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  • [抗体医薬] Regeneron社の抗NGF抗体 fasinumab 開発中止/NGF単独では開発は難しい [2023/12/11]

    [抗体医薬] Regeneron社の抗NGF抗体 fasinumab 開発中止/NGF単独では開発は難しい [2023/12/11]

    はじめに

    神経成長因子 (nerve growth factor ; NGF)を抗体で抑制することで変形性膝関節症の疼痛治療薬として開発が進められてきたリジェネロン社 (Regeneron)のファシヌマブ (fasinumab)が中止された.2016年当初,Regeneron社は,Teva社と共同開発を開始した.日本での開発にはMTPCが加わっていた(2017/8/17).

    NGF製品の終焉

    2020/8/18, Regeneronはfasinumabの第三相試験 (安全性,有効性)のデータを取得しているが,今後,fasinumabによる積極的な治療について独立モニタリング委員会からの勧告に従い中止すると発表した.また,長期安全性試験を継続し2021年に報告するとしていた.

    関節の状態が悪化する副作用が観られNSAIDsとの比較で有意な鎮痛効果はなかったとされた.競合するのはファイザー (Pfizer)のタネズマブ (tanezumab)EUとUSで販売申請までこぎつけたものの副作用問題により当局から却下された.

    2022/11/3, Regeneronはfasinumabの開発を中止した(*4, *5)

    雑感

    NGFのみをターゲットにした疼痛治療薬の開発は世界的にも少なくなったと考えられる(*4).

    その理由として考えられることは,NGFを抑制する抗体によるOA治験では,疼痛が無くなることで被験者の行動が活発化し逆に膝への負担が増えることで症状を悪化させてしまうものと推察できる.

    NGFは神経を再生させる生体内に備わった因子である.それを抑制することは,生体にとって合理的な事象ではないのではないと考えられる.

    アストラゼネカは,NGFとTNFの2つを抑制できる2価抗体の開発を進めている.TNFは炎症因子であることから,OA治療には炎症も同時に抑制する必要性が考えられているのかも知れない(*4).

    *1, Regeneron, Teva provide update on fasinumab clinical development programs, 2016/10/17

    Regeneron, Teva provide update on fasinumab clinical development programs | Reuters

    *2, Notice of the Start of a Japanese Phase 2/3 Clinical Study of the Anti-NGF Antibody MT-5547 in Osteoarthritis – Mitsubishi Tanabe Pharma, News Release, 2017/08/17

    e_MTPC170817.pdf (mt-pharma.co.jp)

    *3, Regeneron provides update on fasinumab program, 2020/08/18

    e5ebab0a-f9b3-461c-aeaf-47fcb4e00242 (regeneron.com)

    *4, And then there wore none: Regeneron cans last late-stage NGF drug – pharmaphorum – 2022/11/3, by Phil Taylor.

    And then there were none: Regeneron cans last late-stage NGF drug | pharmaphorum

    *5, Regeneron社がNGF阻害剤fasinumabの開発中止~猫アレルギー薬のPh3も中止 – biotoday –

    Regeneron社がNGF阻害剤fasinumabの開発中止~猫アレルギー薬のPh3も中止 (biotoday.com)

    編集履歴

    2023/12/08, Mr.HARIKIRI
    2023/12/11, 文言整備
    2024/01/03,文言整備

  • [Bio-mAb] 日本で承認されている抗体医薬品リスト

    [Bio-mAb] 日本で承認されている抗体医薬品リスト

    ID23716 [2020/09/29]

