カテゴリー: BIOLOGICS

  • [Bio-Edu] Fcエフェクター活性 – ADCC活性を増強するafucosylation技術 [2020/05/22]

    [Bio-Edu] Fcエフェクター活性 – ADCC活性を増強するafucosylation技術 [2020/05/22]

    ID15631

    はじめに

    ADCC活性は、NK細胞などの免疫エフェクター細胞(immune effector cells)上に存在する抗体のFc領域に対するレセプターであるRcγRIIIaが関与しています。

    IgG1のFc領域は、FcγRIIIaと結合親和性があり、その結合強度によってADCC活性が増強されます。この結合親和性の強さに影響するのが、Fc領域の糖鎖です。一般的にFc領域には、糖鎖結合部位がありますが、付加されている糖鎖として「フコース; fucose」含有量が少なければ、立体構造上から結合力が増加してADCC活性(エフェクター機能)が高まることが知られています。

    fucoseは、Fc領域の糖鎖負荷領域のN型結合グリコシル(N-linked glycosylation)に付加されます。

    ADCC活性とCDC活性

    抗体のFc領域を介した生体反応は、(1) IgG1のFc領域と補体系のC1分子と作用する古典経路の活性化を惹起します(CDC)。また、(2) IgG1のFc領域とFc受容体(FcγIIIa)を介して貪食細胞の動員による作作用経路の活性化(ADCC)を惹起します。

    • CDC (complement-dependent cytotoxicity)
    • ADCC (Antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)

    FcとRcγレセプターの結合親和性

    FcγIIIaは、Fc領域にあるヒンジ部とCH2ドメインと相互作用します。

    この相互作用は、CH2ドメインのAsn297 (N297)に付加される糖鎖構造に左右されます。この糖付加をできなくするアミノ酸の変異により、FcγRIを除くFcγRs (FcγRII, FcγRIII)への結合親和性は完全に消失します。

    ヒトにおける天然のIgGの付加糖鎖は非常に不均一です。そのfucosylation研究では、フコシル化(afucosylation)のレンジは、1.3%~19.3%でした2)。CHO細胞から作られているモノクローナル抗体のフコシル化は、90%程度です。この差によるADCCやCDCに関わる活性の違いが生じています。

    FcγIIIの遺伝子は2つ

    FcγIIIの遺伝子は、2つあり、FcγIIIa (細胞の膜貫通型;殆どのエフェクター*)細胞で発現 )とFcγIIIb (好中球でのみGPIアンカー型タンパク質として発現)です。その配列相同性は97%ですが、FcγIIIbのADCCはありませ。しかし、貪食に関する役割を持つ可能性があります。

    • FcγIIIa (殆どのエフェクター細胞)
    • FcγIIIb (好中球のみ)
    編集履歴
    2020/05/22 はりきり(Mr) 参考文献1)を基に解説

    FcγIIIaの対立遺伝子*)には、Val(V158)とPhe (F158)が知られていますが、FcγIIIa-V158では、より高いIgG1結合親和性(10倍)を持っています。anti-epidermal growth factor receptor (EGFR)、anti-CD20で、その観察結果が出ています。

    • V185
    • F185

    関連する抗体医薬 (ADCCによる癌細胞の破壊)

    • リツキシマブ (rituximab, Anti CD20 mAb)
    • トラスツズマブ (trastuzumab, Anti HER2 mAb)

    Protein fucosylation in mammalian system

    Fucose (6-deoxycholate-L-galactose)は、哺乳動物細胞におけるN及びO型グリカンの共通成分です。

    Fucose付加反応を担う酵素は、ヒトでは13種類のフコシルトランスフェラーゼ : FUT (fucosyltransferase)が知られています。

    FUTは、fucose residue (フコース残基)をGDPフコース (GDP-β-L-フコース: 細胞室内(cytoplasm)で合成、フコシル化反応の基質)からアクセプター基 (acceptor substrate)に転移します。

    細胞室内のGDP-fucoseの合成には、de novo経路が大半を担い、salvage pathway (生体でのフコースの再利用)はその一部を担っています。

    • de novo回路 → GDP-fucose → (cytoplasm) → fucose residue

    de novoは更に、GDP-mannoseからGDP-fucoseに変換する反応も担っています。

    • GDP-mannose →(by GDP-mannose 4,6 dehydrates (GMD) and GDP-keto-6-deoxymannose 3,5-epimerase/4 reductive)→ GDP-fucose
    • GDP-fucose → ( Golgi apparatus or endoplasmic reticulum (ER) )
      • GDP-fucose transporter (GFT), encoded by the Slc35cl gene (Solute Carrier family 35), この遺伝子の変異は、白血球接着不全II型(LADII)、重度の免疫不全、精神遅滞、成長鈍化(グリコシル化IIc型の先天疾患)の発症につながります。
    FUT機能
    1fucose residue →(転移)→ terminal galactose
    α1,2 linkageの形成
    2同上( same as above)
    3α1,3/α1,4 – fucosyltrasferase (Lewisa, Lewisb合成と関連構造に関わる)反応
    4 – 7α1,3 – fucosyltransferase (ABHとLewis抗原の合成)
    8α1, 6 – fucosyltransferase (fucose – innermost(最も内側) N-acetylglucosamin on N-glycans)
    肝臓以外の組織で広く発現しているが、肝細胞癌 (HCC)でアップレギュレーとされる
    9 – 11α1,3 – fucosyltransferase (ABHとLewis抗原の合成)
    (POFUT1)O-fucosyltransferase
    Ser/Thr残基にfucoseを直接付加 (ER内)
    (POFUT2)O-fucosyltransferase
    Ser/Thr残基にfucoseを直接付加 (ER内)

    ガン抗原としてのLewis構造

    Lewis抗原は、癌細胞が血管内皮 (vascular endothelium)へ接着する際に機能します(血行性移転)

