東大、3つの神経筋疾患に共通する異常なリピート配列を発見、創薬応用へ
東大は、3つの神経疾患について、異常なリピート配列を発見した。
異常なリピートは、非翻訳領域にCGGの3塩基からなる繰り返し配列の異常伸長であり、以下に示した3つの疾患に共通しており、別の疾患と考えられてきたこれらの疾患は、共通の繰り返し配列のリピートを原因とする疾患であることがわかった。
- 神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease:NIID)
- 認知症などで知られている神経変性疾患。幼少期から高齢まで幅広く発症。
- NBPF19 遺伝子の5’非翻訳領域に存在するCGG繰り返し配列の異常伸長を確認
- 白質脳症を伴う眼咽頭型ミオパチー(oculopharyngeal myopathy with leukoencephalopathy:OPML)
- 頭部MRI画像で神経核内封入体病に類似した大脳白質の異常を示し、加えて眼球の運動を司る筋肉、嚥下・発声を担う咽頭の筋肉、四肢の筋肉を侵す疾患
- 解析の結果、LOC642361・NUTM2B-AS1という別の遺伝子に、同じCGG繰り返し配列の異常伸長が存在することを確認
- 眼咽頭遠位型ミオパチー(oculopharyngodistal myopathy:OPDM)という3つの神経筋疾患
- 眼球運動、咽頭、さらに四肢の遠位部の筋力低下が特徴的な筋疾患で、国が定める指定難病の一つである、遠位型ミオパチーに含まれる疾患
- 前述の白質脳症を伴う眼咽頭型ミオパチーと筋の罹患部位の分布が非常に類似していることをヒントに解析した結果、LRP12遺伝子に、やはりCGG繰り返し配列の異常伸長変異が存在することを確認
東大、3つの神経筋疾患に共通する異常なリピート配列を発見、創薬応用へ、日経バイテク, 2019/07
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/19/07/22/05843/
これまでに得られている関連情報
一般的にタンパク質への翻訳は,開始コドン(ATG)から始まる.しかし,特定の塩基配列の非常に長い繰り返し配列(リピート配列)が存在すると,開始コドンがなくても翻訳が生じることが2010年に実験的に確かめられ,repeat-associated non-ATG(RAN)翻訳と呼ばれるようになった.
RNA翻訳, 2015, – 薬学用語解説-
https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?RAN翻訳
「てんかんの新しい発症機構の解明 ―繰り返し配列の異常伸長によっててんかんが生じることを発見―」
発表ポイント
- 本邦に多く見られる、家族性のてんかんについて、次世代シーケンサーを駆使したゲノム解析によりその原因遺伝子として 3 遺伝子を発見
- 発見した 3 つの遺伝子(SAMD12 遺伝子、TNRC6A 遺伝子、RAPGEF2 遺伝子)は、いずれの場合も、イントロン領域に存在する、TTTCA という繰り返し配列の異常伸長が、発症原因となっていることを解明
- TTTCA 繰り返し配列の異常伸長が共通していることから、この異常伸長が直接てんかん発症の原因になっていると考えらる。神経細胞核内に TTTCA 繰り返し配列を有す る RNA の凝集体が観察され神経細胞の傷害に関与していると考えられます
【記者会見】別々の3疾患に共通する原因がヒトゲノムCGG塩基の繰り返し配列の異常伸長であることを解明, 2019/07
https://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/20190723.html
観想
mRNAからタンパク質に翻訳している機関はRibosomeであるが、Ribosomeがエラーしていると考えられるのか疑問に残った。Ribosome自体の頑健性に関わっている可能性があるもあるかもしれない。
2020/07/11 Mr.はりきり