    抗体医薬品のリスト

    日本で承認されている全81の抗体医薬品について調査しました(2020/05)。

    製品名AdministrationmLmg/mLmg¥¥/g一般名Type細胞株Target疾患開発会社
    アクテムラiv202040075,198187,995TocilizumabIgG1(キメラ)CHOIL-6R関節リウマチ中外
     (syringe)sc0.916218032,485180,472TocilizumabIL-6R関節リウマチ中外
    アドセトリスiv50474,3259,486,500BrentuximabキメラIgG1,ADCCHOCD30悪性腫瘍武田
    アバスチンiv1625400136,293340,733BevacizumabIgG1(キメラ)CHO (G7)VEFG結腸・直腸癌中外
    アーゼラiv50201000280,240280,240OfatumumabIgG1NS0CD20急性リンパ性白血病Novartis
    アービタックスiv20510037,045370,450CetuximabIgG1(キメラ)SP2/0-Ag14EGFR結腸・直腸癌メルクバイオ
    イベニティ(syringe)sc10525,119239,229RomosozumabIgG2CHOスクレロスチン骨粗鬆症Amgen
    イミフィンジiv1050500467,245934,490DurvalumabIgG1CHOPD-L1非小細胞肺癌アストラゼネカ
    イラリスsc11501501,526,07510,173,833CanakinumabIgG1SP2/0-Ag14IL-1β関節炎症、IgD, TNFR, AOSD, SJIANovartis
    エムブリシティiv凍結乾燥400212,916532,290ElotuzumabIgG1(キメラ)NS0SLAMF7多発性骨髄腫ブリストル・マイヤーズスクイブ
    エンタイビオiv300279,573931,910VedolzumabIgG1(キメラ)CHOα4β7Integrin潰瘍性大腸炎武田
    エンハーツiv凍結乾燥100165,0741,650,740TrastuzumabIgG1-ADCHER2悪性腫瘍第一三共
    オプジーボiv2410240413,9901,724,958NivolumabIgG4CHOPD-1悪性腫瘍小野
    カドサイラiv820160375,0772,344,231TrastuzumabIgG1-ADCHER2最初乳がん中外
    ガザイバiv1000458,799458,799ObinutuzumabIgG1(キメラ)CHO(マンノシダーゼ)CD20濾胞性リンパ腫中外
    キイトルーダiv425100242,3552,423,550PembrolizumabIgG4(キメラ)CHOPD-1悪性腫瘍MSD
    グリースビータsc13030911,81230,393,733BurosumabIgG1CHOFGF23くる病協和
    ケブザラsc1.14175.438596520049,048245,240SarilumabIgG1CHOIL-6R関節リウマチSanofi
    コンセディクスsc15072,849485,660SecukinumabIgG1CHOIL-17A(アンタゴニスト)乾癬Novartis
    サイラムザiv5010500362,032724,064RamucirumabIgG1NS0VEGRF-2胃癌・直腸癌イーライ・リリー
    シナジスim1100100118,0641,180,640PalivizumabIgG1(キメラ)RSウイルス新生児・乳幼児RSVAbbVie
    シムジアsc120020061,164305,820CertolizumabFab’(キメラ)-MPEGx2TNFα関節リウマチユーシービージャパン
    シムレクトiv凍結乾燥20286,75214,337,600BasiliximabIgG1(キメラ)CD25(IL-2R)急性拒絶反応抑制Novartis
    シンポニーiv0.510050119,7092,394,180GolimumabIgG1SP2/0TNFα関節リウマチヤンセン
    ジーンブラバsc2525625336,620538,592BezlotoxumabIgG1CHOClostridium difficileトキシンB感染症MSD
    スキリージiv0.8390.3614457875243,8073,250,760RisankizumabIgG1(キメラ)CHOIL-23P19乾癬AbbVie
    ステラーラsc265130193,1231,485,562UstkinumabIgG1SP2/0IL-12/23p40クローン病ヤンセン
    ゼヴァリンイットリウム(90Y)iv2,653,108IbritumomabIgG1(キメラ)CHOCD20B細胞性非ホジキンリンパ腫ムンディファーマ
    ソリリスiv3010300604,7162,015,720EculizumabIgG2,4(キメラ)NS0C5ヘモグロビン尿症アレクシオンファーマ
    ゾレアsc15029,104194,027Omalizumabヒト化マウス抗体CHOIgE季節性アレルギー性鼻炎Novartis
    タイサブリsc300231,377771,257NatalizumabNS0α4Integrin多発性硬化症BIogen
    ダラザレックスiv2020400187,970469,925DaratumumabIgG1CHOCD38多発性骨髄腫ヤンセン
    テセントリクiv20601200637,152530,960AtezolizumabPD-L1悪性腫瘍中外
    デュピクセントsc215030066,356221,187DupilumabIgG4CHOIL-4/13受容体アトピー性皮膚炎Sanofi
    トルツsc18080148,9521,861,900IxekizumabIgG4(キメラ)CHOIL-17A乾癬イーライ・リリー
    トレムフィアsc1100100325,0403,250,400GuselkumabIgG1CHOIL-23p乾癬ヤンセン
    ヌーカラ(syringe)sc100179,2691,792,690MepolizumabIgG1(キメラ)CHOIL-5気管支喘息GSK
    ハーセプチン(凍結乾燥)iv7.220.8333333315042,543283,620TrastuzumabHER2悪性腫瘍中外
