KMバイオロジクス
化学及血清療法研究所(化血研)から事業譲渡により、明治HDの子会社としてKMバイオロジクスが発足した(2016)。
Polyethylenimine (PEI)は、カルシウムよりも安定的に遺伝子を細胞に導入できます。そのトランスフェクション効率についても、研究が進められており、一般的なPEIより、10倍以上の効率が高められた製品も市販されています。
医薬品の製造には、更に品質試験と品質管理された製品が必要です。
AAV2 production with optimized N/P ratio and PEI-mediated transfection results in low toxicity and high titer for in vitro and in vivo applications
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3775943/
FectoVIR®-AAV: a giant step for AAV large scale
https://insights.bio/cell-and-gene-therapy-insights/journal/articles/fectovir-aav-a-giant-step-for-aav-large-scale-manufacturing/
Scalable Production of AAV Vectors in Orbitally Shaken HEK293 Cells
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6305802/
Pharmaceutical Development of AAV-Based Gene Therapy Products for the Eye
https://link.springer.com/article/10.1007/s11095-018-2554-7
cytivaのFlexFactoryは、既存の建屋に、UpstreamのBioreactorやDownstreamのChromatography Systemを製造規模と作業性を考慮しながらSingle-useシステムを配置して製造システムを作り上げるソリューション。
一方、KUBioは、プレハブ式の製造施設を短期間で作り上げるソリューションです。
FlexFactory™ Single-use Bioprocess Platform @YouTubeより
https://youtu.be/k39LYWnofk8
FlexFactory™ Single-use Bioprocess Platform
https://youtu.be/jk_9UibqyDQ
2019/11/15 Mr. HARIKIRI 2021/03/09 追記 (CytivaのFlexFactory)
KUBio™: The proven response for rapid biomanufacturing https://youtu.be/0HSOltVwx-Y @YouTubeより
バイオロジクス(バイオ医薬品)の製造には、一般的に動物細胞が宿主として用いられている。特にCHO細胞(チャイニーズハムスターの卵胞細胞)が使用されることが多い。本培養過程で、細胞内でコードした組換え遺伝子により、目的のタンパク質が生産される。ここでは、一般的な抗体医薬を前提に考える。
培養条件の違いにより、細胞の代謝は微妙に異なることでも、mRNAから翻訳されたタンパク質の翻訳後修飾としての糖化は異なってくる。バイオシミラー開発では腕の見せ所となるし、商用生産では、いかに同等の糖鎖修飾となるロバストな培養条件の設定が必要である。
また、培養過程で細胞の生存率の低下は、産生された抗体の分解を誘発し、収量低下の原因となることも考慮する必要がある。
以上、いずれも細胞内の酵素に起因している。
Creative Biolabs社のHigh-Affi™テクノロジーを使用したグリコシル化特異的抗体産生サービスのサイトから、蛋白質に対する生体内での糖化についての説明をまとめた。サイトのページの背景には、美しい抗体(Antibody)の立体構造図があるので、そちらもどうぞ見てください。
その前に,クルコシル化について一般情報を以下に確認します.
