってから廃棄です。

    https://www.cytivalifesciences.com/en/us/shop/protein-analysis/spr-label-free-analysis/accessories-vial/glass-vials-p-05546

    2) Milligram scale parallel purification of plasmid DNA using anion-exchange membrane capsules and
    a multi-channel peristaltic pump (2007)

    低濃度CTAB (0.1-4g/L) 沈殿法によるpDNAとRNA/Endotoxinの分離 : 2g/L or 10g/L CTAB/50mM NaCl溶液を添加し、Incubation20分, cfg(38,000xg 20min, 20℃)/pptを70% EtOHで洗浄し、0.6M NaCl, 25mM Tris-HCl, 1mM EDTA, pH7.4で氷冷下で溶解。

    https://www.researchgate.net/profile/Stefan_Schmidt15/publication/6232344_Milligram_scale_parallel_purification_of_plasmid_DNA_using_anion-exchange_membrane_capsules_and_a_multi-channel_peristaltic_pump/links/59de01f545851557bde325bd/Milligram-scale-parallel-purification-of-plasmid-DNA-using-anion-exchange-membrane-capsules-and-a-multi-channel-peristaltic-pump.pdf?origin=publication_detail

    まとめ

    今回、タンパク質の沈殿化方法の色々を紹介しました。これらの方法で、タンパク質を純度よく精製するには、条件をもっと厳密にコントロールしなければなりませんが、今回紹介した中では、そこまで条件を詰めて設定されたものはありません。

    沈殿化法で、更にタンパク質の精製を極めたいと思っているなら、エタノールを使用した沈殿化による血漿タンパク質の精製方法として、Cohn Ethanol Fractionationが知られているので、それを当たるのも手です。Cohn法では、厳密な条件のコントロールが必要です。例えば、温度(4℃)、pH(酸性から中性に徐々に上げていく)、塩濃度、EtOH濃度(徐々に上げいく)により、血漿から段階的にタンパク質画分を沈殿させていきます。大雑把に言うと、最初に沈殿化する画分には、高分子(Fibrinogenなど)、続いて免疫グロブリン(IgGなど)、最後に、血漿タンパク質として最も多いアルブミムです。少しの条件設定のミスで、純度・回収率が悪化したり、タンパク変性したりします。機会があれば、Cohn Ethanol Fractionについてもご紹介したいと思います。

    今回、紹介したタンパク質の沈殿化法でも、回収率が悪いとか、純度が悪いとかいった場合は、pH, 塩濃度、温度などを見直してみてください。

    編集履歴
    2020/04/09 はりきり(Mr)
    2020/05/23 追記 (はじめに、まとめ)
    2020/09/23 追記 (酢酸の添加、NaClの添加、検討方法)
    2020/11/05 追記 (CTAB沈殿法によるpDNAとRNA/endotoxinの分離)
    2020/12/11 追記 (操作法 by Mr.HARIKIRI)

    以上

  • [Virus-Edu] WHO が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の治療薬に関する大規模臨床を開始する –  ID13021 [2020/04/09]

    [Virus-Edu] WHO が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の治療薬に関する大規模臨床を開始する – ID13021 [2020/04/09]

    WHOがCOVID-19治療薬の臨床を開始

    4つの薬剤について大規模な臨床試験を開始。

    1. レムデシビル
      • エボラ出血熱など抗ウイルス化合物(ギリアドサイエンス社)
      • RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害(エボラでの効果は確認できていない)
    2. クロロキンとヒドロキシクロロキン
      • マラリア薬
      • 中国の研究では効果があるとされているが、その根拠データは不明
      • クロロキンは細胞実験で多少の効果はあるが、用量が非常に多い
      • ヒドロキシクロロキンは、様々な副作用が知られている
    3. ロピナビルとリトナビルの組み合わせ
      • HIV薬(プロセアーゼ阻害薬)
      • 2000年、米国でHIV感染症の治療に承認されている
      • ロピナビルは、生体内での分解が早い
      • リトナビルは、比較的持続する
      • この組み合わせは、MERSのマーモセットの試験で効果があった
    4. 同じ組み合わせ(ロピナビルとリトナビル)に加えて、
      • ウイルスを不自由にするのを助けることができる免疫系メッセンジャーであるインターフェロンベータ
      • 抗ウイルス効果が期待できるインターフェロンベータの併用だが、副作用も懸念される

    WHO launches global megatrial of the four most promising coronavirus treatments

    https://www.sciencemag.org/news/2020/03/who-launches-global-megatrial-four-most-promising-coronavirus-treatments