    バベンチオiv1020200196,289981,445AvelumabIgG1CHOPD-L1悪性腫瘍メルクバイオ
    パージェタiv1430420206,472491,600PertuzumabHER2悪性腫瘍中外
    ヒュミラsc0.810080121,4011,517,513ritumumabIgG1CHOTNFα関節リウマチAbbVie
    ビーリンサイドiv0.035286,3368,181,028,571BlinatumomabscFv-scFv (54kDa)B細胞性急性リンパ球白血病Amgen
    ファセンラ(Syringe)sc30358,04511,934,833BenralizumabIgG1(キメラ)CHOIL-5Ra気管支喘息アストラゼネカ
    プラリアsc1606028,822480,367DenosumabIgG2CHORANKL骨粗鬆症、骨びらん第一三共
    ブラルエントsc115015046,704311,360AlirocumabIgG1CHOPCSK9家族性高コレステロール血症Sanofi
    プリズバインドiv50502500203,62681,450IdarucizumabFab(キメラIgG1), 47kDaダビガトランの抗凝固作用の中和止血困難ベーリンガーインゲルハイム
    ヘムライブラsc11501501,344,3438,962,287EmicizumabIgG(bispe)IXa/XFVIII代替中外
    ブロルシズマブeye120142,7841,189,867BrolucizumabVEGF加齢黄斑Novartis
    ベクティビックスiv400301,476753,690PanitumumabIgG2CHOEGFR結腸・直腸癌武田
    ベスポンサiv1133,129133,129,000InotuzumabIgG4(キメラ)-ADCCHOCD22急性リンパ性白血病Pfizer
    ベンリスタiv, sc40054,609136,523BelimumabIgG1NS0BLyS全身性エリテマトーデスGSK
    ポテリジオiv20171,2198,560,950MogamulizumabIgG?CHOCCR4成人T細胞白血病リンパ腫共和麒麟
    ポートラーザiv800234,695293,369NecitumumabIgG1NS0EGFR扁平性上皮非小細胞肺癌日本化薬
    マイロターグiv5252,57650,515,200GemtuzumabIgG4(キメラ)NS0CD33急性骨髄性白血病Pfizer
    マブキャンパスiv1303090,9073,030,233AlemtuzumabIgG1(キメラ)CHOCD52慢性リンパ性白血病Sanofi
    ヤーボイiv10550493,6219,872,420IpilimumabIgG1CHOCTLA-4悪性黒色腫プリストル・マイヤー・スクイブ
    ユルトミリスiv3010300730,8942,436,313RavulizumabIgG4(キメラ)CHOC5発作性夜間ヘモグロビン尿症アレクシオン
    ランマークsc1.770.5882352912047,550396,250DenosumabIgG2CHORANKL多発性骨髄腫による骨変形第一三共
    リツキサンiv5010500148,996297,992RituximabIgG1(キメラ)CHOCD20B細胞性非ホジキンリンパ腫全薬
    ルセンティスeye101,600,698160,069,800RanibizumabFabVEGF加齢黄斑症Novartix
    ルミセフsc1.514021074,513354,824BrodalumabIgG2CHOIL-17RA乾癬協和キリン
    レパーサsc42047,274112,557EvolocumabIgG2CHOPCSK9家族性高コレステロール血症Amgen
    レミケードiv10075,009750,090infliximabIgG1(キメラ)TNFα関節リウマチ田辺三菱
    infliximabiv10043,229432,290infliximabIgG1(キメラ)CHOTNFα関節リウマチPfizer
    Trastuzumabiv15028,468189,787TrastuzumabIgG1(キメラ)CHOHER2乳がん日本化薬
    Bevacizumabiv40084,858212,145BevacizumabIgG1(キメラ)CHOVEGF結腸・直腸癌Pfizer
    Rituximabiv500102,362204,724RituximabIgG1(キメラ)CHOCD20B細胞性非ホジキンリンパ腫Pfizer
    6784
    ActemratocilizumabRoche
    AvastinbevacizumabRoche
    Gazyva/Gazyvaro402510000obinutuzumabCD20Roche
    Hemlibra0.4560emicizumabIXa/XVIII代替Roche
    Herceptin1500trastuzumabRoche
    Herceptin SC / Herceptin Hylecta51206000trastuzumab hyaluronidaseHER2Roche
    Kadcyla1600trastuzumab emtansineADCHER2Roche
    MabThera10101000Rituxan (rituximab)CD20Roche
    MabThera SC / Rituxan Hycela16000rituximab hyaluronidaseCD20Roche
    OcrevusocrelizumabCD20動脈硬化(multiple sclerosis)Roche
    PerjetapertuzumabHER2Roche
    Polivypolatuzumab vedotinADC (approved with rituximab)CD79bRoche
    Tecentriq206012000atezolizumabPD-L1(binding inhibited B7.1 ReceptorRoche
    PegasyspeginterferonαRoche
    編集履歴
    2020/09/29 Mr.Harikiri
    
