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  • [Bio-FAQ] Refoldingとはなんですか? [2022/11/16]

    [Bio-FAQ] Refoldingとはなんですか? [2022/11/16]

    Refoldingは、大腸菌によるバイオロジクス製造に欠かせない技術です.

    大腸菌でタンパク質を発言させると,そのタンパク質は,正常な立体構造にならないことがほとんどです.大腸菌は,タンパク質のFolding能力が低いためです.

    タンパク質のRefolding技術は、組換え大腸菌(E.coli)を生産宿主として使用する場合、必須の技術となります。

    大腸菌の菌体内で合成されたタンパク質は、動物細胞の場合のように、フォールディングがうまく行きません。立体構造がネイティブな構造になり難いのです。フォールディングの容易性は、分子量の大きさと、ほとんどとレイドオフの関係にあります。大きな分子量のタンパク質であるほどフォールディングがうまく行かず、立体構造があるべき姿にならないという、折り畳みのミスが各所で生じます。それは、それぞれのタンパク質ドメインによる相互干渉によるものと考えられますが、SS結合のミス結合も同時に起きやすいことも大きくてな理由の一つです。

    フォールディングのステップ

    タンパク質のフォールディングにおいて、まず重要なことは、分子内のSS結合は、立体構造が安定してから、最後に結ばれるのが正しい順序です。例えば、早々に、明後日(あさって)のペアでのシステイン同士が結合してSS結合を形成してしまうと、それは、もう正しい立体構造にはなり得ません。最後の最後に正しい立体構造になってから、その後に隣り合うシステイン同士がSS結合を形成することで、タンパク質は安定な物質になります。

  • [Bio-Edu] 組換え大腸菌で造らせたタンパク質のリフォールディングおよび、その後の精製手順  [2020/08/19]

    [Bio-Edu] 組換え大腸菌で造らせたタンパク質のリフォールディングおよび、その後の精製手順 [2020/08/19]

    はじめに

    研究段階のタンパク質の取得は、組換え大腸菌(E.coli)から取得することが多いですが、そのタンパク質は、un-foldingしていることが殆どです。可溶性として取得できたとしても、その活性は非常に低いことも良く知られています。そこで、Re-foldingという手法により、un-foldeしたリコンビナント・タンパク質を立体構造として自然な状態に巻き戻してあげます。巻き戻すという表現は、タンパク質が複数のアミノ酸が1本の鎖状になった構造をしていることから用いられます。

    Re-foldingは、バッファー組成が一般的な組成に置換できて、初めて成功です。置換で濁るようではRe-foldingは失敗です。

    Re-foldingできたタンパク質は、クロマト・レジンを使用して精製します。

    Refoldingとは

    タンパク質は、アミノ酸の数珠つなぎでできています。酵素が活性化するときは、一般的には、ある活性化酵素によって、その前駆体の酵素のどこか一か所が切断され、二本鎖と呼ばる構造になり、立体構造が変化して活性化します。

    タンパク質の機能は、構造にあるということです。

    そのタンパク質が、その本来の機能を発揮するには正しい立体構造になっている必要があります。立体構造を構成する要素はいくつかあります。キーワードは、αヘリックス、βシート、SS結合などです。

    • アミノ酸配列のαヘリックスとβシートのインタラクションによる構造
    • システインとシステインによるSS結合による強固な構造

    組換え大腸菌の産生タンパク質

    組換え大腸菌でタンパク質を産生させると、ほとんどが不溶化してInclusion Bodyと呼ばれる不溶物として大腸菌内に溜まります。これをリフォールディング(refolding)する方法を以下に示します。

    1. ただし、refoldingできるタンパク質の分子量に制限があります。分子量が10kDa未満のInsulinなどは、比較的簡単です。
    2. 分子量20kDa程度のInterferonは、refoding可能です
    3. 分子量が30kDaに近づくとrefolding効率は次第に低下してしてきます。

    Inclusion bodyの回収

    インクルージョンボディは、大腸菌の菌体内に存在します。インクルージョンボディーを取得するには、まず大腸菌を破砕して、大腸菌の細胞内からイングルジョンボディーを細胞外に出てくるようにします。細胞を破砕した後は、遠心により不溶性のインクルージョンボディーを沈殿として回収します。

    1. 組換え大腸菌の培養
    2. 菌体の回収
    3. 菌体の破砕(以下のいずれか)
      1. 超音波処理(粘度がなくなるまで十分に)
      2. フレンチプレス(圧力で破砕)
      3. ダイノミル(ビーズで砕く)
    4. 遠心によるpptを回収(Inclusion body)

