[BIOLOGICS] 「essentical QbD」の進め方からバイオ医薬品におけるプロセス開発(QTPP/ CQA/CPP/PPA/IPQA/PC/PPQ batchの位置づけも含めて),日本と米国との違い [2025/04/09]

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世界で初めてのバイオ医薬

世界で初めてバイオ医薬品が承認されたのは1982年,ヒト・インスリンは組換え大腸菌を生産細胞として,培養プロセスで生産され精製プロセスで医薬品にされたものである.以後,酵母や動物細胞,昆虫細胞を用いた生産系も現れた.いずれの場合でも,安全性と有効性の観点から品質を保証できるかが重要なポイントであるが,メーカー側視点では「生産性」の高さも経済性の観点から重要なポイントである.

Essential QbD

「Essential QbD」は、ICHのガイドラインにおける正式な用語ではなく、実務や教育の現場、特に製薬業界において「QbDの本質的な要素や最低限必要な実装項目」を強調するために使われる概念的な表現である。

具体的には,フルスケールのQbDを全て実装するのはリソースが相当必要となるが,まずは,「Essential QbD」だけでも実施することで、申請・規制対応に十分な信頼性を確保することを目的としている.

PPQ(Process Performance Qualification)製造とPV(Process Validation)製造の違い、およびその日本と米国での取扱いの違いについて、以下にわかりやすくまとめます。


日米のPPQとPVの比較

PPQとPVは日米で「定義・タイミング・承認との関係」において違いがある.


基本用語の整理

用語意味米国での使われ方日本での使われ方
PV(Process Validation)プロセスが一貫して品質製品を生み出せることを示す全体活動ライフサイクル全体(Stage 1~3)バリデーション実施そのものを指す(狭義)
PPQ(Process Performance Qualification)商業製造規模での実製造による性能確認(PV Stage 2)FDAではPVの一部として位置づけ「日本では”PVの本体”」として扱われることが多い

米国(FDA)の考え方:PV = ライフサイクル

FDAの2011年 Process Validation ガイダンスでは、PVを以下の3ステージに分けられており製品ライフ策要るを示すものとなっている:

ステージ内容PPQとの関係
Stage 1プロセス設計QbD・CPP・CQAの設定
Stage 2PPQ製造(Process Qualification)実製造スケールでの検証:**「PPQバッチ」**が該当
Stage 3継続的プロセス検証(CPV)市販後のモニタリングと改善

➡ 米国ではPPQはPVの一部であり、「Stage 2のアクション」

特徴(米国):

  • PPQはBLA/NDA申請時に完了していなくてもよい
  • 承認前に**PPQ計画書(PPQ Protocol)**を提出し、評価される
  • 承認直前~承認後にPPQ実施 → 結果を審査官に報告
  • リアルタイムリリース」や暫定製造の扱いもあり

日本(PMDA)の考え方:PV = 承認前の確認中心

活動内容タイミング
PV(=PPQ)承認申請における最終的な製造プロセス検証原則として承認申請前に完了が必要
GMP適合性調査PVの実施結果や施設を確認する審査と並行、もしくは審査後に実施される
商業製造PVが完了してから開始原則:PPQ完了→承認→市販製造の順番

特徴(日本):

  • PV(PPQ)製造は承認申請時までに完了していることが強く望まれる
  • 申請前にPVバッチ3バッチ実施」という実務運用が一般的
  • 設備・プロセスの変更にはPMDAとの事前相談が重要

比較:PPQ製造・PVのタイミングと扱い

観点🇺🇸 米国(FDA)🇯🇵 日本(PMDA)
PVの定義ライフサイクル全体(Stage 1~3)狭義のバリデーション(実バッチ)
PPQの位置づけStage 2の一部、PV中の確認工程PVとほぼ同義(実施=バリデーション)
PPQ製造のタイミング原則、承認前でもよい(要計画提出)承認申請時点で完了が望ましい
PPQバッチ数通常2–3バッチ(統計的根拠に応じて調整)実務上は3バッチが多い(明文化なし)
承認との関係承認後に実施可能な場合も承認前に完了が原則(GMP適合性調査対象)
柔軟性高い(設計空間、パラメトリックリリースなど)やや保守的、事前相談が重要

まとめ

ポイント米国(FDA)日本(PMDA)
PPQ製造のタイミング承認前でも、承認後実施もあり得る原則承認申請前に完了が必要
PVの定義ライフサイクル全体狭義の製造検証に集中
運用柔軟性高い(計画+事後報告可)保守的(申請資料で完結が基本)

さらに考察:

日本の「従来型開発(実験中心)」と、「QbD(Quality by Design)アプローチ」には、開発の目的・手法・考え方**において本質的な違いがあります。

ここでは両者の違いを、比較表+具体例+背景の考察でわかりやすく整理します。


1. 全体的な比較(従来型 vs QbD)

観点従来型開発(実験中心)QbDアプローチ
開発の目的承認に必要なデータを集めることプロセスと製品を科学的に理解・制御すること
プロセスの捉え方「ブラックボックス」的に操作条件を決定原材料・工程パラメータの因果関係を理解・モデル化
変更管理条件変更は申請対応・再試験が必要になりやすい設計空間内の変更は申請不要(柔軟対応可能)
リスク評価経験則や既知知識に依存FMEAやQRM(ICH Q9)に基づく定量的評価
実験の使い方試行錯誤・経験ベースDoE(実験計画法)など体系的手法を使って因果関係を解明
管理戦略工程試験や最終試験で品質確保Control Strategy(CPP/IPQA/CPA)で予測的に品質を保証
文書の構造結果中心の記述(試験値)設計意図・根拠・因果関係の記述が中心(科学的ストーリー)

2. 具体例で比較:打錠製剤の溶出プロファイルを開発する場合

🔹 従来型開発の場合:

  • 溶出が期待通りにならないときに賦形剤や造粒条件を変更して実験を繰り返す
  • 経験的に「この条件なら溶出が速くなる」と判断
  • 試験に合格すればそれで完了
  • 変更は申請が必要になることが多い

🔹 QbDアプローチの場合:

  • 初めにQTPPとCQA(溶出)を設定
  • 賦形剤濃度・造粒時間・湿度などをDoEで多変量解析
  • どの因子が溶出に影響するかをモデル化(→CPP選定)
  • 結果を設計空間として申請資料に明示
  • 一部変更なら設計空間内として事前申請不要

3. プロセス開発の日本での傾向と背景

項目内容
実情日本では依然として「従来型開発」が多数(特に後発品・一般製剤)
導入の壁DoE・統計解析に慣れていない、QRMの文化が浅い、リソース・時間的制約
導入が進む分野バイオ医薬品、新薬、大手製薬企業のグローバルプロジェクトなどではQbD導入が増加中
PMDAの姿勢QbDは義務ではないが、「導入すれば科学的妥当性がより明確に説明できる」として評価対象に含む方針

4. プロセス開発における実務対応のポイント

開発フェーズ対応の違い(従来型 vs QbD)
CQAの設定経験+ガイドライン参照 vs. リスク評価+QTPPからの論理導出
プロセス条件決定実験→判断→再実験の繰り返し vs. DoEで効率的に条件最適化
製造変更結果を確認して対応 vs. 事前に設計空間内で柔軟対応可能
CTDの書き方試験結果中心の記述 vs. 理由や因果関係に基づく記述が増える

まとめ:プロセス開発における従来型とQbD開発の違い

目的アプローチメリットデメリット
従来型実験→結果→最適条件短期対応に強い再現性や変更対応に弱い
QbD科学的理解→設計→管理再現性、変更耐性、申請柔軟性導入に時間・教育が必要

以上,日米でQbDの位置づけ,プロセス開発におけるPPQ,PVの定義の違いがあることから,以下のEssential QbDに関する解説では,日本の場合に必ずしも当てはまらない記載があることを認識しながら理解を進めてほしい.


