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  • [Bio-Edu] バイオ医薬品 (バイオロジクス)は、CHO細胞の技術革新と共に進展してきた [2020/08/05]

    [Bio-Edu] バイオ医薬品 (バイオロジクス)は、CHO細胞の技術革新と共に進展してきた [2020/08/05]

    バイオ医薬品とは

    バイオ医薬品は、英語でバイオロジクスと言います。バイオロジクスには、ヒトの体内に存在するタンパク性物質をターゲット(狭義)にしているため、よく知られている「抗体」以外のタンパク質も含まれます。

    バイオロジクスは、当初、血漿分画製剤で知られているように血液から得られていましたが、技術革新により現在では、その目的物である医薬品は遺伝子組換えCHO細胞により得られるようになって久しく、正にバイオロジクスは、CHO細胞に関する技術革新とともに進展してきたと言えます。

    以下、バイオロジクスについて、CHO細胞を使うアドバンテージをまとめました。ただし、CHO細胞が完全勝利ではありません。目的によっては、インスリン製剤など低分子量のタンパク質では、大腸菌が使用されています。

    • 現在、バイオロジクスの代表は、「抗体」である
    • その原材料は、
      • 「血液、19世紀末・戦後 ~」、ジフテリアや破傷風などの感染症治療法として弱毒化毒素のウマへの投与によるマウ血清が感染症治療に高い効果があることがベーリング(behring)と北里柴三郎らにより明らかにされた
      • 「B細胞のハイブリドーマ細胞化 (抗体に限る)、1975年~」、B細胞は、細胞ごとに単一の抗体を産生するが不死化させるためにミエローマ細胞を用いたハイブリドーマ技術が発展した。得られた抗体をmonolconal antibodyという。
      • 「遺伝子組換え細胞」へと展開してきた
      • source: Pharmacokinetics of Monoclonal Antibodies
      • source : 抗体医薬とは, 熊谷泉 – 化学と教育 68巻 7号 (2020)
    • 原材料として
      • 「血液」
        • 動物由来の場合では異種高原であることによる免疫原性の問題
        • オリジナル機能のタンパク質を取得できる(血漿分画製剤)
        • 量的制限
        • ウイルス安全性に問題
      • 「ハイブリドーマ」細胞
        • 動物への抗原免疫(抗体作成)、脾臓(B細胞)とホスト細胞(ミエローマ)とのハイブリドーマ作製、など煩雑であり抗体に限定
      • 「遺伝子組換え技術」
        • キメラ化 : 動物由来の可変領域とヒト抗体の定常領域を結合
        • ヒト化抗体 : 動物由来のCDR (Complementarity Determining Region, VHとVLにそれぞれ3箇所ずつ存在)のみをヒト抗体に移植することで、約95%がヒト由来構造を維持
        • 製造技術の進展による大量製造
        • 実績としてのウイルス安全性(CHO細胞)
        • 宿主細胞に関わる糖鎖(CHO細胞は実績として克服)
        • 現在では様々な課題を克服できている
    • 遺伝子組換え技術での生産細胞
      • 分子量が大きな抗体の産生細胞として、殆ど全てがCHO細胞が選択される
      • 分子量が小さいインスリンやインターフェロンなどの産生細胞には微生物(大腸菌、酵母など)が使われる。
      • CHO細胞
        • バイオロジクス市販品で30年の実績
        • ヒト型に近い糖鎖を付加でき、その他不純物に関する安全性の蓄積
        • 立体構造を再現できる
        • 高い培養生産性技術が蓄積(最大10g/L)
      • 大腸菌
        • 医薬品上の問題点
          • 糖鎖を付加できないため糖タンパク質には不向き
          • 高い産生量にするとInclusion body(不溶性)になる
          • 立体構造をオリジナルに再現できない
        • 対策
          • 糖鎖問題は、目的タンパク質を限定
          • 立体構造は、Refolding技術による正常化
      • 酵母
        • 1990年代に盛んな研究
        • 医薬品上の問題点
          • 糖鎖を付加できるが、ヒト型ではないため、抗原性の問題がある。
          • 強力な蛋白分解酵素により目的タンパク質の分解問題
        • 対策
          • 糖鎖問題
            • 目的タンパク質を限定する
            • 糖鎖付加が無いタンパク質
            • 糖鎖遺伝子のノックアウト
            • 医薬品でない酵素など
          • 分解問題
            • 培養技術及ひ精製技術で対応
            • プロテアーゼ遺伝子のノックアウト