    Lewis関連の3糖または4糖 (ルイス抗原)は、炎症反応におけるリンパ球のホーミング中に白血球の接着に重要な役割を果たします。

    Lewis構造

    • ルイス抗原 type-1 (Lewis)
      • Lewisa (Lea)
      • sialyl-Lewisa (SLea) : ガン抗原CA 19-9と共に腫瘍マーカーとして一般的に使用
      • Lewisb (Leb)
    • ルイス抗原 type-2 (Lewisb)
      • Lewisx (Lex)
      • sialyl-Lewisx (Slex)
      • Lewisy (Ley) : ヒトの消化管粘膜のO型結合グリカンと類似

    ADCCの増強

    • 抗体のFc領域 – FcγRIIIa の結合をトリガーとする
    • FcγIIIaを持つ免疫細胞は、NK細胞
    • 標的細胞を殺すサイトカイン/細胞溶解剤の放出
    • ADCC活性は、FcのN-グリカンの影響を受ける
    • CHO細胞由来のIgGでは、そのN-グリカンのコア位置に付加されたフコース残基は、異種の2分岐複合型であり、N-グリカンには、シアル酸は殆ど含まれない
      • G0 galactose residue
      • G1 galactose residue
      • G2 galactose residue
    • CHO Lec13細胞由来IgG1抗体と野生型CHO細胞由来との比較研究では(Shields er al.)、
      • CHO Lec13細胞は、GMD遺伝子変異があり、非フコシル化N型糖鎖の含有率が高い
      • CHO Lec13細胞で作ったIgG1のFcγIIIaへの結合親和性は、50倍増強(NK細胞/PBMC)
    • ガラクトースやバイセクティングGlcNacの存在ではなく、フコースの不存在がADCCを高める(Shinkawa er al.)
    • 別の研究では、コアフコースの除去が最大のADCC活性をは達成すると示唆した (コアフコースの除去と、S229D / D298A / I1332Eのミューテーションでは、ADCC活性の増強の差は無かった)
    • FcγRIIIのアミノ酸変異 (Asn162Gly)とIgGとの結合研究によるADCC活性の増強の比較
      • IgG-フコースフリーとFcγRIIIa-Asn162 >> IgGネイティブグリカンとFcγRIIIa-Gln162 > IgGネイティブグリカンとFcγRIIIa-Asn162
    • Fcのガラクトシル化とシアリル化によるADCC増強は、コアフコース除去と比較して限定的だが、Alanineスキャンにより増強効果が確認された。
    • Fcエンジニアリング(IgG1)
      • FcγRIIIaとの相互作用最大1倍の増強(増強しない)(T256A、K290A、S298A、E333A、K334A)
      • FcγRIIIaとの相互作用最大169倍 (S239D or I332E、S239D and I332E、S239D and I332E and A330L
      • 「活性化FcγRIIIa」と「阻害性RcγRIIb」との結合比を最大9倍 (S239D and I332E and A330L): Xencorによるヒト化の抗CD19抗体(XmAb5574: 広範囲のBリンパ腫および白血病の細胞株に対するADCC活性増強、患者由来急性リンパ牙球性白血病とマントル細胞リンパ腫細胞のタイルADCC活性増強)

    afucosilated 抗体の生産戦略

    GDP-fucoseの生合成酵素

    CHO Lec13細胞は、内因性(endogenous)のGDP-mannose 4, 6 – dehydratase (GMD) 遺伝子を欠乏しています。GMDは、de novo GDP-2 fucose生合成3経路 (biosynthesis pathway)の最初のステップの触媒を担っています。

    GMD遺伝子を欠乏しているにも関わらず、フラスコ培養で培養した結果、フコシル化抗体の比率は、50~70%になったという研究があります。

    mRNAレベルでGMDが少なからず発現しており、別の発現パスウェイがあると考えられます。

    GDP-keto-6-deoxymannose 3,5-epimerase/4 reductive (FX) – ノックアウト CHO細胞を用いて、完全にフコシル化を抑えたという研究もあります。

    FUT8

    Fut8遺伝子の発現レベルが低いYB2/0細胞を使用した研究 (CHO細胞との比較, Arakawa er al.)

    • humamized anti-human interleukin-5 receptor (IL-5) IgG1 antibody (KM8399) in YB2/0 cell
    • core fucose of KM8399 was lower level
    • 産生したIgG1は、いずれの細胞でも同様の抗原結合性を示した
    • YB2/0細胞由来では、コアフコースのレベルが低くく、ADCC活性は、約50倍であった
    • YB2/0細胞のFUT8 mRNAレベルは、有意に低くかった

    FUT8遺伝子の不活化(Yamane er al.)

    • 抗CD20抗体産生CHO細胞 DG44細胞株
    • FUT8対立遺伝子ともにゲノム領域からのノックアウト(FUT8 -/-)
    • 同様の培養増殖曲線と、同様の生産性
    • 完全な非フコシル化抗体の産生
    • 親株との比較で2倍のADCC増強

    siRNAを使用したCHO DG44細胞の培養

    • 60%の非フコシル化抗体の産生

    CHO細胞のGDP-fucose transporter (GFT)を除去

    • ゴルジ体のGDP-fucose transporter (GFT)遺伝子(Slc35c1)のノックアウトによるゴルジ体でのフコシル化反応を止める
    • zinc-finger mucleases (ZFNs)、transcription activator-like effector nucleases (TALENs)及びCRISPR-Cas9、などの技術を用いた
    • fluorescence-activated cell sorting (FACS)で分別 (Aleutian aurantia lectin (AAL) )
    • 得られた細胞は、CHO-gmt3 (CHO-glycosylation mutant3)
    • EPO-Fc融合タンパク質とIgG1抗体において、core fucoseは、完全に欠落していた
    • この手法により、無血清培地、細胞増殖率、生存細胞密度についての安定株を2ヶ月で樹立することが可能
    • CHO-K1細胞は、そのtranscriptome dataから、Golgi fucosyltransferaseの内、FUT8のみを発現していることが示されています
    • Fut8よりもSut35c1をノックアウトする方(Stc35c1 -/-)が利点があると筆者は述べています。
    • CHO細胞に適用した結果、培養増殖率、生存率、抗体産生などが同等であった

    Bisecting GlcNac

    β-1, 4-mannosyl-glycoprotein 4-β-N-acetylglucosaminyltransferase (GnT-III)は、普通CHO細胞では発現されません。