目次

Essential QbDの意味(実務的な定義)

Essential QbDとは、「QbDの核となる最低限の構成要素」を実装した状態であり、バイオ医薬品開発における規制対応・リスク最小化・品質保証の基盤となる概念である。

最低限の構成要素

要素内容
QTPP(Quality Target Product Profile)患者にとって望ましい製品特性。品質の目標となるもの。
CQA(Critical Quality Attributes)製品の品質に重大な影響を与える特性(純度、無菌性など)。CTD Module 3関連
CPP(Critical Process Parameters)CQAに影響を与えるプロセスパラメータ。CTD Module 3関連
Risk Assessment(品質リスク評価)CQAやCPPの関係性を明らかにするための手法(例:FMEA)。
Control Strategy(管理戦略)安定した製造を確保するための設計空間や制御方法。

これらは、ICH Q8(R2)、Q9、Q10、Q11などのガイドラインで示された原則の中核的なものです。

CMC(製造管理・品質管理)パートの説得力を高める

  • 特にCTD Module 3では、CQA・CPPとそのリスク評価が説得的に記述されていることが評価される。

ICHの柔軟性ある承認制度(Design Spaceの活用など)につながる

  • Essential QbDを通じて設計空間を提示できれば、変更管理の簡素化などの恩恵も得られる。
Essential QbDに最低限必要な構成要素は,一般的にQTPP, CQA CPPRisk AssessmentおよびContrl Strategyの5つで足りるか?

結論:

QTPP(品質目標製品プロファイル)
CQA(重要品質特性)
CPP(重要工程パラメータ)
リスクアセスメント
Control Strategy(管理戦略)

これらは Essential QbD の「基本構成要素」としては妥当であり、最低限の核としては十分 とみなされます。

👉 ただし、実務や規制要件の観点からは、以下の補完的要素がしばしば組み込まれます。


補完的なQbD構成要素(必要に応じて)

要素解説なぜ重要?
Design Space(設計空間)科学的根拠に基づき、品質を損なわない範囲を設定柔軟な製造変更・規制対応が可能に
DoE(Design of Experiments)実験計画法によりパラメータと品質の関係性を可視化CPP/CQAの決定に使う主要ツール
Process Understanding(プロセス理解)メカニズムや変動要因の理解科学的根拠に基づくControl Strategyの基礎
PAT(Process Analytical Technology)製造中にリアルタイムで品質を測定・制御する技術継続的なプロセス制御とCPVに寄与
Lifecycle Approach(継続的改善)PVステージ3や製品ライフサイクル全体での制御QbDは一度限りでなく、継続的な活動

FDAやICHの視点では?

ガイドラインQbD要素の扱い
ICH Q8(R2)QTPP, CQA, CPP, Control Strategy, Design Space, Risk Assessment を中核要素と明言
FDA PV GuidanceQbDの一貫としてライフサイクルとCPVを重視
ICH Q9 (QRM)リスク評価をQbDに不可欠と位置付け
ICH Q10 (PQS)継続的改善を通じた品質システムとの統合を推奨

結論まとめ

質問回答
あなたの挙げた5要素はEssential QbDとして最低限足りるか?Yes(基本構成としてはOK)
実務的・規制的には他の要素も必要?⚠️ Yes(Design Space、DoE、PATなども加わることが多い)

Essential QbDの進め方

前提と目的を以下に示す.これは,バイオ医薬品におけるプロセス開発の最低限の活動でもある.

  1. 目的 : 原薬を製造するプロセスについて開発する
  2. 前提 : 製剤の特性は,原薬の特性と同一である

手順を以下に示す.

  1. QTPPの設定 : 製剤(最終製品)の目標製品品質プロファイル(QTPP)
  2. QTPPを保証できる適切な「限度内」,「範囲内」,「分布内」に,管理すべき特性を重要品質特性(CQA)としてリストする.具体的には規格試験項目に相当する.以下は具体例に限定されない.
    • 純度
    • 含有量
    • pH
    • conductivity
    • 規制要件(無菌皮下注射剤要件: 薬局方,ICHQ6)を含む
  3. 管理範囲
    • 全プロセスに一貫して管理されるもの
    • 培養工程のみで管理されるもの
    • 原材料として管理されるもの
    • など
  4. 製造プロセスのessential QbD
    • FDAが提唱するProcess Validation (PV)のアプローチに従う

FDAにおける「Process Validation (PV)」の定義

FDAの「Process Validation: General Principles and Practices」(2011年発行、CDER/CBER共通)によれば:

**「Process Validationとは、製造プロセスが一貫して所定の仕様と品質特性を満たす製品を産出できることを、科学的根拠とデータに基づいて示すこと」**です。

これは3つのステージで構成される.

  1. Stage 1 – プロセス設計(Process Design) : 工程の科学的理解を深め設計する段階である
    • 製品とプロセスに関する知識の収集と確立
    • QTPP,CQA,CPPの特定 (制御方法の決定であり,管理戦略の設定である)
    • 工程理解を深める (DoE)
    • IPQA/PPA選定と重要度評価 (critical性の評価 : key, non-key)
    • Process Characterization (PC)試験
  2. Stage 2 – プロセス検証 (Process Qualification; 工程適格性評価)
    • 商用スケールにおけるプロセスの一貫性と再現性を確認
    • プロセス検証
  3. Stage 3 – 継続的プロセス検証のステージ
    • 承認申請時管理戦略の確定
    • 継続的プロセス検証
  1. *QTPP : quality target product profile
  2. *CQA : ciritical quality attribute

(1) Stege 3: プロセス設計

Stage 1 ステップで行うべき活動

ステップ活動内容説明
① QTPPの設定製品の品質目標プロファイルを定義安全性、有効性、剤形の要件など
② CQAの特定品質に影響する特性を明確化含量、純度、溶出、安定性など
③ リスク評価原料、設備、工程の影響を評価FMEA、Ishikawa、PRAなど使用
④ CPPの抽出CQAに影響する重要工程パラメータの特定温度、時間、撹拌速度など
⑤ IPQAの選定工程中でリアルタイムに監視すべき品質属性中間体のpH、粒度、含量など
⑥ PPAの選定プロセスのパフォーマンスを表す指標発現量、回収率、粘度、操作負荷など
⑦ DoEの実施CPP・PPA・CQA間の関係を解析設計空間や制御限界の基礎
⑧ 初期Control Strategy設計上記パラメータの管理方法策定管理点、モニタリング、許容範囲など
⑨ スケールアップ/技術移管検討Pilotから商業製造への移行設計装置適合性、タイムライン整合など

PPAの実例(バイオ医薬品)

工程PPA例説明
細胞培養抗体発現量、培地消費速度生産性と培養健全性の指標
精製回収率、圧損、導電率プロファイル操作の安定性を表す
製剤粘度、ろ過時間製造負荷や均一性のトレンド指標

まとめ

観点IPQAPPA
CQAとの関連中程度~強い弱いこともあるが重要な間接指標
Stage 1での必要性✅ 必須✅ 含むべき
Stage 3(CPV)との関連✅ 直接対象✅ 重要なモニタリング指標

結論

Stage 1において、PPAの選定は必須ではないが、QbDおよびCPVの観点からは含めるべき活動である。

IPQA, PPAの評価方法 :

