ELISAの基礎:抗原・抗体反応を利用した定量測定法をわかりやすく解説

はじめに

ELISAは、抗原抗体反応酵素反応を組み合わせて、試料中の特定成分を検出・定量する方法です。正式名称は Enzyme-Linked Immunosorbent Assay で、日本語では「酵素結合免疫吸着測定法」と呼ばれます。

タンパク質、抗体、ホルモン、サイトカイン、ウイルス抗原、バイオマーカーなど、目的物質を比較的高感度に測定できるため、研究、診断、品質試験、バイオ医薬品開発など幅広い分野で使われています。

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ELISAとは何を測っているのか

ELISAで測定する対象は、主に次のようなものです。

測定対象
抗原ウイルス抗原、タンパク質、サイトカイン、ホルモン
抗体感染後抗体、自己抗体、抗薬物抗体
バイオマーカー炎症マーカー、腫瘍関連マーカーなど
製造・研究用タンパク質組換えタンパク質、残留宿主細胞タンパク質など

ELISAでは、目的物質そのものを直接「見る」のではなく、目的物質に特異的に結合する抗体または抗原を使い、その結合量を酵素反応の色や発光として読み取るという考え方を使います。

ELISAの基本原理

ELISAの基本は、次の3段階で理解できます。

  1. 目的物質をプレート上に捕まえる
    抗体または抗原をマイクロプレートに固定し、試料中の目的物質を結合させます。
  2. 酵素標識された抗体などで検出する
    目的物質に結合する抗体に、HRPやALPなどの酵素を結合させます。
  3. 基質を加えて色や発光を測定する
    酵素が基質を反応させ、色、蛍光、発光などのシグナルを生じます。その強さをプレートリーダーで測定します。

一般的なELISAでは、目的抗原を固相表面に捕捉または固定化し、酵素結合抗体と複合体を形成させ、基質反応によって測定可能なシグナルを得ます。

ELISAの代表的な種類

ELISAには複数の形式があります。代表的なものは、直接法、間接法、サンドイッチ法、競合法です。

種類概要主な用途
直接ELISAプレートに固定した抗原を、酵素標識抗体で直接検出する抗原検出、簡易系
間接ELISA一次抗体と酵素標識二次抗体を使って検出する抗体価測定、感染症抗体検査など
サンドイッチELISA捕捉抗体と検出抗体で抗原を挟み込むタンパク質、サイトカイン、バイオマーカー定量
競合ELISA試料中の抗原と標識抗原などを競合させる低分子、エピトープが少ない抗原など

サンドイッチELISAとは

サンドイッチELISAは、ELISAの中でもよく使われる形式です。

まず、プレート上に捕捉抗体を固定します。そこに試料を加えると、試料中の目的抗原が捕捉抗体に結合します。さらに、別の部位を認識する検出抗体を加え、目的抗原を抗体で挟み込む形にします。

このため「サンドイッチ」と呼ばれます。

サンドイッチELISAでは、目的抗原が捕捉抗体と検出抗体の間に結合するため、特異性の高い測定が可能です。Thermo Fisher Scientificの解説でも、サンドイッチELISAは標的タンパク質をプレート上に固定化し、異なるエピトープを認識する捕捉抗体と検出抗体で検出する形式と説明されています。

間接ELISAとは

間接ELISAは、主に抗体の検出に使われます。

たとえば、ある感染症に対する抗体が血清中に存在するかを調べる場合、プレートには抗原を固定しておきます。そこに血清を加えると、血清中に特異抗体があれば抗原に結合します。

その後、ヒトIgGなどに反応する酵素標識二次抗体を加え、発色反応で抗体の存在量を測定します。

間接ELISAは、抗体価の測定に向いていますが、二次抗体の特異性や非特異反応には注意が必要です。

競合ELISAとは

競合ELISAは、試料中の目的物質と、標識された目的物質または抗体との競合反応を利用します。

一般的には、試料中の目的物質が多いほど、標識体の結合が少なくなり、シグナルが低下します。つまり、サンドイッチELISAのように「多いほどシグナルが高い」とは限らず、競合ELISAでは目的物質が多いほどシグナルが低くなる場合があります

競合ELISAは、低分子化合物や、抗体で挟み込むことが難しい小さな抗原の測定に使われます。

ELISAの基本的な操作フロー

サンドイッチELISAを例にすると、一般的な流れは次のようになります。

手順内容
1捕捉抗体をプレートに固相化する
2ブロッキングする
3標準品と試料を添加する
4洗浄する
5検出抗体を添加する
6洗浄する
7酵素標識体または酵素標識二次抗体を添加する
8洗浄する
9基質を添加して発色させる
10停止液を加える
11プレートリーダーで吸光度を測定する
12標準曲線から濃度を算出する

ELISAでは、洗浄操作が非常に重要です。未結合の抗体や抗原が残るとバックグラウンドが高くなり、測定値の信頼性が低下します。

標準曲線とは

ELISAでは、濃度が分かっている標準品を段階希釈して測定し、標準曲線を作成します。

たとえば、以下のような濃度系列を作ります。

標準品濃度
Std 11000 pg/mL
Std 2500 pg/mL
Std 3250 pg/mL
Std 4125 pg/mL
Std 562.5 pg/mL
Std 631.3 pg/mL
Blank0 pg/mL

この標準曲線と試料の吸光度を比較することで、試料中の目的物質濃度を推定します。

ELISAでは、単純な直線回帰ではなく、4パラメータロジスティック回帰、いわゆる4PL解析が使われることも多くあります。特に濃度範囲が広い測定では、標準曲線の形状を適切に扱う必要があります。

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