[日本薬局方] 微生物限度試験・無菌試験および関連する試験 [2024/10/17, 2025/06/09修正]

はじめに

日本薬局方における 「微生物限度試験」「無菌試験」 は、いずれも医薬品の品質・安全性を確保するための微生物学的試験法ですが、それぞれ目的・対象・方法に違いがあります。

特に,微生物限度試験は,英語で「バイオバーデン試験」といい海外CDMOなでの管理をしていると頻繁に出てくるキーワードです.バイオバーデン試験は2段階があり,(1) 定量的試験(微生物計数)では好気性微生物の総数を酵母菌とカビで決定する試験と(2)定性的試験(特定の微生物に関する試験)ではその存否を決定します.バイオバーデン試験は,USP<61>および<62>,EP第2.6.12章,及び日本薬局方で規定されています(参考文献1).



微生物限度試験(収載番号:4.05)

試験目的

  • 医薬品中の**一般生菌数(TAMC)真菌数(TYMC)**を定量
  • 特定微生物の有無を確認(健康リスクのある菌)
  • TAMC(一般生菌数)やTYMC(真菌数)の試験は、基本的には「嫌気性細菌を検出することを目的とはしていません」。
  • 無菌製剤ではない一般製剤(例:経口薬、外用薬、漢方薬など)について、「一定以下の微生物数であるか?」,「有害な特定微生物が含まれていないか?」 を確認する.
TAMC・TYMCと嫌気性細菌の関係について・・・

試験名主な対象微生物培養条件嫌気性菌は対象か?
TAMC好気性または通性嫌気性の細菌約30~35℃で好気培養(空気あり)❌ 原則含まない(嫌気性菌は育たない)
TYMC酵母・カビ(真菌)約20~25℃で好気培養❌ 対象外

→ TAMC/TYMCの環境では、偏性嫌気性細菌(例:Clostridium属など)は発育できないため、検出されません

嫌気性細菌を検出するには?・・・

嫌気性細菌(特に毒素産生性の菌)を検出するには、以下の試験が適しています:

試験名対象微生物特徴
無菌試験(4.06)好気性・嫌気性すべて嫌気性菌も発育できる培地(FTM)使用
特定微生物試験(4.05内)Clostridium属など嫌気培養・熱処理で芽胞菌を検出
エンドトキシン試験(4.01)グラム陰性菌由来の毒素生菌ではなく毒素そのものを検出

まとめ

特定微生物試験(4.05内):嫌気条件で選択的に培養する

TAMC/TYMCは好気性微生物が対象で、嫌気性菌の検出には適していない。

嫌気性菌を評価するなら:

無菌試験(4.06):培地性能試験にClostridium sporogenesなど使用

適用対象

  • 経口剤、外用剤、原料など 非無菌製剤

試験法の特徴

  • 培養法(平板培養・液体培養)を用いて微生物数を測定。
  • 一定の菌数以下であること(限度)を確認。
  • 特定微生物は有無を調べるのみ(定量ではない)。

主な測定内容

  • 一般生菌数 (好気性性微生物)
  • 真菌数(カビ・酵母)
  • 特定微生物の有無(例 : 大腸菌,サルモネラ属菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌,クロストリジウム属菌など)

主な手順概要

一般生菌数・真菌数の測定

  1. 試料の前処理(希釈・溶解)
  2. 寒天平板法または膜ろ過法により培養
  3. 培養期間
    • 一般生菌数:30~35℃で3~5日間
    • 真菌数:20~25℃で5~7日間
  4. コロニー数をカウント(限度値以下なら合格)

特定微生物の検出(例)

微生物名判定基準使用培地・条件例
大腸菌 (E. coli)検出されないことマッコンキー培地、選択増菌 → 確認試験(発酵等)
サルモネラ属菌検出されないことRVS培地などで選択増菌 → SS寒天で確認
黄色ブドウ球菌 (S. aureus)検出されないことマンニット食塩寒天培地
緑膿菌 (P. aeruginosa)検出されないことシュードモナス寒天
クロストリジウム属菌検出されないこと嫌気性条件、加熱処理(芽胞強調) → 培養

無菌試験(収載番号:4.06)

試験目的

  • 無菌製剤に微生物がまったく存在しないことを確認
  • 無菌性が要求される製剤(例:注射剤、点眼剤、輸液など)に対し,「1個でも微生物が存在していないこと(無菌性)」 を確認するための試験.

適用対象

  • 注射剤・眼科用剤・生物学的製剤・無菌処理済製剤

試験法の特徴

  • 試料を直接またはろ過により培養液に接種し、14日間培養して微生物の発育を確認。
  • 好気性・嫌気性両方の培地を用いる。
  • 微生物が1つでも存在すれば「不合格」。

試験法の種類

方法概要
膜ろ過法液体をフィルターでろ過 → 培地に浸して培養。濾過できる製剤に適用。
直接接種法製剤を直接、培地に加えて培養。濾過困難な製剤(油性、軟膏等)に使用。

使用培地

培地名用途
大豆-カゼイン消化物液体培地(TSB)好気性菌用(35 ± 2℃、14日間)
流加チオグリコール酸液体培地(FTM)嫌気性菌用(30 ± 2℃、14日間)

試験菌(陽性対照)に用いられる代表株

微生物用途
Bacillus subtilis(枯草菌)芽胞形成好気性菌
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)グラム陽性球菌
Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)グラム陰性桿菌
Candida albicans(カンジダ)酵母(真菌)
Aspergillus brasiliensis(アスペルギルス)糸状菌(カビ)
Clostridium sporogenes(クロストリジウム)芽胞形成嫌気性菌

試験の判定

  • 培養終了後、濁りや沈殿などの微生物の発育兆候がなければ「無菌」と判定
  • 発育があれば不合格(=無菌性なし)

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