IPQAやPPAを「Critical/Key/Non-key」に分類する基準は、リスクベースの考え方(主にCQAへの影響度やプロセス性能との関係)に基づいて判断されます。以下に、培養工程と精製工程における具体的な例と評価基準を示します。

分類 (Critical, key, Non-key)の定義(一般的基準)
区分定義判断基準(例)
CriticalCQAに直接的・重大な影響を与える逸脱で品質・安全性に重大影響
Keyプロセス性能や一部のCQAに影響ありモニタリング・制御が望ましい
Non-key品質に与える影響が軽微・なし管理対象ではあるが重要度は低い

👉 この分類は、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)やリスクマトリクスを用いて科学的に決定するのが望ましいです。


例①:培養工程における IPQA / PPA の分類例

属性タイプ区分理由(評価ポイント)
培養液のpHIPQACritical酵素活性や細胞代謝に影響、糖鎖構造・CQAに影響あり
温度IPQACriticalタンパク発現・折りたたみ・不純物プロファイルに影響
撹拌速度PPAKey酸素供給やせん断による細胞生存率に間接影響
pCO₂レベルPPAKey〜Non-key(ケース依存)細胞種や培地によって影響が変わるため再評価必要
発泡の有無PPANon-key多くのケースでは製品品質に直接影響しない(ただし運転に支障ならKey)
抗体発現量(生産量)PPAKey製品歩留まりには重要だがCQAには直接影響しない場合も多い

💧 例②:精製工程における IPQA / PPA の分類例

属性タイプ区分理由(評価ポイント)
Protein A残留量IPQACritical安全性・免疫原性に直結するCQA
回収率PPAKey歩留まり・コストに重要だが、品質特性には間接的
クロマトグラフィーのpHIPQACritical結合・溶出に影響し、純度や変性体生成に影響
カラム圧力PPAKey装置トラブル予兆にはなるがCQAとはやや遠い
濾過時間PPANon-key作業性には関係あるが、製品品質には無関係の場合が多い
濾過後の濁度IPQAKey(製品によってはCritical)微粒子残留や清澄性に関連。注射剤ならより重要

判断のヒント(どちらに分類するか悩んだとき)

判断のヒント(どちらに分類するか悩んだとき):

評価観点質問例
品質への影響度属性が逸脱したら製品のCQAが変化するか?(Yes → Critical)
リスクの検出性異常時にすぐ検出・補正できるか?(No → Criticalに近づく)
頻度と変動性工程でよく起きる変動か?(Yes → Key以上で検討)
安全性・有効性との関連最終的に患者リスクに結びつくか?(Yes → Criticalの可能性大)


書式化のサンプル(表形式で管理されることが多い)

属性名工程タイプ区分管理方法備考
培養温度培養IPQACritical連続モニタリング+逸脱制御設定範囲外ではCQA変動
発現量培養PPAKey定期確認歩留まりトレンド確認用
回収率精製PPAKey各バッチ記録生産性KPI。CQAとは独立
カラムpH精製IPQACritical設定条件+検証結合効率に強く影響

区分の判定例

  • IPQA : in-process quality attribute
    • 原薬品質保証のために工程中(in-process)で実施される単一または複数の試験項目.試験/管理する品質特性(quality attribute)である.
    • 選定手順 : 「原薬CQA」の抽出 → 「IPQA」(工程毎の重要度評価により**)の選定 → IPQAを工程で管理する.
    • 重要度評価 :
    • ** 精製ステップがStep 1からStep 3と3つあった時,Step 2での重合物の除去率が他の工程と比較して高いと分かっている場合,このStep 2は,重合物の除去工程として主軸となっていると考えることからクリティカル(critical)であると評価できる.すなわち,Step 2における重合物の量をIPQAとして選定する.
    • ** また,データには反映されていなくても,原理的に重合体の生成/除去に関わりがあると考えられる場合は「key」,そうでない場合は「non-key」とする.
  • PPA : process performance atribute
    • 製造プロセスの恒常性保証の指標である.
    • ある工程が期待通りに終了したことを確認できる項目である.
    • 重要度評価 : 安全性に直接的に関与すると考えられる場合は「critical」,そうでなければ「key」とする(欧米規制当局ではこの3つの分類方法は否定的とある)

IPQAとPPAの比較

まとめ表

要素IPQAPPA
主な役割中間工程での品質確保指標プロセス性能・健全性の指標
Criticalになりやすい?はい(CQAと近い)一部(例:糖鎖分布に影響する場合など)
Keyになりやすい?多くのIPQA多くのPPA
Non-keyの例発泡量、濾過時間(製品依存)装置条件に関する操作性パラメータなど


QTPPとは?

QTPPとは?

最終製品に求められる品質属性の目標プロファイル
ICH Q8(R2)やFDAガイダンスにおいて、製品設計・開発・プロセス設計の出発点として位置づけられています。

QTPPはどう使われるの?

  • CQAの設定基準となる(例:QTPPで「安定性が重要」→CQAに「凝集率」「pH」などが選定される)
  • 開発戦略・プロセス設計の方向性を決定する
  • 品質ターゲットの明確化により、規制当局との合意形成がスムーズに

【バイオ医薬品(例:モノクローナル抗体製剤)】のQTPPの例

要素カテゴリQTPPの具体例説明・目的
投与経路静脈内注射(IV)生物学的利用能と投与設計に直結
投与量・用量強度100 mg/vial(バイアル)治療効果と用量設計
投与スケジュール2週間に1回投与負担と治療継続性に関係
製剤形態凍結乾燥品、注射用溶解液付き安定性と使用利便性
有効期間(Shelf-life)24か月(冷蔵保存2~8°C)安定性、保管・流通管理
安定性指標凝集率 < 2%、pH 6.0±0.2物理・化学的安定性の担保
無菌性USP <71>に適合(無菌性試験)微生物汚染防止の必須条件
生物活性基準活性値の±20%以内薬効を保証する指標


CQAとは?

CQAとは:

最終製品または中間体の品質にとって「重大な影響を与える可能性のある属性(特性)」であり、その仕様・制御が必要とされるもの。

FDAやICHでは次のように定義されています:

「CQAとは、製品の安全性および有効性に影響を及ぼす可能性がある物理的、化学的、生物学的、または微生物学的特性や特性値」
(ICH Q8(R2)より)

CQAはどう選ばれるのか?

  • 開発初期にQTPP(品質目標プロファイル)をもとに候補を洗い出し、
  • **リスク評価手法(FMEAなど)**でスクリーニング
  • その後、DoE(実験計画法)や統計解析でCPPとの関連性を確認
  • 最終的に「CQA」として確定されたものは、製品仕様やバリデーションの主要指標になります

関連ガイドライン

  • ICH Q8(R2):CQAの定義・開発における役割
  • ICH Q9:リスク評価を通じたCQAの同定
  • FDA PVガイドライン(2011):CQAを中心に据えた工程バリデーション

CPPとは?

CPPとは?