Creative Biolabs社のHigh-Affi™テクノロジーを使用したグリ
https://www.creative-biolabs.com/glycosylation-specific-antibody-production-services.html?gclid=cjwkcaia1uhsbrbueiwakbctzuoaxgfot08zradpljk9vs9yuqyslqv3w8a7iqg6_x-sbb6mkektlbocvdmqavd_bwe
グリコシル化は、酸素を要しない糖化とは違い、酵素による部位特異的な反応であり、(1)酵素グリコシルトランスフェラーゼと(2)グリコシダーゼがこの反応を生じさせる酵素です。
修飾されたアミノ酸の種類と糖鎖の特性に基づいて、グリコシル化は次の5つのカテゴリに分類できます。
いずれの反応も細胞内の小胞体(Endoplasmic Riticulum: ER)とゴルジ体(Golgi apparatus or Golgi body: Golgi)を順次、蛋白質が移動しながら糖付加反応が進む。
(N-結合型グリコシル化; N-glycosyl)
タンパク質のアスパラギン(Asn)またはアルギニン(Arg)のアミド窒素原子へのオリゴ糖分子の付加です。
動物と酵母では、以下の10種類
植物の特有の糖鎖
糖鎖って? – 糖鎖医工学研究センター
https://unit.aist.go.jp/brd/jp/GTRC/ci/rcmg/jp/what%27s_tousa/what%27s_tousa1.html
下図には、IgG1のFc領域に共通してあるAsnに対して付加される糖鎖の模式図を示します。
Influence of N-glycosylation on effector functions and thermal stability of glycoengineered IgG1 monoclonal antibody with homogeneous glycoforms, 2019
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6380427/
(O-結合型グリコシル化; O-glycosyl)
単糖またはオリゴ糖分子がタンパク質のアミノ酸残基の酸素原子に結合。 この反応は、真核生物のゴルジ体で起こり、古細菌や細菌でも見られる。 これは、対応するグリコシルトランスフェラーゼによって転移されたセリン(Ser)またはスレオニン(Thr)残基へのN-アセチルガラクトサミン、フコース、グルコースまたはマンノースの付加から始まります。次に、炭水化物鎖が伸び、続いて他の炭水化物(ガラクトースやシアル酸など)が続きます。
(ホスホセリンのグリコシル化; P-glycosyl)
ホスホセリンのグリコシル化は、ホスホジエステル結合を介した糖のタンパク質への付加。 GlcNAc、キシロース、マンノース、フコースがこの種のグリコシル化に関与している。
(C-マンノシル化; C-glycosl)
C-マンノシル化とは、C-C結合を介してシーケンスW-X-X-W(Wはトリプトファンを示し、Xは任意のアミノ酸)の最初のトリプトファン残基C-2にマンノース糖を付加することを指します。 これまでのところ、この結合は、RNase2、トロンボスポンジン、インターロイキン-12、プロペルジンなどの哺乳類タンパク質で発見されている。
グリピエーション(GPI)
グリピエーション(GPI)は、タンパク質がグリカン鎖を介して脂質アンカーに結合する特殊な形態のグリコシル化です。 この種のグリコシル化は、トリパノソームやThy-1抗原などの重要な細胞表面糖タンパク質に広く分布している。
ERとGolriの詳細な図は、以下の文献を参照
GlucoseからPyruvateまでの代謝では、NADPHが合成されるが、その反応には、Thioredoxin Systemが関わっておいる。CHO細胞の培養によるバイオロジクスの本培養において、細胞生存率が著しく低下した場合、以下の原因により産生タンパク質の還元が生じる結果、SS結合が切断されて低分子化が見られることがある。
GlucoseからPyruvateまでの代謝系には、(1) ED, (2) EMP および (3) PPPの3つが存在する。
NADPH-generating systems in bacteria and archaea 2015)
Glucose→Glucose-6-P→Fructose-6P→Glyceraldehyde-3-P→Pyruvateまでの反応には、3つのパスウェイがある。グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)および6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6PGDH)によるNADPHの生成。 実線と破線は、それぞれ単一反応と集中反応を示します。
