6. 再試験と再サンプリングの考え方
OOT調査では、再試験や再サンプリングを行う場合があります。しかし、これらは事前にSOPで定義され、科学的根拠に基づいて実施される必要があります。
| 区分 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 再試験 | 元のサンプルまたは同一均質サンプルから再度試験する | 原因調査なしに実施してはならない |
| 再サンプリング | 新たにサンプルを採取する | 元試料不足、試料完全性の問題など正当化が必要 |
| 仮説試験 | 原因仮説を検証するための試験 | 結果採否のためではなく原因確認が目的 |
再試験は同じ均質なサンプルから実施すること、再サンプリングは元サンプルが不足している場合や元サンプルの完全性に問題がある場合に正当化して行うことが示されています。
7. 安定性試験におけるOOT
OOTが特に問題になりやすいのは安定性試験です。
安定性試験では、各時点の結果が規格内であっても、前回時点や初期値からの変化が通常より大きい場合、将来的な規格逸脱の兆候となることがあります。
製剤の安定性試験におけるOOT基準例として、以下のような数値の目安を示すことが出来ますが,実際の製造ロットの実績から決められるべきものです。
| 試験項目 | OOT基準例 |
|---|---|
| 含量 | 前回時点から±3.0%超、または初期値から±5.0%超 |
| 溶出性 | 前回時点から平均値が±10%変動 |
| 水分/乾燥減量 | 結果が約1.0%の場合、前回時点から絶対差±0.5超 |
| 類縁物質 | 規格値と前回値からの増減率・絶対差で評価 |
| 保存剤含量 | 前回時点から±5.0%超 |
ただし、これらは例示であり、すべての製品にそのまま適用できるものではありません。製品特性、分析法のばらつき、規格幅、過去データ、安定性プロファイルに基づいて、自社で妥当なOOT基準を設定する必要があります。
8. OOT調査で確認すべきGMP上の観点
OOTをGMPの観点から評価する場合、単に試験室内のエラーだけを見るのでは不十分です。以下のように、QC、QA、製造、製剤開発、分析開発、薬事などを含めた横断的評価が必要になる場合があります。
| 観点 | 確認内容 |
|---|---|
| 分析法 | 精度、真度、特異性、ロバスト性、システム適合性 |
| 試験操作 | 試料調製、希釈、抽出、ろ過、超音波処理、積分 |
| 装置・設備 | 校正、適格性評価、メンテナンス、異常履歴 |
| 製造工程 | 混合、造粒、乾燥、打錠、充填、滅菌、保管条件 |
| 原材料 | 原薬、添加剤、包装材料のロット差 |
| 安定性 | 保存条件、輸送、包装、光・湿度・温度の影響 |
| 類似ロット | 同一原料ロット、同一工程、同時期製造品への影響 |
| 市場品 | 出荷済みロットへの影響、回収要否、当局報告要否 |
ラボ調査だけでなく、製造工程、製造条件、投入原材料、文書記録を含むクロスファンクショナル調査も必要ななる場合もあります。
9. CAPAとトレンドレビュー
OOT調査の最終目的は、単に当該試験結果を処理することではありません。根本原因を特定し、再発を防止することです。
QAが四半期ごとにOOTのトレンド評価を行い、特定製品、特定試験、特定分析者、特定装置、特定工程段階、ヒューマンエラーに繰り返し発生していないかを確認することも重要な活動の一つです.
GMP実務では、以下のようなCAPAが考えられます。
| 原因 | 是正措置 | 予防措置 |
|---|---|---|
| 計算・転記ミス | 結果修正、再教育 | 電子計算化、二重確認 |
| 積分ミス | 積分修正、再レビュー | 積分ルール明確化、監査証跡レビュー |
| 試料調製ミス | 再試験、教育 | 手順書改訂、チェックリスト導入 |
| 分析法のロバスト性不足 | 分析法評価 | 分析法変更、再バリデーション |
| 工程変動 | 製造記録確認、逸脱調査 | 工程条件見直し、CPV強化 |
| 安定性傾向悪化 | 影響評価 | 包装・保管条件・規格設定の再評価 |
10. ブログ読者向けの実務メッセージ
OOTは、規格内の結果であるため軽視されがちです。しかし、GMPの観点では、OOTは「まだOOSではないが、品質システムが早期に検知すべき異常信号」です。
特に以下のような考え方が重要です。
- OOTは規格内でも調査対象になり得る。
- 再試験は、原因調査なしに行ってはならない。
- OOT基準は、製品特性と過去データに基づいて設定する。
- 安定性試験では、前回値・初期値・予測傾向との比較が重要である。
- OOT調査はQCだけでなく、QA、製造、開発、薬事を含む品質システム全体で扱う。
- OOTの繰り返しは、CAPA、継続的工程確認、品質リスクマネジメントにつなげる。
OOTを適切に扱うことは、将来のOOS、回収、承認後変更、安定性不良を未然に防ぐための重要なGMP活動です。
【根拠】
EU GMP Chapter 6は、品質管理においてOOSおよびOOT結果の調査手順を持つことを求めています。
FDAのOOSガイダンス、ICH Q9(R1)、ICH Q10は、OOTそのものを主題にした文書ではありませんが、科学的調査、品質リスクマネジメント、医薬品品質システムの考え方を整理するうえで重要な根拠になります。
【注意点・例外】
記事中のOOT基準値は、事例としては参考になりますが、GMP上の普遍的な法定基準ではありません。自社製品に適用する場合は、製品特性、試験法のばらつき、安定性データ、承認事項、薬局方要件、自社SOPに基づく妥当性確認が必要です。
また、OOT結果が調査中にOOSへ該当することが判明した場合は、OOT調査ではなくOOS調査として扱う必要があります。出荷判定、市場品への影響、当局報告、回収要否に関わる場合は、品質保証責任者、製造販売業者、薬事担当者、必要に応じて専門家に確認が必要です。
【出典】
- Handling of Out of Trend (OOT) Analytical Test Results – Pharma Beginers
- EU GMP Chapter 6: Quality Control – European Commission
- FDA: Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production
- PMDA: ICH Q9 品質リスクマネジメント
- PMDA: ICH Q10 医薬品品質システム
【確実性: 高】
OOTの定義、調査手順、GMP上の重要性については高い確実性があります。ただし、具体的なOOT判定基準値は製品・分析法・自社SOPに依存するため、その部分の汎用適用には注意が必要です。
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