「製品の品質(CQA)に重大な影響を与える製造プロセス上のパラメータ(操作条件)」のこと。

FDAやICHでは次のように定義されています:

CPPとは、製品のCQAに影響を及ぼす工程パラメータであり、適切に制御されなければ製品品質に逸脱を生じさせる可能性があるもの。


CPPの基本的な特徴

  • CQAとの因果関係が科学的または統計的に示されていること
  • **設定された制御範囲(パラメータレンジ)**の中で維持されるべきもの
  • 工程設計時に DoE(実験計画法)やリスク評価(FMEA) などで特定される
  • **管理戦略(Control Strategy)**の中核を成す

CPPの具体例(製品・工程別)バイオ医薬品(例:抗体製造)

工程CPPの例関連するCQAへの影響
培養工程温度、pH、溶存酸素(DO)、撹拌速度、培地の供給速度糖鎖構造、凝集体生成、活性の変化
精製工程クロマトグラフィーの流速、バッファーpH、塩濃度純度、不純物プロファイル、回収率
製剤工程ろ過圧力、混合速度、最終pH調整安定性、粒子形成、pH維持

CPPの特定方法

CPPは以下のようなプロセスを経て特定されます:

  1. CQAの特定
  2. 工程因子(パラメータ)の列挙
  3. リスクアセスメント(FMEAなど)
  4. DoE(実験計画法)による相関・感度評価
  5. 統計モデルや経験に基づく影響評価
  6. 制御範囲(PAR)または設計空間(Design Space)の設定

関連するガイドライン

  • ICH Q8(R2):CPPの定義と制御戦略との関係
  • ICH Q11:原薬プロセスにおけるCPPの扱い
  • FDA PVガイドライン(2011):CPPの評価とバリデーションでの重要性

まとめ

CPPとは「CQAに影響を与える工程パラメータ」であり、QbDとバリデーションにおいて「何をどのように制御すべきか」を決める中心的な概念です。

適切なCPPの設定と制御によって、製品の品質は**工程から保証される(Quality is built into the process)**というQbDの基本理念が実現されます。


IPQAとは?

IPQAとは?

「製造工程中に測定・監視される品質関連の特性であり、製品品質(CQA)を確保するための制御指標として活用されるもの」

  • 製品の最終品質に直接または間接的に関係
  • 多くの場合、リアルタイムまたは工程中サンプルで測定
  • CQAの予測指標(プロキシ)や早期逸脱検出として利用される

IPQAの具体例

バイオ医薬品(例:抗体製剤)

工程IPQAの例関連するCQA(例)
培養(上流工程)細胞密度(VCD)
比活性
グルコース/乳酸濃度
溶存酸素(DO)
pH
糖鎖プロファイル、凝集体、純度、生物活性
精製(下流工程)クロマト溶出ピーク特性
pH
導電率
収率
純度、残留不純物、安定性
製剤化濃度均一性
pH
タンパク質含量
ろ過流速
含量、安定性、無菌性

IPQAとCQA/CPPとの関係

  • CQA:最終製品の品質属性(例:純度、安定性)
  • CPP:CQAに影響する操作条件(例:温度、撹拌速度)
  • IPQA:CPPを制御することで、工程中に得られる**「結果の指標」**

例:
CPP(pH)→ IPQA(細胞密度)→ CQA(糖鎖構造)


IPQAの役割

項目内容
工程制御工程中にモニター・制御して製品品質を担保
逸脱管理異常傾向の早期発見、逸脱調査の根拠
PATの活用対象リアルタイム測定可能な指標(例:NIRで含量)
PPQ・CPVでの重要指標工程能力や再現性の評価項目に含まれる

ICHやFDAでの位置づけ

  • ICH Q8(R2):制御戦略の一部として明記
  • FDA PVガイドライン(2011):工程中にプロセスを「in a state of control」に保つための指標として重要
  • PATガイドライン:IPQAのリアルタイム制御への活用が推奨されている

まとめ

IPQAとは、工程中にモニタリングされる品質関連の特性であり、製品のCQAを確保するための早期制御・予測指標として極めて重要な役割を担います。


PPAとは?

PPAとは?

プロセスが一貫して安定かつ期待通りに機能していることを示すパラメータや指標のこと。

  • 製品のCQAに直接影響しない場合もある
  • しかし、プロセスの再現性・一貫性・能力を示す上で非常に重要
  • 工程能力評価(Cp, Cpkなど)やトレンド管理に活用される

PPAの定義と特徴まとめ

観点説明
定義プロセス性能(ばらつき、収率、操作安定性など)を定量化する指標
主目的工程の再現性・安定性を評価すること(「工程が制御下にある」状態の確認)
測定対象CQAやIPQAと異なり、「工程動作」や「出力結果(収率など)」に関するパラメータ
関連性多くの場合、CQAに間接的な影響を与える可能性がある(=リスク評価対象)

PPAの具体例(工程別)

バイオ医薬品(例:抗体製造)

工程PPAの例目的・意味
培養撹拌速度、ガス流量、収率、培養時間操作一貫性や最終タンパク質量の評価
精製回収率、ろ過流速、クロマト圧力操作条件の安定性や効率のモニタリング
製剤フィルター差圧、ブレンド時間最終製剤品質に向けた工程制御

PPAと他の属性との違い

区分属性名内容測定目的
製品品質属性CQA製品品質に直接影響する属性規格適合性の保証
工程中品質属性IPQA工程中に品質に関係する指標中間製品の制御、逸脱検知
工程性能属性PPA工程の安定性・再現性を表す指標工程そのものの健全性評価

PPAの評価方法

  • **統計的手法(Cp, Cpk, Pp, Ppk)**でばらつきと能力を評価
  • トレンド分析で時間軸の安定性を確認
  • **工程能力評価報告書(Process Capability Report)**などで文書化

PPAの活用場面

活用シーン内容
PPQ(工程適格性評価)工程が一貫して再現できているかを示す指標
CPV(継続的工程確認)商用製造における安定性トレンドのモニタリング対象
変更管理や工程改善異常値や傾向変化から改善の必要性を判断

規制の観点から

  • **FDAのProcess Validationガイドライン(2011)では、Stage 3(CPV)において、「工程が統計的に制御された状態であることの証拠」**としてPPAの監視を重視しています。
  • ICH Q10でも、「プロセス性能のモニタリング」は品質システムの重要項目とされています。

まとめ

PPA(Process Performance Attribute)とは、製造工程が安定かつ再現性をもって機能しているかを評価するための重要な属性です。
製品品質に直接影響しないこともありますが、工程そのものの「健全性」を測る上で不可欠です。


PPAとPAの違い

PPA ⊆ PAであり,PPAは工程に関する場合,PAは品質に関する場合に使われることがおおい.

🔸 PPA(Process Performance Attribute)
プロセスの健全性・一貫性・能力を示す属性

🔹 PA(Performance Attribute)
→ より広義な概念で、PPAを含むこともあれば、製品性能に関わる指標を指す場合もある。

👉 PPA ⊆ PA として扱われることが多いです。
でも、企業や文脈によって「ほぼ同義」として使っているケースも見られます。


定義と違い(整理)

項目PPA(Process Performance Attribute)PA(Performance Attribute)
対象製造プロセスに特化プロセス+製品性能含む場合も
目的工程の能力・安定性を評価性能全般(製品品質との関連含む)
生産量、培養pH、精製回収率凝集率、粒度分布、溶出速度
管理対象通常はCPVでモニタリング品質設計や制御の指標にもなる

実務的な使用例(バイオ製剤)

属性PPA?PA?説明
抗体の発現量工程能力を示す(PPA)、品質との関連も(PA)
細胞の生存率⬜️工程制御には重要だが、製品性能には間接的
蛋白凝集率⬜️最終製品の安定性や免疫原性に直結(PA)
pH(培養中)(状況による)工程中のCPPに近く、パフォーマンス指標にも使われる

備考:用語のブレに注意

  • FDAやICHのガイドラインでは 「PPA」や「PA」自体を明確に定義していない場合もあります。
  • よって、企業ごとのSOPやCTD文書での用語定義が実質的な基準となることも。

まとめ

視点PPAPA
工程中心
製品中心
ほぼ同義に扱われる?一部企業や実務ではYesただし厳密には違いあり


Material Attributes(MA)とは?