経路の略語
ED、Entner–Doudoroff経路(緑色)
EMP、Embden–Meyerhof–Parnas経路(青色)
PPP、ペントースリン酸経路(酸化相は赤、非酸化相は黄色)。
GAPデヒドロゲナーゼによるNADPHの生成。 実線の矢印と破線の矢印は、それぞれ単一の酵素反応と集中定数の酵素反応を表しています。 代謝物(通常のテキスト)および酵素(太字)の略語:GAP、グリセルアルデヒド3-リン酸; 1,3-BPG、1,3-ビスホスホグリセリン酸; 3-PG、3-ホスホグリセリン酸; GAPOR、GAP:フェレドキシンオキシドレダクターゼ; GAPDH、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ; GAPN、非リン酸化GAPDH; PGK、ホスホグリセリン酸キナーゼ。
https://europepmc.org/article/pmc/pmc4518329
Pentose Phosphate Pathway (PPP) には、Thioredoxinも関わっている。PPPは、細胞がGlucoseをエネルギー原として使っている代謝系は3つある。PPPは、その内の1つである。
Physiological functions of thioredoxin and thioredoxin reductase (2001)
チオレドキシン系のオキシドレダクターゼ活性のスキーム。 チオレドキシンレダクターゼ(TrxR)とNADPHによる、酸化型チオレドキシン(Trx-S2)の活性部位ジスルフィドの還元型チオレドキシン(Trx-(SH)2)のジチオールへの還元を模式的に示す。 Trx-(SH)2は、その一般的なオキシドレダクターゼ活性によってタンパク質のジスルフィドを還元し、Trx-S2を生成する。 チオレドキシンレダクターゼは、E.coliチオレドキシンレダクターゼによって還元されるNrdHレドキシンなどの相同チオレドキシン以外の基質、または哺乳類のチオレドキシンレダクターゼによって直接還元されるチオレドキシンに加えて多くの基質を持っている可能性がある。
Thioredoxin System : thioredoxin: チオレドキシン、thioredoxin reductase: チオレドキシンレダクターゼおよびNADPHの反応系を指す。チオレドキシンシステムは、古細菌から人に至るまで存在する。ジチオール/ジスルフィド活性部位(CGPC)を持つチオレドキシンは、主要な細胞タンパク質ジスルフィドレダクターゼであり、リボヌクレオチドレダクターゼ、チオレドキシンペルオキシダーゼ(ペルオキシレドキシン)、およびメチオニンスルホキシドレダクターゼなどの酵素の電子供与体としても機能する気は年。 Glutaredoxins: グルタレドキシンは、チオレドキシンの機能と重複し、グルタチオンレダクターゼを介してNADPHからの電子を使用して、グルタチオンジスルフィド酸化還元を触媒します。 チオレドキシンアイソフォームはほとんどの生物に存在し、ミトコンドリアには別個のチオレドキシンシステムがあります。 植物には葉緑体チオレドキシンがあり、これはフェレドキシン-チオレドキシンレダクターゼを介して光によって光合成酵素を調節します。 チオレドキシンは、タンパク質機能の酸化還元調節とチオール酸化還元制御を介したシグナル伝達に重要です。 NF-κBやRef-1依存性AP1を含む転写因子の数は増え続けており、DNA結合のためにチオレドキシンの還元が必要です。 細胞質ゾルの哺乳類チオレドキシンは、胎児に致死的であり、酸化ストレスに対する防御、成長およびアポトーシスの制御において多くの機能を持っていますが、分泌され、コサイトカインおよびケモカイン活性も持っています。 チオレドキシンレダクターゼは、細菌、真菌、植物に含まれる特定の二量体70 kDaフラボタンパク質であり、酸化還元活性部位がジスルフィド/ジチオールです。 対照的に、高等真核生物のチオレドキシンレダクターゼはより大きく(112–130 kDa)、幅広い基質特異性を持つセレン依存性二量体フラボタンパク質であり、ヒドロペルオキシド、ビタミンC、亜セレン酸塩などの非二硫化物基質も還元します。 すべての哺乳類チオレドキシンレダクターゼアイソザイムはグルタチオンレダクターゼと相同であり、システイン-セレノシステイン配列がレドックス活性セレネニルスルフィド/セレノールチオール活性部位を形成する保存されたC末端伸長を含み、ゴールドチオグルコース(オーロチオグルコース)および他の臨床的に使用される薬剤によって阻害されます。
