GLP省令の概説
GLP省令(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)とは、医薬品・医療機器・再生医療等製品・化学物質などの非臨床(動物等)安全性試験の信頼性を確保するための日本の法令であり、試験の計画・実施・記録・保管・報告の全過程を品質マネジメントの枠組みで統制する規則である。目的は「試験データの科学的妥当性・再現性・トレーサビリティの確保」である。
【何を規定しているか(要点)】
GLP省令は大きく次の5領域を規定している。
1) 組織・責任体制
- **試験責任者(Study Director:SD)**の設置と責任範囲の明確化
- 試験施設長による体制整備義務
- 独立した**信頼性保証部門(QA)**の設置
2) 試験計画書(Protocol)と変更管理
- 目的・方法・試験系・評価項目・統計手法の事前規定
- 変更はすべて文書化し、SD承認が必須
3) 実施管理(実験操作の品質)
- SOP(標準操作手順書)の整備と遵守
- 動物管理、試験物質の特性評価、設備・機器の適格性
4) データの真正性(Data Integrity)
- 生データの保存、追跡可能性、訂正履歴の保持
- ALCOA+の実務的適用(Attributable, Legible, Contemporaneous, Original, Accurate)
5) 最終報告書と保存
- SD署名付き最終報告書の作成
- 試験資料・標本の長期保存(保存責任者の指定)
【対象となる主な試験】
- 単回投与毒性、反復投与毒性
- 生殖発生毒性
- 遺伝毒性(変異原性)
- がん原性
- 局所刺激性、感作性 など
(※臨床試験はGCP、製造はGMP、品質はGQPが対応)
【根拠】
- 日本のGLPはOECD-GLP原則を国内法化したもので、国際相互受入れ(MAD: Mutual Acceptance of Data)を前提とする。
- 非臨床データの信頼性が担保されなければ、承認申請データは受理されない。
- 規制当局(PMDA・都道府県)が**査察(GLP査察)**を実施し、違反時はデータ不採用や業務改善命令があり得る。
【注意点・例外】
- すべての基礎研究がGLP対象ではない。
→ 承認申請に用いない探索研究はGLP必須ではないことが多い。 - 外部委託(CRO)利用時もスポンサー責任は残る。
- バイオ医薬品・細胞製品では、従来GLPの適用解釈が難しい試験(例:複雑なin vitro系)があり、規制相談が推奨される。
- 試験計画書の軽微な運用差は直ちに不適合とは限らないが、記録欠落は重大リスク。
【出典(一次情報に近い公的資料)】
- 厚生労働省「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準(GLP省令)」
https://www.mhlw.go.jp - OECD Principles of Good Laboratory Practice (GLP)
https://www.oecd.org - PMDA GLP査察関連資料
https://www.pmda.go.jp
【実務上のポイント(簡潔)】
- GMP=作る品質、GLP=調べる品質、GCP=使う品質、GQP=市場後の品質監督と整理すると理解しやすい。
- 申請を見据えるなら、早期からGLP対応設計で試験を組むことが最もコスト効率が良い。