Material Attributes(MA)とは?

Material Attributes(原材料特性)とは、製造に使用される原料・中間体・補助材料などの物理的・化学的・生物学的特性であり、製造プロセスや製品の品質(CQA)に影響を与える可能性があるものです。

ICH Q8(R2)やFDAのQbD関連ガイドラインにおいても、重要なプロセス入力(Input)として明示されています。


代表的なMaterial Attributesの対象

材料の種類
原薬(API)結晶多形、粒径分布、比表面積、含水率
賦形剤(Excipients)粘性、pH、粒度、水分含量
バイオ医薬品の培地成分グルコース濃度、アミノ酸濃度、原材料由来の不純物
プロセスバッファーpH、イオン強度、導電率
包装材材質、透湿性、抽出物・溶出物(E&L)特性

なぜ重要か?

Material Attributes はプロセス入力であり、下記のように製造プロセスや最終製品に影響します:

  • 原材料の粒径の違い → 溶解速度の変化 → CQA(溶出性)に影響
  • 培地中の微量成分の変動 → 細胞代謝変化 → 糖鎖構造(CQA)に影響
  • バッファーのpH変動 → 精製効率・安定性に影響

関連する分類:CMA(Critical Material Attributes)

CMA(重要原材料特性):CQAに影響する可能性があると判断されたMaterial Attribute

CQAとの因果関係が強いMAは、**CMA(Critical Material Attribute)**として制御対象となり、管理戦略(Control Strategy)に組み込まれます。


実務での評価方法

手法内容
リスクアセスメント(例:FMEA)MAがCPPやCQAに与える影響を定量評価
DoE(実験計画法)原材料ロット差・スペック差を工程や製品品質と照合
受入試験・規格設定変動許容範囲を設定し、スペック外ロットを排除

ICH Q8/Q11での記載

  • ICH Q8(R2):「原材料特性は、製品設計およびプロセス設計における重要な検討項目である」
  • ICH Q11:特にバイオ医薬品では、「原材料の由来や変動要因を評価し、品質への影響を予測する」ことが求められている

まとめ

Material Attributes(MA)とは、製造に用いるすべての材料の性質であり、その変動がプロセスや製品品質に影響を与える可能性がある。
特にCQAに影響がある場合は「Critical Material Attribute(CMA)」として識別・制御が必要です。


Control Strategyとは?

Control Strategy(管理戦略)とは?

定義(ICH Q8より)

“A planned set of controls, derived from current product and process understanding, that ensures process performance and product quality.”

つまり:

  • 製品・プロセスの科学的理解に基づいて設計された
  • プロセスパラメータや品質特性に対して
  • 管理(control)を行う手法や仕組みの集合体

Control StrategyとFDA PVアプローチの関係

FDAのPVガイダンスではプロセスバリデーションを3ステージに分けています:

ステージ内容Control Strategyとの関係
Stage 1プロセス設計管理戦略の基礎構築(CPP、CQAの設定)
Stage 2プロセス適格性評価(PPQ)コントロール戦略が機能するか検証
Stage 3継続的プロセス検証(CPV)コントロール戦略の有効性をモニタリング&継続的改善

Control Strategyの構成要素(例)

カテゴリ具体例
原材料管理APIや賦形剤の受入規格、供給元管理
設備・装置の管理校正、メンテナンス、適格性評価
プロセスパラメータの管理例:撹拌速度、温度、pHなどのCPP
インプロセス試験(IPC)製造中の中間体のCQAチェック
最終製品試験製品の品質特性(含量、純度、溶出など)
PAT(Process Analytical Technology)リアルタイムでの品質評価手法
ソフトウェアによるモニタリングデータ収集、SPC、逸脱検知など

Control Strategyの目的

  • 製品の一貫した品質保証
  • リスクに基づく管理(QbDの考え方)
  • 逸脱・異常の予防と早期発見
  • **変更管理(CMC)**の柔軟性を持たせる(例:設計空間内の変更は申請不要)
Control StrategyのCTD記載位置(概要)
CTDモジュールセクション内容
Module 3.2.SS.2.4(Control of Critical Steps and Intermediates)原薬バルク工程のCPP、IPQA、工程制御の記述
Module 3.2.PP.3.3(Description of Manufacturing Process and Process Controls)製剤工程のCPP、IPQA、CPAの制御方法の記述
Module 3.2.PP.2(Pharmaceutical Development)Control Strategyの開発的背景や構築根拠(QTPP、CQA、DoE、リスク評価など)
Module 3.2.R(Regional Information)全体のControl Strategyをまとめた図表・補足資料(必要に応じて)

各セクションでのControl Strategyの記載内容

🔹 3.2.P.2 – Pharmaceutical Development

  • Control Strategyの「科学的背景と開発経緯」を記載
  • 内容例:
    • QTPP → CQA → CPP/CPAの導出プロセス
    • DoE・リスク評価の結果
    • 設計空間やPATの活用有無

👉 QbDアプローチをとっている場合、このセクションが非常に重要になります。


🔹 3.2.P.3.3 – Manufacturing Process and Process Controls

  • 製剤工程における**工程制御(CPP、IPQA、許容範囲)**の実務的記載
  • 各ステップごとの:
    • 制御対象パラメータ(温度、pH、時間など)
    • 制御方法(自動制御、モニタリング、許容限界)
    • 異常時の対応(例:逸脱判断基準)

👉 「Control Strategyの実行内容」を具体的に記述する場です。


🔹 3.2.S.2.4 – Control of Critical Steps and Intermediates

  • 原薬(バイオの場合は細胞培養~精製まで)に関するControl Strategyの詳細
  • CQAに関わる精製ステップ、ろ過、濃縮などの制御記載

🔹 3.2.R – Regional Information

  • 任意記載だが、全体のControl Strategyのまとめ資料を載せるのに最適
  • よくある添付例:
    • Control Strategy表(一覧表形式)
    • CQAとパラメータの対応図(マッピング)
    • モニタリングフローチャート(CPVとの接続)

Control Strategy記載イメージ(例:表形式)

製造工程管理対象パラメータ管理手法重要度関連CQA
混合工程撹拌速度200–400 rpm自動制御 + IPCCPP均一性
濾過工程濁度<1 NTUIPC + 視認CPA微粒子含有量
凍結乾燥凍結速度–0.8 °C/min設備制御CPP安定性

まとめ:Control Strategyをどこに書くか?