https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1046/j.1432-1327.2000.01701.x
Glycosylation
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Glycosylatiion
2020/10/31 追記:還元酵素によるタンパク質分解について 2021/01/20 追記:wikepediaより,一般情報をまとめた
抗IL-6受容体抗体に対して、50mM以上のアルギニン、メチオニンを含む溶液、更にヒスチジンを含む溶液により二量体化、脱アミド化を抑制する。
クレーム1(請求項1)が最も重要なので、以下に解説する。
アルギニン及びメチオニンを含有するとあるので、両方の含有が特許範囲である。さらに、クレーム2では、ついてきにヒスチジンを含有することとありので、アルギニン、メチオニン、ヒスチジンを含有することが特許範囲である。
【特許請求の範囲】【請求項1】
アルギニン及びメチオニンを含有することを特徴とする、安定な抗体含有溶液製剤。
【請求項2】
さらにヒスチジン緩衝剤を含む、請求項1に記載の溶液製剤。
タイトル: | 特許公報(B2)_高濃度抗体含有溶液製剤 |
出願番号: | 2009548102 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 39/395,A61K 9/08,A61K 47/18,A61P 43/00 |
特許広報(B2)となっていることから、特許が権利かされている。優先権主張日は、2007/12/27となっている。ただし、その他の特許にあるように、5年の特許期間の延長がアクテムラに対して認められている(H29から5年の2022年まで)。
日本の特許検索サイト – J-Platpat
https://www.j-platpat.inpit.go.jp
脱アミド化は、アスパラギンがあると起こりやすいため、抗体の結合ドメインであるCDRにアスパラギンがあると、活性低下のリスクが高まる。ある発明では、アスパラギンをリジンに置き換える方法(抗体安定化方法, 2006)も開発されている。
2019/11/12, Mr. Harikir 2021/06/06, 内容整備(アクテムラが対象であること)
Sano first Pasteur社のデング熱ワクチンDengvaxiaが、FDA二より流行地での使用を承認された(2019/05/22)。血清型1~4型に対応する。
安全性と有効性は、プエルトリコ、中米、アジア太平洋地域において3万5000例を対象として3本のプラセボ対象試験で検証された。有効率76%。
初めてデング熱ウイルスの感染では、無症状、もしくはインフルエンザ感染に似た症状を呈する。重症化する場合は、胃痛、出血、呼吸困難、精神錯を呈する(デング出血熱: HDF)。
毎年、世界で4億人がデング熱ウイルスに感染し、その内50万人がHDFに進展する。さらに、2万人が死亡する。
高価な装置が無くても始められる蛋白質の精製について解説する。
予算が少ない大学の研究室や高価な装置を整備できないベンチャーでの蛋白質精製について、タンパク質精製に関して初期教育、原理を理解しながらの目的蛋白質の精製サンプルの取得が可能である。
取り敢えず、1mLカラムでのスモールスケールによるサンプル調製から、400mLカラム程度のスケールアップも可能です。
初期のサンプル調製においては、クロマト装置は重厚長大です。使用前と後のシステムの洗浄など、結構面倒です。こんな初期に使うものではありません。
AKTAの出番は、その先に待っています。そもそもタンパク質精製は、集中して条件設定を実施し短期間で片付けるのです。
編集履歴
2019/11/10 はりきり(Mr)
2020/06/19 追加 (未完)
精製しようとしているタンパク質はなんですか? 精製タグは付いていますか? Refoldingは必要ないですか? 分子量を把握していますか? 等電点は? 疎水性?
まずは、敵を知ることからです。情報を収集しましょう
目的蛋白質の測定法を考える (SDS-PAGE, ELISA, RPHA, 逆相HPLC、アフィニティカラム)
目的蛋白質についてRefoldingが必要か検討する。ここでは、Refoldingについては記載していない。
プレパックカラムは使わず、エンプティカラムにバルクのレジンを自己充填したカラムを使用する
クロマト装置は、基本的に必要ではなく、ピペット操作かペリスタリックポンプを使う
カラムサイズは、0.5mLから100mLを想定する。取得する蛋白質は、数mgから1g程度。
小さいカラムサイズでは、自然落下でクロマトを行う。
大きいカラムサイズではペリスタリックポンプを使用する
