CTDはどのような医薬品関連手続きに使われるのか [2026/06/06]

EUのIMPD-QとCTDの関係

EUの治験申請では、Clinical Trial Applicationの中で、治験薬に関する資料としてIMPDが提出されます。
IMPDの品質パートが、一般にIMPD-Qと呼ばれる部分です。

IMPD-Qは、原薬、製剤、製造方法、規格、分析法、安定性などを扱います。これらはCTD Module 3と重なる内容です。

しかし、IMPD-Qは承認申請用CTD Module 3そのものではありません。
治験段階の資料であるため、開発段階、臨床相、投与期間、対象患者、リスクに応じて記載の深さが変わります。

比較項目CTD Module 3EU IMPD-Q
主な用途承認申請治験申請
対象市販予定医薬品治験薬
完成度承認申請レベル開発段階に応じた内容
製造情報商業生産を意識治験薬製造を中心
安定性情報市販期間を見据える治験期間中の品質確保を重視
正式なCTDかはいいいえ

したがって、IMPD-Qについては次のように表現すると正確です。

EUのIMPD-QはCTD形式そのものではないが、CTD Module 3、すなわち品質・CMC資料の構成に近い考え方で作成される治験薬品質資料である。

EUのASMFとCTDの関係

ASMFとは、Active Substance Master File の略です。
EUで使われる原薬に関するマスターファイル制度です。

ASMFは、原薬製造業者が持つ製造方法や詳細な管理情報などの機密情報を保護しながら、規制当局が原薬の品質を評価できるようにする仕組みです。EMAはASMFについて、原薬製造業者の機密情報を保護しつつ、規制当局が原薬の品質評価に必要な情報へアクセスできるようにする手続きとして説明しています。

ASMFは、EUの販売承認申請、すなわちMAAの中で参照されることがあります。
特に、申請者が原薬製造の詳細情報をすべて直接持っていない場合に、原薬製造業者がASMFを当局に提出し、申請者はそのASMFを参照する形を取ります。

ASMFは通常、次の2つのパートに分かれます。

ASMFの構成内容
Applicant’s Part申請者にも開示される情報
Restricted Part原薬製造業者の機密情報を含む部分

ASMFはCTD一式ではありません。
しかし、原薬に関する情報を扱うため、CTD Module 3の3.2.S、すなわちDrug Substance、原薬パートと強く関係します。

項目EU ASMFの位置づけ
対象地域EU
対象原薬、Active Substance
主な用途MAAなどで原薬情報を補完・参照する
CTDとの関係CTD Module 3、特に3.2.Sに対応する情報を扱う
CTDそのものかいいえ
重要な特徴原薬製造業者の機密情報を保護しながら当局審査を可能にする

ブログでは、ASMFについて次のように書くと誤解が少ないです。

EUのASMFは、承認申請CTD一式ではない。原薬情報をCTD Module 3の原薬パートに対応する形で整理し、MAAなどの承認申請で参照される原薬マスターファイルである。

日本MF、米国DMF、EU ASMFの違い

原薬や製造情報を扱うマスターファイル制度は、国・地域によって名称や運用が異なります。

国・地域名称CTDとの関係補足
日本MF、原薬等登録原簿Module 3品質資料と関係承認申請で参照される
米国DMFeCTD提出対象FDAに提出されるDrug Master File
米国BMFeCTD提出対象生物製剤関連のマスターファイル
EUASMFModule 3、特に3.2.Sに関係Active Substance Master File

このように、MF、DMF、ASMFは同じ「マスターファイル」と呼ばれることがありますが、制度は国・地域ごとに異なります。

特にASMFはEUの制度であり、日本のMFや米国のDMFと同じものではありません。

「CTD形式」と呼んでよいもの、注意が必要なもの

CTDという言葉は実務上、広く使われることがあります。
しかし、正確には次のように分ける必要があります。

分類国・地域表現
正式なCTD/eCTD日本新医薬品承認申請CTD形式
正式なCTD/eCTDEUMAACTD/eCTD形式
正式なCTD/eCTD米国NDA、BLA、ANDAeCTD形式
eCTD提出対象米国IND、DMF、BMFeCTD形式で提出される手続き
CTD Module 3に準じる資料EUIMPD-QCTD Module 3に類似した品質資料
CTD Module 3に関連するMFEUASMFCTD Module 3の原薬パートに対応する資料
CTD Module 3に関連するMF日本MF承認申請の品質資料と関係
CTDではない資料日本・米国・EU治験実施計画書、IB、GMP証明、ラベルCTDとは別文書

CTDが使われる手続きの全体像

CTDが使われる、またはCTDと関係する医薬品関連手続きをまとめると、次のようになります。

手続き国・地域CTDとの関係
新医薬品承認申請日本CTD形式
製造販売承認申請日本CTD形式
NDA米国eCTD形式
BLA米国eCTD形式
ANDA米国eCTD形式
MAAEUCTD/eCTD形式
バイオシミラー承認申請日本・米国・EUCTD/eCTD形式
適応追加申請日本・米国・EUCTD/eCTD形式で提出される場合が多い
製法変更・規格変更日本・米国・EUModule 3を中心に資料提出
IND米国eCTD提出対象
治験計画届日本CTD一式ではない
CTAEUCTD一式ではない
IMPD-QEUCTD Module 3に類似
MF日本Module 3品質資料と関係
DMF米国eCTD提出対象
ASMFEUCTD Module 3の原薬パートに強く関連

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