    以下の2つの過剰発現のCHO細胞株は、抗CD20抗体GA101の宿主株として成功しています。最高レベルの(1) bisecting、(2) afucosylated glycansを、IgGで実現しました

    • GnT-IIIの過剰発現
      • これのみでCHO細胞でのFcコアのフコシル化が減少
    • Golgi α-mannosidase II (αManII)の過剰発現

    GnT-IIIは、以下を触媒します。

    • 以下を結合 (β1,4)させて、bisecting GlcNAcを作る
      • GlcNAc
      • N-glycansのtrimannosyl coreのβ結合型mannose

    GDP-フコース de novo経路

    [GDP-fucose de novo(advice)経路]では、GDP-mannoseは、GKDMに変換される。

    • GDP-mannose → (GDP-mannose-4,6-dehydratase)→ GDP-4-keto-6-deoxy mannose (GKDM)
    • GKDM → (several downstream emzymatic reactions) →GDP-fucose

    [バクテリア]では、GKDMはGDP-rhamnose形態に還元できます。GDP-rhamnoseは、細菌の一般的な細胞膜表面グリカンの1種です。

    • GKDM → (GDP-4-keto-6-deoxy mannose reductase (RMD) )→ GDP-rhamnose

    [CHO細胞]の細胞質内に、このRMDを異種発現することで、[GDP-Fucose de novo経路]がバイパスされるため、afucosylated IgGが作られます。最終産物であるGDP-rhamnoseは、GMDの阻害剤である可能性があります。

    • GKDM → (GDP-4-keto-6-deoxy mannose reductase (RMD) )→ GDP-rhamnose

    フコシル化阻害剤

    遺伝子改変ではないアプローチとして、Okeley et al.による阻害剤研究があります。

    • 2-fluorofucose
    • 5-alkynylfucose

    その作用機序は、以下のことが考えられます

    • 細胞内GDP-fucoseの枯渇化 → de novo経路の遮断
    • FUT8の阻害

    植物細胞と後処理

    植物細胞の利用

    植物細胞では、以下の糖鎖が欠落します。

    • α1,6-fucose
    • β1,4-galactose
    • α2,3-sialic acid

    植物細胞では、通常、N-glycanは、(1)以下の糖鎖が付加されますが、(2)大きな糖鎖(哺乳動物でも稀に見られる)が付加されることもあります。

    1. Man3GlcNAc2コアに以下のもので糖鎖修飾
      • β1,2-xylose ( mammalian では不要であり免疫原性がある)
        • コアxhloseは、献血ドナーから抗体が検出される
      • α1,3-fucose
        • この糖鎖を含むGnGnXF3構造(免疫原性)
        • コアα1,3-fucoseは、健常人献血ドナーから抗体が検出される
    2. Large complex type N-glycans
      • Lewisa構造
        • α1,4-fucose
        • β1,3-galactose
    Strategy to overcome this immunogenicity

    植物由来の糖鎖の免疫原性を克服するには、以下戦略があります。

    • RNAi knockdown of α1,3-fucosyltransferase (FucT) in plant
    • β1,2-xylosyltransferase (XylT) in plant
    • FucT/XylT-knowckout lines

    水草のLemna minorで作ったafucosylated anti-CD30 monolclonal antibody

    • 得られたG0構造のこの抗体は、CHO細胞由来と比べてADCC活性が改善されました

    Anti-HIV 2G12 from XylT/FucT – knockdown N.benthamiana

    • 得られたG0構造は、N-acetylglucosamine末端において、以下の糖鎖を欠落してさせることができました
      • xylose
      • α1,3-fucose

    付加糖鎖を後処理で除去

    • endo-β-N-acetylglucosamidaseなどのEndo SでN-glycanを切断
    • その後、exoglycosidaseであるfucosidaseで、core fucoseを除去
    • 残ったmono-GlcNAcは、不均一であるので、desialylated complex型のoxazolineの存在下、Endo Sベースのglycosynthases(グリコシンセターゼ)によるtransglycosylation (糖転移反応)を行う
    • この方法は、コストがかかります

    治療用のafucosylated mAbs

    2018年現在で、3つのafucosylated mAbsが市場に、20以上が臨床試験にあります。

    name and companyTarget andformatcomment
    obinutuzumab/GA101/Gazyva
    Roche
    CD20
    Humanized IgG1 with low fucose content
    Marketed
    first glycoengineered therapeutic anti-CD20, in 2013 by FDA
    3 x Phase 1~3
    mogamulizumab/POTELIGEO/KM0761
    Kyowa Hakko Kirin
    CD chemokine receptor 4(CCR4) Humanized afucosylated IgG1Marketed in lymphoma
    first approved in 2013 in Japan for hematologic malignancies
    in 2014 for cutneous T-cell lymphoma (CTCL)
    in 2017, FDA granted itbreakthrough, FUT8-knockout CHO
    10 x Phase1~3
    Benralizumab/MDEI-563/Fasenra
    AstraZeneca
    IL-5Rα
    Humanized afucosylated IgG1
    Marketed in Asthma
    approved by FDA in 2017 for severe eosinophil asthma, FUT8-knockout CHO (Biowa Poteligent Technology), IL-5R
    9 x Phase1~3
    Inebilizumab/MEDI-551
    Medlmmune
    CD19
    Humanized afucosylated IgG1
    10 x Phase1,2 and 3 (lymphoma,myeloma)
    Ublituximab/TG1101/LFB-R603
    TG Therapeutics Inc
    CD20
    Chimeric IgG1, low fucose content
    10 x Phase 1,2 and 3 in lymphoma, leukemia
    TrasGEX/GT-MAB7.3-GEX/Glycooptimized Trastuzumab-GEXHER2
    Mumanized glyco-optimized (reduced fucosylated IgG1)
    Solid Tumors in Phase 1 (completed)
    SEA-CD40/Seattle Geneticshumanized afucosylated anti-CD40 IgG1Cancer and carcinomas in Phase 1
    その他多数、原書を参照のこと

    以上

    参考文献

    1)

    The “less-is-more” in therapeutic antibodies: Afucosylated anti-cancer antibodies with enhanced antibody-dependent cellular cytotoxicity, 2018