  • [抗体医薬] ゾレア; Omalizumab (ノバルティス) – 花粉症を対象とする抗IgE抗体 – 重症に限定 – 効能変化再算定 により薬価引き下げ  [2021/05/11]

    [抗体医薬] ゾレア; Omalizumab (ノバルティス) – 花粉症を対象とする抗IgE抗体 – 重症に限定 – 効能変化再算定 により薬価引き下げ [2021/05/11]

    最初に

    ゾレアは、花粉症の体内における発症メカニズムにおいて、IgEと結合して、IgEとマスト細胞との結合を抑制し、その後の反応経路を抑える抗体医薬です。ただし、誰でも投与できる薬ではありません。重症の患者に限定されています。

    アレルギー反応では、アレルゲンに対するIgEが多く作られ、このIgEのFc部分がマスト細胞(肥満細胞)の細胞表面にあるIgE受容体(FcεRI; エプソーイプシロンレセプターワン)に結合し、さらにアレルゲンとIgEが結合します。

    よく知られた反応では、その後の体内での反応は、マスト細胞内でヒスタミンの放出シグナルが発生し、ヒスタミンが細胞外に放出されますsource(奥羽大学)

    ゾレア(Zolair, 皮下注,オマリズマブ、ノバルティスファーマ)は、このアレルギー反応におけるIgEの経路を抑制することで、花粉症というアレルギー反応を改善する抗体医薬です。

    2020年に日本で承認されましたが、承認とともに使用方法についてのガイドラインが発出されています。

    アレルギーが起こるしくみを理解する

    -新規抗アレルギー薬の開発をめざして-, 研究紹介 – 奥羽大学

    http://www.ohu-u.ac.jp/faculty/research/researchP5.html

    適性使用ガイドライン

    ガイドライン(1)ガイドライン(2)、季節性アレルギー性鼻炎の成人の患者に対して、75~600mg/回、2週または4週おきに皮下に注射する。類似の抗体医薬であるアトピー性皮膚炎(デュピルマブ)では、一般的には、初回600mg投与、2週おきに300mg投与との情報もある。

    検査

    適性使用する場合、重症度の指標である血中のIgE濃度が検査される。検査方法は、FEIA, CLIEAなどがあり、それぞれで感度がことなることから、それぞれの閾値は異なるものの設定される。CLEIA, FEIAの詳細は、検査方法の略称と概要を参照のこと。

    • FEIA : Fluorescence Enzyme Immunoassay, 蛍光酵素免疫測定法, 抗原抗体反応の最終産物として蛍光が得られる。蛍光は、一般的な色素より微量で測定できるため感度が高い
    • CLIEA : Chemiluminescent Enzyme Immunoassay, 化学発光・酵素免疫測定法, 反応の最終産物として化学的な光が得られる。感度は、FEIAとより高い(化学発光は蛍光より感度が高い*1)。

    *1 : シングル検出(化学発光)から マルチ検出(蛍光)へ – Bio-Rad –

    一般的に、化学発光は、蛍光より感度が高いが、高コスト、同時多種測定は不可、発光強度の経時的な変化が大きく再現性に課題、などかある。

    https://www.bio-rad.com/webroot/web/pdf/lsr/japan/japanese/literature/C11682L_wb_news_vol3.pdf

    薬価

    薬価は、KEGGサイトで参照できる。

    薬価サーチサイト KEGG MEDICUS 薬価

    https://www.kegg.jp/kegg/medicus/
    • ゾレア皮下注用150mg: 46,422円, (2019/12)
    • ゾレア皮下注150mgシリンジ: 46,490円, (2019/12)

