DSP
DSP; Down Stream Process。バイオ医薬品の製造工程における下流工程を指す。
編集履歴 2022/11/14 Mr.Harikir
ThermoFisherは、rAAVによる遺伝子治療に関するCDMOサービスを提供するために、Brammer Bioを買収しました。
遺伝子治療のためのAAVやその他のウイルス・ベクターについてUSPおよびDSPのプロセス開発を行えるCDMOです。CDMOとは、このような開発ノウハウを持ち、スケールアップ開発も可能で、臨床用のGMP製造も可能な委託製造会社です。Brammerは、数多くのプロジェクト実績を持っています。
現在の治療対象は、症例数が少ないオーファンが多いので、200L程度のバイオリアクターで製造されるのがほとんどでした。しかし、今後の開発競争においては、症例数が多く且つ、全身投与などの投与量が多い症例へとシフトしてくるものと予想されます。製造装置としても更に大きなスケールアップが可能性なCDMOが求められることになってくると考えられます。具体的には、スケールアップの製造ノウハウや実際に持っている大きなバイオリアクターが競争優位性の重要なファクターになるものと思われます。
2019/3にThermoFisherによるBrammer Bioの買収を17億ドルで合意
https://www.genengnews.com/news/thermo-fisher-to-acquire-brammer-bio-for-1-7b-expanding-gene-therapy-presence/
ThermoFisherが買収することで、AAVベクターを用いた遺伝子治療用医薬品の製造が、世界的に本格化していることが垣間見えます。抗体医薬品のCDMOであるLONZA BIOLOGICSもAAVベクターのCDMOとして自社の設備の整備を完了しており、世界のバイオロジクスは、抗体医薬から遺伝子治療医薬へ舵を切ったといえます。
Brammer Bio
https://www.brammerbio.com
2020/03/12 はりきり(‘Mr), ThermoFisherに買収されてからの調査 2021/02/24 追記 (Brammerの説明、遺伝子治療CDMOの説明)
2015年時点のrAAV製造(Upstream, Downstream)に関するReview文献をもとに解説します.
目的の遺伝子をAAVに包含させて作ったAAVベクターが、遺伝子治療薬になります。ここで、目的の遺伝子がAAVの殻に含まれていれば良いのですが、何も含まれない空の粒子も確率的には作られてしまいます。空の粒子をEmptyと言います。一途方の粒子をFullと言います。
ウイルスを精製するには、従来から遠心、特に超遠心を使われてきました。精製目的のウイルスでも、中に何も入っていない殻と目的遺伝を含む粒子を分別精製するためにも、超遠心が使われます。手技も固まっており簡単なので、よく使われます。
参考文献から、AAVの比重 (密度) の情報を抽出しました。
rAAVの殻の部分は3種類のタンパク質でVP1, VP2およびVP3でできていますが、これらの総分子量は、600kDaです。そして、その空の中に収められるベクター遺伝子は、4.7kbpの長さで、その分子量は、170kDaです。前述の比重の差は、この分子量の差になります。
AAVは、負に荷電しています。したがって、陰イオン交換体 (AEX)に吸着性を示します。AEX resinとして、以下のものが使えそうです。ただし、最近の遺伝子治療薬としてAAVの精製方法に関する文献や特許を見ていると、その精製条件は、一般的な方法では、精製度をあげることは難しく、少し特異な条件を使用していることに目が惹かれます。例えば,pH10を超えるような条件で吸着させます。
AAVサンプルを超遠心分析により、Emptyを含めた不純物を除くFullの純度分析が可能となります。
[ignore]
[/ignore]
[ignore]
[/ignore]
編集履歴
2019/10/15 Mr.Harikiri
2020/10/01 追記 (文言整備)
2020/11/10 超遠心分析
2024/08/12 文言整備,引用文献の整備
リコンビナントAAV(rAAV)の大規模精製方法に関する方法特許(Method Patent)です.
精製のためのスタート原材料は,rAAVを発現した細胞培養上清です.
精製ステップは,2段のクロマトグラフィーになっています.1段目には,高い塩濃度で吸着が可能な疎水クロマト,2段目には,低塩濃度で吸着が可能な陰イオンクロマトです.
以上のステップにより,目的遺伝子を包含していな不要なウイルス粒子を効率的に除去可能であるとしています.
当該特許は、現時点では「国際調査報告公開」です。
特徴的なのは、pH10.2を採用していることです。タンパク質にとってpH8以上のアルカリ性は、タンパク質に良い条件ではありません。それと、システイン残基のSS結合が緩むのが、pH8から上のpHです。それをpH10.2を使っているのは、それでしか精製できないからでしょう。ある程度のタンパク質の劣化を許容しているということですが,劣化も精製度もコントロールできるのであれば,品質上問題ではありません.ただし,その結果が効力や副作用などに影響する場合は,投与の仕方を工夫する必要性が生じるでしょうか,それも臨床試験で確認していけばいよのです(Mr.Harikir, 2020/10/01)
クレーム
国際特許の権利発生までのフローは、このリンクを参照のこと。
国際特許検索は、このリンクを参照のこと。使用方法は、このリンクを参照.
特許庁 実務者向け説明資料は、このリンクを参照のこと.
文献
特許
WO 2017/160360 A9, SCALABLE PURIFICATION METHOD FOR AAV9
https://patents.google.com/patent/WO2017160360A9/en
2019/10/15 Mr.HARIKIRI 2020/10/01 追記(pH10.2について) 2023/10/23 追記(pH10でウイルスの品質に影響はあるだろうが,開発段階では問題にせずに,先に進むのが良い) 2023/10/24 追記(概要)