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  • [Bio-Culture] Poloxamer 188 (Pluronic F-68) – バイオリアクターの撹拌翼による細胞のダメージを抑制 [2021/02/24]

    [Bio-Culture] Poloxamer 188 (Pluronic F-68) – バイオリアクターの撹拌翼による細胞のダメージを抑制 [2021/02/24]

    Poloxamer 188

    Poloxamer 188という名称は、馴染みがないが、商品名のPluronic F-68はよく知られている。細胞培養において、バイオリアクターの撹拌翼による細胞への物理的ダメージを低減化を目的に培地に添加される。蛋白医薬品(バイオロジクス)においても製品での添加剤として使用され、毒性が少ないことがわかっている。

    遺伝子治療用のウイルスベクター、たとえばAAVベクターの安定化剤として使用されることも多い。

    Poloxamerは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマーです。 例として、商用グレードのポロキサマー188の不純物には、低分子量物質(アルデヒド、ギ酸と酢酸の両方)、1,4-ジオキサン、残留エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドが含まれます。 ほとんどのポロキサマーは、化粧品において界面活性剤、乳化剤、洗浄剤、および/または可溶化剤として機能し、0.005%から20%の濃度で141の化粧品に使用されているようです3)

    1)

    Development of an Improved Poloxamer 188 – Optimized for Cell Culture Performance (2017)

    https://cellculturedish.com/development-of-an-improved-poloxamer-188-optimized-for-cell-culture-performance/
    2)

    ジスロマックの毒性試験 – pmda –

    (poloxamerの毒性は非常に低い)

    https://www.pmda.go.jp/drugs/2009/P200900004/40007900_22100AMX00393000_J100_1.pdf

    毒性

    レビュー論文3)には、Poloxamer 188の安全性について評価し、安全であると結論づけられています。

    動物の静脈内注射 (Poloxamer)

    • 尿中に急速に排泄
    • 肺、肝臓、脳、腎臓の組織にいくらか蓄積

    ヒトの静脈内注射 (Poloxamer 188)

    • 血漿中濃度(エチレン性投与)は1時間で最大
    • その後定常状態に達する

    創傷治癒

    • Poloxamerは一般に創傷治癒に効果がない
    • 動物実験に置いて高コレステロール血症と高トリグリセリド血症を引き起こす可能性が示されています
    • 術後癒着を減らすのに効果的という報告もあります
    • Poloxamer 108, 4g / kgまでの短期静脈内投与
      • 体重に変化がない
      • 腎のびまん性肝細胞空胞化を引き起こした
      • 腎臓の尿細管拡張、および近位曲尿細管の上皮細胞の用量依存的な空胞化を起こした
    • 97 mg / m(3)でのポロキサマー101の短期吸入毒性試験
      • 2週間の暴露後に軽度の肺胞炎を確認
      • 2週間の暴露後の観察期間で肺胞炎は治癒した
    • Poloxamer 184の1000 mg / kgまでの用量でのウサギにおける短期皮膚毒性試験
      • 組織学的検査でわずかな紅斑とわずかな皮内炎症反応
      • 用量依存的な体重、血液学、血液化学、または臓器重量の変化はなかった

    動物実験

    • 試験系 : 摂食試験、ラットと犬
      • Poloxamer 188 (最大5%の食餌への暴露)、6ヶ月、ラットと犬、悪影響なし
    • 試験系 : 摂食試験、犬
      • Poloxamer 331(0.5 g / kg日(-1)までテスト済み)、悪影響なし
      • Poloxamer 235(1.0 g / kg日(-1)までテスト済み)、悪影響なし
      • Poloxamer 338(0.2または1.0 g / kg日までテスト済み)(-1))、悪影響なし
      • Poloxamer 331(0.5 g / kg日(-1)までテスト済み)、わずかな一過性の下痢
      • Poloxamer 338(5.0 g / kg日)(-1))、犬、わずかな一過性の下痢
    • 試験系 : 摂食試験、ラット
      • Poloxamer 188 (最大7.5%食餌への暴露)、2年間、5%および7.5%レベルで下痢、7.5%レベルで成長がわずかに減少、生存率に変化はなし

    ラットを使用して0.5mg / kg日(-1)までの用量で2年間、血清の黄色変色、高い血清アルカリホスファターゼ活性、および血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼおよびグルタミン酸-オキサル酢酸トランスアミナーゼ活性の上昇ポロキサマーは最小限の眼刺激性ですが、そうではありません 動物の皮膚刺激物または感作物質。 ポロキサマーの生殖毒性および発生毒性に関するデータは見つかりませんでした。

