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  • [Bio-Edu] バイオ医薬品におけるウイルス・クリアランス試験 – モニターウイルス – 除去率 – [2020/08/23]

    [Bio-Edu] バイオ医薬品におけるウイルス・クリアランス試験 – モニターウイルス – 除去率 – [2020/08/23]

    はじめに

    Biologics (生物製剤)では、混入する可能性のあるウイルスについてリダクション能力を評価していることが必要であり、商用製品では、製造工程のウイルス・クリアランス試験が必須である*1。臨床サンプルについてもウイルス・クリアランス試験として、1~2種類のモデル・ウイルスを用いて実施されているのが実情である。

    ウイルス・クリアランス試験には、(1) エンベロープを有し比較的耐久性の低いレトロウイルスのモデル・ウイルスとしてX-MLV (MuLV: Xenotropic murine leukemia virus)、(2) エンベロープを持たず小型で耐久性の高いパルボウイルスのモデル・ウイルスとしてMVM (minute virus of mice:MVM = murine minute virus:MMV = Murine parvorirus source)の使用が多い。

    1. MLV (MuLV; MMLV) source:wiki
    2. MVM; Murine Minute Virus, MMV; Mice Minute Virus, Murine Parvovirus
    編集履歴
    2020/05/18 はりきり(Mr)
    2020/05/25 追記(ウイルス除去工程)
    2020/08/23 充実化(ウイルス除去工程)

    製造工程のウィルス・クリアランス試験など、求められる試験 – Eli Lilly and Company, CMC Strategy Forum, Europe, 2018 – より

    Modular Retrovirus Clearance in Support of Clinical Development, Bio-product Research & Development
    ウイルス記号ゲノムエンベロープサイズ (nm)抵抗性
    ネズミ白血病ウイルスMuLV *2single stranded RNA(+)80 – 110低い
    マウス微小ウイルスMVMsingle stranded DNA(-)18 – 24非常に高い
    ウイルスクリアランス事件の課題と事例検討 — 総ウィルスクリアランス指数(LRV)をどこまで追求するか — PDA Journal of GMP and Validation in Japan Vol.7, No.1 (2005)

    MLVのRNAをqPCRで定量

    ウイルス・クリアランス試験

    一般的なウイルス除去工程

    • 培養終了後のハーベスト
      • 清澄ろ過膜にAEXモードを持つフィルター機材を採用している場合は、ウイルス除去効果が期待される
    • Affinity Chromatography
      • 抗体医薬では、Protein Aのアフィニティ・カラムクロマト工程によるウイルス除去効果が期待される
    • AEX Chromatography
      • 陰イオン交換カラムクロマトの不純物除去工程によるウイルス除去効果が期待される
    • CEX Chromatography
      • 陽イオン交換カラムクロマトの不純物除去工程によるウイルス除去効果が期待される
    • Virus reduction Filtration
      • ウイルスの除去を目的としたウイルス除去ろ過工程
      • Planova 20NやViresolveが使用される

    評価方法

    • 除去率(Reduction Level; RL)は、Log10で表記
    • 各工程で、ウイルスの添加回収実験の実施
    • 各工程でのRLの総和を求めて、製造工程全体のクリアランス能力を算定する
    • 細胞アッセイ
    • 動物への投与
    • PCR
    • など

    ウイルス除去率の解釈

    関連するガイドラインには、ウイルスの除去率に関して考慮すべき要因が示されています1)。以下の要因について考慮することで、プロセスステップをウイルスの不活性化/除去において、以下のように見なすことができるかどうかを決定します

    • 有効
    • 適度に有効
    • 無効

    考慮する要因

    1. 使用したテストウイルスの適切性(セクション4を参照/工事中
    2. 検証研究の設計(セクション5を参照/工事中
    3. 除去率
      • 4 logまたはそれ以上の削減は、モニターウイルスにおいて明確な効果を示していると言える
    4. 不活化の速度論
      • 不活化は通常、単純な一次反応ではなく、多くの場合、最初の段階が速く、その後に遅い段階があります。 ただし、時間とともに不活性化率が劇的に低下する場合は、不活性化剤の有効性が失われていること、または残存ウイルス画分が不活性化剤に耐性があることを示唆している可能性がある
    5. 不活化/除去の性質
      • および特定のクラスのウイルスに対してのみ選択的かどうか。 プロセスステップは、一部のウイルスに対しては非常に効果的ですが、他に対しては効果がありません。たとえば、S / D処理は、脂質を含むが脂質を含まないウイルスに対しては効果的です
    6. プロセスパラメータの小さな変動に対するウイルスの不活性化/除去の影響は、ステップの信頼度に影響する
    7. アッセイ感度の限界