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6150623/
    2)

    Glycosilation engineering of therapeutic IgG antibodies: challenges for the safety, functionality and efficacy

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5777974/#!po=7.60870
    3)

    Improved in vitro and in vivo activity against CD303-expressing targets of the chimeric 122A2 antibody selected for specific glycosylation pattern, 2018

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5973763/
    4)

    細胞性免疫・エフェクター細胞 – 日本ガン免疫学会

    http://jaci.jp/patient/immune-cell/immune-cell-04/
    5)

    対立遺伝子

    https://mycode.jp/glossary/allele.html

    編集履歴

    2020/02/22, by Mr.Harikiri

  • [Edu] Creative Biolabs Inc.が公開しているビデオから – COVID-19の原因ウイルスである新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の構造について学ぶ [2020/05/21]

    [Edu] Creative Biolabs Inc.が公開しているビデオから – COVID-19の原因ウイルスである新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の構造について学ぶ [2020/05/21]

    CROの宣伝ビデオ

    Creative Biolabs Inc.というCROが、アメリカのニューヨークに本社を構えています。このCROについて調査している過程で、宣伝ビデオを沢山公開していることを知りました。非常に参考になるのでご紹介します。

    COVID-19は、SARS-CoV-2という新型コロナウイルスが引き起こす病気の名前です。

    今回は、SARS-CoV-2というウイルスの構造について、Creative Biolabs Inc.がYouTubeに公開しているビデオから解説します。

    編集履歴
    2020/05/21 はりきり(Mr)

    新型コロナウイルスの構造

    新型コロナウイルスの正式名称は、SARS-CoV-2と言います。1本鎖プラス鎖RNAウイルス、RNA長は29.9kbです1)

    • Spike Glycoprotein (S) 3)
      • 細胞に吸着するため糖タンパク質、宿主のプロテアーゼ(トリプシン、エラスターゼなど)で切断されて活性化され、細胞への侵入(Fusion: 脂質2重膜同士の融合)が開始される 5)
      • S1とS2がある
      • 細胞表面に出ているアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と結合する3)
    • M-Protein 4)
      • エンベロープ(Envelope)を構成するタンパク質
      • メンブラン(M)タンパク質
      • 発芽(Release)、形態形成とアセンブリに関連する
    • Hemagglutinin-esterase (HE) 6)
      • 赤血球凝集エステラーゼ
      • 初期の吸着メカニズムを構成する当タンパク質
      • 細胞表面のシアル酸受容体への吸着とその破壊に関わる
    • N Protein 4)
      • ヌクレオカプシド(N)タンパク質
      • ウイルスのエンベロープ内のウイルスRNAゲノムを、カプシドと呼ばれるリボ核タンパク 質(RNP)複合体にパッケージ化することに関わる
    • E-Protein 4)
      • エンベロープ(Envelope)を構成するタンパク質
      • 小さいタンパク質であり、よくわかっていないが、アセンブリ、出芽、エンベロープ形成、病原性に関連するとされる
    • Envelope 2)
      • M-ProteinやE-Protein以外の膜成分であり、宿主由来の脂質や膜タンパク質

    感染と増殖

    1. Fusion
      • HEと宿主プロテアーゼ
      • RNA genomeが注入される
    2. Replicate
      • 細胞質内
    3. Assembly
      • 小胞体、ゴルジ体で成熟
    4. Release
      • 出芽

    参考ビデオ (Create Biolabs Inc.)

    是非、英語の解説をビデオでご覧になってください。

    以上

    関連記事(COVID-19)

    参考文献

    1)

    新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査 (2020/4/16現在)

    https://www.niid.go.jp/niid/images/research_info/genome-2020_SARS-CoV-MolecularEpidemiology.pdf
     2)

    エンベロープ(ウイルス)

    https://ja.wikipedia.org/wiki/エンベロープ_(ウイルス)
     3)

    コロナウイルスの構造 – 岩井科学薬品株式会社 – より

    https://www.iwai-chem.co.jp/products/sinobiological/sars-cov-2/
     4)

    ウイルス学研究用 新型コロナウイルスSARS-CoV-2 構造タンパク質 – BioVendor – より

    https://filgen.jp/Product/Bioscience4/BioVendor/BioVendor_SARS-CoV-2-protein_flyer.pdf
     5)

    プロテアーゼ依存的なコロナウイルス細胞侵入 – ウイルス 第61巻 第1号 – より

    https://filgen.jp/Product/Bioscience4/BioVendor/BioVendor_SARS-CoV-2-protein_flyer.pdf
     6)

    Hemagglutinin esterase – Wikipedia – より

    https://en.m.wikipedia.org/wiki/Hemagglutinin_esterase
  • [Bio-Edu] バイオ医薬品におけるウイルス・クリアランス試験 – モニターウイルス – 除去率 – [2020/08/23]

    [Bio-Edu] バイオ医薬品におけるウイルス・クリアランス試験 – モニターウイルス – 除去率 – [2020/08/23]

    はじめに

    Biologics (生物製剤)では、混入する可能性のあるウイルスについてリダクション能力を評価していることが必要であり、商用製品では、製造工程のウイルス・クリアランス試験が必須である*1。臨床サンプルについてもウイルス・クリアランス試験として、1~2種類のモデル・ウイルスを用いて実施されているのが実情である。

    ウイルス・クリアランス試験には、(1) エンベロープを有し比較的耐久性の低いレトロウイルスのモデル・ウイルスとしてX-MLV (MuLV: Xenotropic murine leukemia virus)、(2) エンベロープを持たず小型で耐久性の高いパルボウイルスのモデル・ウイルスとしてMVM (minute virus of mice:MVM = murine minute virus:MMV = Murine parvorirus source)の使用が多い。

    1. MLV (MuLV; MMLV) source:wiki
    2. MVM; Murine Minute Virus, MMV; Mice Minute Virus, Murine Parvovirus
    編集履歴
    2020/05/18 はりきり(Mr)
    2020/05/25 追記(ウイルス除去工程)
    2020/08/23 充実化(ウイルス除去工程)