    新型コロナウイルスの感染機序

    編集履歴
    2020/04/09 Mr.HARIKIRI
  • [Bio-Edu] Surfactant – PF-68, PS80 の添加は常識 – 凝集の抑制 – ID12904 [2021/06/19]

    [Bio-Edu] Surfactant – PF-68, PS80 の添加は常識 – 凝集の抑制 – ID12904 [2021/06/19]

    界面活性剤

    タンパク質の凝集抑制には、古くから界面活性剤 (surfactant)の添加で改善されることが知られている。いろいろな界面活性剤の研究実績が積まれて、現在では、プルロニック (Pluronic)とポリソルベート (Polysorbate)の2種類が、その役割を代表するようになった。抗体医薬品では、殆どがPolysorbate 80が使用されるまでになっており、添加することは常識的なナレッジである。

    凝集と一口で表現しているが、実は、「Aggregate」、「Visible Particle」及び「Sub-visible Particle」に分けて考えられることが多い。凝集抑制剤の効果は、それぞに得意な対象がある。昔は、粒子サイズを測定することができなかったが、今では、目に目えないサイズの粒子を観測できる装置があり、今では、科学的に凝集抑制剤の評価が可能となった。

    • Pluronic
    • Polysorbate

    Pluronic F-68 (ploxamer 188)

    F-68は、凝集抑制に多用される

    特許において、0.001% PF-68の添加することは、常識のようで有る

    – AAVベクターの凝集を防ぐための組成物およびその方法 (特許, 2012)
    【課題】凝集なく、ビリオン、特にAAV(アデノ随伴ウイルス)ビリオンの高濃度ストック溶液を調製するための組成物および方法の提供。

    【解決手段】ビリオン調製物におけるビリオンの凝集を防ぐ方法であって、少なくとも約200mMのイオン強度を達成するためにビリオン調製物に1種類以上の賦形剤を添加することを含む、方法。高いイオン強度および適度な浸透圧のこの組合せは、クエン酸ナトリウムのような高い価数の塩を用いて達成される。

    https://patents.google.com/patent/JP2014111625A/ja

    AAV Purification by Iodixanol Gradient Ultracentrifugation – イオジキサノール勾配超遠心によるAAV精製

    https://www.addgene.org/protocols/aav-purification-iodixanol-gradient-ultracentrifugation/

    その他情報

    製品情報、毒性関連、分析手法など。

    • molecular weight : 8.4kDa (approx.)
    • 製品
      Non-ionic surfactant (100x) – Thermo Fisher Scientific –
      https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/24040032
    • 哺乳類細胞培養液中の界面活性剤プルロニックF-68の測定のためのアッセイの開発 (1998)
      • 動物細胞培養液中のプルロニックF-68の比色測定法
      • 以前に肝臓組織でプルロニックを測定するために開発された「チオシアン酸コバルト」との複合体の形成に基づく
      • 複合体の吸光度を328 nmで測定にり感度アップ
      • 複合体を酢酸エチルで洗浄 → アッセイの再現性が向上
      • 培養液の未知の成分によって引き起こされる干渉を低減には、臨界量のエタノールの添加が必要
      • 無血清培地でのプルロニック濃度が0.01から0.2%(w / v)の間で直線的
      • 0.01%(w / v)の低い検出レベルでは、相関係数(R2)は0.998
      • 培地中血清の存在は、感度を低下させるが、0.04から0.16%(w / v)プルロニックまで直線的
      • https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9735146/
    • F-68は、試験した範囲の用量で末梢運動、感覚、または動機付けの影響を混乱させることなく、神経伝達物質の取り込みと放出を減らし、ラットに学習と記憶障害を引き起こす
      https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC311314/
    • 細胞培養の攪拌翼により生じる剪断力から細胞を保護、トリプシン損傷細胞を修復し膜の多孔性の減少、細胞付着を低減する :
      Pluronic Enhances the Robustness and Reduces the Cell Attachment of Mammalian Cells –
      https://www.researchgate.net/publication/5523814_Pluronic_Enhances_the_Robustness_and_Reduces_the_Cell_Attachment_of_Mammalian_Cells/link/09e414fa0ed97088ed000000/download
    • プルロニック F-68の分析方法 (2010):
      Determination of Pluronic F-68 in High Protein Matrices by HPLC-RAM-ELSD, – Helen Chung, Melissa Khor, and Jinshu Qiu* Amgen Inc., One Amgen Center Dr., Thousand Oaks, CA 91320
      http://imtakt.com/jp/Support/UserReport/@USA-Amgen/2010-05-18_HPLC_2010_Poster_v3.pdf
      • Cadenza HS-C18 (150 x 3.0 mm, 3μ)
      • restricted access media (RAM) 固定層
      • HPLC system
        • pump, 0.4 mL/min
        • autosampler
        • column switching valve
        • evaporative light scattering detector (ELSD)
      • 0.1% acetic acid (HAc)
      • 0.1% HAc in acetonitrile
      • gradient elution
        • 0 – 5.0 min : 0% B
        • 5.1 – 10.0 min : 10% B
        • 10.1 – 15.0 min : 45% B
        • 15.1 – 25.0 min : 100% B
        • 25.1 – 35.0 min : 0% B
      • Proteins eluted in the void volume
      • while PF-68 eluted at 14.5 min
      • sensitivity (10 mg/L quantitation limit)

