ウェスタンブロッティング(WB)の基礎:タンパク質を「分けて・移して・抗体で検出する」方法

WBで使われる主な試薬・材料

試薬・材料役割
ライシスバッファー細胞や組織からタンパク質を抽出する
SDSサンプルバッファータンパク質を変性させ、泳動に適した状態にする
ポリアクリルアミドゲルタンパク質を分子量に応じて分離する
分子量マーカーバンドの分子量を推定する
PVDF膜・ニトロセルロース膜タンパク質を固定する支持体
ブロッキング液非特異的結合を抑える
一次抗体目的タンパク質を認識する
二次抗体一次抗体を検出可能にする
洗浄バッファー非特異的に結合した抗体を除去する
検出試薬バンドを可視化する

ローディングコントロールとは

WBでは、各レーンに同じ量のタンパク質をロードしたことを確認するために、ローディングコントロールを使うことがあります。代表例として、β-actin、GAPDH、α-tubulinなどがあります。

ただし、これらのハウスキーピングタンパク質が常に一定とは限りません。実験条件によって発現量が変化する可能性があるため、使用前に条件に適しているか確認する必要があります。近年は、総タンパク質染色による正規化が使われることもあります。Bio-Radも、ハウスキーピングタンパク質の安定性確認や総タンパク質ノーマライズに関する資料を提供しています。

WBでよくあるトラブル

バンドが出ない

主な原因確認ポイント
目的タンパク質が少ないサンプル量、発現条件、抽出効率を確認する
抗体が合っていないWB適用抗体か、希釈倍率が適切か確認する
転写不良転写時間、電流、膜の向き、気泡の有無を確認する
検出条件が弱い露光時間や検出試薬の劣化を確認する

非特異的バンドが多い

主な原因確認ポイント
抗体濃度が高すぎる一次抗体・二次抗体の希釈倍率を上げる
ブロッキング不足ブロッキング条件を見直す
洗浄不足洗浄時間や回数を増やす
抗体特異性の問題別クローンや別メーカー抗体を検討する

背景が高い

主な原因確認ポイント
二次抗体が濃すぎる二次抗体の希釈倍率を調整する
洗浄不足TBSTなどで十分に洗浄する
ブロッキング液が合わないBSA、スキムミルク、専用試薬を比較する
露光過多露光時間を短くする

バンドがにじむ・曲がる

主な原因確認ポイント
サンプル過剰ローディング量を減らす
塩濃度が高いサンプル調製条件を見直す
ゲル条件が不適切目的分子量に合ったゲルを選ぶ
泳動条件が強すぎる電圧や泳動時間を調整する

WBの結果を見るときの注意点

WBのバンドは、見た目だけで判断しないことが重要です。目的タンパク質の予想分子量とバンド位置が一致しているか、陽性対照・陰性対照が適切か、ローディング量に問題がないかを確認する必要があります。

また、1本のバンドだけを見て「タンパク質量が増えた」と断定するのは危険です。定量的に比較する場合は、画像解析ソフトでバンド強度を測定し、ローディングコントロールまたは総タンパク質量で正規化する必要があります。

WBの長所と限界

長所

長所内容
特定タンパク質を検出できる抗体を使って目的タンパク質を選択的に検出できる
分子量情報が得られるバンド位置からサイズの目安がわかる
条件間比較ができる処理群と対照群で発現量を比較できる
修飾タンパク質も解析できるリン酸化抗体などを用いた解析が可能

限界

限界内容
抗体性能に依存する抗体の特異性が低いと誤解釈につながる
絶対定量には向かない通常は相対比較に用いられる
操作工程が多いサンプル調製、泳動、転写、抗体反応、検出の各段階でばらつきが出る
条件最適化が必要タンパク質や抗体ごとに条件検討が必要

WBを成功させるための基本ポイント

WBを安定して行うためには、以下の点が重要です。

ポイント内容
サンプル量をそろえるタンパク質定量を行い、各レーンのロード量を統一する
目的分子量に合ったゲルを選ぶ小さいタンパク質と大きいタンパク質でゲル条件を変える
転写を確認するPonceau S染色などで転写状態を確認する
抗体条件を最適化する希釈倍率、反応時間、温度を検討する
対照を入れる陽性対照、陰性対照、ローディングコントロールを設定する
飽和シグナルを避ける定量比較では露光条件を適切にする

まとめ

ウェスタンブロッティングは、タンパク質の存在、分子量、発現量の変化を調べるための基本的かつ重要な手法です。原理はシンプルですが、実際にはサンプル調製、電気泳動、転写、ブロッキング、抗体反応、検出の各工程が結果に大きく影響します。

特に、抗体の選択、ローディング量、転写効率、正規化方法は、結果の信頼性を左右します。WBは「バンドが出たかどうか」だけを見る実験ではなく、「そのバンドが本当に目的タンパク質なのか」「条件間で比較できる状態になっているのか」を確認しながら解釈する必要があります。

【注意点・例外】
WBの条件は、目的タンパク質、サンプルの種類、抗体、検出系、装置によって変わります。ここで示した内容は基礎的な整理であり、実際の実験条件は使用する抗体や試薬のデータシート、施設の標準操作手順書、専門家の確認が必要です。


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