    製造工程のウィルス・クリアランス試験など、求められる試験 – Eli Lilly and Company, CMC Strategy Forum, Europe, 2018 – より

    Modular Retrovirus Clearance in Support of Clinical Development, Bio-product Research & Development
    ウイルス記号ゲノムエンベロープサイズ (nm)抵抗性
    ネズミ白血病ウイルスMuLV *2single stranded RNA(+)80 – 110低い
    マウス微小ウイルスMVMsingle stranded DNA(-)18 – 24非常に高い
    ウイルスクリアランス事件の課題と事例検討 — 総ウィルスクリアランス指数(LRV)をどこまで追求するか — PDA Journal of GMP and Validation in Japan Vol.7, No.1 (2005)

    MLVのRNAをqPCRで定量

    ウイルス・クリアランス試験

    一般的なウイルス除去工程

    • 培養終了後のハーベスト
      • 清澄ろ過膜にAEXモードを持つフィルター機材を採用している場合は、ウイルス除去効果が期待される
    • Affinity Chromatography
      • 抗体医薬では、Protein Aのアフィニティ・カラムクロマト工程によるウイルス除去効果が期待される
    • AEX Chromatography
      • 陰イオン交換カラムクロマトの不純物除去工程によるウイルス除去効果が期待される
    • CEX Chromatography
      • 陽イオン交換カラムクロマトの不純物除去工程によるウイルス除去効果が期待される
    • Virus reduction Filtration
      • ウイルスの除去を目的としたウイルス除去ろ過工程
      • Planova 20NやViresolveが使用される

    評価方法

    • 除去率(Reduction Level; RL)は、Log10で表記
    • 各工程で、ウイルスの添加回収実験の実施
    • 各工程でのRLの総和を求めて、製造工程全体のクリアランス能力を算定する
    • 細胞アッセイ
    • 動物への投与
    • PCR
    • など

    ウイルス除去率の解釈

    関連するガイドラインには、ウイルスの除去率に関して考慮すべき要因が示されています1)。以下の要因について考慮することで、プロセスステップをウイルスの不活性化/除去において、以下のように見なすことができるかどうかを決定します

    • 有効
    • 適度に有効
    • 無効

    考慮する要因

    1. 使用したテストウイルスの適切性(セクション4を参照/工事中
    2. 検証研究の設計(セクション5を参照/工事中
    3. 除去率
      • 4 logまたはそれ以上の削減は、モニターウイルスにおいて明確な効果を示していると言える
    4. 不活化の速度論
      • 不活化は通常、単純な一次反応ではなく、多くの場合、最初の段階が速く、その後に遅い段階があります。 ただし、時間とともに不活性化率が劇的に低下する場合は、不活性化剤の有効性が失われていること、または残存ウイルス画分が不活性化剤に耐性があることを示唆している可能性がある
    5. 不活化/除去の性質
      • および特定のクラスのウイルスに対してのみ選択的かどうか。 プロセスステップは、一部のウイルスに対しては非常に効果的ですが、他に対しては効果がありません。たとえば、S / D処理は、脂質を含むが脂質を含まないウイルスに対しては効果的です
    6. プロセスパラメータの小さな変動に対するウイルスの不活性化/除去の影響は、ステップの信頼度に影響する
    7. アッセイ感度の限界

    何回か試験を実施して、異なる除去率が計算された場合、リスクを考慮して評価するなら低い方の値を採用する。

    ウイルス・アッセイの例示

    ウイルス・アッセイについて、以下の文献から例示として情報を抽出した。ウイルスに応じて感染効率の高い細胞を使用し、用いる細胞の培養に使用する培地についても参考になる。

    Cell

    • S+L- cell line on semisolid agar colony
    • 3T3FL cell for SV assay
    • C-182 cell line, a mixture of apparently normal 3T3FL cells and S+L- cells for MuLV assay

    media

    • McCoy’s 5a medium ( Grand Island Biological Co., Grand Island, N.Y.), 10% FCS and antibiotics
    • Eagle’s minimum essential amino acids
    • 10% FCS, antibiotics, 20mM thymidine
    • (Phenol Redを入れない場合が多い)

    Virus (MLV)

    • Moloney leukemia virus (MLV) from Electro-Nucleonics Laboratories, Inc., Bethesda, Md., as crude tissue culture fluid from MSV infected JLSV9 cells
      • 5 x10E5 FFU/mL to use for the superinfection of S+L- cells.
    • MLV from University Laboratories, Highland Park, N.J., as 10% spleen suspension from MLV-infected mice.
      • to use for the MSV assays as leukemia helper virus

    Virus assays

    • A rapid cell culture assay technique for MuLV
      • induction of foci in S+L- cells with superinfection
    • MSV focus-forming assay
    • Both sample are prepared
      • by freezing and thawing 3 times cells and supernatant fluids together followed by low-speed centrifugation to remove cell debris.
      • stored at -70 C prior to virus assays

    文献タイトル :
    Rescue of Murine Sarcoma Virus from a Sarcoma-Positive Leukemia-Negative Cell Line: Requirement for Replication Leukemia Virus

    追記

    ウイルス液の清澄化は、低いGでの遠心上清、超遠心で濃縮する。

    レトロウイルス・系統樹

    図1(左)の系統樹をもとに、以下詳細にまとめた。

    • レンチウイルス属
      • EIAV (equine infectious anemia virus), ウマ
      • MVV (Mahdi-Visna virus), ヒツジ、ウマ
      • FIV (feline immunodeficiency virus), ネコ(免疫不全)
      • HIV-1
      • SIVAGM
      • HIV-2
    • スプーマウイルス属
      • FFV (feline foamy virus),ネコ,
      • HFV
    • アルファレトロウイルス属
      • ALV (avian leukosis virus),トリ
    • ベータレトロウイルス属
      • MMTV (Mouse mammary tumor virus), マウス
      • JSRV (jaagsiekte sheep retrovirus), ヒツジ,
      • MPMV
    • ガンマレトロウイルス属
      • MLV (murine leukemia virus; マウス白血病ウイルス), マウス
        • E-MLV (ecotropic:同種指向性)
        • X-MLV (xenotropic:異種指向性)
      • FeLV (feline leukemia virus), ネコ
      • GALV
      • PERV (porcine endogenous retrovirus), ブタ
    • デルタウイルス属
      • BLV (bovine leukemia virus)、ウシ
      • HTLV-1
      • HTLV-2
    • イプシロンウイルス属
      • WDSV
      • WEHV-1
      • WEHV-2
    • SnRV