    類似のアトピー性皮膚炎の治療薬である「デュピルマブ」の薬価は、300mgで83152円(2019/12)であり、ゾレアとほぼ同等の薬価となっている。

    参考

    ノバルティス、抗体製剤オマリズマブのスギ花粉症に対する国内第Ⅲ相臨床試験結果発表 – ノバルティス –

    https://www.novartis.co.jp/news/media-releases/prkk20190226

    効能変化再算定による薬価引き下げ

    ゾレアの主たる効能は、2019年12月の適応拡大の承認に伴って、「気管支喘息」から「季節性アレルギー性鼻炎」と判断され、効能効果再算定の特例の適応を受けている。

    • 効能変化再算定 : 主たる効能に変化があった医薬品の薬価を、類似した医薬品の薬価に近づくように引き下げるルール。
    • 2020年度より、特例が新設され、類似薬がなくても、患者数が、10倍以上に拡大する、などの要件が揃うと適用される。
    • 2020/4の薬価改訂により、ゾレアは、以下のように薬価が引き下げられた。
      • 23,625円 → 14,812円 (75mgシリンジ)
      • 46,490円 → 29,147円 (150mgシリンジ)

    「ゾレア」効能変化再算定の特例で37.5%の引き下げ、335成分55品目に新薬創出加算 – 20年度薬価改定 | トピックス

    https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17895/

    編集履歴

    2019/12/09 はりきり(Mr)
    2020/06/23 文言整備
    2021/02/12 追記(FEIAとFCIEAの解説、文言整備)
    2021/05/11 追記(2020/04,効能変化再算定による薬価引き下げ)
    重篤副作用疾患別対応マニュアルアナフィラキシー
    承認情報
    公知申請への該当性に係る報告書
    最適使用推進GL 等
     承認年月日等 報告書 申請資料概要 備考
     2019年12月11日  季節性アレルギー性鼻炎(最適GL) –  – 
     2019年12月11日  審査報告書 申請資料概要季節性アレルギー性鼻炎(既存治療で効果不十分な重症又は最重症患者に限る)の効能・…
     2017年03月24日  審査報告書 申請資料概要特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)の効能・効果を追加とする新…
     2013年08月20日  審査報告書 申請資料概要気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)を…
     2009年01月21日  審査報告書 申請資料概要気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)を…
    改訂指示
    DSU 等
     発出日 文書名
     2017年05月08日  DSU259.pdf
     2013年10月01日  DSUNo.223
     2012年10月01日  DSUNo.213
     2010年03月01日  DSUNo.187
  • [抗体医薬] イラリス; Canakinumab – 高IgD血症として知られている難病治療薬 by Novartis/中外 [2020/06/23]

    [抗体医薬] イラリス; Canakinumab – 高IgD血症として知られている難病治療薬 by Novartis/中外 [2020/06/23]

    最初に

    高IgD症候群(Hyper IgD Syndrome:HIDS)は、別名メバロン酸キナーゼ欠損症(Mevalonate Kinase Deficiency:MKD)とも言い、コレステロール生合成経路に関わるメバロン酸キナーゼ(MVK)の活性低下により発症する周期性発熱症候群である。血清IgDが高値である症例が多いことで命名がなされているが、本邦での初診時にIgDの上昇を認めないことが多い。

    Novartisは、IL-1βを標的とした抗体医薬イラリス;canakunumabを持っており、適応症を多数に拡大している。

    編集履歴
    2020/06/23 はりきり(Mr)

    適応症

    • 以下のクリオピリン関連周期性症候群
      • 家族性寒冷自己炎症症候群
      • マックル・ウェルズ症候群
      • 新生児期発症多臓器系炎症性疾患
    • 高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
    • TNF受容体関連周期性症候群
    • 既存治療で効果不十分な下記疾患
      • 家族性地中海熱
      • 全身型若年性特発性関節炎

    臨床試験以外の薬理活性など

    • IL-1βに結合(解離定数:40pM)することで、受容体に結合した場合のシグナルを抑制する
    • IL-1β刺激による皮膚線維芽細胞からのIL-6産生を抑制
    • IL-1β刺激による黒色主細胞におげるIL-8のプロモーター活性を抑制
    • IL-1βで誘発されるマウス関節空気嚢への好中球浸潤を抑制
    • IL-1βで誘発されるラットの発熱を抑制

