(3) 継続的プロセス検証
とは,管理戦略に従い市販後の製品についてPPQで検証された状態が維持されていることを継続的に確認することである.更に,このステージにより製造プロセスの理解を深化させ知識管理体験を充実させることができる.
より進んだQbD
- 管理戦略を製品ライフサイクルを通じて製品と製造プロセスに適合させるアプローチ
- 市販後に想定される変更も管理戦略に含まれる
- 適応拡大,製造需要増大,剤形追加,
- 生産性やコスト
まとめ
- QbDとは,科学者が科学的に妥当だと考えられる範囲を正当に認可させ,その範囲内で柔軟に変更管理ができるようにするための基本的概念である.
- essential QbDは,バイオ医薬品開発における最低限の活動である.
- 医薬品の製造は,原薬の製造と製剤の製造の大きく2つに分類できる.
- 原薬の組成や特性は,そのまま製剤に受け継がけるため,バイオ医薬品の製剤のほとんどの特性は原薬の設計と製造プロセスの結果であると言える.
- バイオ医薬品では品質特性の多くで安全性/有効性への影響を完全に評価することはできない
- そのため,既に得られている情報/知識を活用する
- 期間は,製品のライフサイクル全体
- 対象は,開発初期で行うプロセス設計,プロセス性能,製品の評価などの品質とその戦略
- QbDとessential QbD
- QbDのためのデータ取得 (enhanced approach)にはコストがかかる.
- QbDで承認された「Gazyva」では相当量のdata packageが必要だった.
- Design Space (DS)の設計
- traditional approach
- プロセス管理戦略の採用は必要
- リスクベースアプローチの採用は必要
- enhanced approach
- traditional approachをベースとしなから
- QbD, DS
- 製品ライフサイクルを見据えたQTPPの設定は,臨床試験Phase 2での有効性確認ができていない段階では仮の設定となる.すなわち,臨床試験Phase 2の結果がでてから,暫定であったQTPPは正式な設定が可能となる.
- 現実的なプロセス開発は,当初に仮のQTPPと仮のCQAに従い開発をすすめてPC試験前のタイミングで長期的製品戦略に基づくQTPPの再設定の実施となる.そのためにプロセス開発機能と製品戦略機能の連携が必須である.
- 医薬品開発における臨床試験Phase 3 pivotal ロットの製造プロセスは,市販後のものと同じである必要がある.
ガイダンス
ICHや各国規制当局は,医薬品開発の基本的な考え方としてQbDがまとめられている.
FDAのProcess Validation(PV)アプローチとは?
定義(FDAガイダンス 2011年)
“Process validation is the collection and evaluation of data, from the process design stage through commercial production, which establishes scientific evidence that a process is capable of consistently delivering quality product.”
つまり:
- 単なる「バリデーションバッチの成功」だけではなく、
- 製造プロセスの設計 → 検証 → 継続的管理というライフサイクル全体を通じた品質保証のことです。
3つのステージから構成されるライフサイクルアプローチ
Stage 1: Process Design(プロセス設計)
- 目的:科学的根拠に基づき商業製造プロセスを設計
- 活動内容:
- QTPP、CQA、CPPの設定
- Process Characterization(DoE、リスク評価)
- 初期のControl Strategyの構築
✅ 「このプロセスで本当に安定して作れるの?」を科学的に説明する段階
Stage 2: Process Qualification(プロセス適格性評価)
- 目的:設計したプロセスが商業製造スケールで再現性をもって品質製品を出せるかを検証
- 活動内容:
- 設備/装置の適格性評価(IQ/OQ/PQ)
- 製造環境やオペレーター訓練の確認
- PPQ(Process Performance Qualification)バッチの製造・試験
✅ 「この設備と人・条件で、ちゃんと作れるのか?」を検証する段階
Stage 3: Continued Process Verification(継続的プロセス検証)
- 目的:商業生産の中でプロセスが一貫して管理され、品質が維持されているかを継続的に確認
- 活動内容:
- CPP・CQA・PPA・CPAなどのトレンドモニタリング(SPCなど)
- 継続的改善(CAPAや変更管理)
- データのレビュープログラムと再評価
✅ 「ずっと安定して作れているか?」を監視・改善していく段階
特徴とFDAの期待する点
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 科学的根拠(Science-based) | DoEやリスク評価を通じて設計されたプロセス |
| ライフサイクル思考 | 一度きりで終わらず、変更・改善も含む |
| データ駆動 | モニタリングや統計的分析により判断 |
| 統合的品質保証 | QbD、PQS(ICH Q10)、QRM(ICH Q9)と整合 |
FDA査察でのチェックポイント(例)
- Stage 1:CPP/CQAの根拠は? DoEやPCを実施したか?