GE HealthcareのEmpty Columnにレジンを充填(0.5mL or 1mL)
カラムクロマトは、自然落下による(線速は大きくなるが、レジンの最大キャパシティより1/3程度低いアプライ量で行うため、クロマト自体に問題は少ないが、常に考慮する必要がある点である)。
フラクション回収は、6カラムボリューム(CV)
6CV分のバッファを調整しておき、順次カラムにアプライしてカラムからでる液をチューブで回収する
各種バッファの準備
水洗いしたバルクのレジンを使って0.5mLカラムの準備 30%から50%程度のスラリでカラム充填する
カラムの洗浄と平衡化
血漿や培養液の前処理してアプライサンプルを準備する : 水と酸及びアルカリにより電気伝導度とpHの調整
アプライサンプルのロードとパスした未吸着画分の回収及び目的蛋白質の測定 : 身吸着画分の量が多い場合は、未吸着画分に更に水と酸及びアルカリを添加して吸着しやすく調整し、その未吸着画分をそのまま再アプライする。満足する未吸着画分量から、水と酸及びアルカリでの調整量を最終決定する。
アプライpHと同じpHで、塩濃度を確認する : ベースバッファを作成し、3M NaClで段階的になるよう塩濃度の異なるバッファを作成し、順次カラムにアプライしフラクションを回収する。蛋白質量を測定し、目的の蛋白質が洗浄画分に溶出されない条件を洗浄画分に決定、溶出が完了する条件を溶出条件に決定する。
6M 塩酸グアニジン(GuHCl)を0.5CVアプライ、水を5.5CVアプライし全てを回収する。この画分は、アプライサンプル、洗浄画分、溶出画分と一緒にSDS-PAGE分析を行う。目的蛋白質の染色バンドと同位置に対して、6M GuHCl画分にどれくらいの割合が含まれているか、不純物はどれくらいの割合が含まれているか確認する。
6M GuHCl画分中に容認できない量の目的蛋白質が含まれていた場合、上述の手順で6M GuHClの手前までの手順を再度実施する。その後、以下の手順に従い最適な溶出pHを決定する。
pHを上げるか下げるか方針を決定する。カラム内の塩濃度を下げるために水6CV添加する。溶出条件の決定(1)で実施したようにバッファを作成するが、今度は、異なるpHでNaCl濃度を決定していく。最後に6M GuHCl画分を回収し、前回と同様にSDS-PAGEを行い溶出効果の違いを確認する。洗浄する場合のpH及び溶出する場合のpHを、この検討から決定することができる。もしかすると洗浄のpHは溶出のpHと異なることもある。
今後、各手順の詳細や根拠は随時アップデートする予定、2019/11/10 by はりきり(Mr)
高価な装置が無くても始められる蛋白質の精製
蛋白質の精製を行おうと思う時は、その必要性に迫られてのことだと思うので、原材料は準備されているとの前提で、以下話を進めます。装置の洗浄やその他準備が必要ないため小回りが効き短時間で条件設定し精製品を取得できる
大学や高価な装置を整備できないベンチャーでの蛋白質精製についての初期教育はもとより目的蛋白質の精製品の取得に役立つ。例えば、ツール蛋白質の取得には有効である。
目的蛋白質の測定法を考える (SDS-PAGE, ELISA, RPHA, 逆相HPLC、アフィニティカラム)
目的蛋白質についてRefoldingが必要か検討する。ここでは、Refoldingについては記載していない。
プレパックカラムは使わず、エンプティカラムにバルクのレジンを自己充填したカラムを使用する
クロマト装置は、基本的に必要ではなく、ピペット操作かペリスタリックポンプを使う
カラムサイズとして0.5mLから100mLは対応可能(数mgから1g程度まで取得可能。小さいカラムサイズでは、自然落下でクロマトを行う。大きいカラムサイズではペリスタリックポンプを使用する
SDS-PAGE装置
UVメーター(A280, A260なとを測定)
ピペット、チップ
ペリスタリックポンプ、シリコンチュープ、シリコングリス
HORIBA ハンディpHメータ及び伝道度メータ
マルエムチューブSS14, 50mM遠心管
GE HealthcareのEmpty Columnにレジンを充填(0.5mL or 1mL)
カラムクロマトは、自然落下による(線速は大きくなるが、レジンの最大キャパシティより1/3程度低いアプライ量で行うため、クロマト自体に問題は少ないが、常に考慮する必要がある点である)。
フラクション回収は、6カラムボリューム(CV)
6CV分のバッファを調整しておき、順次カラムにアプライしてカラムからでる液をチューブで回収する
各種バッファの準備
水洗いしたバルクのレジンを使って0.5mLカラムの準備 30%から50%程度のスラリでカラム充填する
カラムの洗浄と平衡化
血漿や培養液の前処理してアプライサンプルを準備する : 水と酸及びアルカリにより電気伝導度とpHの調整
