はじめに
医薬品製造における逸脱対応は、GMPの基本原則に基づき、品質保証および患者の安全確保のために極めて重要なプロセスです。逸脱発見後は、まず初期対応として製品の隔離や作業中止などを行い、逸脱報告書を通じてQAや関係部署へ速やかに報告します。報告書には、基本情報、発生状況、初期対応、影響評価、原因調査、是正処置、CAPA(是正・予防措置)、効果検証、承認などの項目が網羅されており、事実に基づいた客観的記載と証拠資料の添付が求められます。逸脱の重大性は「重大」「中等度」「軽微」の3段階に分類され、それぞれに応じた対応の深さや緊急性が決まります。重大な逸脱では当局への報告や出荷停止の判断も必要になるため、初期段階での影響評価が鍵となります。実務上では、CAPAの有効性確認が抜けやすいため、一定期間後に再評価を行う体制が重要です。また、教育訓練や手順書改訂との連動、電子テンプレートの活用、逸脱原因の傾向分析による継続的改善も効果的です。PMDA査察では、これらの対応の整合性と再発防止の実効性が評価されるため、逸脱管理の質はそのまま組織の品質文化を反映するといえます。
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ChatGPT:
医薬品の製造における**逸脱対応(Deviation Handling)**は、GMP(Good Manufacturing Practice)に基づいて製品の品質や患者の安全性を守るために重要なプロセスです。以下に、逸脱の発生から是正までの一連のステップを示し、実務上不足しやすいステップについても補足します。
■ 逸脱対応の基本ステップ(一般的な流れ)
ステップ | 内容 |
---|---|
① 逸脱の発見 | 製造、試験、保管などの工程中に、規定された手順・規格からの逸脱を発見。現場担当者が即時に把握。 |
② 初期対応(一次対応) | 安全性・品質への影響が広がらないように該当品の隔離、作業中止、関係者への連絡などを実施。 |
③ 逸脱の報告 | 所定の様式(逸脱報告書など)で、品質保証部門(QA)や上長に速やかに報告。時には即時報告が必要。 |
④ 一時評価(初期評価) | QAや関係部署が、重大性(重大/非重大)を判定。必要に応じて管理職やQRMチームが関与。 |
⑤ 原因調査 | 直接原因および根本原因(Root Cause)を調査。5 WhysやIshikawa図を用いることもある。 |
⑥ 是正処置(Correction) | 逸脱当該品に対し、リワーク、再試験、廃棄などを実施。 |
⑦ 再発防止策(CAPA: Corrective and Preventive Action) | 根本原因に基づいた是正措置と、将来の再発防止措置を検討・実施。手順改訂や教育訓練などが含まれる。 |
⑧ 評価と承認 | QAが全対応(逸脱の分類、処置、CAPA)を評価し、逸脱記録を承認。必要なら品質部会でレビュー。 |
⑨ 文書化と記録保管 | 全過程を記録・保管(逸脱報告書、調査記録、CAPA記録等)。GMPに基づく記録保存期間を遵守。 |
⑩ トレンド分析・継続的改善 | 逸脱の傾向分析を定期的に実施し、システム的な改善に活用(マネジメントレビューの資料等)。 |
■ 不足しやすい・軽視されがちなステップ(補足)
ステップ | 解説 |
---|---|
★初期評価の明確な基準設定 | 重大性評価が曖昧な場合、対応が過剰・過少になる。あらかじめ逸脱分類基準を明文化しておくことが重要。 |
★CAPAの有効性確認(Effectiveness Check) | 実施したCAPAが再発防止に効果を持ったかどうかを、一定期間後に確認するプロセスが抜けやすい。 |
★教育訓練のフォローアップ | 再発防止策として教育を実施する場合、その理解度確認テストや訓練記録が漏れることがある。 |
★多部署連携の不備 | 製造部門だけで完結させがちだが、QA、QC、バリデーション、エンジニアリング等の関連部署との連携が必要。 |
■まとめ
