免疫組織化学染色(IHC)の基礎:組織の中でタンパク質の局在を可視化する方法

はじめに

目次

  1. はじめに
  2. 免疫組織化学染色(IHC)とは
  3. IHCで何がわかるのか
  4. IHCの基本原理
  5. IHCと免疫蛍光染色(IF)の違い
  6. IHCの代表的な検出方式
  7. DAB発色とは
  8. IHCの基本的な流れ
  9. 抗原賦活化とは(2ページ)
  10. ブロッキングとは(2ページ)
  11. 対比染色とは(2ページ)
  12. IHCで重要なコントロール(2ページ)
  13. IHCの評価で見るポイント(2ページ)
  14. IHCの長所(2ページ)
  15. IHCの限界(2ページ)
  16. IHC、IF、WB、ELISAの使い分け(2ページ)
  17. バイオ医薬品・病理評価におけるIHC(3ページ)
  18. まとめ(3ページ)
  19. 参考文献・出典(3ページ)

免疫組織化学染色、英語では Immunohistochemistry:IHC は、抗体を使って組織切片中の特定分子を検出し、その場所を顕微鏡で観察する方法です。

IHCの大きな特徴は、目的タンパク質が「あるかどうか」だけでなく、組織のどの細胞に、どの部位に、どの程度染色されているかを観察できる点です。

たとえば、がん組織で特定のマーカーが腫瘍細胞に発現しているか、免疫細胞がどこに集まっているか、タンパク質が細胞膜・細胞質・核のどこに局在しているかを調べることができます。

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免疫組織化学染色(IHC)とは

IHCは、抗原抗体反応を利用して、組織切片中の目的抗原を可視化する技術です。

目的タンパク質を認識する一次抗体を組織切片に反応させ、その後、酵素や蛍光色素などを利用して検出します。病理標本では、酵素反応によって茶色などに発色させ、光学顕微鏡で観察する方法がよく使われます。

Thermo Fisher Scientificは、IHCを、解剖学的・免疫学的・生化学的技術を組み合わせ、標識抗体を用いて組織内の標的抗原をその場で可視化する方法として説明しています。

IHCで何がわかるのか

IHCでは、主に次のような情報を得ることができます。

観察したいこと
目的タンパク質の有無特定マーカーが発現しているか
組織内での局在腫瘍部、間質、血管周囲、炎症部位など
細胞内での局在核、細胞質、細胞膜
発現している細胞種腫瘍細胞、免疫細胞、上皮細胞、内皮細胞など
発現量の目安陽性細胞率、染色強度、スコア
病理診断の補助腫瘍分類、由来推定、治療標的の確認など

Human Protein Atlasも、IHCは組織サンプル中のタンパク質などを可視化する顕微鏡ベースの技術であり、複雑な組織内で標的タンパク質の存在と局在を示せる点が強みであると説明しています。

IHCの基本原理

IHCの基本原理は、次のように整理できます。

  1. 組織切片をスライドガラス上に準備する
  2. 組織中の目的抗原に一次抗体を結合させる
  3. 一次抗体を検出する二次抗体または検出試薬を反応させる
  4. 酵素反応や蛍光によりシグナルを可視化する
  5. 顕微鏡で染色部位を観察する

一般的な病理IHCでは、HRPなどの酵素を利用し、DABなどの発色基質を反応させます。目的抗原が存在する場所では発色沈着が起こり、顕微鏡下で茶色などのシグナルとして観察できます。

IHCと免疫蛍光染色(IF)の違い

IHCとIFはいずれも抗体を使って目的分子を可視化する方法ですが、検出方法が異なります。

項目IHCIF
主な検出方法酵素発色、場合により蛍光蛍光
観察装置光学顕微鏡蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡
代表的な見え方茶色、赤色などの発色緑、赤、青などの蛍光
背景組織の確認ヘマトキシリンなどで形態を確認しやすい蛍光チャンネルごとに観察
病理診断との相性高い研究用途や多重染色に有用
退色発色標本は比較的保存しやすい蛍光は退色に注意

臨床病理や組織診断では、光学顕微鏡で観察しやすい発色IHCが広く使われます。一方、複数タンパク質の共局在や細胞内局在を高感度に見たい場合には、IFが有用です。

IHCの代表的な検出方式

IHCには、直接法、間接法、ポリマー法など複数の検出方式があります。

方法仕組み長所注意点
直接法標識一次抗体で直接検出する手順が少ない感度が低め、抗体の選択肢が限られる
間接法一次抗体を標識二次抗体で検出する汎用性が高い二次抗体の非特異反応に注意
ABC法アビジン・ビオチン結合を利用する感度が高い内因性ビオチンの影響に注意
ポリマー法酵素と二次抗体をポリマー化した試薬で検出する高感度、操作が比較的簡便試薬系に依存する

現在の病理IHCでは、HRP標識ポリマー法のような検出システムがよく使われます。ビオチンを使わないポリマー法では、内因性ビオチンによる背景染色を避けやすい利点があります。

DAB発色とは

IHCでよく使われる発色基質の一つが DAB です。DABは、HRP、つまり西洋ワサビペルオキシダーゼの酵素反応により、不溶性の茶褐色沈着物を生じます。

この沈着物が、目的抗原の存在する場所に残るため、光学顕微鏡で「茶色に染まった場所」として観察できます。

一般的には、DAB発色後にヘマトキシリンで核を青紫色に染めることで、組織構造と陽性部位を同時に確認しやすくします。

成分役割
一次抗体目的抗原に結合する
HRP標識検出試薬一次抗体の位置に酵素を配置する
DABHRP反応で茶褐色に発色する
ヘマトキシリン核を染め、組織構造を見やすくする

IHCの基本的な流れ

パラフィン包埋組織切片を例にすると、IHCの一般的な流れは次のようになります。

手順内容目的
1組織固定組織形態を保つ
2パラフィン包埋・薄切観察しやすい切片を作る
3脱パラフィンパラフィンを除去する
4再水和水系反応に適した状態に戻す
5抗原賦活化固定で隠れたエピトープを露出させる
6内因性酵素のブロック偽陽性の発色を減らす
7ブロッキング非特異的結合を減らす
8一次抗体反応目的抗原に抗体を結合させる
9洗浄未結合抗体を除く
10検出試薬反応酵素標識体を結合させる
11発色DABなどで可視化する
12対比染色核や組織構造を確認しやすくする
13脱水・封入標本を保存・観察可能にする
14顕微鏡観察染色部位を評価する

AbcamのIHCガイドでは、固定、抗原賦活化、透過化、ブロッキングなどがIHCサンプル調製で重要な工程として説明されています。

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