    Polysorbate

    特にPolysorbate 80は、日本油脂から高純度品が市販されたことで、多くのバイオロジクスで使用されている。

    molecular weight : 1,310 Da

    Information for the package leaflet regarding polysorbates used as excipients in medicinal products for human use – EMA/CHMP 2018

    https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/draft-information-package-leaflet-regarding-polysorbates-used-excipients-medicinal-products-human_en.pdf

    BIoPharm International 22(6) 32-48 Best Practices for Formulation and Manufacturing of Biotech Drug Products

    https://www.researchgate.net/publication/279558359_Best_Practices_for_formulation_and_manufacturing_of_biotech_drug_products

    Concise Review: Considerations for the Formulation, Delivery and Administration Routes of Biopharmaceuticals

    https://www.heighpubs.org/hjb/abb-aid1004.php

    参考 UF/DF関連

    Control of Protein Particle Formation During Ultrafiltration/Diafiltration Through Interfacial Protection (2014)

    この研究は、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF / DF)中のタンパク質粒子形成のメカニズムを調査し、攪拌がタンパク質界面の吸着と脱着を促進することにより粒子形成を促進することを発見しました。導電率が低く、界面活性剤が存在しているため、小規模の攪拌試験では粒子形成のレベルが低下し、ポンプとUF / DFでも同じ傾向が見られました。ポリソルベート80(PS80)およびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)は、UF / DFでの粒子形成をそれぞれ15倍および4倍減少させました。構造安定性、コロイド安定性、および表面張力の測定により、PS80がタンパク質界面の吸着を防ぐことで粒子形成を防ぎ、低導電率がタンパク質のコロイド安定性を改善し、HPβCDの作用メカニズムが不明であることを示しました。

    Control of Protein Particle Formation During Ultrafiltration/Diafiltration Through Interfacial Protection
    編集履歴
    2020/04/07 はりきり(Mr)
    2020/05/26 追記 (PF-68の事例)、誤記訂正
    2021/06/19,追記 (Aggregate, Visible particle, Sub-visible particleについて少し解説)
  • [Bio-Edu] 細胞・細菌・ファージ・ウイルスを増やす 簡単な解説 – ID20721 [2020/10/06]

    [Bio-Edu] 細胞・細菌・ファージ・ウイルスを増やす 簡単な解説 – ID20721 [2020/10/06]

    はじめに

    初学者を対象にして、バイオを研究するために必要な知識を提供する[Bio-Edu]です。この記事では、バイオ、すなわち組換え体として使用する細胞や細菌、さらに関連知識として必要な更に小さな生物であるファージとウイルスについて解説します。

    生物

    生物界での病気やバイオにおける基礎知識として、「宿主 (しゅくしゅ)」という概念があります。

    ウイルスは生物ではないと考えられていましたが、最近では、生物であるともいわれます。

    この定義は、自分で自分を複製できないものは、生物ではないとする定義です。

    閑話休題 – 遺伝子の数 –
    ヒトの遺伝子は3万、大腸菌は4千、ウイルスは10個程度であり、これら、動物細胞、細菌、ウイルスのそれぞれの粒子としての大きさは、遺伝子の数に依存しています。

    ウイルスと細菌

    http://www2.nupals.ac.jp/~fmfsc/Topics/uirusuto_xi_jun.html

    生物と呼びにくい面々

    細胞、細菌は、適切な条件のもとで栄養分さえ与えてやれば、自分自身で複製できます。

    自分自身で複製できないものには、ウイルスの他にファージと呼ばれるものがあります。

    ウイルス

    ウイルスは、細胞に感染して細胞の生存機能を利用することで複製します。一方、ファージの感染対象が、細菌であることがウイルスと異なります。ウイルスは、通常丸い形をしていますが、ファージは、下図のように数十年前に初めてアメリカが月面着陸に成功した時に使用された「月面着陸宇宙船」の形にそっくりです。ファージについては、後述します。

