透析
バイオ医薬品の開発において透析というのは,液状のサンプルの組成を置換する操作のことです.
希釈率
組成置換の目安は以下の通りです.理論値や電気伝導度で終了時点を求めます.
- 1,000倍以上を目指す
- サンプル量と透析バッファーの液量をもと除算して計算する
その目的を果たす手段は以下の方法があげられます.
- 透析膜によるバッファ置換
- Slide-A-Lyzer (ラボ製品)によるバッファ置換
- セントリコン(TM)によるバッファ置換
- UFカセットシステムによるバッファ置換
1. 透析膜
昔は透析チューブを使っていました.その頃の研究者は、ロールになった透析膜を必要な長さにはさみで切って、煮沸し保存剤であるグリセロールを取り除くと共に、柔らかくした後、精製水でよくもみ洗いした後,一方を結んで閉じ,もう一方から、ロートを使ってサンプルを流し込みます。その後、その一方の端を少し空気を入れて結び、外液と称した希釈バッファの入ったビーカーに投入しスターラーバーで攪拌すること一晩処理して,透析チューブを取り出し透析チューブ内にある内液を取り出してサンプルとしていました.
メリット・デメリット
- チューブの破損に注意を払う必要がある
- 処理量は少ない
- 外液の必要量が多い
2. Slide-A-Lyzer
透析膜の進化版とでもいえるラボ製品です.

- サンプルをカセットに注射針と注射筒を使って注入
- 希釈率から必要な液量の透析バッファーを準備する
- 透析バッファーにカセットを投入して、スターラーバーにより撹拌する
- 本来は、カセット内の液と透析バッファーをサンプリングして電気伝導度を測定して、透析操作の完了時期を確認するのが良いが、一般的には、1回の透析バッファーでの操作の場合、一晩を目安にする
- 2回目の新しい透析バッファーでの操作を実施する場合は、1回目を5時間程度、2回目を一晩とする
- 透析操作が完了したカセットを取り出し、注射器でサンプルを取り出す
メリット・デメリット
- サンプルの液量が増えてしまいます
- TTFのDiafiltrationと比較して、準備する透析バッファーの液量が単純希釈率に相当するため多くなる
- 膜の分画サイズに関わりなく使用液量で希釈率が計算できるTFFと比較して、カセットの場合、分画サイズごとに、透析速度が異なり透析終了時期が分かりにくい
Slide-A-Lyzer™ Dialysis Cassette
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/protein-biology/protein-purification-isolation/protein-dialysis-desalting-concentration/dialysis-products/slide-a-lyzer-dialysis-cassettes.html
セントリコン(TM)
これは製品名ですが,他のメーカーから多数同様の製品が出ています.
原理は,UF膜と遠心管が一つになったもので,遠心Gの力でろ過する圧力にして膜のろ過を行います.同様の製品もその他のメーカーから出でいます.
メリット・デメリット
- 少量サンプル用であり処理量が多くできない
- 処理時間がかかる
- 冷却機能がある遠心機が必要
- 濃縮と希釈のサイクルを手動で行うため煩雑
UFカセットシステム
少しスケールが大きくなったらのUFカセットシステムを使用します.この製品はラボ使用ではよく使われる安価なタイプです.スケールアップを予定している場合は,メルクミリポアやザルトリウスステディムなどのUF膜を使用します.
メリット・デメリット
- 処理量はカセットを増やして対応できる
- ポンプシステムが必要
- タンジェンシャルフロー式であるため処理能力が高い
- 希釈液の必要量は少なくできる
- しごき型のチューブを使用する場合,グリスアップは丁寧にしないとチューブの破損が早い.

編集履歴
2025/04/13 Mrはりきり(2020年の下書きを起こした)