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  • [rAAV] Parvovirusに属するアデノ随伴ウイルス(AAV)をベクター(rAAV)にして遺伝子治療を行う — rAAVの特徴と臨床 (2003) – ID2516 [2019/10/02]

    [rAAV] Parvovirusに属するアデノ随伴ウイルス(AAV)をベクター(rAAV)にして遺伝子治療を行う — rAAVの特徴と臨床 (2003) – ID2516 [2019/10/02]

    AAVベクター

    Adeno associated virus (AAV) ベクター(rAAV : recombinant AAV)作成に関する現在の技術 (2019現在でも)では、Rep/Cap遺伝子と目的の治療用遺伝子(GOI)とは、別々のPlasmidで作り、それを混合体として細胞にトランスフェクションする方法が一般的である.即ち、野生型のAAVの感染状況とは異なる人為的な方法でウイルスが作られる.

    野生型(Wild type)のAAVの感染の場合、高い確率でターゲットとなっている染色体のある特定の位置に、そのAAVの遺伝子が組み込まれる。その位置は同定されている。

    しかし、rAAVによるGOIの染色体DNAへの組み込みは、Wild Type AAVの場合とは異なり、染色体に組み込まれたとしても稀で、しかもランダムの位置に導入される考えられている。

    AAVの血清型

    今回紹介する文献(2003年)では、当時で1から8型が知られていたようだ。血清型2, 3および5はヒトより分離されたもので、2型が最もよく研究されている。

    現在(2020)では、血清型9と10も知られており、血清型9では、脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療薬であるZolgensmaに使われている(2020/07/17追記)。

    ベクター種ごとの特徴

    • adeno associated virus( AAV )ベクターは、非分裂細胞への効率的な遺伝子導入と長期の遺伝子発現。他のウイルスベクターと比較してAAVの方が安全性に優れている。ただし、未分化な幹細胞への導入効率は低い。
    • レンチウイルスベクター(HIVベクターが代表的)は、AAVベクター同様に非分裂細胞への効率的な遺伝子導入と長期の遺伝子発現。静止期にある幹細胞に適しており、ES細胞に効率よく遺伝子導入できる
    • レトロウイルスベクター: 分裂細胞にしか遺伝子導入ができないため、造血系細胞への導入に絞られる
    • アデノウイルスベクター: 非分裂細胞への効率的な遺伝子導入が可能であるが、遺伝子発現は長期持続しない
    ウイルス種ターゲット発現持続性安全性
    AAVAAV1~10非分裂細胞長い高い
    LentivirusHIV非分裂細胞
    (ES細胞)
    長い
    Retrovirus分裂細胞
    (造血系)
    Adenovirus非分裂細胞短い

    AAVのウイルス学的特徴

    • AAVは、動物ウイルスの中で最も小型の線状1本鎖DNAウイルスであるパルボウイルス科(Parvoviridae)に属し、20-26nmの大きさで、ヒト成人での感染率は85%である。物理学的に極めて安定。
    • AAV2のReceptorはヘパラン硫酸が想定され、FGF receptorやαVβ5インテグリンなどもreceptorとして示唆されている。
    • AAV5のReceptorは、PDGF receptorであることが分かっている。

    Parvoviridaeは3属

    ここでは,AAVがどのウイルスに属しているのか,どんな特徴があるのか,について理解するために,その他のウイルスと比較する.

    1. Autonomous Parvovirus
      • バルボウイルス属
      • 複製にヘルパーウイルスを必要としない
    2. Dependovirus
      • ディペンドウイルス属
      • AAVのこと。複製にヘルパーウイルスを必要とする
      • 病原性は認められていおらず、血清型は1から8が知られている
    3. Erythrovirus
      • エリスロウイルス属
      • 人に感染するB19と猿パルボウイルスは、赤血球への特異性と特徴的な転写機構から区別されている

    AAVベクターとしての特徴

    ウイルスゲノムは約5kbの線状1本鎖DNA.ブラス鎖とマイナス鎖は半々。ゲノムの両端に145b長のITR (inverted terminal repeat)がT型ヘアピン構造で存在し、プライマーの役割となり複製時に機能すると共に、ウイルス粒子へのPackagingと宿主細胞染色体DNAへの組込みにも機能する。

    • AAVウイルスゲノム : 5kb,1本鎖DNA
    • ゲノムの両端に145bのinverted terminal repeat (ITR)を有する.
    • ITRは,T型ヘアピン構造をとっている.
    • ITRは,複製時にプライマー機能,ウイルス内へのPackaging,宿主染色体DNAへの組込機能を有する.具体的には,以下の通り.
    • p5プロモータからRep78, Rep68 (large Rep)のmRNAが転写: endonuclease, helical, ATPase は、プロモータ活性調節、ゲノム複製、宿主 第19版染色体長腕AAVS1領域(共通配列GAGCにRep78/Rep68が結合)へのゲノム組込み.
    • ただし、AAVベクターでは、ITRに続けてRepはコードさせず、GOIを配置するため、特定箇所への組込み機能は享受できないが、稀に組み込まれるとそれはランダムになる傾向があり、且つ、アクティブな遺伝子領域に起こりやすい.非分裂の場合、挿入変異を心配する必要はないと考えられる
    • p19プロモータからRep52, Rep40 (small Rep)のmRNAが転写: VP1, VP2, VP3のカプシド蛋白
    • 単独感染では、(A)潜伏感染のみで済むが、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスが重感染するとAAVが複製されることになり、(B)溶解感染となる
    • AAVベクターで導入された遺伝子は、ほとんどがエピソームとして存在していると考えられているため、増殖細胞の場合では、失われやすい.
    • ゲノムが1本鎖であることから遺伝子発現には2本鎖になるStepが必要であり、その効率が高くない場合は、大量のベクターを必要とする
    • 小型の粒子であることから、挿入できる遺伝子は小さくなる
    • 重複関連が可能なため、別々のベクターを使って足りないものを導入することが可能 (コンカタマー形成が可能であるため、別々に導入(スプリットベクター)しても細胞内で連結される性質を利用できる)