セクション目的記載内容の例
3.2.P.2開発の根拠QTPP → CQA → CPP/CPA、DoE、リスク評価
3.2.P.3.3実務上の制御内容各工程でのパラメータ制御、許容範囲、モニタリング
3.2.S.2.4原薬プロセスの制御精製・濃縮・凍結などのCPP管理
3.2.R(任意)補足資料としてまとめ記載Control Strategyのサマリー表や図解


モノクローナル抗体(mAb)のControl Strategy 実例

バイオ医薬品の製造は大きく 上流(Upstream)下流(Downstream)製剤化(Drug Product) に分かれ、それぞれに管理戦略があります。


【上流工程:細胞培養】

項目管理内容CQA/CPPとの関係
セルバンクマスター&ワーキングセルバンクの特性・保管・管理製品一貫性に影響(CQA)
培地組成原料のロット管理、品質試験、添加時点の制御タンパク質発現や修飾に影響
培養条件温度、pH、DO、撹拌、栄養補給のタイミング(CPP)生産量や品質特性に影響
発酵時間最適な採取タイミングの設定分解生成物や変異のリスク管理

【下流工程:精製】

工程管理内容CQAとの関連
プロテインAクロマトグラフィー結合・溶出条件の管理、リーク量管理抗体純度(CQA)
イオン交換クロマトpH・導電率の調整、分離プロファイル管理チャージバリアントの調整
UF/DF(超濾過/限外濾過)バッファ交換・濃縮条件の管理安定性や凝集性に影響
バイオバーデン/エンドトキシン管理精製後の無菌性維持安全性(CQA)

【製剤工程(Drug Product)】

項目管理内容対象とするCQA
賦形剤の種類・濃度安定性、pH緩衝、タンパク質保護安定性、凝集リスク
ろ過滅菌フィルターのバリデーション微生物汚染リスク
充填量・容器選定溶出物、吸着、適正な用量安定性と投与安全性
凍結乾燥条件(該当時)凍結速度、真空圧、乾燥時間活性保持、再溶解性

モニタリングとCPVとの関係

Control Strategy は 一度設計して終わりではなく、製造後も継続的にモニタリング(=CPV)されます。

  • 統計的プロセス管理(SPC)で CPP/CQA を監視
  • トレンド逸脱 → CAPA対応 → Control Strategy の見直しもあり得る

書類としての位置付け(CTD例)

書類Control Strategyに関する内容
3.2.S / 3.2.P(CMC)製造方法、CPP・CQAの管理内容
3.2.R(Regional)Control Strategy全体を図表でまとめることも
3.2.A(設備)コントロールを支える設備の管理

補足:Control Strategyをサポートするツール

Process Analytical Technology(PAT)

Design of Experiments(DoE)

Quality Risk Management(QRM)

Design Space(設計空間)


FDA「Process Validation」アプローチにおける重要要素一覧

要素名意味・定義主な役割関連ステージ
QTPP
(Quality Target Product Profile)
最終製品に求められる品質特性(例:効能、安全性、安定性)製品設計とプロセス設計の出発点。CQAの設定に影響。Stage 1、Stage 2、Stage 3
CQA
(Critical Quality Attribute)
製品の品質に重大な影響を与える属性(例:純度、無菌性、活性)プロセスが制御されているかどうかの最終評価指標全ステージ
CPP
(Critical Process Parameter)
CQAに影響を与える重要な工程パラメータCQAを確実に得るための制御対象として設計・監視Stage 1、Stage 2、Stage 3
IPQA
(In-Process Quality Attribute)
製造中にモニターされる品質指標(例:細胞密度、比活性)工程制御や中間製品品質の確認に使用Stage 1、Stage 2、Stage 3
PPA
(Process Performance Attribute)
プロセス性能の評価指標(例:収率、撹拌効率、工程時間)工程の再現性・安定性の監視に用いられるStage 1、Stage 2、Stage 3
Material Attributes(MA)原材料の特性(例:培地成分、粒径、水分など)プロセス変動やCQAへの影響因子として評価・管理主にStage 1(設計)、Stage 3での評価も重要
CMA (Critical Material Attributes)原材料の特性で、プロセスやCQAに影響を与える品質変動要因の抑制と原材料管理にStage 1, 2, 3
Control StrategyCQAを保証するための包括的な制御手段(パラメータ、試験、モニタリング)プロセス全体の制御・管理の枠組み。文書化され当局に提出されるStage 1(設計)、Stage 2(検証)、Stage 3(実行・見直し)
Risk Assessmentリスクの識別・評価・管理手法(例:FMEA、Ishikawaなど)属性や因子の優先度付けと制御範囲の根拠に活用特にStage 1(設計)、見直しは全ステージ
Design Space科学的に証明された操作範囲(CPPの組合せ)柔軟な製造運用を可能にする承認済の変動範囲主にStage 1で提案・設計、Stage 2以降で適用可能
PAT
(Process Analytical Technology)
プロセス中でのリアルタイムな分析・制御技術CPV・制御戦略の一部として活用されるStage 2(活用)、Stage 3(監視)
Continual Improvement継続的な品質改善活動CPVなどを通じて工程の最適化・見直しに活用主にStage 3、品質システムの一部として
CPV (Continued Process Verification)継続的プロセス検証プロセス状態維持,逸脱・トレンド早期発見,CAPAトリガーStage 3

位置づけのイメージ(シンプルな関係性)

QTPP
└─> CQA
├─> CPP
├─> IPQA
└─> 関連する PPA
↑ ↑
│ └─ Control Strategy

├─ Material Attributes(入力変動要因)

├─ Risk Assessment(全体設計の分析手法)
├─ Design Space(科学的操作範囲)
├─ PAT(リアルタイム監視)
└─ Continual Improvement(運用・見直し)

各要素に対する「重要度ランク分類」の例

要素重要度ランク分類の目的
CQA最終製品の品質に与える影響に基づき「Critical / Non-Critical」などに分類(非公式にKey/Non-Keyとする例も)
CPPプロセス変動がCQAに影響する度合いで「Critical / Key / Non-Key」に分類し、制御戦略を立案
IPQACQAとの相関や工程中での制御価値に基づいて「Critical / Key / Non-Key」分類(PAT対応など含む)
PPA工程の性能とCQAへの影響可能性に基づいて分類(前述)
原材料特性(Material Attributes)変動がCQAやCPPに影響するかどうかで「Critical Material Attribute(CMA)」などに分類

よく使われる分類名称(用語のばらつきに注意)

分類カテゴリよく使われる用語(例)
高リスクCritical, High Risk, Tier 1
中リスクKey, Moderate Risk, Tier 2
低リスクNon-key, Low Risk, Tier 3

なぜ重要度分類が必要か?

FDAやICH(特にQ8、Q9、Q10)では、開発・バリデーション・市販後の品質保証において、

「リスクベースアプローチ(Risk-Based Approach)」

を推奨しており、リスク(=重要度)の評価と分類は全ての品質・工程要素に対して実施するべきものです。

バイオ医薬品(例:抗体製剤、CHO細胞培養など)のIPQAの例

工程IPQAの例関連するCQAとの関係(例)
培養
(Upstream)
細胞密度(VCD)
比活性(specific productivity)
溶存酸素(DO)
グルコース濃度
pH
高すぎる細胞密度 → 糖鎖異常や産生物凝集などに影響
精製(Downstream)蛋白質濃度(A280)
導電率(conductivity)
pH(バッファー置換)
溶出パターン(クロマトグラフィー)
過剰な塩濃度やpH変化 → 純度や安定性に影響
製剤化濃度均一性
pH
浸透圧
ろ過時の流速
投与安全性、安定性、無菌性への影響

Process Characterization (PC)

PCは,FDA PV アプローチにおける核心部であり,開発したプロセスの頑健性を評価する試験群である.

主な活動内容:

  • DoE(Design of Experiments): 因果関係とバランスの評価
    • PP (process parameter)⇔PA (performance attribute)⇔CQA (Critical Quality Attributes)の因果関係 (リスク評価・DoE・相関分析)
    • その結果CPPとCPAを科学的根拠に基づいて特定 (PP ⇨ CPP/PA ⇨ CPA を分類)
  • リスク評価(FMEAなど):
    • 影響度 (Severity) : CQAへどの程度影響を与えるか
    • 発生頻度 (Occurrence) : 工程上で変動が起きやすいか
    • 検出性 (Detectability) : 逸脱時に即座に検出できるか
  • パラメータ–CQAの関係モデル化
  • 初期の設計空間構築

各工程には操作パラメータ(process parameter: PP)があり,このPPの組み合わせによりperformance attributeに影響を与える.PPの値とperformance attributeとの因果関係とバランスについて確認される.