    *2, MuLVは、MLVと同義

    The Retroviridae, 第2巻に、Murin type C virusesは、MuLV又はMLVのことであるとの記載がある。MuLVの中でも異種指向性をXenotropicといい、“X-“を冠する子で同種指向性(ecotropic)と区別している。

    パルボウイルス・系統樹

    • Proto-parvovirus
      • MVM (minute virus of mice)
    • Boca-parvovirus
      • HBoV
    • Erhthro-parvovirus
      • B19
    • Amdo-parvovirus
      • AMDV
    • Tetraparvorirus
      • BHoV
      • PHoV
      • PARV4_co
      • PARV4_ch
      • PARV4_2
      • PARV4_3
      • PARV4_1
    • Dependo-parvorirus
      • AAV_1
      • AAV_7
      • AAV_8

    *3 Advice<br>パルボウイルスの系統樹

    PARV4: An Emerging Tetraparvovirus

    Maloney murone leukemia virus: MolLVとMurine Leukemia virus: MLVAの違い

    MLVの実験室軽打により病原性が高いウイルス株としてSarcoma 37細胞から単離されたエコトロビックレス炉ウイルスである – 生物多様性影響評価書
    https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/06/dl/s0630-14f_0003.pdf

    感染様式

    レトロウイルスの感染様式

    図1(右)は、レトロウイルスの感染様式を示している。

    先ず、レトロウイルスは、細胞表面に非特異的に吸着し、その後、以下の機構のいずれかで細胞内に進入する

    1. 非特異的吸着
    2. レトロウイルスのエンベロープと細胞表面の受容体が結合

    次に細胞質内に以下の機構により侵入する

    • 直接膜融合
      • エンベロープの構造変化により、エンベロープを除くウイルス様粒子が、細胞質内取り込まれる
    • エンドサイトーシス
      • エンベロープごと裏返った細胞膜に覆われて、細胞質内に取り込まれる(エンドソソーム)
      • 直接膜融合により、エクンドソームから飛び出し、細胞室内に移動する。

    パルボウイルスの感染様式

    パルボウイルスは、細胞表面に吸着した後、endocytosisで細胞質内に入ります。その後、endosomeは、内部がpH4になったLysosomeに変換され、同時にphospholipase A2を活性かされて、Lysosomeの膜を破り、ウイルス粒子は細胞質内にでできます。その後、VP1を介して細胞核に入り込まれてゆきます。

    Advice パルボウイルスの感染様式<br>VIROLOGY JOURNAL, 2015

    Role of capsid proteins in parvoviruses infection

    1) ガイドライン

    The European Agency for the Evaluation of Medicinal Products<br>Human Medicines Evaluation Unit<br>London, 14 February, 1996 CPMP/BWP/268/95

    CPMP/BWP/268/95

    以上

    ウイルスクリアランス関連記事

  • [Data Link] mRNAワクチンの情報収集 – ID15773  [2020/05/16]

    [Data Link] mRNAワクチンの情報収集 – ID15773 [2020/05/16]

    mRNA製品に関連情報収集

    バイオロジクス関連のデータリンクとしてここに格納します。

    参考文献

    mRNA 医薬品の品質・安全性評価の考え方 (2019)

    http://nats.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20190717095649-6ABC2FA50410294C82EBEF7D74463510333BCF1FB717B3F88FCCB2CC782A63A8.pdf

    mRNA 医薬開発の世界的動向

    – 医薬品医療機器レギュレトリーサイエンス、PMDRS, 50(5), 242~249 (2019) – より

    http://nats.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20190717095649-6ABC2FA50410294C82EBEF7D74463510333BCF1FB717B3F864612BCB0CA9F6B2.pdf

    製造方法、品質管理項目、安全性、DCと癌ワクチン
    – mRNA製品の品質・安全性評価について Quality and safety issues on mRNA medicinal products, 2018 日本核酸医薬品学会第4会年会 – より

    https://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/wwwr/lab/iameta/pdf/20180710_Quality%20and%20safety%20issues%20on%20mRNA%20medicinal%20products.pdf

    NanoSky 2018 Vol.6

    夢の新薬『mRNA医薬』を実現に導くmRNA安定化技術を開発―外来性RNAの分解機構を解明―2018/11/15

    – 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 – より

    https://www.amed.go.jp/news/release_20181115-02.html

    TriLInk

    https://www.trilinkbiotech.com/therapeutic-cgmp-manufacturing

    サービス – Synthesis, Purification, Formulation and delivery
    LNP formulationのDoEによる開発

    https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/about-us/partnering-licensing/oem-commercial-supply/therapeutics-commercial-suppy/mrna-therapeutics-commercial-supply.html?gclid=Cj0KCQjwnv71BRCOARIsAIkxW9GslLOpNZlU1C0vgNrvgPXbEN37e28yYx2s3JAvuVag2OH0abo_PjEaAnqHEALw_wcB&ef_id=Cj0KCQjwnv71BRCOARIsAIkxW9GslLOpNZlU1C0vgNrvgPXbEN37e28yYx2s3JAvuVag2OH0abo_PjEaAnqHEALw_wcB:G:s&s_kwcid=AL!3652!3!430564064287!b!!g!!%2Bmrna%20%2Bproduction?cid=bid_mol_lcs_r01_co_cp1358_pjt0000_bid00000_0se_gaw_nt_awa_awa

    通常、最大200塩基程度の化学合成するRNAを、バクテリオファージから得られるRNA転写合成では、数千のヌクレオチドを得られる

    – 長鎖RNA転写合成 (IVT)受託サービス – bio synthesis – より

    https://www.biologica.co.jp/products-service/custom-synthesis/nucleic-acid/transcription/

    https://lifescience.toyobo.co.jp/detail/detail.php?product_detail_id=34

    編集履歴
    2020/05/16 はりきり(Mr)
  • [Vc] mRNAワクチンの製造方法、moderna社とBiaseparations、その他から概略を学ぶ – ID15769 [2021/05/10]