- Stage 2:PPQバッチのバリデーション戦略は妥当か?
- Stage 3:CPVでトレンド逸脱をどう検出・対応しているか?
まとめ:FDA PVアプローチの本質
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ✅ 単なる「一発勝負」ではない | 開発段階から市販後までの連続した活動 |
| ✅ 科学的に設計・管理されているか | データと根拠に基づく設計・制御 |
| ✅ 継続的改善が前提 | CPVを通じてプロセス理解と改善を継続する姿勢 |
Biological Products QbD Pilot Program (2008)について
「Biological Products QbD Pilot Program(2008)」は、FDAがQuality by Design(QbD)をバイオ医薬品に適用する試験的枠組みとして立ち上げた非常に重要な取り組みです。
このプログラムは、のちのQbDのCMC適用、CTD記載方法、FDAとの事前対話に強く影響を与えました。
概要:Biological Products QbD Pilot Program(2008)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | Biological Products Quality by Design Pilot Program |
| 実施主体 | FDA / CBER(Center for Biologics Evaluation and Research) |
| 開始年 | 2008年(正式発表) |
| 目的 | バイオ医薬品分野にQbDを導入・促進し、科学的根拠に基づいた申請・審査のモデルを構築すること |
主な目的と背景
| 目的 | 説明 |
|---|---|
| QbDの理解促進 | バイオ製品におけるQbD適用例を収集・分析 |
| FDA-企業の協働強化 | 審査官との「科学的対話」を促進する(例:CQAや設計空間の説明) |
| 新しいCTD記載の提案 | QbDに基づくCMC情報の書き方を模索(例:3.2.S / 3.2.P構成) |
| 実証的プロジェクト | 応募企業が実際の申請資料を使ってFDAにQbD事例を提示・議論 |
プログラムの特徴
- バイオ製品(特にmAbなどのバイオロジクス)を対象
- 応募企業はFDAに対してQbD実装状況を説明(ミーティング形式)
- FDAは参加企業と議論を通じて評価方法や申請要件の透明化を進めた
- 参加はボランタリー(自主参加)
- データや評価は実際のBLA/INDに活かされる
参加企業・製品(例)
当時の公表情報や関連会議資料から、以下の企業が参加したとされています(正式な全社リストは非公開)。
| 企業(例) | 製品(推定) |
|---|---|
| Genentech | モノクローナル抗体製品 |
| Amgen | エリスロポエチン製剤など |
| Centocor(現Janssen) | 抗体製剤 |
| MedImmune(現AstraZeneca) | 抗ウイルス抗体など |
FDAの得た知見(公表されている内容より)
- QTPP → CQA → CPPの流れを明確にトレースできる資料構成が望ましい
- Design Spaceの設定にはDoEとリスク評価の併用が有効
- Control Strategyは**パラメータ管理+モニタリング(IPQAやPAT)**の組み合わせがよい
- 製造実績と開発履歴の統合的提示が審査の効率化につながる
プログラムの成果・影響
| 分野 | 成果 |
|---|---|
| CTDの記載法の改善 | モジュール3(3.2.S / 3.2.P)へのQbD要素の統合が明確化 |
| FDAの審査指針の更新 | のちの**“QbD Elements in CMC”** ドラフトガイダンス(例:BLA審査項目)へ反映 |
| 査察・承認基準への影響 | リスクベースの査察・継続的プロセス評価(CPV)の重要性が強調されるように |
| ICH活動へのフィードバック | ICH Q8(R2), Q9, Q10 実装における米国側の視点形成に影響 |
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プログラム名 | Biological Products QbD Pilot Program |
| 実施年 | 2008年〜 |
| 対象 | バイオ医薬品(主に抗体、タンパク製剤) |
| 目的 | QbD実装事例をFDAと共有し、審査・申請のガイドライン改善 |
| 現在への影響 | BLA申請のQbD化、Design Space活用、Control Strategy明示などに広く影響 |
QbDベースのBLA申請構成テンプレート
QbD(Quality by Design)ベースでBLA(Biologics License Application)を行う場合のCTD(Common Technical Document)構成テンプレートをご紹介します。