    高IgD症候群(指定難病267)

    https://www.nanbyou.or.jp/entry/4751

    イラリス皮下注射液150mg – Novaritisサイト – より

    https://drs-net.novartis.co.jp/siteassets/common/pdf/ila/pi/pi_ila_t_202004.pdf
  • [用語] TMA; 血栓性細小血管障害症

    [用語] TMA; 血栓性細小血管障害症

    TMA

    TMA; thrombotic microangiopathy;血栓性微小血管症

    以下のプロセスを含む

    • TTP
    • HUS
    • 血小板減少症
    • 微笑血管症性貧血
    • 臓器不全
    • 死亡

    治療薬

    最近、抗体医薬が開発された source

    • 免疫介在性TTPに対する、カプラシズマブ
    • 非定型HUSに対する、エクリズマブ
    編集履歴
    2020/08/11 Mr.HARIKIRI
  • [Bio-Edu] BiTE抗体 – 6 x His tagで精製を容易にする [2020/07/27]

    [Bio-Edu] BiTE抗体 – 6 x His tagで精製を容易にする [2020/07/27]

    BiTE抗体とは

    二重特異性抗体(BiTE)は、がん細胞と免疫細胞を引き合わせる。近寄った免疫細胞は、がん細胞を攻撃できるようになる。抗体は2つのそれぞれ異なる特異抗原と結合する「手」を持っている。

    ブリナツボマブ (Blinatumomab) by https://www.pmda.go.jp/drugs/2018/P20181015001/112292000_23000AMX00811_H100_1.pdf

    ヘムライブ

    血友病Aの血液凝固因子第VIIIの代替品となる「ヘムライブラ」も同技術による。ヘムライブラは、抗血液凝固第IXa/X因子ヒト化二重得意抗体モノクローナルである。

    BiTE抗体の基本原理は、1つの「手」に、がん細胞に特異的な表面抗原に対する「手」を、もう一方の「手」に、免疫細胞に特異的な表面抗原に対する「手」を持たせる。

    がん免疫療法に新たなアプローチ…二重特異性抗体でT細胞を誘導「ビーリンサイト」が発売, 2018

    https://answers.ten-navi.com/pharmanews/15289/

    歴史

    • BiTE抗体は、実用化は2014/12米国で始まった
    • 2018/11には日本でも上市された
    • Amgen、Sanofi、Rocheなど

    ブリナツボマブ – pmda –

    分子量54kDa, scFv型の二重特異抗体である。6xHis タグを持っている医薬品

    https://www.pmda.go.jp/drugs/2018/P20181015001/112292000_23000AMX00811_H100_1.pdf

    ブリナツボマブ (Blinatumomab) – KEGG –

    薬価 約28.6万円

    https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00067773
  • [Bio-Edu] mAbの一般的な副作用 (レジメ) [2020/07/17]

    [Bio-Edu] mAbの一般的な副作用 (レジメ) [2020/07/17]

    mAbの副作用

    抗体医薬でよく知られる副作用として、インフュージョンリアクション (infusion reaction, infusion-related reactio, 投与虹反応)がある

    • Infusion reactionは、特に分子標的薬の静脈投与後30分から2時間以内に発現する
    • 2回目以降に起こるばあいもある

    症状

    全身反応として現れる。

    • 顔面紅潮
    • 心拍数増加
    • 血圧変化
    • 呼吸困難
    • 気道攣縮
    • 背部痛
    • 発熱
    • 掻痒
    • 浮腫
    • 吐気
    • 発疹
    • アナフィラキシー
    • アレルギー反応

    対処

    • 対処
      • 投与の中断
      • 投与時間の変更
    • 予防 (前投与)
      • 抗ヒスタミン剤
      • 消炎鎮痛剤
      • ステロイド剤
    AntibodyFormatInfusion Reaction (Japanese Package Insert)
    rituximabmouse/human chimera~90%
    infliximabmouse/human chimeraunknow
    cetuximabmouse/human chimera<0.5~10%
    brentuximab vedotinmouse/human chimera11%
    trastumumabhumanized~40%
    gemtuzumab ozogamicinhumanized47.9%
    bevacizumabhumanizedunknown
    eculizumabhumanizedunknown
    panitumumabhuman<1%
    mogamulizumabhumanized58.8%
    ofatumumabhuman49.8%
    trastuzumab emtansinehumanized1.20%
    pertuzumabhumanized8.8%
    alemtuzumabhumanized96.9%
    nivilmabhumanunknown
    ipilimumabhuman1%
    ramucirumabhuman0.4%