確認する方法は,small-scaleおよびpilot-scaleでのPC試験が用いられる.その試験法としてOFATまたはdesign of experiments(DoE)がある.試験結果から重要度を評価する.これらの結果は「commercial-scale」の製造条件として評価するのであるから,そのsmall-scaleやpilot-scaleは適格性が検証されていなければならない.PC試験の結果が不良である場合,プロセスの再設計も検討する必要性もあり得る.

バイオ医薬品の例:CPP / CPAの特定例(培養工程)

項目PP/PA分類評価理由
培養温度PPCPPタンパクの構造・糖鎖修飾に影響(CQAと強く関連)
発現量(生産量)PACPA or Key PA歩留まりや供給の安定性に関連(CQAとは間接的)
溶存酸素(DO)PPKey PP一定の範囲内で制御されていれば問題ない場合も
培地pHPPCPP酵素活性、タンパク質安定性に直結(CQAに影響)


(2) プロセス検証

このステージでは,管理戦略の設計も含まれる.

前ステージまでにperformance attribute (PP)が設計されている.この基準がcommercial-scale製造において適合しているかを「process performance qualification (PPQ)」という製造バッチで検証する.不備が確認されれば,プロセスの再設計も検討する.

  1. PPQの実施 (実証的検証) : 特定されたCPP/CPAの管理方法を評価
  2. 結果を検証する

(3) 継続的プロセス検証

とは,管理戦略に従い市販後の製品についてPPQで検証された状態が維持されていることを継続的に確認することである.更に,このステージにより製造プロセスの理解を深化させ知識管理体験を充実させることができる.

より進んだQbD

  1. 管理戦略を製品ライフサイクルを通じて製品と製造プロセスに適合させるアプローチ
  2. 市販後に想定される変更も管理戦略に含まれる
  3. 適応拡大,製造需要増大,剤形追加,
  4. 生産性やコスト

まとめ

  1. QbDとは,科学者が科学的に妥当だと考えられる範囲を正当に認可させ,その範囲内で柔軟に変更管理ができるようにするための基本的概念である.
  2. essential QbDは,バイオ医薬品開発における最低限の活動である.
  3. 医薬品の製造は,原薬の製造と製剤の製造の大きく2つに分類できる.
  4. 原薬の組成や特性は,そのまま製剤に受け継がけるため,バイオ医薬品の製剤のほとんどの特性は原薬の設計と製造プロセスの結果であると言える.
  5. バイオ医薬品では品質特性の多くで安全性/有効性への影響を完全に評価することはできない
  6. そのため,既に得られている情報/知識を活用する
    • 期間は,製品のライフサイクル全体
    • 対象は,開発初期で行うプロセス設計,プロセス性能,製品の評価などの品質とその戦略
  7. QbDとessential QbD
  8. QbDのためのデータ取得 (enhanced approach)にはコストがかかる.
  9. QbDで承認された「Gazyva」では相当量のdata packageが必要だった.
  10. Design Space (DS)の設計
  11. traditional approach
    • プロセス管理戦略の採用は必要
    • リスクベースアプローチの採用は必要
  12. enhanced approach
    • traditional approachをベースとしなから
    • QbD, DS
  13. 製品ライフサイクルを見据えたQTPPの設定は,臨床試験Phase 2での有効性確認ができていない段階では仮の設定となる.すなわち,臨床試験Phase 2の結果がでてから,暫定であったQTPPは正式な設定が可能となる.
  14. 現実的なプロセス開発は,当初に仮のQTPPと仮のCQAに従い開発をすすめてPC試験前のタイミングで長期的製品戦略に基づくQTPPの再設定の実施となる.そのためにプロセス開発機能と製品戦略機能の連携が必須である.
  15. 医薬品開発における臨床試験Phase 3 pivotal ロットの製造プロセスは,市販後のものと同じである必要がある.

ガイダンス

ICHや各国規制当局は,医薬品開発の基本的な考え方としてQbDがまとめられている.

FDAのProcess Validation(PV)アプローチとは?

定義(FDAガイダンス 2011年)

“Process validation is the collection and evaluation of data, from the process design stage through commercial production, which establishes scientific evidence that a process is capable of consistently delivering quality product.”

つまり:

  • 単なる「バリデーションバッチの成功」だけではなく、
  • 製造プロセスの設計 → 検証 → 継続的管理というライフサイクル全体を通じた品質保証のことです。

3つのステージから構成されるライフサイクルアプローチ

Stage 1: Process Design(プロセス設計)

  • 目的:科学的根拠に基づき商業製造プロセスを設計
  • 活動内容
    • QTPP、CQA、CPPの設定
    • Process Characterization(DoE、リスク評価)
    • 初期のControl Strategyの構築

「このプロセスで本当に安定して作れるの?」を科学的に説明する段階


Stage 2: Process Qualification(プロセス適格性評価)

  • 目的:設計したプロセスが商業製造スケールで再現性をもって品質製品を出せるかを検証
  • 活動内容
    • 設備/装置の適格性評価(IQ/OQ/PQ)
    • 製造環境やオペレーター訓練の確認
    • PPQ(Process Performance Qualification)バッチの製造・試験

「この設備と人・条件で、ちゃんと作れるのか?」を検証する段階


Stage 3: Continued Process Verification(継続的プロセス検証)

  • 目的:商業生産の中でプロセスが一貫して管理され、品質が維持されているかを継続的に確認
  • 活動内容
    • CPP・CQA・PPA・CPAなどのトレンドモニタリング(SPCなど)
    • 継続的改善(CAPAや変更管理)
    • データのレビュープログラムと再評価

「ずっと安定して作れているか?」を監視・改善していく段階


特徴とFDAの期待する点

特徴内容
科学的根拠(Science-based)DoEやリスク評価を通じて設計されたプロセス
ライフサイクル思考一度きりで終わらず、変更・改善も含む
データ駆動モニタリングや統計的分析により判断
統合的品質保証QbD、PQS(ICH Q10)、QRM(ICH Q9)と整合

FDA査察でのチェックポイント(例)

  • Stage 1:CPP/CQAの根拠は? DoEやPCを実施したか?
  • Stage 2:PPQバッチのバリデーション戦略は妥当か?
  • Stage 3:CPVでトレンド逸脱をどう検出・対応しているか?

まとめ:FDA PVアプローチの本質

ポイント内容
単なる「一発勝負」ではない開発段階から市販後までの連続した活動
科学的に設計・管理されているかデータと根拠に基づく設計・制御
継続的改善が前提CPVを通じてプロセス理解と改善を継続する姿勢

Biological Products QbD Pilot Program (2008)について

「Biological Products QbD Pilot Program(2008)」は、FDAがQuality by Design(QbD)をバイオ医薬品に適用する試験的枠組みとして立ち上げた非常に重要な取り組みです。
このプログラムは、のちのQbDのCMC適用、CTD記載方法、FDAとの事前対話に強く影響を与えました。


概要:Biological Products QbD Pilot Program(2008)

項目内容
名称Biological Products Quality by Design Pilot Program
実施主体FDA / CBER(Center for Biologics Evaluation and Research)
開始年2008年(正式発表)
目的バイオ医薬品分野にQbDを導入・促進し、科学的根拠に基づいた申請・審査のモデルを構築すること

主な目的と背景

目的説明
QbDの理解促進バイオ製品におけるQbD適用例を収集・分析
FDA-企業の協働強化審査官との「科学的対話」を促進する(例:CQAや設計空間の説明)
新しいCTD記載の提案QbDに基づくCMC情報の書き方を模索(例:3.2.S / 3.2.P構成)
実証的プロジェクト応募企業が実際の申請資料を使ってFDAにQbD事例を提示・議論

