[バイオ医薬] 製造におけるバイオバーデン管理について

はじめに

バイオ医薬品の製造における精製工程は下流工程と称され,培養工程とは異なりオープン作業が基本である.例えば,カラムに樹脂を充填する作業はオープンで行われるため,細菌などの汚染のリスクがあり管理が必要となる.これをバイオバーデン管理という.パオバーデンによる細菌などの毒素汚染のリスクも含まれる.細菌汚染により製造バッチの廃棄による経済的損失も無視できない.一旦発生すれば,カラム樹脂の廃棄,根本原因の解明とサイトの消毒作業により操業が停止することで大きなコストが発生する.

以下,cytivaのwhite paperからまとめた.

バイオバーデン

潜在的な微生物汚染物質として以下の形態が考えられる.それぞれの特徴をしることでリスク軽減が可能となる.バイオバーデン管理として器具のNaOH洗浄は代表的な処置法である.

  1. 細菌
  2. ウイルス
    • 細菌より小さくマイクロろ過ではまったく除去できない
    • 脂質膜を持つウイルスでは溶剤・界面活性剤で不活化される.
    • ウイルス除去膜(ナノろ過)である程度の比率で除去可能
    • 1M/0.5M NaOH処理による不活化データがある
  3. カビ(真菌)
    • B. subtilisなど胞子形成細菌
    • 胞子はケラチン外層であり化学物質(NaOHなど)や熱に耐性を持つ (対応策は,1M NaOH, 22℃,1時間処理による不活化)
    • 121℃過熱や次亜塩素酸ナトリウム,過酢酸などの酸化剤には弱い
  4. 外毒素
    • 一般的に分子量が大きいタンパク質で抗原性がある.
    • グラム陽性・陰性菌の細胞内で生成され一般的に熱に弱い
    • ペプチドベースの外毒素は熱・化学体制がある
  5. 内毒素
    • エンドトキシンはグラム陰性菌の外膜由来で熱耐性のリポ多糖類).
    • エンドトキシンの不活化には,0.1M NaOHが有効
    • 0.1M NaOHよりは0.5M/1.0Mでの不活化は高い効果を示す(0.1Mでは50時間,1.0 M/0.5 Mでは8時間から20時間の処理で検出限界以下となる)

バイオバーデンの発生源

  1. 土壌,空気,植物,動物及びヒト : 細菌,真菌,ウイルス
  2. 様々な経路を経て製造プロセスに侵入する
  3. 原材料
    • 製品と直接接触する原材料や加工助剤は潜在的リスク
      • カラムレジン,UF膜

対策

  1. ろ過
  2. クロマトグラフィー
  3. 低pH処理による不活化
  4. Solvent detergent (溶剤洗剤)処理
  5. 保持時間の短縮
  6. オープン作業の削減
  7. プロセス水の監視
  8. エリアの微生物粒子の監視
  9. 衛生活動,適切な教育訓練とSOP

バイオバーデン管理

  1. CytivaのProtein A
    • 樹脂の微生物規格として100 CFU/mLから20 CFU/mLに削減された.
    • 樹脂のエンドトキシン規格として<5 EU/mLが導入された.
  2. シングルユースバッグの使用
    • 事前に消毒された製品を使い捨てで使用する
  3. 洗浄 (装置,レジン及びUF膜)
    • 一般的には,1M NaOHが使用される.
    • 保管管理の条件
  4. 自動化
    • カラムパッキングなどの人を介さない自動化
      • レジンの包装からの取り出し(人の介入)
      • 自動充てん装置(人の介入なし)によるレジンの充填
    • 連続製造技術
      • ホールドタイムの短縮
      • ただし,製造バッチサイズが大きくなると製造期間が長くなり逆にリスクが高くなる.
    • バッファの自動化導入による準備
      • 自動バッファ調製(in line conditioning)によるリスク低減化によりfoot printeの削減や調製の簡素化
      • 再現性の高い調製

Bioburden: current innovations and practices to address …

バイオ医薬品開発・製造 バイオバーデンコントロール …