Post Views: 257
医薬品の開発スケジュールの概要
バイオロジクスの開発スケジュールは、以下のようにモダリティの開発を進めつつ、臨床試験を実施し、その結果をもとにさらに臨床試験を実施し、最終的に製造許可を受けます。
その後、製品についてのモニタリングも臨床試験としての位置づけとしてデータを取得していきます。
- Drug Discovery
- Pre-Clinical
- IND申請(EUではIMPD)と臨床試験開始(Phase I)- 安全性
- その結果を受けて、Phase II試験 – 有効性
- その結果を受けて、Phase II試験 – 被験者を増やす
- そのデータをもとに、NDA申請 (BLAともいう)
- 当局から許可が降りれば、製造販売が可能
- その後、コマーシャル品でのデータ取得を続ける
- (これを市販後調査という)
- 問題が生じれば、速やかな対応が義務づけられている
- (医薬品メーカーは、定期的な模擬テストにより、情報伝達と対処法の稼働状況を確認し、実際の問題対応に備えている)
以下は、2015の記事で少し古いが、考え方は変わっていないので、参考になる記事です。
Special Report on Product Stability Testing: Developing Methods for New Biologics and Emerging Markets, 2015
https://bioprocessintl.com/manufacturing/formulation/special-report-on-product-stability-testing-developing-methods-for-new-biologics-and-emerging-markets/
バイオロジクスの開発における細胞株から製造方法
Manufacturing Process of Biologics (2011, ICH)
各ステップに関連するICH
https://www.ema.europa.eu/en/documents/presentation/presentation-manufacturing-process-biologics-kowid-ho-afssaps_en.pdf
Cell Bankの作成
FraunhoferのGMP manufacture of master and working cell banksと題する説明には、以下のように解説されている。
- セルバンクの製造は、医薬品のライフサイクルと生産チェーンにおける最初のGMP要素である.
- これは、生物学的APIを一貫して作成するための前提条件である.
- 繰り返しの継代培養または複数世代の生物は、特性と完全性に予期しない変化をもたらす可能性がある
- そのため、すべての生物学的原薬の生産は、少数の世代倍増で準備されたマスターセルバンク(MCB)とワーキングセルバンク(WCB)に基づいている.
- MCBとWCBで構成される2層セルバンクシステムは、バイオ医薬品のライフサイクル以降にわたって一貫した原材料/細胞基質の供給を保証する.
- 更に、セルバンクのストレージは、安全で制御され、監視されたセルバンクシステムで、超高温、つまり液体窒素より上の気相で行われる必要がある.
Fraunhofer ITEMのサービスから
Fraunhoferのサービスから、MCB/WCBは、ICHQ5Dに準拠したGMP製造で行うとしていることから、これは要件であると捉えられる. 前述の文献( 2011 ICH)にもMCB/WCBに関連するのは、ICHQ5Dとの記載がある。
- 原核生物および真核生物(細菌、酵母、真菌、哺乳類細胞株など)のマスターおよびワーキングセルバンク(MCBおよびWCB)のICHQ5D準拠のGMP製造
- MCBまたはWCBバイアルの数量:最大300
- MCBまたはWCBの容量:クライオバイアルあたり1 ml〜5 ml
- セルバンキング用の特別装備の生産設備、すなわちクラスDおよびクラスCのクリーンルーム
- 25年にわたる社内の技術および規制に関する専門知識
- 液体窒素の気相での超低温(<-150°C)でのMCBおよびWCBのGMP準拠の保管
- テストと特性評価のために、FraunhoferITEMはすでにいくつかのテストラボと契約関係を確立しています。
Fraunhofer ITEM
GMP manufacture of master and working cell banks
https://www.item.fraunhofer.de/en/services-expertise/drug-development/development-of-biotherapeutics/GMP_manufacture.html