プログラムの特徴

  • バイオ製品(特にmAbなどのバイオロジクス)を対象
  • 応募企業はFDAに対してQbD実装状況を説明(ミーティング形式
  • FDAは参加企業と議論を通じて評価方法や申請要件の透明化を進めた
  • 参加はボランタリー(自主参加)
  • データや評価は実際のBLA/INDに活かされる

参加企業・製品(例)

当時の公表情報や関連会議資料から、以下の企業が参加したとされています(正式な全社リストは非公開)。

企業(例)製品(推定)
Genentechモノクローナル抗体製品
Amgenエリスロポエチン製剤など
Centocor(現Janssen)抗体製剤
MedImmune(現AstraZeneca)抗ウイルス抗体など

FDAの得た知見(公表されている内容より)

  • QTPP → CQA → CPPの流れを明確にトレースできる資料構成が望ましい
  • Design Spaceの設定にはDoEとリスク評価の併用が有効
  • Control Strategyは**パラメータ管理+モニタリング(IPQAやPAT)**の組み合わせがよい
  • 製造実績と開発履歴の統合的提示が審査の効率化につながる

プログラムの成果・影響

分野成果
CTDの記載法の改善モジュール3(3.2.S / 3.2.P)へのQbD要素の統合が明確化
FDAの審査指針の更新のちの**“QbD Elements in CMC”** ドラフトガイダンス(例:BLA審査項目)へ反映
査察・承認基準への影響リスクベースの査察・継続的プロセス評価(CPV)の重要性が強調されるように
ICH活動へのフィードバックICH Q8(R2), Q9, Q10 実装における米国側の視点形成に影響

まとめ

項目内容
プログラム名Biological Products QbD Pilot Program
実施年2008年〜
対象バイオ医薬品(主に抗体、タンパク製剤)
目的QbD実装事例をFDAと共有し、審査・申請のガイドライン改善
現在への影響BLA申請のQbD化、Design Space活用、Control Strategy明示などに広く影響

QbDベースのBLA申請構成テンプレート

QbD(Quality by Design)ベースでBLA(Biologics License Application)を行う場合のCTD(Common Technical Document)構成テンプレートをご紹介します。

これは、FDA(特にCBER)との協議や、QbD Pilot Program(2008)などから得られた知見をもとに、QTPP → CQA → CPP → Control StrategyといったQbDの流れが明確に反映される形になっています。


QbDベースのBLA提出:CTDモジュール3の構成(テンプレート形式)

🔹 モジュール 3.2.S(原薬/バイオ医薬品バルク)

セクション内容QbD的要素
3.2.S.1General Information製品概要、命名、構造など
3.2.S.2Manufacture製造フロー、工程説明、施設情報
3.2.S.2.3Control of Materials細胞株、培地、原材料の管理
3.2.S.2.4Control of Critical Steps and IntermediatesCPPとその管理方法(QbDのコア
3.2.S.3Characterization分析、同一性、インパク分析
3.2.S.4Control of Drug SubstanceCQAに基づく試験項目と規格
3.2.S.5Reference Standards or Materials規格物質の設定根拠
3.2.S.6Container Closure System包装とその影響(密封性など)
3.2.S.7Stability長期・加速安定性、設計に基づく条件設定

モジュール 3.2.P(製剤:Drug Product)

セクション内容QbD的要素
3.2.P.1Description and CompositionQTPPを意識した構成設計
3.2.P.2Pharmaceutical DevelopmentQbD要素の中核:CQA、DoE、設計空間、リスク評価の内容をここに記載
3.2.P.3Manufacture商業製造プロセス、バッチサイズ、工程管理
3.2.P.3.3Description of Manufacturing Process and Process ControlsCPPとIPQA、PPAの管理戦略
3.2.P.5Control of Drug ProductCQAに基づく規格設定
3.2.P.7Container Closure System容器材質・溶出物・適合性
3.2.P.8StabilityQbD設計に基づく条件・期間設定、パラメトリックリリースとの関連もあり得る

特にQbD要素を強調すべきセクション

セクション内容
3.2.P.2製剤開発セクションで、QTPP → CQA → CPP/CPA → Control Strategy → Design Spaceの流れを明確に記述
3.2.S/P.3.3 & 3.2.S/P.2.4CPP、Critical Step、IPQA、設計空間(設定した場合)の根拠
Regional information(3.2.R)FDAとのやり取りで生まれた対話記録や、補足資料を記載することも可能(オプション)

実際のBLAで使われたQbD構成例(要素)

  • CQAリスト+分類(Critical / Key / Non-critical)
  • CPP・CPAマッピング表(パラメータと品質特性の因果関係)
  • 設計空間とDoE結果のサマリー(モデル式あり)
  • Control Strategy表(工程×パラメータ×管理手段)
  • リスクアセスメントシート(FMEAまたはRAマトリクス)
  • CPV戦略(Stage 3に向けたモニタリング計画)

補足:QbD実装におけるCTD記載のコツ

ポイント説明
① 流れを論理的に書くQTPP→CQA→CPP/CPA→Control Strategyの因果関係がつながるように記載
② 根拠を明示するDoE、リスク評価、過去の知見などを裏付けにする
③ モデルは図表で見せるフローチャート、マッピング図、相関グラフがあると審査がスムーズ
④ 必要に応じて補足(3.2.R)内容が複雑な場合は、追加資料や説明書をここに置くことで本体を簡潔に保てる

まとめ:QbDベースBLA提出の基本構成

モジュールセクションQbD要素の主な反映先
M3.2.SS.2.4 / S.3 / S.4CPP、Characterization、管理戦略
M3.2.PP.2 / P.3.3 / P.5QTPP、CQA、DoE、設計空間、制御戦略
M3.2.R任意(補足)リスク評価表、モデル、対話内容など

CMC Biotech Working Group (EU)

: A-Mab (case study, 2009)

PMDA

: QbD評価 プロジェクト

: EMA-FDAのQbD同時並行評価パイロットプログラムの延長に対するPMDAのオブザーバー参加について

参考文献

バイオ医薬品におけるQuality by Design の実践 – 協和発酵キリン(株) 生産本部バイオ生産記述研究所 - Vol.35 No.5 2017 ファルマシア, 最前線 –

ファルマシア・53巻・5号・435頁 (jst.go.jp)

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9)  ICH Harmonised Tripartite Guideline, “Pharmaceutical Development Q8(R2)”,2009.
10)  ICH Harmonised Tripartite Guideline, “Development and Manufacture of Drug Substances (Chemical Entities and Biotechnological/Biological Entities) Q11”,2012.
11)  FDA Office of Pharmaceutical Quality, “MAPP 5016.1-Applying ICH Q8(R2), Q9, and Q10 Principles to Chemistry, Manufacturing, and Controls Review”, 2016.

12)  ICH Harmonised Tripartite Guideline, “Specifications: Test Procedures and Acceptance Criteria for Biotechnological/Biological Products Q6B”,1999.
13)  FDA Guidance for industry, “Process Validation General Principle and Practice”, 2011.
14)  ICH Harmonised Tripartite Guideline, “Pharmaceutical Quality System Q10”, 2008.
15)  Feroz J. et al., “Quality by Design for Biopharmaceutical Drug Product Development”, Springer, 2016, pp. 17.
16) Hirofumi K. et al., J. Pharm. Innov., 7,195-204(2012).

編集履歴

2024/01/25 Mr.HARIKIRI
2025/04/09 内容を大幅に追記