    AMES試験

    • 代謝活性化の有無にかかわらず、Poloxamer 407の変異原性活性は確認されませんでした

    発癌性

    • いくつかの研究は、Poloxamerの抗発癌効果を示唆
    • 多剤耐性癌細胞の抗癌剤に対する感受性を高める

    臨床試験

    • Poloxamer 188は、大量の下剤治療と組み合わせて使用​​すると、糞便の水分補給を増加させた
    • コントロールと比較して、Poloxamer 188を投与された血管形成術患者の1つの研究では、鎌状赤血球症を患っている患者にPoloxamer 188を投与すると、コントロールと比較して痛みが減少し、入院が減少
    • 心筋梗塞サイズの縮小と再梗塞の発生率の低下の臨床試験で、毒性の証拠はありませんが、他の2つの研究では効果が見られませんでした
    • 皮膚刺激性および感作性は一様に陰性

    化粧品

    化粧品成分レビュー(CIR)専門家パネルは、以下のように述べています。

    化粧品業界は、免疫グロブリン酸化物、プロピレンオキシド、および1,4-ジオキサンの低レベルを維持するために必要な精製手順を引き続き使用する必要があることを強調しています。

    Poloxamerの生殖毒性および発生毒性のデータがないことに留意している。分子量と溶解度に基づくと、皮膚への浸透はほとんどなく、皮膚への浸透は遅いはずである。

    また、入手可能なデータは、皮膚暴露以外の経路で体内に導入されたPoloxamerが体から急速に除去されることを示しています。

    全体として、入手可能なデータは発がんについての懸念を示唆していない。 製品の使用に関する知識にはギャップがあるが、製品の種類に関する全体的な情報が入手可能であり、生殖毒性および/または発生毒性のリスクがないことを示唆しています。

    これらの成分が使用されており、どの濃度での使用のパターンを示しています。 これらの安全性試験データと、不要な分子を制限するために製造プロセスを制御できるという情報に基づいて、専門家パネルは、これらのPoloxamerは使用しても安全であると結論付けられています。

    3)

    Safety assessment of poloxamers 101, 105, 108, 122, 123, 124, 181, 182, 183, 184, 185, 188, 212, 215, 217, 231, 234, 235, 237, 238, 282, 284, 288, 331, 333, 334, 335, 338, 401, 402, 403, and 407, poloxamer 105 benzoate, and poloxamer 182 dibenzoate as used in cosmetics (2008)

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18830866/

    編集履歴

    2021/02/24 Mr.HARIKIRI
  • [Bio-Edu] Surfactant – PF-68, PS80 の添加は常識 – 凝集の抑制 – ID12904 [2021/06/19]

    [Bio-Edu] Surfactant – PF-68, PS80 の添加は常識 – 凝集の抑制 – ID12904 [2021/06/19]

    界面活性剤

    タンパク質の凝集抑制には、古くから界面活性剤 (surfactant)の添加で改善されることが知られている。いろいろな界面活性剤の研究実績が積まれて、現在では、プルロニック (Pluronic)とポリソルベート (Polysorbate)の2種類が、その役割を代表するようになった。抗体医薬品では、殆どがPolysorbate 80が使用されるまでになっており、添加することは常識的なナレッジである。

    凝集と一口で表現しているが、実は、「Aggregate」、「Visible Particle」及び「Sub-visible Particle」に分けて考えられることが多い。凝集抑制剤の効果は、それぞに得意な対象がある。昔は、粒子サイズを測定することができなかったが、今では、目に目えないサイズの粒子を観測できる装置があり、今では、科学的に凝集抑制剤の評価が可能となった。

    • Pluronic
    • Polysorbate

    Pluronic F-68 (ploxamer 188)

    F-68は、凝集抑制に多用される

    特許において、0.001% PF-68の添加することは、常識のようで有る

    – AAVベクターの凝集を防ぐための組成物およびその方法 (特許, 2012)
    【課題】凝集なく、ビリオン、特にAAV(アデノ随伴ウイルス)ビリオンの高濃度ストック溶液を調製するための組成物および方法の提供。

    【解決手段】ビリオン調製物におけるビリオンの凝集を防ぐ方法であって、少なくとも約200mMのイオン強度を達成するためにビリオン調製物に1種類以上の賦形剤を添加することを含む、方法。高いイオン強度および適度な浸透圧のこの組合せは、クエン酸ナトリウムのような高い価数の塩を用いて達成される。

    https://patents.google.com/patent/JP2014111625A/ja

    AAV Purification by Iodixanol Gradient Ultracentrifugation – イオジキサノール勾配超遠心によるAAV精製

    https://www.addgene.org/protocols/aav-purification-iodixanol-gradient-ultracentrifugation/