ICHQ5D
- バンク化された株が対象
- 動物細胞、微生物
- 微生物の代謝産物、例えば、 抗生物質、アミノ酸、炭水化物、及びその他の低分子物質はこれに含まれない
- 起源、由来、履歴
- 微生物細胞の場合、細胞株として 樹立した後の継代数を記載すればよい
- 血清、酵素、加水分解物、又はその他の生細胞等
- ヒト又は動物由来の材料に細胞が 曝露されることがあったのか
- それら生体成分の起源、調製及び管理方法、各種試験結果、並びに 品質保証に関する情報
- 適切な親株
- 特別な操作の例としては、細胞融合、形質導入、細胞の 選択、コロニー分離、クローニング、遺伝子増幅、特定の培養環境や培地への適応化など
- 細胞基材の開発過程でどのような方法が用いられたかに関する情報
- 「細胞基材」とは、目的の遺伝子配列が導入された 形質転換細胞であり、更に、単一の前駆細胞からクローニングされたものである
- セル・バンクの品質、及び各セル・バンクについて実施した試験の内容を保証する責任負っている
- セル・バンク・システム
- MCBからワーキング・セル・バンク(WCB)を調製するという2段階方式のセル・バンク の考え方
- セル・バ ンクの適格性に関する評価基準
- ローニングはされていないが、既に十分均一であり、製造目的にかなう細胞集 団の場合も、クローン細胞からセル・バンクを調製する必要はない
- 重要な点は、特性解析されたセル・バンクによって、一定品質の医薬品が得られる ということである
- 微生物発現系においては、セル・バンクの更新にあたって、形質転換を改めて行って、新 たなセル・バンクを調製する場合がある。この方法は、新規の形質転換ごとに、あらかじめ 綿密に試験してある宿主セル・バンク及びプラスミド・バンクを使用すること、並びに形質 転換して得られたセル・バンクごとに改めて試験を実施することが前提となる
- このような代替法が妥当と認められる理由は、細菌や酵母での形質転換が、 後生動物細胞の形質転換とは異なり、一般的に高い再現性を有し、しかも容易な操作で行い 得るからである
- セル・バンクで起こる可能性がある汚染すべてを検出でき るような試験方法はない。したがって、細胞をバンク化する過程で以下の予防策を講じるこ とで、汚染がないことを
- 採用したバンク・システムの種類、セル・バンクのサイズ、用いる容器(バ イアル、アンプル、その他の適当な容器など)及びその密封方法、凍結保護剤や培地を含む セル・バンクの調製方法、並びに凍結に際しての条件や保存条件について明らかにする必要
- 微生物汚染や同一室内で使用される他の細胞との交叉汚染を回避
- 方法、並びに各セル・バンクを構成する容器について事後の追跡調査をするための方 法を記載
- バンクを構成する各保存容器の内容 が均一であることを保証するためには、各容器に分注する前に、すべての培養容器の培養液 からの細胞を合わせて、1つの細胞プール
- 細胞プールから細胞を滅菌済の容器に分注し、 密栓後、適当な条件下で保存
- 製造に使用
- 火災、停電、人的過失がある。製造業者は、こうした 状況に対する予防措置について明らかに
- 複数の冷凍庫で のセル・バンクの重複保存
- 予備電源や液体窒素をセル・バンク保存ユニットへ自動供給す るシステムの使用
- MCBやWCBの遠隔施設での分割保存
- MCBの更新
- 特性解析/品質評価
- 細胞基材への他の細胞株の混入、外来 性の有害因子及び内在性因子やその他の混入物質(例えば、宿主由来の毒素や抗生物質)の 有無について評価す
- ウイルス安全性評価
- 遺伝子発現構成体の分析
- ICHQ5B
- 目的タンパク質をコ ードする遺伝子配列が既に明らかにされている場合には、同様の方法により塩基配列を解析すれば、有用な情報となる
- しかし、関連する遺伝子群から発現するタンパク質ファミリー、 微生物ワクチン抗原、ハイブリドーマから得たモノクローナル抗体のような複雑な構造を持 つタンパク質の遺伝子配列の解析は、必ずしも必要とは考えられない。
- 特性解析
- 表現型、遺伝子型
- フル試験は、MCB
- 一部の試験は、WCB
- 動物細胞
- 微生物
- 純度試験
ICHQ5D (2000)— pmda —
生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)製造用細胞基材の由来、調製及び特性解析
https://www.pmda.go.jp/files/000156150.pdf
編集履歴
2020/09/24 Mr.Harikir
2021/04/08 追記: バイオロジクスの開発における細胞株から製造方法