    何回か試験を実施して、異なる除去率が計算された場合、リスクを考慮して評価するなら低い方の値を採用する。

    ウイルス・アッセイの例示

    ウイルス・アッセイについて、以下の文献から例示として情報を抽出した。ウイルスに応じて感染効率の高い細胞を使用し、用いる細胞の培養に使用する培地についても参考になる。

    Cell

    • S+L- cell line on semisolid agar colony
    • 3T3FL cell for SV assay
    • C-182 cell line, a mixture of apparently normal 3T3FL cells and S+L- cells for MuLV assay

    media

    • McCoy’s 5a medium ( Grand Island Biological Co., Grand Island, N.Y.), 10% FCS and antibiotics
    • Eagle’s minimum essential amino acids
    • 10% FCS, antibiotics, 20mM thymidine
    • (Phenol Redを入れない場合が多い)

    Virus (MLV)

    • Moloney leukemia virus (MLV) from Electro-Nucleonics Laboratories, Inc., Bethesda, Md., as crude tissue culture fluid from MSV infected JLSV9 cells
      • 5 x10E5 FFU/mL to use for the superinfection of S+L- cells.
    • MLV from University Laboratories, Highland Park, N.J., as 10% spleen suspension from MLV-infected mice.
      • to use for the MSV assays as leukemia helper virus

    Virus assays

    • A rapid cell culture assay technique for MuLV
      • induction of foci in S+L- cells with superinfection
    • MSV focus-forming assay
    • Both sample are prepared
      • by freezing and thawing 3 times cells and supernatant fluids together followed by low-speed centrifugation to remove cell debris.
      • stored at -70 C prior to virus assays

    文献タイトル :
    Rescue of Murine Sarcoma Virus from a Sarcoma-Positive Leukemia-Negative Cell Line: Requirement for Replication Leukemia Virus

    追記

    ウイルス液の清澄化は、低いGでの遠心上清、超遠心で濃縮する。

    レトロウイルス・系統樹

    図1(左)の系統樹をもとに、以下詳細にまとめた。

    • レンチウイルス属
      • EIAV (equine infectious anemia virus), ウマ
      • MVV (Mahdi-Visna virus), ヒツジ、ウマ
      • FIV (feline immunodeficiency virus), ネコ(免疫不全)
      • HIV-1
      • SIVAGM
      • HIV-2
    • スプーマウイルス属
      • FFV (feline foamy virus),ネコ,
      • HFV
    • アルファレトロウイルス属
      • ALV (avian leukosis virus),トリ
    • ベータレトロウイルス属
      • MMTV (Mouse mammary tumor virus), マウス
      • JSRV (jaagsiekte sheep retrovirus), ヒツジ,
      • MPMV
    • ガンマレトロウイルス属
      • MLV (murine leukemia virus; マウス白血病ウイルス), マウス
        • E-MLV (ecotropic:同種指向性)
        • X-MLV (xenotropic:異種指向性)
      • FeLV (feline leukemia virus), ネコ
      • GALV
      • PERV (porcine endogenous retrovirus), ブタ
    • デルタウイルス属
      • BLV (bovine leukemia virus)、ウシ
      • HTLV-1
      • HTLV-2
    • イプシロンウイルス属
      • WDSV
      • WEHV-1
      • WEHV-2
    • SnRV

    *2, MuLVは、MLVと同義

    The Retroviridae, 第2巻に、Murin type C virusesは、MuLV又はMLVのことであるとの記載がある。MuLVの中でも異種指向性をXenotropicといい、“X-“を冠する子で同種指向性(ecotropic)と区別している。

    パルボウイルス・系統樹

    • Proto-parvovirus
      • MVM (minute virus of mice)
    • Boca-parvovirus
      • HBoV
    • Erhthro-parvovirus
      • B19
    • Amdo-parvovirus
      • AMDV
    • Tetraparvorirus
      • BHoV
      • PHoV
      • PARV4_co
      • PARV4_ch
      • PARV4_2
      • PARV4_3
      • PARV4_1
    • Dependo-parvorirus
      • AAV_1
      • AAV_7
      • AAV_8

