[Bio-Edu] タンパク質の「イオン交換体」による精製原理 – 目的タンパク質の物性を知る必要性 [2021/02/25]

はじめに

タンパク質の精製とは、どのような作業をするのでしょうか? 精製とは目的物と異なる物質を取り除き、目的物質の割合を上げること、すなわち純度を高めることです。

ここでは、イオン交換体を用いたタンパク質の精製の原理について解説します。

イオン交換体

先ず、イオン交換について説明します。その前に,タンパク質はアミノ酸の数珠繋ぎで作られています(ポリペプチド)。具体的には,アミノ酸のアミノ基と隣のアミノ酸のカルボキシル基とがペプチド結合してポリペプチドを作っています.

このポリペプチドの末端や側鎖(アミノ酸ごとの)には,フリーのアミノ基やカルボキシル基は、溶液のpHに応じてイオン化しています。そのイオン化によって、アミノ基(NH2)は、Hが一つ増えてNH3+になり正に荷電します。カルボキシル基(COOH)は、逆にHが減ってCOOになり負に荷電します。Hを増やすためには、塩酸などの酸を添加します.

  1. -NH3+ ⇌ -NH2 + H+
    • (アミノ基は弱塩基であり水に溶けると右の式に傾く)
    • (右の式に塩酸を添加してH+濃度を上げるとアミノ基に戻る)
  2. -COOH2+ ⇌ -COOH + H+
    • (カルボキシル基は弱酸であり水に溶けると上記左の式に傾くカルボキシラートイオンになる)
    • (左の式に塩酸を添加してH+濃度を上げるとカルボキシル:-COOH2+基に戻る)

Hを減らすには、NaOHなどの塩基を添加します。アミノ基とカルボキシル基がいずれもイオン化していない状態、すなわちNH2とCOOHになっているpHを等電点(pI)といい、荷電していない状態です。

  1. NH2 →(NaOH adding)→ NH- (アミノ基が正荷電する)
  2. COOH →(HCl adding)→ COOH (カルボキシル基が負荷電する)

イオン交換体は、負に荷電する合成化合物、または、正に荷電する合成化合物を樹脂(レジン)に結合させているものを言います。陰イオン交換では、陰イオンとイオン結合が可能な正に荷電した合成化合物を結合させたレジンを使用します。

タンパク質の溶解液のpHを調節して、その目的のタンパク質が負に荷電するか正に荷電するかを設定し、それに応じたイオン交換体を用いて、そのレジンにタンパク質を結合させることで、目的のタンパク質を効率よく回収することができます。具体的には、イオン交換体に結合させたタンパク質は、今度はそのレジンから解離させるために、そのイオン結合を切る条件にレジンの環境を変えてやります。すると、目的のタンパク質がレジンから溶出さされます。

イオン交換クロマトグラフィ

レジンの置かれる環境を変化させるために、緩衝液(パッファ)をレジンに添加したり、バッファのみを取り除いたりすることで、レジンの置かれている環境の変化を作ってやります。

具体的には、バッチ法とカラム法があります。以下にそれぞれ説明していきます。

バッチ法

レジンに緩衝液を添加してスパテルでかき混ぜて、レジンの環境の均一化を行います。次に、

編集履歴
2020/06/22 はりきり(Mr)

条件の基本は、電気伝導度とpH

conductivityとpHの組み合わせ条件を網羅的に実験します。最初は、吸着条件です。その後、洗浄条件も必要ですが、簡便さを追求する場合は、吸着条件の実験データから目的タンパク質の部分的精製条件とすることも可能です。

  • レジンの選定
    • 陽イオン交換
    • 陰イオン交換
    • 疎水担体
    • マルチモーダル
  • 電気伝導度(conductivity)
  • pH
  • その組み合わせ
  • レジンの選定

検討の概要

  • 陽イオン・陰イオン交換レジン及び疎水担体では、pHとNaCl濃度の組み合わせ
  • ハイドロキシアパタイト(HA)では、NaCl濃度とリン酸(K2HPO4)の組み合わせ
  • Adhere、MMCでは、陽イオン・陰イオン交換レジンと同様、pHとNaCl濃度の組み合わせを使いますが、遠濃度は、高めの範囲を設定します。

実験方法

レジンの準備
  • レジンの洗浄(酸・アルカリ、中和、最後に水に平衡化)
  • 遠心してWet volumeを測定
  • その一部を採取して、数日乾燥させて、前後の重さを測定
  • レジンのwet volume(g)を使用した時、含まれる水の量を見積もる(計算しておく)
出発材料の準備
  • 培養上清
  • 組成が不明でも良い
  • 培養液を水で希釈系列を作る
    • 1倍(希釈無し), 0.1mLを調製
    • 1.5倍, 0.1mLを調製
    • 2.0倍, 0.1mLを調製
    • 5.0倍, 0.1mLを調製
    • 10倍, 01mLを調製
吸着反応とアッセイ
  • 培養液の希釈系列にレジンを添加
    • 96 well microplateで(プレートミキサー)も良い
    • 蓋つき試験管でも良い(サクラローターで攪拌)
    • 室温, 1hr
  • 分析
    • SDS-PAGE
    • 特異的アッセイ
  • 希釈率を決定

編集履歴

2021/02/25, Mr.HARIKIRI

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