    CHO細胞・エニジニアリング

    現在のバイオロジクス、特に抗体に関する遺伝子組み換え技術を使ったCHO細胞による生産性改善と取り組みは、以下の参考文献が概説として参考になります。

    • 目的タンパク質の遺伝子組込み、得られる細胞の多様性(糖鎖修飾)
    • 細胞株構築期間の長さ
    • 得られた細胞株の培養最適化
    • 比生産速度 pAB と 生細胞濃度 Xvの積分 = 生産濃度 P (IVC) (完全に理解できていません。今後要検証)

    バイオ医薬品生産におけるプロダクションサイエンス (2013)
    https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9109/9109_tokushu_3.pdf

    生産細胞の培養技術

    産生株が高い生産能力があったとしても、その培養条件がマッチしていなければ高い生産性は達成できません。抗体医薬品の場合、投与される量が多いため培養生産性は課題の一つになります。

    安定産生株の樹立と、その培養条件の開発の概説として、以下の文献が参考になります。

    • 安定発現株
    • 培養スケールアップ
    • 培養プラットフォーム
    • 電荷的多様性の制御
    • 培養終了の判断

    抗体医薬品生産培養技術の課題と展望 (2013)
    https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9109/9109_tokushu_4.pdf

    抗体医薬品・Fc融合タンパク質

    抗体医薬品について学ぶには、以下の項目を押さえておくことが重要です。「国立医薬品食品衛生研究所」のサイトに、「抗体」医薬品と「Fc融合タンパク質」について、まとめられたサイトがあります。

    抗体医薬品について全体像を把握することができます。

    抗体医薬品・Fc融合タンパク質
    国立医薬品所品衛生研究所・生物薬品部
    http://www.nihs.go.jp/dbcb/mabs.html

    抗体の分子的特徴として「Fc」と呼ばれる領域があります.Fcには抗原に対する結合機能は無く別の機能を持っていますが,抗原結合能を持っていないことから,この領域に,例えばPEGなどを結合させて,抗体自体の血中半減期を延ばしたり,がん抑制化学物質を結合させて,がん治療薬として機能を増強させたりと,このFc領域は利用されます.

    https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/btomail/17/12/19/00339/

    バイオシミラーの基礎知識

    バイオシミラーの基礎知識について、厚生労働省取材のセミナー資料があります。最近の情報であるためバイオロジクスに関しても最新情報を得ることができます。

    バイオ医薬品とバイオシミラーの基礎知識 – 厚生労働省主催講習会「バイオ医薬品とバイオシミラーを正しく理解していただくために」- 2020年1月11日 (大阪科学技術センター 大ホール
    https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496079.pdf

    抗体医薬の品質について

    日本における規制当局からのガイダンスがあります。

    抗体医薬品の品質評価のためのガイダンス (2012)
    https://www.pmda.go.jp/files/000206143.pdf

    CHO細胞以外の哺乳類細胞

    バイオロジクスで使用される動物細胞は、CHO細胞が殆ど全てと述べましたが、用途によってはラッド由来の細胞の使用が試みられています。2020/6現在、日本で上市されているYB2/0由来抗体は、0、SP2/0は4つ、NS0は5つ、CHOは57つです。以下の課題は依然として残ります。

    臨床段階で、YB2/0細胞由来の抗体医薬があります。YB2/0細胞は、フコース付加低減化が可能でADCC活性を高めることが可能な細胞株です。しかし、CHO細胞を代表する動物細胞の実績は、YB2/0細胞にはありません。YB2/0細胞は、2020/6現在、臨床試験が1社によって走っているのみです。新規参入企業には、ハードルは高いでしょう。

    • YB2/0細胞での生産性(?)
    • 不純物等に関わる安全性の実績(?)
    • レギュレトリーでのハードル(?)
    • 市販に対応できる自社及委託先の製造設備と技術

    高い細胞傷害活性を有する抗体医薬品の YB2/0 細胞を用いた効率的な物質生産研究 2011

    https://gair.media.gunma-u.ac.jp/dspace/bitstream/10087/6623/1/Ph.D%20E-428.pdf

    セルラインの種類

    研究用としては、以下のように種々の細胞株が使われます。Creative Labより

    •  CHO cell lines: GS system, DHFR system;
    •  BHK cell line;
    • Mouse myeloma cell lines: NS0SP2/0, etc.
    • Rat myeloma cell lines: YB2/0, etc.
    •  Human cell lines: HEK293 and its derivatives, HT-1080Huh-7PER.C6 , etc.

