EUのIMPD-QとCTDの関係
EUの治験申請では、Clinical Trial Applicationの中で、治験薬に関する資料としてIMPDが提出されます。
IMPDの品質パートが、一般にIMPD-Qと呼ばれる部分です。
IMPD-Qは、原薬、製剤、製造方法、規格、分析法、安定性などを扱います。これらはCTD Module 3と重なる内容です。
しかし、IMPD-Qは承認申請用CTD Module 3そのものではありません。
治験段階の資料であるため、開発段階、臨床相、投与期間、対象患者、リスクに応じて記載の深さが変わります。
| 比較項目 | CTD Module 3 | EU IMPD-Q |
|---|---|---|
| 主な用途 | 承認申請 | 治験申請 |
| 対象 | 市販予定医薬品 | 治験薬 |
| 完成度 | 承認申請レベル | 開発段階に応じた内容 |
| 製造情報 | 商業生産を意識 | 治験薬製造を中心 |
| 安定性情報 | 市販期間を見据える | 治験期間中の品質確保を重視 |
| 正式なCTDか | はい | いいえ |
したがって、IMPD-Qについては次のように表現すると正確です。
EUのIMPD-QはCTD形式そのものではないが、CTD Module 3、すなわち品質・CMC資料の構成に近い考え方で作成される治験薬品質資料である。
EUのASMFとCTDの関係
ASMFとは、Active Substance Master File の略です。
EUで使われる原薬に関するマスターファイル制度です。
ASMFは、原薬製造業者が持つ製造方法や詳細な管理情報などの機密情報を保護しながら、規制当局が原薬の品質を評価できるようにする仕組みです。EMAはASMFについて、原薬製造業者の機密情報を保護しつつ、規制当局が原薬の品質評価に必要な情報へアクセスできるようにする手続きとして説明しています。
ASMFは、EUの販売承認申請、すなわちMAAの中で参照されることがあります。
特に、申請者が原薬製造の詳細情報をすべて直接持っていない場合に、原薬製造業者がASMFを当局に提出し、申請者はそのASMFを参照する形を取ります。
ASMFは通常、次の2つのパートに分かれます。
| ASMFの構成 | 内容 |
|---|---|
| Applicant’s Part | 申請者にも開示される情報 |
| Restricted Part | 原薬製造業者の機密情報を含む部分 |
ASMFはCTD一式ではありません。
しかし、原薬に関する情報を扱うため、CTD Module 3の3.2.S、すなわちDrug Substance、原薬パートと強く関係します。
| 項目 | EU ASMFの位置づけ |
|---|---|
| 対象地域 | EU |
| 対象 | 原薬、Active Substance |
| 主な用途 | MAAなどで原薬情報を補完・参照する |
| CTDとの関係 | CTD Module 3、特に3.2.Sに対応する情報を扱う |
| CTDそのものか | いいえ |
| 重要な特徴 | 原薬製造業者の機密情報を保護しながら当局審査を可能にする |
ブログでは、ASMFについて次のように書くと誤解が少ないです。
EUのASMFは、承認申請CTD一式ではない。原薬情報をCTD Module 3の原薬パートに対応する形で整理し、MAAなどの承認申請で参照される原薬マスターファイルである。
日本MF、米国DMF、EU ASMFの違い
原薬や製造情報を扱うマスターファイル制度は、国・地域によって名称や運用が異なります。
| 国・地域 | 名称 | CTDとの関係 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 日本 | MF、原薬等登録原簿 | Module 3品質資料と関係 | 承認申請で参照される |
| 米国 | DMF | eCTD提出対象 | FDAに提出されるDrug Master File |
| 米国 | BMF | eCTD提出対象 | 生物製剤関連のマスターファイル |
| EU | ASMF | Module 3、特に3.2.Sに関係 | Active Substance Master File |
このように、MF、DMF、ASMFは同じ「マスターファイル」と呼ばれることがありますが、制度は国・地域ごとに異なります。
特にASMFはEUの制度であり、日本のMFや米国のDMFと同じものではありません。
「CTD形式」と呼んでよいもの、注意が必要なもの
CTDという言葉は実務上、広く使われることがあります。
しかし、正確には次のように分ける必要があります。
| 分類 | 国・地域 | 例 | 表現 |
|---|---|---|---|
| 正式なCTD/eCTD | 日本 | 新医薬品承認申請 | CTD形式 |
| 正式なCTD/eCTD | EU | MAA | CTD/eCTD形式 |
| 正式なCTD/eCTD | 米国 | NDA、BLA、ANDA | eCTD形式 |
| eCTD提出対象 | 米国 | IND、DMF、BMF | eCTD形式で提出される手続き |
| CTD Module 3に準じる資料 | EU | IMPD-Q | CTD Module 3に類似した品質資料 |
| CTD Module 3に関連するMF | EU | ASMF | CTD Module 3の原薬パートに対応する資料 |
| CTD Module 3に関連するMF | 日本 | MF | 承認申請の品質資料と関係 |
| CTDではない資料 | 日本・米国・EU | 治験実施計画書、IB、GMP証明、ラベル | CTDとは別文書 |
CTDが使われる手続きの全体像
CTDが使われる、またはCTDと関係する医薬品関連手続きをまとめると、次のようになります。
| 手続き | 国・地域 | CTDとの関係 |
|---|---|---|
| 新医薬品承認申請 | 日本 | CTD形式 |
| 製造販売承認申請 | 日本 | CTD形式 |
| NDA | 米国 | eCTD形式 |
| BLA | 米国 | eCTD形式 |
| ANDA | 米国 | eCTD形式 |
| MAA | EU | CTD/eCTD形式 |
| バイオシミラー承認申請 | 日本・米国・EU | CTD/eCTD形式 |
| 適応追加申請 | 日本・米国・EU | CTD/eCTD形式で提出される場合が多い |
| 製法変更・規格変更 | 日本・米国・EU | Module 3を中心に資料提出 |
| IND | 米国 | eCTD提出対象 |
| 治験計画届 | 日本 | CTD一式ではない |
| CTA | EU | CTD一式ではない |
| IMPD-Q | EU | CTD Module 3に類似 |
| MF | 日本 | Module 3品質資料と関係 |
| DMF | 米国 | eCTD提出対象 |
| ASMF | EU | CTD Module 3の原薬パートに強く関連 |
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