    ウイルスとファージの形の違いには意味があります。ウィルスとは、比較的柔らかい表面の動物の細胞に感染するためには、この形(機能)で十分です。ウイルスは、細胞の表面に「ソフト」に吸着します。細胞とウイルスの表面は、よく似た膜(脂質膜)で覆われた構造であるため、「シャボン玉」同士が接触して吸着し融合していくような感じです。生命の活動とは不思議なもので、目的である細胞に融合したウイルスは、その後、細胞中へ完全に入っていきます(感染)。

    図1. 細胞とウイルス
    細胞(左図)とウイルス(新型コロナウイルス-WHO特設サイト-、右図)

    ファージ

    ファージでは、細胞表面が硬い細菌に感染するために、「月面着陸宇宙船」の形(機能)をしています。

    ファージの足の部分で、細菌に着陸(吸着)し、その後、胴体部で穴を開けて、スポイドの頭のような部分に保管されている自らの遺伝子を細菌の内部に注入します。

    図2. 大腸菌とファージ
    大腸菌(左図)とファージ(右図)

    増殖の機構は同じ

    ウイルスとファージの増殖は、細胞や細菌の生命活動を使って増殖します。細胞、細菌の中に自分の遺伝子が入ってしまえば、後はそれぞれの宿主(細胞、細菌)の生命活動の中でウイルス、ファージの独自の遺伝子が機能することにより、ウイルスやファージのパーツであるタンパク質が作られます。そのパーツから完全な形のウィルスやファージが作られ、宿主から飛び出ていきます。

    増やす方法

    細胞・細菌を増やす

    栄養分を含む溶液(培地)に細胞や細菌を浸して、適度な条件 (温度、pH、浸透圧、酸素濃度、栄養素)で維持(培養という)してやると増殖します。

    • 動物細胞、大腸菌
    • 温度
    • pH
    • 溶存酸素濃度
    • 栄養

    増殖は、1個が2個になる、中学生の頃にに学んだあの増殖です。1個が2個、2個が4個、4個が8個、8個が16個・・・。この2個になる時間を「ダブリングタイム」と言います。

    ウイルス・ファージを増やす

    ウイルスやファージは、「細胞を増やす」で増やした細胞・細菌を用います。細胞、細菌に、ウイルス、ファージを添加して感染させます。感染とは、前述したように細胞、細菌の中に入ることです。細胞に接触させるだけで、感染させることができます。

    ウイルスやファージは、自分たちが増殖しやすい宿主を知っており、その宿主である細胞や細菌の表面に付着(これを知っていると表現)して、中に入り込みます。これを感染といいます。感染した後、宿主の細胞、細菌の生命活動を利用して自分自身のパーツをつくり、複製していきます。宿主を知っているとは、受容体が存在していると言い換えることができます。

    受容体とは、相手方(細胞など)に自分(ウイルス)のある部分を認識して結合できるある部分(一番的にタンパク質)のことを一般的にそのように呼びます。受容体が存在しなけば、感染は成立しません。

    まとめ

    バイオの初学者向けに、細胞、細菌、ウイルス、ファージの増やす方法 (単に「培養」と呼んだりする)について解説しました。

    以上

    大腸菌のイラスト – 理研 –

    http://rtcweb.rtc.riken.go.jp/DNA/sec/m1.html

    ファージに関する情報です

    ファージ — – ウィキペディア –

    https://ja.wikipedia.org/wiki/ファージ

    細胞培養の種類、培地、など詳細な基礎的な情報がえられます

    細胞培養の基礎知識 – Merck –

    https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/SAJ/Brochure/1/j_recipeecoli.pdf

    線画培養からシングルコロー取得して液体培養までの必要な材料と手順などの情報が得られます

    大腸菌培養 – Sigma Aldrich –

    https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/SAJ/Brochure/1/j_recipeecoli.pdf

    昆虫細胞の培養培地に関する製品情報です

    昆虫細胞培養 – Thermo Fisher Scientific –

    https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/cell-culture/insect-cell-culture.html

    参考動画 – 細胞の説明

    編集履歴

    2020/03/27 Mr.Harikiri
    2022/05/09 追記 (図)、文言整備
    2020/10/06 追記 (培養用の培地情報)、文言整備
    2022/11/08 追記(はじめに)、文言整備