アプライサンプルのロードとパスした未吸着画分の回収及び目的蛋白質の測定 : 身吸着画分の量が多い場合は、未吸着画分に更に水と酸及びアルカリを添加して吸着しやすく調整し、その未吸着画分をそのまま再アプライする。満足する未吸着画分量から、水と酸及びアルカリでの調整量を最終決定する。
アプライpHと同じpHで、塩濃度を確認する : ベースバッファを作成し、3M NaClで段階的になるよう塩濃度の異なるバッファを作成し、順次カラムにアプライしフラクションを回収する。蛋白質量を測定し、目的の蛋白質が洗浄画分に溶出されない条件を洗浄画分に決定、溶出が完了する条件を溶出条件に決定する。
6M 塩酸グアニジン(GuHCl)を0.5CVアプライ、水を5.5CVアプライし全てを回収する。この画分は、アプライサンプル、洗浄画分、溶出画分と一緒にSDS-PAGE分析を行う。目的蛋白質の染色バンドと同位置に対して、6M GuHCl画分にどれくらいの割合が含まれているか、不純物はどれくらいの割合が含まれているか確認する。
6M GuHCl画分中に容認できない量の目的蛋白質が含まれていた場合、上述の手順で6M GuHClの手前までの手順を再度実施する。その後、以下の手順に従い最適な溶出pHを決定する。
pHを上げるか下げるか方針を決定する。カラム内の塩濃度を下げるために水6CV添加する。溶出条件の決定(1)で実施したようにバッファを作成するが、今度は、異なるpHでNaCl濃度を決定していく。最後に6M GuHCl画分を回収し、前回と同様にSDS-PAGEを行い溶出効果の違いを確認する。洗浄する場合のpH及び溶出する場合のpHを、この検討から決定することができる。もしかすると洗浄のpHは溶出のpHと異なることもある。
今後、各手順の詳細や根拠は随時アップデートする予定、2019/11/10 by はりきり(Mr)
バイオ医薬の生産細胞株であるCHO細胞の培養において、目的物質の生産性を上げるためには、細胞を死なせないように培養を継続しなければならない。
細胞にダメージを与えるのは、代謝物である乳酸(lactic acid)やアンモニア(ammonium)などです。
蓄積を抑えることができれば、細胞は死ななくなるとともに目的タンパク質の生産性を高めることが期待できます。
これまでに、pHを下げる、培養温度を下げる、グルコースを別の糖で代替、グルコース/グルタミンの濃度を下げる、銅の添加などに関する多数の報告がありますが、この論文では、もっとシンプルに解決しています。
Glucose + 2HPO4-2 + 2 ADP → 2 Lactate - + 2H+ + 2 ATP ・・・(1) Pyruvate- + NADH + H+ ⇄ Lactate- + NAD+ ・・・(2) ΔG = ΔG’° + RT ln(([LAC-][NAD+]) / ([PYR-][NADH])) ・・・(3) ΔG’° = -25.1 kj/mol ΔG’° = RTlnK’eq = -25.1kj/mol・・・(4)
Pyruvate : ピルビン酸
ADP : アデノシン2リン酸
文献
A Simple Method to Reduce both Lactic Acid and Ammonium Production in Industrial Animal Cell Culture: https://res.mdpi.com/d_attachment/ijms/ijms-19-00385/article_deploy/ijms-19-00385-v2.pdf
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29382079/
抗体医薬に使用されるCHO細胞の培養にいて、その増殖ステージとアミノ酸の代謝などに関する文献。CHO細胞が数を増やすことは、一般的な知識として知っていたが、その細胞の大きさの変化が、培養のステージで起こることは知らなかった。
文献によると、本培養12日間において、培養CHO細胞の直径は、16μmから24μmまで変化した。培養終盤の直径は、22μm程度に小さくなっていった。
因みに、この文献には、代謝に関する理論式などが示されているので、より深くCHO細胞の培養について参考にすることができる。
Metabolic characterization of a CHO cell size increase phase in fed-batch cultures (2017)
https://link.springer.com/article/10.1007/s00253-017-8531-y
2019/10/14, Mr. Harikiri
2022/11/15, 追記 (培養CHO細胞の直径の変化について記載)