    [Vc] mRNAワクチンの製造方法、moderna社とBiaseparations、その他から概略を学ぶ – ID15769 [2021/05/10]

    mRNAワクチンの製造方法

    moderna社のデモ・ビデオから、mRNAの開発初期の製造法、及RNAを製造委託する場合の受託会社とその製造方法について以下にまとめた。

    RNAの製造は、バイオ技術を使った方法と、低分子合成技術を使った方法で、以下ように製造できるが、タンパク質を作れるほどの長いmRNA (あるいは, pDNA)には、バイオ技術による製造方法が使われていると考えられる。今後、製造承認申請を調査しなければ詳細は不明ですが、2020/05時点で考え得る製造方法を以下に示してみました。

    • バイオ技術よるRNA製造
      • DNA plasmidを大腸菌で大量培養して複製
        • 以下の「[Bio-Edu]Plasmid DNA(pDNA)のデザイン及び、その製造方法に関する調査」を参照。
      • DNAの抽出と精製
      • DNAの linearization
      • DNAを鋳型にして転写酵素でRNAを複製
      • RNAの精製

    その後、文献調査した結果、以下の文献からmRNAをワクチンに応用する製造方法を示されたものではないが、mRNA医薬品の製造方法について言及されていたので、その方法を示しておきます。2020/05に示したmRNA製造方法と殆ど変わりませんが、一点細かいポイントですが、DNaseでテンプレートDNAを破壊する工程が必要であることがわかりました。

    mRNA 医薬品の品質・安全性評価の考え方 (2019) – 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス,PMDRS,50(6),300 ~ 306(2019)] –

    http://nats.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20190717095649-6ABC2FA50410294C82EBEF7D74463510333BCF1FB717B3F88FCCB2CC782A63A8.pdf
    • 低分子合成技術によるRNA製造
      • 30年以上も前からある、固相反応により1塩基ずつ直接合成していく
      • 長いものを作ることは難しいため、タンパク質を作れるほどの長いmRNAは、現在の技術では作れないと思われる
      • RNAの精製 (陰イオン担体を使用したクロマトグラフィ)

    mRNAの一般的な製造方法

    modernaのビデオでは、一般的なフローしか説明がされていない。最近の情報として詳細に知りたい場合は、Biaseparationsのサイト*6が参考になる。

    1. 原材料の調達; Supply Chain team delivers raw materials
      • 資材調達部門による原材料の調達
    2. DNAの製造; Plasmid production (DNA)
      • プラスミドDNA構築(*2, *3)
      • 1. 鋳型DNA合成
      • 2. Plasmid DNA合成
      • 3. 大腸菌の形質転換体の調製、大量培養による増幅及び精製
      • 4. 精製Plasmid DNA
    3. mRANへの変換; mRNA transcription
      • Plasmid DNAを鋳型としてmRNAを作る
        • DNAのlinearization
        • mRNA転写
        • 注意) 転写効率は、5-メチル-Cは収率に影響しないが、2’フルオロ修飾は影響する(*1)
    4. mRNAの精製; Purification (RNase freeで実施)
      • modernaの精製方法は不明、一般的なRNA精製方法(*1)は、以下の通り。
      • [1]粗抽出→除蛋白
        • 以下のa or b
        • a. Phenol extraction followed by alcohol precipitation (フェノール・クロロホルム抽出法とエタノール沈殿:90%程度で沈殿化、70%で洗浄)
        • b. Lithium chloride precipitation (>300b(*5) )
      • [2] 精製
        1. a. Spin column purification (シリカゲル (*4) )
        2. b. GP-HPLC
    5. 製剤組成に調整; Formulation
    6. 無菌化; Sterile filtration and fill into vials
    7. 梱包とラベル; Pack/Lable

    受託会社と製造方法

    mRNAの製造受託してくれる会社として、Biologics coがあります。日本では、タカラバイオが受託してくれます。

    参考文献

    (*1) バクテリオファージによるmRNA製造委託に関する情報 – Biologics co.社

    https://www.biologica.co.jp/products-service/custom-synthesis/nucleic-acid/transcription/#highlight

    (*2)
    プラスミドDNA構築 – タカラバイオ – より

    http://catalog.takara-bio.co.jp/jutaku/basic_info.php?unitid=U100004295&recommend_flg=1&click_flg=1

    (*3)
    エンドトキシン低減プラスミドDNA大量調製 – タカラバイオ – より

    http://catalog.takara-bio.co.jp/jutaku/basic_info.php?unitid=U100009275

    核酸の精製

    核酸の精製について、参考となる文献を以下に示しました。

    (*4)
    エタノール/イソプロピルアルコールの濃度と適切なpHにより、の核酸がシリカゲルに吸着する。カオトロピックイオンの存在下でも吸着可能。
    Spin column-based nucleic acid purification – wikipedia -より

    https://en.m.wikipedia.org/wiki/Spin_column-based_nucleic_acid_purification

    (*5)
    リチウム沈殿の技術的情報
    – I want to know extraction of RNA with LiCl has an effect on syn of cDNA? – wikipedia -より

    https://www.researchgate.net/post/I_want_to_know_extraction_of_RNA_with_LiCl_has_an_effect_on_syn_of_cDNA

    https://www.modernatx.com/moderna s-mrna-technology

    最近のmRNAの製造方法として参考になる文献

    *6

    High yield mRNA production process from E.Coli to highly pure mRNA.
    Presenter: Aleš Štrancar

    Date: od demand, October 19-22, 2020

    Cell & Gene Therapy Bioprocessing & Commercialization  (digital event)

    ユーザー登録すると文献がダウンロードできます。

    https://www.biaseparations.com/en/library/seminars-webinars/1098/high-yield-mrna-production-process-from-ecoli-to-highly-pure-mrna

