[Bio-Lab] 透析=濃縮/脱塩 = UF/DF.すなわちバッファ置換するためのラボ用装置にはどんな製品があるか解説する – ID8580 [2025/04/17]

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透析

バイオ医薬品の開発において透析というのは,液状のサンプルの組成を置換する操作のことです.

希釈率

組成置換の目安は以下の通りです.理論値や電気伝導度で終了時点を求めます.

  • 1,000倍以上を目指す
  • サンプル量と透析バッファーの液量をもと除算して計算する

その目的を果たす手段は以下の方法があげられます.

  1. 透析膜によるバッファ置換
  2. Slide-A-Lyzer (ラボ製品)によるバッファ置換
  3. セントリコン(TM)によるバッファ置換
  4. UFカセットシステムによるバッファ置換

1. 透析膜

昔は透析チューブを使っていました.その頃の研究者は、ロールになった透析膜を必要な長さにはさみで切って、煮沸し保存剤であるグリセロールを取り除くと共に、柔らかくした後、精製水でよくもみ洗いした後,一方を結んで閉じ,もう一方から、ロートを使ってサンプルを流し込みます。その後、その一方の端を少し空気を入れて結び、外液と称した希釈バッファの入ったビーカーに投入しスターラーバーで攪拌すること一晩処理して,透析チューブを取り出し透析チューブ内にある内液を取り出してサンプルとしていました.

メリット・デメリット

  1. チューブの破損に注意を払う必要がある
  2. 処理量は少ない
  3. 外液の必要量が多い

2. Slide-A-Lyzer

透析膜の進化版とでもいえるラボ製品です.

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  1. サンプルをカセットに注射針と注射筒を使って注入
  2. 希釈率から必要な液量の透析バッファーを準備する
  3. 透析バッファーにカセットを投入して、スターラーバーにより撹拌する
  4. 本来は、カセット内の液と透析バッファーをサンプリングして電気伝導度を測定して、透析操作の完了時期を確認するのが良いが、一般的には、1回の透析バッファーでの操作の場合、一晩を目安にする
  5. 2回目の新しい透析バッファーでの操作を実施する場合は、1回目を5時間程度、2回目を一晩とする
  6. 透析操作が完了したカセットを取り出し、注射器でサンプルを取り出す

メリット・デメリット

  1. サンプルの液量が増えてしまいます
  2. TTFのDiafiltrationと比較して、準備する透析バッファーの液量が単純希釈率に相当するため多くなる
  3. 膜の分画サイズに関わりなく使用液量で希釈率が計算できるTFFと比較して、カセットの場合、分画サイズごとに、透析速度が異なり透析終了時期が分かりにくい

Slide-A-Lyzer™ Dialysis Cassette

https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/protein-biology/protein-purification-isolation/protein-dialysis-desalting-concentration/dialysis-products/slide-a-lyzer-dialysis-cassettes.html

セントリコン(TM)

これは製品名ですが,他のメーカーから多数同様の製品が出ています.

原理は,UF膜と遠心管が一つになったもので,遠心Gの力でろ過する圧力にして膜のろ過を行います.同様の製品もその他のメーカーから出でいます.

メリット・デメリット

  1. 少量サンプル用であり処理量が多くできない
  2. 処理時間がかかる
  3. 冷却機能がある遠心機が必要
  4. 濃縮と希釈のサイクルを手動で行うため煩雑

UFカセットシステム

少しスケールが大きくなったらのUFカセットシステムを使用します.この製品はラボ使用ではよく使われる安価なタイプです.スケールアップを予定している場合は,メルクミリポアやザルトリウスステディムなどのUF膜を使用します.

メリット・デメリット

  1. 処理量はカセットを増やして対応できる
  2. ポンプシステムが必要
  3. タンジェンシャルフロー式であるため処理能力が高い
  4. 希釈液の必要量は少なくできる
  5. しごき型のチューブを使用する場合,グリスアップは丁寧にしないとチューブの破損が早い.
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編集履歴

2025/04/13 Mrはりきり(2020年の下書きを起こした)