USPとは何か:バイオ医薬品CMCで頻出するUpstream Processの基礎 [2026/05/23]

CMC資料でのUSPの書き方

CMC資料では、USPについて次のような情報が求められます。

記載項目内容
工程概要WCB解凍からハーベストまでの流れ
工程フローシード培養、本培養、ハーベスト
原材料培地、フィード、添加物、ガス
装置バイオリアクター、バッグ、センサー
工程パラメータ温度、pH、DO、攪拌、通気、培養期間
工程内管理細胞密度、生存率、代謝物、目的物濃度
重要管理点CPP候補、CQAとの関係
バリデーションスケールダウン、PPQ、工程性能
変更管理スケール変更、培地変更、装置変更

特に承認申請や技術移管では、USPを「操作手順」として説明するだけでなく、なぜその条件で管理するのかを説明できることが重要です。


USPを理解するための実務的な見方

USPを理解するには、工程を次の3つの視点で見ると整理しやすくなります。

1. 細胞を増やす工程

まず、細胞が健全に増殖することが必要です。

細胞密度、生存率、倍加時間、代謝状態などが基本的な指標になります。

2. 目的物を作らせる工程

次に、細胞に目的タンパク質を産生させます。

この段階では、収量だけでなく、糖鎖、電荷バリアント、凝集体などの品質特性が重要になります。

3. DSPに渡せる状態にする工程

最後に、培養液をハーベストし、DSPへ渡します。

DSPにとって扱いやすいハーベストであるか、細胞由来不純物が多すぎないか、保持時間中に品質劣化が起きないかなどが重要です。


まとめ

USPとは、バイオ医薬品のCMCで頻繁に使われるUpstream Processの略語です。

一般には、WCBの解凍から種培養、本培養、ハーベストまでの上流工程を指します。

USPは単に細胞を培養する工程ではありません。製品品質、収量、不純物、安全性、スケールアップ、プロセスバリデーションに直結する、CMC上きわめて重要な工程です。

特にバイオ医薬品では、USPでの培養条件が、目的物の品質やDSPへの負荷に大きく影響します。そのため、USPを理解することは、バイオ医薬品のCMCを理解するための基本になります。

一方で、医薬品分野ではUSPが米国薬局方を意味する場合もあります。CMC文書を読むときは、USPがUpstream Processなのか、United States Pharmacopeiaなのかを文脈で判断することが重要です。


用語集

用語読み方意味
USPユーエスピーUpstream Process。バイオ医薬品の上流工程。ただし米国薬局方を意味する場合もある
Upstream Processアップストリームプロセス細胞培養などにより目的物を産生させ、ハーベストを得るまでの工程
DSPディーエスピーDownstream Process。目的物を回収・精製する下流工程
CMCシーエムシーChemistry, Manufacturing and Controls。品質、製造、管理に関する開発・申請領域
WCBダブリューシービーWorking Cell Bank。製造に使う作業用セルバンク
MCBエムシービーMaster Cell Bank。WCBの元になる親セルバンク
Cell Cultureセルカルチャー細胞培養
Bioreactorバイオリアクター細胞や微生物を培養する装置
Harvestハーベスト培養後に目的物を含む液を回収する工程または回収液
Fed-batchフェドバッチ培養中に栄養成分を追加しながら行う培養方式
Perfusion Culture灌流培養培地を連続的に供給・排出しながら行う培養方式
CQAシーキューエーCritical Quality Attribute。重要品質特性
CPPシーピーピーCritical Process Parameter。重要工程パラメータ
HCPエイチシーピーHost Cell Protein。宿主細胞由来タンパク質
HCDNAエイチシーディーエヌエーHost Cell DNA。宿主細胞由来DNA
PPQピーピーキューProcess Performance Qualification。工程性能適格性評価
Scale-down Modelスケールダウンモデル商用スケール工程を小スケールで代表するモデル
Technology Transfer技術移管開発施設から製造施設、またはCDMOなどへ工程を移す活動

参考文献・出典

【注意点・例外】

USPは、CMC文脈ではUpstream Processを意味することが多いですが、医薬品全般ではUnited States Pharmacopeiaを意味する場合もあります。略語だけで判断せず、周辺語句を確認する必要があります。規制当局提出資料や承認申請資料での記載方針は、製品特性や申請地域により異なるため、最終判断にはCMC薬事・品質保証の専門家に確認が必要です。

【確実性: 高】


2022/11/14 Mr.Harikir

2026/05/23 更新

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