    以上

    編集履歴

    2020/05/23 はりきり(Mr) 2020/06/09 文言整備 2020/06/20 追記 (細胞株、日本で市販される抗体医薬の細胞株の数) 2020/08/05 追記 (ヒト化抗体)
    2022/10/23 文言整備: Fc領域の活用による機能付加について

  • [rAAV-Design] – 治療用AAV Vectorの設計 – 考慮事項 –  ID12947 [2020/06/24]

    [rAAV-Design] – 治療用AAV Vectorの設計 – 考慮事項 – ID12947 [2020/06/24]

    もとの設計図

    天然のアデノ随伴ウイルス(AAV)のゲノムは、1本鎖DNA (single stranded DNA; ssDNA)です。両端に遺伝子複製に関わるITRがあり、その間にAAVが複製に必要な構成タンパク質や機能性タンパク質の遺伝子が格納されています。

    REP遺伝子とCAP遺伝子は、1本ずつですが、翻訳開始位置をずらして翻訳されタンパク質が作られ、異なる構成タンパク質が作られるという効率的な遺伝子になっています。

    AAVは、ウイルスの中でも最も小さいウイルスの1つのParvoviarusであり、そのコンパクトさは遺伝子を使い回す設計にあるようです。

    図1. AAV Genome Map
    編集履歴
    2020/04/08 はりきり(Mr)
    2020/06/24 追記(もとの設計図)
    追記予定 : Biomarinが開発したF.VIII遺伝子治療AAV5には、FullのF.VIII遺伝子は大きさ的に入らないはずだが、どのような設計を行ったのか調べてみたい。

    治療用の設計

    治療用の設計では、単に遺伝子をカセットしてしまえば済むものではありません。

    効力面では、標的細胞からAAVの血清型を選択することも必要です。

    安全性面では、挿入する遺伝子にリスクがないのかもを考慮しなければなりません。

    詳細については、今後、取りまとめていきたいと思っています。今、思いつく事は、以下の通りの項目です。

    • 発現量関連
      • プロモーター : 強力
      • エンハンサー
    • 効力関連
      • 組織特異性
        • 血清型
      • 生体内分布
        • 中和抗体にすぐにやられなければ、血流に乗り続けて全身に及ぶことが可能なはず
    • 安全性関連
      • 癌化リスク配列
      • 生殖細胞への感染
        • 生体内分布と関連すると考えられる
      • 染色体への挿入
        • AAVベクターでは、rep/cap遺伝子は、目的plasmidに組み込まれないため、AAVの持つ染色体へのインテグレート機能は基本的に持たないが、相同組換えなどの偶然のケースは考えられる
      • 増殖(rcAAV)
    • 中和抗体対策関連
      • 血清型
      • 変異株
        • Lonzaでは、Ancestor AAV株の提供が可能
      • 自然免疫応答(ssDNA)

    AAVのセロタイプの違いや現在の臨床治験、治療応用について解説しますアデノ随伴ウイルス(AAV)とは

    コスモ・バイオ株式会社 -より

    https://www.cosmobio.co.jp/support/technology/a/adeno-associated-virus-aav-apb.asp
    変異修理歴
    2020/04/08 Mr.HARIKIRI

    アデノ随伴ウイルス(AAV)ベ クターの開発 と 血友 病B遺 伝子治療 への応用、村 松 慎 一
    Recombinant Adeno-associated Virus Vectors -Application to Gene Therapy bor Hemophilia B-

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth1990/9/1/9_1_13/_pdf
  • [Bio] 細胞の同一性試験 – DNA Finger Printing Test (Random amplified polymorphic DNA; RAPD) – ID12852 [2020/03/31]

    [Bio] 細胞の同一性試験 – DNA Finger Printing Test (Random amplified polymorphic DNA; RAPD) – ID12852 [2020/03/31]

    細胞の同一性

    アイソエンザイム解析

    細胞株の同一性試験としては、規制当局の要件としてアイソエンザイム解析がある。

    RAPD

    同様に同一性試験としてDNAを対象にしたRandom amplified polymorphic DNA (RAPD)試験がある。

    具体例として、参考文献1が参考になる。

    STR

    その他にも、Short Tandem Repeat (STR)分析がある。

    参考

    文献1

    RAPD-PCR法によるトラフグ、ハコフグ、うまづらはぎおよびアンコウの肝臓の判定

    http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/25273/1/35-p086.pdf

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  • [Bio-Process] 細胞バンク – ID9833 [2020/02/01]

    [Bio-Process] 細胞バンク – ID9833 [2020/02/01]

    生産細胞株

    通常、Cell Bankの保管は、劣化を極力抑えるために液体窒素蒸気下の極超低温で行われます.

