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はじめに
コロナウイルスの感染機序の1つは、細胞膜とウイルス膜の融合により、ウイルス粒子が細胞膜と一体となり、ウイルス粒子内の遺伝子が細胞内に取り込まれるものと、もう一つは、貪食という機構により、ウイルス粒子そのものが、細胞内に取り込まれ、やがてウイルス粒子からウイルス遺伝子が漏出して細胞内に至るものがある。いずれにしても、細胞内に到達したウイルス遺伝子は、その機能を細胞内に存在する酵素などを利用して発揮することになる。
新型コロナウイルスの感染機序
新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) 感染のある過程で、以下に説明する薬剤の臨床試験における抗ウイルス効果のポイントが存在する。
1a Fusionでの感染
SARS-CoV-2は、エンベロープを持つウイルスである。このエンペロープであるスパイク・タンパク質が、宿主細胞の表面抗原に対して結合親和性があり、そこに結合することで、最初の感染の足がかりを作る。
結合すると、ウイルスの脂質二重膜と細胞の脂質二重膜は、膜融合をおこし、ウイルスのRNAが細胞の中に入っていく。
RNAは、タンパク質の設計図であるため、細胞内のタンパク質合成装置であるリポソーム(Ribosome)により、コードされたタンパク質を合成する設計図となる。
合成されたタンパク質は、必要な箇所で切断(Proteolysis)されるが、このポイントで、Lopinavir-ritonavirが抗ウイルス効果を発揮する。
Lopinavir, ritonavir配合剤 – KEGG –
作用機序: ロピナビルはHIVプロテアーゼの活性を阻害し,HIVプロテアーゼによるgag-polポリ蛋白質の開裂を抑制することで,感染性を持つ成熟したHIVの産生を抑制する.リトナビルは,CYP3Aによるロピナビルの代謝を競合的に阻害し,ロピナビルの血中濃度の上昇をもたらす.本剤の抗ウイルス活性は,ロピナビルによるものである
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057826
Proteolysisで適当な大きさになったタンパク質(非構造タンパク質:nsps)と小胞体由来の膜(と考えられている)が作る複製/転写複合体(Replication-transcription complex; RTC)が作られ、SARS-CoV-2の複製を媒介するsource。
このRTCの中には、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RNA-dependent RNA polymerase; RdRp)が含まれている。このRdRpsourceを阻害する考えられるのが、Remdesivirである。
Remdesivir – KEGG –
レムデシビルはアデノシンヌクレオシドのプロドラッグであり、加水分解等による代謝を経て、ヌクレオシド類似体の一リン酸体となった後、細胞内に分布し、代謝されてヌクレオシド三リン酸型の活性代謝物を生成する。活性代謝物はアデノシン三リン酸(ATP)の類似体として、SARS-CoV-2 RNA依存性RNAポリメラーゼによって新たに合成されるRNA鎖に天然基質ATPと競合して取り込まれ、ウイルスの複製におけるRNA鎖の伸長反応を取り込みから少し遅れて停止させる。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00068750
1b 貪食での感染
SARS-CoV-2ウイルス粒子を貪食する形で細胞内にそのまま取り込む(Endocytosis)。細胞内に入ってきた構造体をEndosomeと言う。
生成初期のEndosomeの内部は、pH6.3で、その後pH4.7sourceと低くなるsource。この段階で抗ウイルス作用を示すのが、Chloroquine, Hydorxychloroquineであると考えられる。
以上
編集履歴
2020/07/27 Mr.はりきり
2022/03/12,追記(はじめに: 2つの感染機序の概説)