蛋白質の精製 (基礎)
蛋白質の精製 (purification of protein)とは、不純物と混在している目的蛋白質を一定の性質を利用して物理化学的に分別して、最終的に目的の蛋白質のみを取り出すことです。
蛋白質の精製の具体例とて、水溶液の状態でタンパク質が溶けているとします。その溶液には、その目的タンパク質以外のタンパク質、脂質、糖質、原材料由来のDNAなどの不純物を含んでいるとします。
そのタンパク質液の成分(塩濃度、pH、有機溶剤濃度)を調節することで、担体(resin)と呼ばれる固定物への脱着、沈殿精製による不純物との分離(上清/沈殿)、活性炭への不純物吸着など、を実施可能となり、タンパク質を精製することができます。
しかし、用いる出発材料に含まれる目的タンパク質の含有率が精製効果に強く影響します。目的タンパク質の含有量が多いに越したことはありません。昔の出発材料では、目的タンパク質の含有量が、現在と比べて1桁、2桁低かったため、その精製は非常に大変でした。
最近の抗体医薬では、培養液での生産性は、5g/Lなど、一昔前と比べて10倍~50倍以上となり、相対的に不純物との比較で含有率の改善がなされています。そのため、昔と比較して精製の難易度は非常に低くなりました。
このように出発材料の品質が高まったことで、抗体医薬の精製は、プラットフォーム化が可能になりました。すなわち、単純な精製方法でも精製することができると言うことです。もしも、出発材料の品質が低い場合は、もっと複雑な精製工程を組まなければ精製できないことになります。
- 出発材料に含まれる目的タンパク質は、主たる成分量でなければ、精製することは難しい
- 相対的な不純物の混入量は、少ない程、精製はしやすくなる。
不純物とは (Impurity)
バイオ医薬品では、動物細胞や大腸菌など人ではない細胞に目的の蛋白質の遺伝子を導入して、これらを培養することで目的の蛋白質を分泌させるという培養工程がある。
以下、不純物の発生源を示す。
- 培養中に死んでしまう細胞の中味が培養液中に放出される
- 培養に使用する培地に含む添加物
- 目的蛋白質の分解物(類縁物質)
菌や動物細胞は、それらが生きていくための蛋白質などを生産しつつ、目的の蛋白質も生産してくれる。目的の蛋白質でない物質を不純物と定義する。不純物の種類には、宿主細胞由来の蛋白質や脂質、DNAなどが含まれる。
- 蛋白質 (細胞質由来)
- 糖質 (細胞由来の糖、endotoxinも含む)
- 脂質 (細胞膜)
- 核酸 (細胞の核由来DNA、付随するヒストンなど)
出発材料
現在では、遺伝子組み換えによる生産が主流となっているが、遺伝子組換え技術が開発されるまでは、目的蛋白質を生産してくれる菌や動物細胞を偶然見つけたりして専用に選択していた。
選択した細胞を培養し、ある程度の細胞濃度に増殖させた後、刺激剤を使ったりして目的の蛋白質を生産させていた。例えば、夢の薬と言われたインターフェロン (interferon)は、血液中の白血球を集めて培養し、刺激剤を添加するとInterferonを分泌した。株化細胞を使う場合は、Namalwa細胞ATCCというlymphoblastを使い、刺激剤は、仙台ウイルスを使用してInterferonを分泌されていた。もう、今から40年以上の昔の話である。
- 組織由来株化細胞
- ハイブリドーマ
- 遺伝子組換え大腸菌
- 遺伝子組換え動物細胞
沈殿精製
その頃の蛋白質精製には、いろんなバリエーションの沈殿化法が多用されていました。
- アセトン沈殿 (結晶分画製剤)
- 一部の血漿分画製剤の沈殿化に使用されていました
- エタノール沈殿 (Cohnのエタノール分画が有名)
- 血漿分画製剤の精製に使用されています。
- 温度管理を厳密にしないとタンパク変性してしまいます
- 硫安沈殿
- 血清・血漿からIgGを粗精製に使用できます。ウサギに免疫し血清を取得してから、30%飽和濃度でIgGを沈殿化できます
- PEG沈殿 (血漿分画製剤)
- rAAV精製にも最近まで多用されていました。最近は、Thermo Fisher Scienceの抗AAV抗体レジンが、性能が良く代替的に使われるようになりました
- グリシン塩酸沈殿(血漿分画製剤)
- Fibrinogeの沈殿精製など、分子量の大きな凝固因子に使用されていました