    保管容器

    Nunc™ Press Out Tool for Cryobank and Bank-It™ Vial Systems, ThermoFisher

    https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/374009
    • 凍結保管セルバンクの融解とフラスコ培養

    関連するICHガイドラインと試験項目

    Q5シリーズ、FDAガイダンス、その他ウイルス否定試験、無菌、マイコプラズマ、などの試験項目を示します。

    • Q5A : 安定性
      • in vitro迷入ウイルス(今日培養CPEアッセイ, MRC-5, Vero, HEK293)
      • 血球吸着反応
    • Q5B : バンクシステム
    • Q5D : 考慮事項
    • Q5E : 同等性/同質性
    • FDA Guidance
      • in vivo迷入ウイルス(鶏卵、若齢マウス、成熟マウス、モルモット)
    • その他ウイルス否定
      • ヒトウイルス(qPCR)
      • ウシブタウイルス(9-CFR)
      • マウスウイルス(マウス抗体産生株)
      • レトロウイルス(電顕, F-PERT, HEK293共培養F-PERT)
    • 無菌試験
      • PH Eur 2.6.1, <JP 4.06, USP 71>
    • マイコプラズマ否定
      • PH Eur 2.6.7 (USP 63)
    • DNA finger print (PCR)
    • 細胞濃度、生存率
  • [Bio-Edu] 高分子蛋白質の組換え宿主細胞として大腸菌、酵母に勝るCHO細胞 – ID6629

    [Bio-Edu] 高分子蛋白質の組換え宿主細胞として大腸菌、酵母に勝るCHO細胞 – ID6629

    大腸菌

    大腸菌では、翻訳後修飾における糖鎖付加機能がないものの、糖鎖の付加がされないタンパク質で、且つ比較的分子量が小さいバイオロジクス製品に採用されている。その理由は、不溶化(Inclusion Body)するほど高い生産性、低分子でのRefoldingは確立されているためである。

    ただし、抗体医薬などの高分子蛋白質においては、Re-folding技術は確立されておらず用途はこれらに限られる。

    • 原核生物に属する細菌 (染色体DNAが、裸で細胞内に存在する)
    • 倍化時間 : 20分
    • 生産性は、酵母より数倍高いと考えられる
    • 糖鎖付加しない
    • 産生タンパク質は、細胞内に留まる(Inclusion Body)
    • 糖タンパク質でない医薬品として、数十年の実績がある

    酵母・カビ

    酵母では、翻訳後修飾における糖鎖付加機能はヒトと同様にあるものの、付加される糖鎖は巨大な酵母型であり、ヒトにおいて免疫原性のリスクがある。ヒト型糖鎖付加の研究は地道になされているようであるが、道のりは長い。

    • 動物細胞と同じ真核生物である真菌(違いは、硬い細胞壁)
    • 倍化時間 : 2時間(酵母)
    • 高い生産性(Pichia Pastoris: >10g/L、カビ: >100g/L)
    • 酵母・カビ由来の巨大な糖鎖付加
    • 生産タンパク質は、菌外に分泌される
    • 医薬品として実績が殆どない

    酵母とシステムバイオロジー
    岡山屋大学

    https://tenure5.vbl.okayama-u.ac.jp/HM_blog/?p=97

    動物細胞

    CHO細胞では、哺乳細胞のであることから付加される動作はヒト型に類似していたものの、生産性が現在と比べて1/100 ~ 1/1000と低くコスト高であった。しかし、CHO細胞の改変と培養技術や培養用培地の改良された。

    • 倍化時間 : 24時間
    • ヒト型の糖鎖付加
    • 生産性は、抗体医薬で10g/Lの報告がある
    • 生産物は、細胞外に分泌される
    • 医薬品として数十年の実績がある

    細胞株

    商用化されている抗体医薬では、以下の細胞株が使われている。日本において70程度の抗体医薬品が薬価収載されているが、80%程度は、CHO細胞である。残りは、SP2/0とNS0であ。