    可溶化とrefolding

    • Inclusion bodyに6M 塩酸グアニジンや8M 尿素で溶解
    • 遠心または清澄ろ過
    • His-tagを付けていて、もしも純度が低ければ、Ni-NTA Sepharoseなどでbinding/elutionにて精製します。
      • 1M Imidazole(pH調整不要、pH8程度)を添加して25mM最終
      • Niカラムに添加
      • 25mM Imidazole, 6M 塩酸グアニジンで洗浄
      • 0.1M Imidazole, 6M 塩酸グアニジンで溶出
    • Niカラム精製してななければ
      • 1M Tris-HCl pH8を添加して20mM最終
    • 1M DTT添加して50mM最終 (還元剤)
      • refoldingで重要なSS結合は、pH8.3で最も効率的が高まります
    • 1M シスタミン(2塩酸塩)を添加して100mM最終 (酸化剤)
      • 後に希釈した際、DTT濃度が低下するとともに、タンパク質が本来の立体構造に戻ろうとします。その際、本来のSS結合としてシステイン同士が近づきますが、それを酸化して強固な立体構造にします
    • 即、水で6倍希釈
      • 1M 塩酸グアニジン
      • 8.3mM DTT
      • 16.7mM システイン2塩酸塩
    • 室温または15℃、あるいは4℃で一晩静置
      • 分解しやすい場合は、適宜、低温にする
      • あるいは、NaClを最終濃度として、0.15Mから0.5Mの範囲で添加すると分解酵素が抑制できる
    表 Buffer preparation
    Buffer Name調製方法
    1M ImidazoleImidazoleを水に溶かして1Mとする
    6M 塩酸グアニジン塩酸グアニジンを水に溶かして1Mとする
    1M Tris-HCl, pH8Trisを1Mとなる水より少ない量で溶かして、1M HClでpH8とし、水を追加して1Mとする
    1M DTTDTTを水に溶かして1Mとする
    1M Cistamine (2HCl)シスタミン2塩酸塩を水に溶かして1Mとする

    バッファ組成の置換

    バッファ置換により還元剤を取り除き、構造を確定させます。Refoldingがうまくいっているかの最初の判定としては、可溶性を維持しているかにかかっています。ほとんどのケースでは、説明した方法でRefoldingは問題ないはずですが、場合によっては可溶性が維持できず、バッファ組成の置換において不溶化します。そうなると結構厄介ですね。検討時間がなければ、このまま行きましょう。

    Refoldingの評価

    • UF/DF工程でバッファ置換しても可溶性を維持している
    • RP-HPLC (逆相クロマト)分析で、シングルピークであること(ミス・フォールドしていると2峰性のピークを示すことが多いので、それで判定できる)

    UF/DFの手順

    • UF/DF (タンジェンシャル・フロー)によるバッファ置換
      • 元のボリュームに戻す(6倍濃縮)
      • この濃度(ボリューム)を維持しながらDiafiltrationを実施
        • 透析バッファの例示
          • 10mM Histidine-HCl pH7
          • 10mM Tris-HCl pH8
          • 33mM Sodium Acetate pH5
        • 塩は入れない方が不溶化しないことが多い
      • 1000倍以上の希釈を目指す(8 diavolumeで1000倍希釈の計算となる)

    タンパク質の精製

    タンパク質の精製を行います。決して、二度目のNiカラム精製はNGです。精製特製が同じクロマトの使用は意味がありません。

    1. 陰イオン交換体による精製
      1. タンパク質の等電点pIが中性以下なら、その等電点より高いpHでパススルーさせるだけでも、DNAやEndotoxinが取り除けます。
      2. 回収率が悪い場合は、NaClの添加濃度を検討します
    2. ハイドロキシアパタイトによる精製
      1. BIO-RADのCHTが多用される
      2. リン酸が含まれていないバッファなら、取り敢えず、タンパク質は吸着します
      3. K2HPO4濃度(1M K2HPO4-HCl, pH7)を1mM, 5mM 10mM, 20mM 50mM 100mMと順番に、ステップワイズで処理します。どこかで、タンパク質が出てきます.
      4. 十分な濃度のK2HPO4にはせず、最低必要濃度に設定します
      5. その後、回収率や不純物の分布を知るために、0.3M K2HPO4でpost eluation/回収します。
      6. 更に、6M GuHClを1カラムボリュム(CV)添加、5 CVの水を添加して押し出してpost elution/回収します(なべく低いGuHClとしたいので。SDS-PAGEサンプルバッファーでGuHClが析出しますが、お湯で加熱して可溶化したら即、SDS GEL WellにInjectionできます。Wellで析出しても分析を強行します。多少の泳動の乱れは気にしません)
      7. 更に、0.1N NaOHを1カラムボリュム(CV)添加、5 CVの水を添加して押し出してpost elution/回収します(酢酸でpH中生にする)

    編集履歴

    2020/07/06 Mr.はりきり
    2020/07/10 追加(Buffer preparation)
    2020/07/11 追記(Refoldingの結果の評価)
    2020/08/19 追記(「はじめに」を追加、ハイドロキシアパタイト;CHT操作の追加、SDS-PAGE分析の注意点)

    以上

  • [Bio-Edu] 遺伝子組換え大腸菌からタンパク質を精製する製造フロー概略 – ID6624 [2020/01/09]

    [Bio-Edu] 遺伝子組換え大腸菌からタンパク質を精製する製造フロー概略 – ID6624 [2020/01/09]

    製造方法の概要

    1. 大腸菌に目的蛋白質の遺伝子を導入
    2. 大腸菌の培養
    3. 刺激剤(IPTG)添加
    4. 低温培養
    5. 大腸菌の最大増殖(蛋白質は大腸菌内に蓄積)
    6. 蓄積した蛋白質は、立体構造が異常(Inclusion body)
    7. Inclusion bodyは不溶性
    8. 蛋白変性剤(塩酸グアニジン、尿素)により可溶化処理
    9. ランダムなSS結合を切断するために還元剤の添加
    10. 最大希釈により、添加剤の濃度を薄める
    11. 立体構造が再構成される不溶性から可溶性になる
    12. 緩衝液の置換処理
    13. 各種レジンによるクロマト精製
    14. 緩衝液の置換処理と濃度調整
    15. 原薬の分注

    以上