    臨床試験

    参考文献によれば、AAV2ベクターによる血友病Bの臨床試験: 筋肉では一部の患者で効果があった。現在、肝臓で試験中(ベクターゲノムが精液中に一過性に検出されたが、生殖細胞への遺伝子導入は確認されていない)

    以上

    参考文献

    1. ウイルス 第53巻 第2号 pp.163-170, 2003, http://jsv.umin.jp/journal/v53-2pdf/virus53-2_163-170.pdf
    2. Dependoparvovirus, ViralZone
    編集履歴 Mr.HARIKIRI
    2019/12/31 文言整備、少々追記
    2020/05/03 文言整備
    2020/07/17 追記(Zolgensma)
    2023/10/24 文言整備
  • [Bio-Edu] AAV2の感染に関わるレセプターは何か? – ID18442 [2019/07/20]

    [Bio-Edu] AAV2の感染に関わるレセプターは何か? – ID18442 [2019/07/20]

    レセプターを考えるとき

    生体内の物資が、特定の組織に収束するのは、受容体(receptor)を介している。例えば、生体内でホルモンが分泌された時、血流に乗って全身に運ばれる。次に、必要な組織に到達するするのは、そのホルモンと結合親和性の有るreceptorが、その組織にあって、それに結合するためである。その結合の初期段階については、以下の様式を念頭に置いて置かなければならない。

    • 電荷的(正負のイオン的結合)
    • 構造的(パズルのマッチング)
    • 疎水的(疎水性が高いもの同士は収束する)

    AAV2のレセプター

    感染に関わるレセプターは、AAVの血清型によって異なるが、AAV2は、ヘパリンはよく知られており、そのHeparin分子について、AAV2の結合性を検討してしている2)、この文献によれば、Heparinの分子の長さによって親和性が異なるとのこと。

    個人的なコメントをすると、Heparinは、正電荷であるため、不電荷とはイオン的に結合が可能であり親和性を持つことが可能である。AAV2の表面に負電荷を持つ領域があるものと理解できるし、その分子の長さとその電荷の状態でAffinityは異なるものと思われる。

    編集履歴
    2019/07/20 はりきり(Mr)
    2020/05/31 文言整備、追加(レセプターを考えるとき、まとめ)
    Ref : 2) Characterization of Interactions between Heparin/Glycosaminoglycan and Adeno-associated Virus

    AAV2の必須な受容体の特定

    AAVは,ほとんどの細胞に高効率に感染することから,遺伝子治療用のベターに多用されている.参考文献3)によれば,感染細胞として、一倍体細胞を用いて遺伝子を1つずつノックアウトし,AAV2が感染するか否かを繰り返しAAV受容体を特定した後,ノックアウト動物で最終確認している.

    • Ig-likeドメイン (PKD: polycystin Kidony disease)の5回貫通する細胞外ドメインが受容体である
    • N末のIgドメインの2つがAAVと結合する
    • このIgドメインは,KIAA0319L遺伝子であり,小胞体輸送に関わる分子と結合し,ゴルジ体と細胞表面を行き来する.
    PKD : βシートが3枚と4枚で構成された構造

    基本的知識

    感染力(細胞内に入り込む能力)が有るrAAVを作る為には、天然AAVにコードされているrep/cap遺伝子が必要で有る。

    rep遺伝子

    Repタンパク質を発現する遺伝子.AAVの製造に必要である.

    cap遺伝子

    Capタンパク質を発現する遺伝子.AAV粒子を構成する3つのVP1, VP2及びVP3をコードしている.これらのカプシドタンパク質質により,正20面体の立体的構造を作り,その中にAAVの遺伝子が包含される.

    感染フロー

    StepProcessMemo
    1AAVの細胞への付着attachment, この付着する機序が2016年まで不明だった
      
    2エンドサイトーシスendocytosis
      
    3エンドソームによる輸送trafficking
      
    4エンドソーム又は,リソソームからの脱出escape
      
    5核への転移translocation
      
    6rep遺伝子の発現expression
      
    7ゲノム複製replication
      
    8cap遺伝子の発現,及び子孫ssDNAを含むAAV粒子を合成expression
      
    9子孫AAVの完成assembly
      
    10感染宿主細胞からの脱出release

    まとめ

    今回は、AAV2について、そのレセプターに関する参考文献を紹介した。

    良く知られたAAVの血清型としては、AAV1~AAV10程度が知られている。血清型によって、レセプターは異なるようである。なぜなら、感染ターゲットとなる細胞種が、血清型で異なることから、そのように推察されている。

    参考文献

    1)

    基礎知識 –
    Adeno-associated virus

    https://en.wikipedia.org/wiki/Adeno-associated_virus

    2)

    AAV2とHeparinの親和性について –
    Characterization of Interactions between Heparin/Glycosaminoglycan and Adeno-associated Virus – Biochemistry, 2013 –

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3859860/#!po=2.00000

    3)

    AAV2のレセプターついて –
    An essential receptor for adeno-associated virus infection – Nature, 2016 –

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3859860/#!po=2.00000

    編集履歴

    2019/07/20, Mr. Harikiri