    参考文献

    交代医薬の創薬から承認まで, 坂中千穂, YAKUGAKU ZASSHI 137(7)817-822 (017)

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/137/7/137_16-00252-1/_pdf
    編集情報
    2020/07/17 Mr.はりきり
  • [Bio-Edu] mAbの薬物動態(PK)  [2020/10/17]

    [Bio-Edu] mAbの薬物動態(PK) [2020/10/17]

    モノクローナル抗体の薬物動態

    薬物動態(PK; pharmacokinetics)は、薬物の体内における濃度と消失の速度過程

    薬力学(PD; pharmacodynamics)は、薬物の作用部位における薬物濃度と薬理効果を定量

    • IgGの一般的な投与経路 (用語説明 wikipedia)
      • iv (Intravascular; 静脈投与)
      • sc (Subculaneous; 皮下投与)
      • im (Intramuscular; 筋肉内投与)
    • 小さい < リンパ管のリンパ液の流れ << 血管の血液の流れ <大きい
    • 血中半減期
      • 生理的IgG濃度が12mg/mLの場合、IgGの半減期は21日
      • 高濃度に投与するなどするとクリアランスは高まる
      • 薄い濃度であるほど、クリアラスンスは低くなる
    • mAbのpI (等電点)
      • pIが高くなると全身クリアランスが高くなる
      • pIが高くなるとバイオアベイラビリティも低くなる
      • pIが高くなると細胞表面の不電荷とインタラクションする

    グリコシル化

    グリコシル化は、エフェクター活性と半減期に影響を与える。

    • グリコシルパターン (Glycosylation) 1)
      • 小胞体(ER)では、Mannose (Man)が付くだけ付加される
      • 次のGolgiでは、Manが外され、3つになり、Glactose, Fucose, シアル酸が付加される
      • 5個以上のHigh Mannoseでは、Fucoseが付かないことが原因の可能性も否定できないが、FcγRIIIaとの結合親和性が高まりADCC活性が強くなる
      • Fucosylationは、FcγRIIIaとの親和性を弱めることでADCC活性を低下させる。これを狙った抗体を生産させる産生株がある
      • CDCに影響
      • Asn297アミノ酸
      • アフコシル化 (脱フコース)
        • ADCC活性が高まる
        • クリアランスが高まる
      • ガラクトシル化型
        • FcγRIへの結合性増大する
      • 高Man5, Man8, Man9
    • IgGは腎臓でろ過するには大き過ぎる
      • 腎臓でのクリアランスは無い
    • トランスサイトーシス
      • 血管上皮細胞(neonatal Fc receptor)
      • FcRn
    • エンドサイトーシス
    • ピノサイトーシス
      • 内皮細胞による比較的非特異的な液相エンドサイトーシス
    • 間質空間
      • 細胞外マトリックスで満たされている
      • ゲル状
      • 正電荷
      • 成分は、グリコサミノグリカン(ヒアルロン酸など)、コラーゲンなどの構造タンパク質
    • IgGの排除体積(excluded volume) : ~50%
    • FcRnと結合親和性があるIgG1, IgG2, IgG4の消失半減期は、18~21日で、これは、同等の分子量を持つ他のタンパク質よりかなり長い。
    • IgG3は、FcRnと結合親和性が低く、半減期は、7日と短い
    1)

    小胞体(ER)での糖鎖修飾、Golgiの各部位での修飾について解説がある。Gorgiの特にくTrans Golgiでは、Galactose、更にシアル酸が付加される。
    シアル酸が多い程、血中濃度Cmaxが高くなる。

    IgGサブクラス毎のFc受容体タイプとの結合性の強さ。

    ヒト血清のIgGのシアル酸付加率は、一般的に10未満であるが、CHO細胞の組換えIgGでは、殆どシアル酸は付加されない。マウス・ハイブリドーマで得たIgGでは、シアル酸比率は50%を超える。



    Antibody Glycosylation and Its Impact on the Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Monoclonal Antibodies and Fc-Fusion Proteins (2020)

    https://www.researchgate.net/publication/274967692_Antibody_Glycosylation_and_Its_Impact_on_the_Pharmacokinetics_and_Pharmacodynamics_of_Monoclonal_Antibodies_and_Fc-Fusion_Proteins