これは、FDA(特にCBER)との協議や、QbD Pilot Program(2008)などから得られた知見をもとに、QTPP → CQA → CPP → Control StrategyといったQbDの流れが明確に反映される形になっています。
QbDベースのBLA提出:CTDモジュール3の構成(テンプレート形式)
🔹 モジュール 3.2.S(原薬/バイオ医薬品バルク)
| セクション | 内容 | QbD的要素 |
|---|---|---|
| 3.2.S.1 | General Information | 製品概要、命名、構造など |
| 3.2.S.2 | Manufacture | 製造フロー、工程説明、施設情報 |
| 3.2.S.2.3 | Control of Materials | 細胞株、培地、原材料の管理 |
| 3.2.S.2.4 | Control of Critical Steps and Intermediates | CPPとその管理方法(QbDのコア) |
| 3.2.S.3 | Characterization | 分析、同一性、インパク分析 |
| 3.2.S.4 | Control of Drug Substance | CQAに基づく試験項目と規格 |
| 3.2.S.5 | Reference Standards or Materials | 規格物質の設定根拠 |
| 3.2.S.6 | Container Closure System | 包装とその影響(密封性など) |
| 3.2.S.7 | Stability | 長期・加速安定性、設計に基づく条件設定 |
モジュール 3.2.P(製剤:Drug Product)
| セクション | 内容 | QbD的要素 |
|---|---|---|
| 3.2.P.1 | Description and Composition | QTPPを意識した構成設計 |
| 3.2.P.2 | Pharmaceutical Development | QbD要素の中核:CQA、DoE、設計空間、リスク評価の内容をここに記載 |
| 3.2.P.3 | Manufacture | 商業製造プロセス、バッチサイズ、工程管理 |
| 3.2.P.3.3 | Description of Manufacturing Process and Process Controls | CPPとIPQA、PPAの管理戦略 |
| 3.2.P.5 | Control of Drug Product | CQAに基づく規格設定 |
| 3.2.P.7 | Container Closure System | 容器材質・溶出物・適合性 |
| 3.2.P.8 | Stability | QbD設計に基づく条件・期間設定、パラメトリックリリースとの関連もあり得る |
特にQbD要素を強調すべきセクション
| セクション | 内容 |
|---|---|
| 3.2.P.2 | 製剤開発セクションで、QTPP → CQA → CPP/CPA → Control Strategy → Design Spaceの流れを明確に記述 |
| 3.2.S/P.3.3 & 3.2.S/P.2.4 | CPP、Critical Step、IPQA、設計空間(設定した場合)の根拠 |
| Regional information(3.2.R) | FDAとのやり取りで生まれた対話記録や、補足資料を記載することも可能(オプション) |
実際のBLAで使われたQbD構成例(要素)
- CQAリスト+分類(Critical / Key / Non-critical)
- CPP・CPAマッピング表(パラメータと品質特性の因果関係)
- 設計空間とDoE結果のサマリー(モデル式あり)
- Control Strategy表(工程×パラメータ×管理手段)
- リスクアセスメントシート(FMEAまたはRAマトリクス)
- CPV戦略(Stage 3に向けたモニタリング計画)
補足:QbD実装におけるCTD記載のコツ
| ポイント | 説明 |
|---|---|
| ① 流れを論理的に書く | QTPP→CQA→CPP/CPA→Control Strategyの因果関係がつながるように記載 |
| ② 根拠を明示する | DoE、リスク評価、過去の知見などを裏付けにする |
| ③ モデルは図表で見せる | フローチャート、マッピング図、相関グラフがあると審査がスムーズ |
| ④ 必要に応じて補足(3.2.R) | 内容が複雑な場合は、追加資料や説明書をここに置くことで本体を簡潔に保てる |
まとめ:QbDベースBLA提出の基本構成
| モジュール | セクション | QbD要素の主な反映先 |
|---|---|---|
| M3.2.S | S.2.4 / S.3 / S.4 | CPP、Characterization、管理戦略 |
| M3.2.P | P.2 / P.3.3 / P.5 | QTPP、CQA、DoE、設計空間、制御戦略 |
| M3.2.R | 任意(補足) | リスク評価表、モデル、対話内容など |
CMC Biotech Working Group (EU)
: A-Mab (case study, 2009)