逸脱対応は、迅速性・正確性・文書化・再発防止がカギです。GMP査察でも重点的に確認される項目であり、単なる記録作業にとどまらず、品質システム全体の健全性の指標ともなります。
必要に応じて、逸脱報告テンプレートや逸脱評価基準の整備も行うと、運用効率が高まります。テンプレートが必要でしたら提供可能です。
Q:
逸脱報告テンプレートや逸脱評価基準について実務的に活用できる内容で解説して
ChatGPT:
逸脱管理においては、逸脱報告テンプレートと逸脱評価基準の整備が、迅速で一貫性のある対応を行う上で極めて重要です。以下では、実務に即した形で、それぞれを解説します。
■ 1. 逸脱報告テンプレート(Deviation Report Template)
📄【テンプレート構成例】
セクション | 項目 | 説明 |
---|---|---|
① 基本情報 | 逸脱番号、報告日、報告者、発生部署、製造日、バッチNo.など | トレーサビリティ確保のため、固有番号と関係情報を記載。 |
② 発生状況の概要 | 発生日時、発見日時、発生場所、詳細な状況の説明 | 客観的に「何が」「どこで」「どうなったか」を記録。曖昧な表現を避け、事実ベースで。 |
③ 初期対応 | 被影響品の隔離、作業中止、緊急措置の内容 | 逸脱発見直後に行った初期対応を記録。 |
④ 影響評価 | 製品品質、患者安全性、GMP順守への影響評価(有/無) | QAが中心となり評価。リスクアセスメントツール(FMEAなど)を使用する場合も。 |
⑤ 原因調査 | 直接原因・根本原因(調査方法・結果・分析) | 「5 Why」や「Ishikawa(魚骨)図」などで体系的に解析。証拠資料(ログ、記録など)を添付。 |
⑥ 是正処置 | 当該品や工程に対する即時対応(例:再試験、廃棄) | 原因排除とは別に、「発生した逸脱に対する短期的対策」。 |
⑦ 再発防止策(CAPA) | 再発リスクを低減する仕組みづくり | 文書改訂、装置保守、教育訓練など。期限と担当者も明記。 |
⑧ 効果検証 | CAPAの有効性をいつ・誰が・どのように評価するか | 「○か月後に逸脱発生率の変化をレビュー」など具体的に。 |
⑨ 承認欄 | 実施者、責任者、QA、製造責任者などの署名欄 | 電子承認でも可。役割に応じて署名者を分ける。 |
■ 2. 逸脱評価基準(Deviation Classification Criteria)
逸脱を重大性ごとに分類することで、対応の深さと緊急性を明確にします。
🗂【三段階評価の例】
区分 | 定義 | 例 | 必要な対応 |
---|---|---|---|
重大逸脱(Critical) | 製品の品質、患者の安全、法規制順守に直接かつ重大な影響を与える | 無菌製品での滅菌工程スキップ、規格外製品の出荷など | 直ちにQA報告、品質部会、当局報告の検討、是正・予防策必須 |
中等度逸脱(Major) | 直接的ではないが、品質に影響を及ぼす可能性がある | 作業環境の逸脱(温湿度逸脱)、未承認手順の一部使用など | 原因調査、CAPA、QA評価による処理 |
軽微逸脱(Minor) | 品質・安全性にほとんど影響しない手順的ミス等 | 記録欄の記載漏れ、記録様式の誤使用など | 担当者是正、記録保存、傾向分析対象 |
■ 実務上のポイント
✅ 実用性を高める工夫
- 様式の電子化(Excel、Word、eQMS):入力補助(ドロップダウンやテンプレ文例)付きにすると記入ミスが減少。
- 定型フォーマットと自由記述の併用:一部はチェックボックス形式で対応を標準化。
- トレンド分析対応項目の明示:逸脱原因分類(人為、機器、手順、原材料など)をラジオボタン形式で記録。
✅ 注意点
- 軽微な逸脱も記録の対象とする文化形成(無報告による隠蔽を防ぐ)
- 教育訓練・手順改訂との連動:CAPAがSOP改訂や教育記録に繋がっているか確認
- PMDA査察では、逸脱の一貫性(評価の妥当性、類似事例との整合性)も見られる
編集履歴
2025/06/04, Mrはりきり