    Biosmilarを作る場合、Glycationのコントロールは重要である。糖鎖付加について、培養添加物を詳細に検討している文献である。

    Impact of cell culture media additives on IgG glycosylation produced in Chinese hamster ovary cells (2019)

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6590254/

    Pharmacokinetics of Monoclonal Antibodies, 2017

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5613179/
    編集履歴
    2020/07/08 Mr.HARIKIRI
  • [Bio-Edu] Man5化抗体 (mAb)のPKクリアランスは2倍高い  [2020/07/04]

    [Bio-Edu] Man5化抗体 (mAb)のPKクリアランスは2倍高い [2020/07/04]

    論文の概要

    • ほとんどの抗体のアミノ酸位置297(Fc)にはグルコシル化部位がある
    • グリコシル化のパターンによっては、薬物動態(PK)、薬力学(PD)に影響を与える
    • その種類は、(1)マンノース、(2)シアル酸、(3)フコース(Fuc)及び(4)ガラクトース(Gal)が含まれる
    • 特に、マンノシル化(Man5, Man8/9)は、PKに影響しクリアランスが高くなる。その結果、薬効が不十分になる
      • 0timeで100~200μg/mLになるように投与(i.v. 10mg/kg)
      • 99% Fuc抗体では、28日後に10μg/mL
      • 99%以上Man5抗体と99%以上Man8/9抗体は同等の半減期であり、14日後に10μg/mL (図1)
    • シアル酸、N-アセチルノイラミン酸(NANA)のレベルによっては、PKに影響する可能性がある
    • グルカンであるFuc付加は、FcRIIIaとの結合性を低下させっ、ADCC活性を低下させる
    • Galレベルが低ければ、CDC活性も低くなる
    • NS0やSP2/0細胞では、「Gal1-3Gal1-4N-アセチルグルコサンミ-R」、「N-グリコリルノイラミン酸(NGNA)」などが含まれる(ヒトには存在しない)が、NS0やSP2/0の遺伝子組換え体で作られた抗体医薬品が存在している
    図1. Fuc化抗体とMan5化及びMan8/9抗体のPK

    参考文献

    Antibody Glycosylation and Its Impact on the Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Monoclonal Antibodies and Fc-Fusion Proteins (2015)

    https://www.researchgate.net/profile/Liming_Liu4/publication/274967692_Antibody_Glycosylation_and_Its_Impact_on_the_Pharmacokinetics_and_Pharmacodynamics_of_Monoclonal_Antibodies_and_Fc-Fusion_Proteins/links/5a5e6026458515c03ee0b245/Antibody-Glycosylation-and-Its-Impact-on-the-Pharmacokinetics-and-Pharmacodynamics-of-Monoclonal-Antibodies-and-Fc-Fusion-Proteins.pdf?origin=publication_detail

    市販の抗体とそのpIと血中半減期に関する文献。FcRnとIgGとの結合についてシミュレーションのデータあり。FcRnと結合親和性が高い抗体ほど、血中半減期は低くなる。

    Charge-mediated influence of the antibody variable domain on FcRn-dependent pharmacokinetics (2015)

    https://www.pnas.org/content/pnas/112/19/5997.full.pdf
  • [Bio-Edu] 抗体のADCC活性は、脱フコースはもとより、マンノース化でも可能  [2020/07/02]

    [Bio-Edu] 抗体のADCC活性は、脱フコースはもとより、マンノース化でも可能 [2020/07/02]

    論文の概要

    • 抗体のグリコシレーションサイトに付加される糖鎖としてMan5は、ADCC活性を高める
    • Man5付加を促進する培養添加物の探索
    • マンノシダーゼ阻害剤であるキフネンシンによるマンノースの付加を増強した培養
    • 精製後、Man5より大きなMan7, Man8 およびMan9をMan5にトリミング
    • 以上により、ADCC活性の強化とFcγRIIIaへの結合活性増加が示された。
    • マンノシル化抗体は、フコシル化抗体よりクリアランスが高い事は知られているが、Man5は、Man8, Man9と同等の動態を示した。

    参考文献

    Production, characterization and pharmacokinetic properties of antibodies with N-linked Mannose-5 glycans

    Production, characterization and pharmacokinetic proterties of antibody , MAbs, 2012 Jul 1; 4(4): 475-487

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3499342/#!po=19.1176

    Marcella Yu, Darren Brown, […], and Robert Bayer