    *3 Advice<br>パルボウイルスの系統樹

    PARV4: An Emerging Tetraparvovirus

    Maloney murone leukemia virus: MolLVとMurine Leukemia virus: MLVAの違い

    MLVの実験室軽打により病原性が高いウイルス株としてSarcoma 37細胞から単離されたエコトロビックレス炉ウイルスである – 生物多様性影響評価書
    https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/06/dl/s0630-14f_0003.pdf

    感染様式

    レトロウイルスの感染様式

    図1(右)は、レトロウイルスの感染様式を示している。

    先ず、レトロウイルスは、細胞表面に非特異的に吸着し、その後、以下の機構のいずれかで細胞内に進入する

    1. 非特異的吸着
    2. レトロウイルスのエンベロープと細胞表面の受容体が結合

    次に細胞質内に以下の機構により侵入する

    • 直接膜融合
      • エンベロープの構造変化により、エンベロープを除くウイルス様粒子が、細胞質内取り込まれる
    • エンドサイトーシス
      • エンベロープごと裏返った細胞膜に覆われて、細胞質内に取り込まれる(エンドソソーム)
      • 直接膜融合により、エクンドソームから飛び出し、細胞室内に移動する。

    パルボウイルスの感染様式

    パルボウイルスは、細胞表面に吸着した後、endocytosisで細胞質内に入ります。その後、endosomeは、内部がpH4になったLysosomeに変換され、同時にphospholipase A2を活性かされて、Lysosomeの膜を破り、ウイルス粒子は細胞質内にでできます。その後、VP1を介して細胞核に入り込まれてゆきます。

    Advice パルボウイルスの感染様式<br>VIROLOGY JOURNAL, 2015

    Role of capsid proteins in parvoviruses infection

    1) ガイドライン

    The European Agency for the Evaluation of Medicinal Products<br>Human Medicines Evaluation Unit<br>London, 14 February, 1996 CPMP/BWP/268/95

    CPMP/BWP/268/95

    以上

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    [Bio-Edu] 細菌・ウイルスをフィルターろ過で除去する[2020/05/25]

    はじめに

    バイオ医薬品の製造において、製品段階では細菌が含まれないことを保証する必要があります。

    ウイルスにおいても、どれくらいの確率で含まれないかを証明する根拠となる予備データと、その確率を保証できる条件でろ過したことを保証する必要があります。

    ウイルスに関しては、少々コストを要することになります

    細菌のろ過による除去

    バイオ医薬品は蛋白質です。細菌との大きさの違いを利用して、フィルターによるろ過により細菌をフィルターに捕捉して除去します。

    • 細菌を除去する工程の実施
    • 細菌が含まれないことを示すテストの実施

    細菌をタンパク液から除去するには、0.22μmのフィルターを使用します。

    • 大きい
    • 細菌(5μm)
    • フィルターろ過 (サイズ: 0.22μm)
    • タンパク質 (~10nm)
    • 小さい

    ウイルスのろ過による除去

    ウイルスの除去については、細菌の除去のようには、簡単ではありません。理論的には、ウイルスは1個であれば感染すると考えられます。ウイルスの測定も簡単ではありません。ウイルス除去は、ウイルス・クリアランス試験という項目があり、詳しい説明はそちらに任せます。

    簡単な説明は、以下の通りです。

    バイオ医薬品の世界では、ウイルス除去フィルターが市販されています。公称としては、20nm, 30nmなどの孔径(ポアサイズ)がありますが、バッファー条件、温度、ろ過速度なでど、ウイルスの運動・形状などか変化するため、除去効率は変化してしまいます。

    • 大きい
    • 細菌(5μm)
    • フィルターろ過 (サイズ: 0.22μm)
    • ウイルス (20nm~100nm)
    • ウイルス除去フィルター(20nm, 30nm, etc)
    • タンパク質 (~10nm)
    • 小さい

    まとめ

    細菌もウイルスもろ過による除去方法は、基本的にその大きさを利用しています。ただし、ウイルスの場合は、その大きさが、細菌と比べて相当小さく、タンパク質に近いため、サイズによる分別除去は簡単ではありません。ウイルスを除去するためには、フィルターのポアサイズを厳密にコントロールできる高度な製造方法を要するためです。

    バイオロジクスにおけるウイルスの除去に関しては、ウイルス・クリアランス試験という項目が設定されています。ちらもご参照ください。

    編集履歴

    2020/03/07 はりきり(Mr)
    2020/05/25 追記(ウイルス濾過)

    以上

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