    その他情報

    製品情報、毒性関連、分析手法など。

    • molecular weight : 8.4kDa (approx.)
    • 製品
      Non-ionic surfactant (100x) – Thermo Fisher Scientific –
      https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/24040032
    • 哺乳類細胞培養液中の界面活性剤プルロニックF-68の測定のためのアッセイの開発 (1998)
      • 動物細胞培養液中のプルロニックF-68の比色測定法
      • 以前に肝臓組織でプルロニックを測定するために開発された「チオシアン酸コバルト」との複合体の形成に基づく
      • 複合体の吸光度を328 nmで測定にり感度アップ
      • 複合体を酢酸エチルで洗浄 → アッセイの再現性が向上
      • 培養液の未知の成分によって引き起こされる干渉を低減には、臨界量のエタノールの添加が必要
      • 無血清培地でのプルロニック濃度が0.01から0.2%(w / v)の間で直線的
      • 0.01%(w / v)の低い検出レベルでは、相関係数(R2)は0.998
      • 培地中血清の存在は、感度を低下させるが、0.04から0.16%(w / v)プルロニックまで直線的
      • https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9735146/
    • F-68は、試験した範囲の用量で末梢運動、感覚、または動機付けの影響を混乱させることなく、神経伝達物質の取り込みと放出を減らし、ラットに学習と記憶障害を引き起こす
      https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC311314/
    • 細胞培養の攪拌翼により生じる剪断力から細胞を保護、トリプシン損傷細胞を修復し膜の多孔性の減少、細胞付着を低減する :
      Pluronic Enhances the Robustness and Reduces the Cell Attachment of Mammalian Cells –
      https://www.researchgate.net/publication/5523814_Pluronic_Enhances_the_Robustness_and_Reduces_the_Cell_Attachment_of_Mammalian_Cells/link/09e414fa0ed97088ed000000/download
    • プルロニック F-68の分析方法 (2010):
      Determination of Pluronic F-68 in High Protein Matrices by HPLC-RAM-ELSD, – Helen Chung, Melissa Khor, and Jinshu Qiu* Amgen Inc., One Amgen Center Dr., Thousand Oaks, CA 91320
      http://imtakt.com/jp/Support/UserReport/@USA-Amgen/2010-05-18_HPLC_2010_Poster_v3.pdf
      • Cadenza HS-C18 (150 x 3.0 mm, 3μ)
      • restricted access media (RAM) 固定層
      • HPLC system
        • pump, 0.4 mL/min
        • autosampler
        • column switching valve
        • evaporative light scattering detector (ELSD)
      • 0.1% acetic acid (HAc)
      • 0.1% HAc in acetonitrile
      • gradient elution
        • 0 – 5.0 min : 0% B
        • 5.1 – 10.0 min : 10% B
        • 10.1 – 15.0 min : 45% B
        • 15.1 – 25.0 min : 100% B
        • 25.1 – 35.0 min : 0% B
      • Proteins eluted in the void volume
      • while PF-68 eluted at 14.5 min
      • sensitivity (10 mg/L quantitation limit)

    Polysorbate

    特にPolysorbate 80は、日本油脂から高純度品が市販されたことで、多くのバイオロジクスで使用されている。

    molecular weight : 1,310 Da

    Information for the package leaflet regarding polysorbates used as excipients in medicinal products for human use – EMA/CHMP 2018

    https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/draft-information-package-leaflet-regarding-polysorbates-used-excipients-medicinal-products-human_en.pdf

    BIoPharm International 22(6) 32-48 Best Practices for Formulation and Manufacturing of Biotech Drug Products

    https://www.researchgate.net/publication/279558359_Best_Practices_for_formulation_and_manufacturing_of_biotech_drug_products

    Concise Review: Considerations for the Formulation, Delivery and Administration Routes of Biopharmaceuticals

    https://www.heighpubs.org/hjb/abb-aid1004.php

    参考 UF/DF関連

    Control of Protein Particle Formation During Ultrafiltration/Diafiltration Through Interfacial Protection (2014)

    この研究は、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF / DF)中のタンパク質粒子形成のメカニズムを調査し、攪拌がタンパク質界面の吸着と脱着を促進することにより粒子形成を促進することを発見しました。導電率が低く、界面活性剤が存在しているため、小規模の攪拌試験では粒子形成のレベルが低下し、ポンプとUF / DFでも同じ傾向が見られました。ポリソルベート80(PS80)およびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)は、UF / DFでの粒子形成をそれぞれ15倍および4倍減少させました。構造安定性、コロイド安定性、および表面張力の測定により、PS80がタンパク質界面の吸着を防ぐことで粒子形成を防ぎ、低導電率がタンパク質のコロイド安定性を改善し、HPβCDの作用メカニズムが不明であることを示しました。

    Control of Protein Particle Formation During Ultrafiltration/Diafiltration Through Interfacial Protection
    編集履歴
    2020/04/07 はりきり(Mr)
    2020/05/26 追記 (PF-68の事例)、誤記訂正
    2021/06/19,追記 (Aggregate, Visible particle, Sub-visible particleについて少し解説)