はじめに
GMP文書や試験記録書の保管期間について、実務では「5年間保存」と説明されることがあります。
しかし、現行の日本GMP省令に照らすと、すべての文書・記録を単純に「5年」として扱うのは不十分です。
医薬品GMPでは、文書・記録の種類、製品の有効期間、原薬か製剤か、生物由来医薬品等に該当するかによって、必要な保管期間が変わります。
本記事では、医薬品GMP省令に基づき、試験記録書、製造記録、SOP、教育訓練記録、原薬、生物由来医薬品等の保管期間を整理します。
結論:基本は「5年」だが、一律ではない
医薬品GMP省令における一般的な文書・記録の保管期間は、次のように整理できます。
| 区分 | 起算日 | 保管期間 |
|---|---|---|
| 記録類 | 作成の日 | 5年間 |
| 手順書等 | 使用しなくなった日 | 5年間 |
| 製品の有効期間+1年が5年より長い場合 | 作成の日、または手順書等は使用しなくなった日 | 有効期間+1年 |
| 教育訓練記録 | 作成の日 | 5年間 |
つまり、GMP文書・記録の保管期間は、原則として5年間です。
ただし、当該記録等に係る製品の有効期間+1年が5年より長い場合には、教育訓練記録を除き、その長い期間を適用します。
正しい根拠条文はGMP省令第20条
現行GMP省令では、文書・記録の管理は主に**第20条「文書及び記録の管理」**に規定されています。
旧記事では「第13条」と記載していましたが、これは現行GMP省令では不適切です。
第13条は、現行GMP省令ではバリデーションに関する条文です。
したがって、記事本文では次のように修正するのが適切です。
| 修正前 | 修正後 |
|---|---|
| GMP省令第13条に基づき、記録を5年間保存する | GMP省令第20条に基づき、文書・記録を作成の日から5年間、手順書等は使用しなくなった日から5年間保管する |
「製造販売後5年間」ではなく「作成の日から5年間」
旧記事では、「製造販売後5年間」という趣旨の説明がありました。
しかし、現行GMP省令の条文上、一般的な記録類の起算日は作成の日です。
また、SOP、手順書、規格書、製品標準書などの手順書等については、使用しなくなった日が起算日です。
したがって、次のように書く方が正確です。
医薬品GMP省令では、文書・記録は原則として作成の日から5年間、手順書等は使用しなくなった日から5年間保管する。ただし、当該記録等に係る製品の有効期間+1年が5年より長い場合は、教育訓練記録を除き、その長い期間を適用する。
「使用期限後1年」より「有効期間+1年」と書く方がよい
旧記事のタイトルには「使用期限後1年」という表現があります。
意味として大きく外れているとは言い切れませんが、GMP省令の条文に合わせるなら、**「有効期間+1年」**と書く方が適切です。
特にGMP文書としての正確性を重視する場合、タイトルも次のように修正するのがよいです。
修正前タイトル案
【GMP】医薬品に関わる試験記録書などのGMP文書の保管は5年間または使用期限後1年
修正後タイトル案
【GMP】医薬品に関わる試験記録書などのGMP文書の保管期間は5年または有効期間+1年
または、さらに正確にするなら次のタイトルがよいです。
推奨タイトル
【GMP】医薬品の試験記録書・GMP文書の保管期間:5年または有効期間+1年の長い方
実務例:有効期間ごとの保管期間
| 製品の有効期間 | 有効期間+1年 | 5年との比較 | 最低保管期間の考え方 |
|---|---|---|---|
| 2年 | 3年 | 5年の方が長い | 5年 |
| 3年 | 4年 | 5年の方が長い | 5年 |
| 4年 | 5年 | 同じ | 5年 |
| 5年 | 6年 | 有効期間+1年の方が長い | 6年 |
| 7年 | 8年 | 有効期間+1年の方が長い | 8年 |
このため、単に「GMP記録は5年保存」とだけ説明すると不十分です。
実務では、対象製品の有効期間を確認し、5年と有効期間+1年を比較して、長い方を保管期間として設定します。
教育訓練記録は5年間
教育訓練記録は、GMP省令第20条の保管期間の規定において、製品の有効期間+1年による延長対象から除外されています。
そのため、教育訓練記録は、原則として作成の日から5年間と整理します。
ただし、教育訓練は単に記録を残すだけでは不十分です。GMP事例集では、教育訓練の実効性を評価し、必要に応じて教育訓練資料、頻度、手法等について改善措置を検討することが示されています。
原薬の場合は第22条を確認する
原薬たる医薬品については、通常の第20条だけでなく、**第22条「文書及び記録の保管」**を確認する必要があります。
原薬では、次のように整理されます。
| 原薬の区分 | 保管期間 |
|---|---|
| 有効期間に代えてリテスト日が設定されている原薬 | リテスト日までの期間、または当該ロットの製造所からの出荷完了日から3年間のいずれか長い期間 |
| 上記以外の原薬 | 有効期間+1年 |
| 教育訓練記録 | 作成の日から5年間 |
したがって、原薬を扱う場合は、一般的な「5年または有効期間+1年」だけで説明すると不十分です。
特にリテスト日が設定されている原薬では、リテスト日までの期間と出荷完了日から3年間の比較が必要です。