    関連記事

    編集履歴

    2020/05/16 はりきり(Mr)
    2020/05/17 追記 (Plasmid DNAの調製、バクテリオファージによるRNA製造に関する委託内容)
    2020/05/19 追記 (低分子合成技術によるRNA製造)2020/09/27 修正(mRNA製造フロー)、文言整備
    2020/12/04 追記 (mRNA製造に関する最近の文献*6:Biaseparations社)
  • 気になる企業 – Arcturus Therapeutics – mRNAによる希少疾患とワクチン開発に特化 – ID15742 [2020/05/16]

    気になる企業 – Arcturus Therapeutics – mRNAによる希少疾患とワクチン開発に特化 – ID15742 [2020/05/16]

    Arcturus Therapeutics

    • 2013年に設立、カリフォルニア州サンディエゴ
    • Arcturus Therapeutics Holdings Inc.(ナスダック:ARCT)
    • 技術
      • LUNAR® : lipid-mediated delivery
      • Unlocked Nucleomonomer Analog (UNA) ref1)
      • chemistry
      • STARR™ Technology
        • self-replication RNAとLUNARのコンビネーション
        • 従来のmRNAと比較して、持続産生し30倍以上の効果
    • mRNA drug substance とdrug productの製造
    • RNA治療パイプライン
      • オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠乏症
      • 嚢胞性線維症
      • コロナウイルス(COVID-19)
      • グリコーゲン蓄積症3型肝炎
      • 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
    • プラットフォーム
      • メッセンジャーRNA
      • 低分子干渉RNA
      • レプリコンRNA
      • アンチセンスRNA
      • マイクロRNA
      • DNA
      • 遺伝子編集治療
    • www.Arcturusrx.comを参照
    Ref1

    UNA (unlocked nucleic acid): A flexible RNA mimic that allows engineering of nucleic acid duplex stability, 2009

    https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0968089609006105

    編集履歴
    2020/05/16 はりきり(Mr)

    関連イベント

    2020/03/04
    Arcturus Therapeutics (NASDAQ : ARCT, サンディエゴ, US)は、デュークNUSメディカルスクール(Duke-NUS, Singapore)と共同で、シンガポール向けのコロナウイルス(COVID-19)ワクチンを開発するための提携を発表。同社の技術 STARR(TM)を使い、Duke-NUSで開発された独自のプラットフォームにより、ワクチンの有効性と安全性を迅速にスクリーニングする。

    Duke-NUS

    • 2005年設立 (Duke医学部とシンガポール国立大学(NUS)), Singapore
    • COVID-19との戦いにおいて最前線に立ち、COVID-19の最初の血清学的検査を開発
    • ウイルス分離および培養した最初のグループの1つ
  • 気になる企業 – Regeneron – 2つのモノクローナル抗体(カクテル)でCOVID-19治療 – △[2020/10/05] ID15697

    気になる企業 – Regeneron – 2つのモノクローナル抗体(カクテル)でCOVID-19治療 – △[2020/10/05] ID15697

    Regeneron

    • 2019年の売り上げは、7,800億円source
    • 大手バイオテクノロジー企業。NASDAQ: REGNは、創業約30年。7つのFDA承認の治療薬と開発途中のパイプラインを持っている。
    • 販売網は持っていないようで、専ら販売は他社に任せているように見える。2018年に日本で薬価収載されたデュピクセントは、Sanofiが販売している。
    • MTPCともNGFに対する抗体の共同開発を行なっているsource
    • バイオテク企業の株価の比較(2020/08)
      1. Regeneron Pharmaceuticals : $620
      2. Biogen : $290
      3. Vertex Pharmaceuticals : $280
      4. Amgen : $250

    www.regeneron.com

    • 眼疾患
    • アレルギー疾患
    • 炎症性疾患
    • 心血管疾患
    • 代謝疾患
    • 痛み
    • 感染症

    Kevzaraとは、

    Kevzara (sarilumab)は、sanofiと共同開発された、インターロイキン-6 (IL-6)受容体に対する抗体。

    • 成人で中程度から重度の活動性関節リウマチ(RA)治療薬
    • DMARDで効果が見られなかった時に使用される
    • 免疫に影響する。結核にかかっている場合、重篤になるリスクがある

    COVID-19への臨床試験

    COVID-19感染では、IL-6による多臓器不全が重症患者に見られている。中国(Xu et al.)で、熱性の重傷患者でIL-6が過剰に発現していることが分かり、Anti IL-6 Antibodyであるtocilizumabを投与することで、発熱が急速に低下したという報告がある。

    今回、RegeneronのIL-6受容体に対する抗体医薬であるKevzaraの臨床試験が進められています。2020/04/27現在、Phase 2が完了しています。Phase 3は、重症患者に絞って世界(イタリア、スペイン、ドイツ、フランス、カナダ、ロシア、イスラエル、日本)で、継続されおり、Q3に報告予定です。

    投与量

    • ブラセボ
    • 200mg投与
    • 400mg投与

    評価項目

    • 炎症指数(CRP)の低下
    • 死亡率(通常)
    • 死亡率(ベンチレーター)
    • 死亡率(人工呼吸器)
    • 臨床改善
    • 酸素治療からの離脱
    • 退院

    REGN-COV2

    REGN-COV2は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が結合するとされる細胞にある受容体に対して、非競合的に結合する、2種類のモノクローナル抗体(REGN10933とREGN10987)を混合しているカクテル(COCKTAIL)です source。REGN-COV2は、まだ臨床試験中の治療薬ですが、最近、アメリカのトランプ大統領がCOVID-19になり、その治療として使われたことで話題になりました。トランプ大統領の治療では、このREGN-COV2によって感染の予防、さらに、レムデシビルの投与によって、感染した細胞内でのウイルス増殖の抑制、という2つの治療効果を目録んでいます。この治療の結果、トランプ大統領は、著しい改善があったとしています(2020/10/05)。

    REGN-COV2は、Rocheと共同開発しており、製造量の拡大と販売をRocheが担うようです。

    新型コロナウイルスの感染機序については、以下の記事をご覧ください。

    参考文献

    REGENERON AND SANOFI PROVIDE UPDATE ON U.S. PHASE 2/3 ADAPTIVE-DESIGNED TRIAL OF KEVZARA (SARILUMAB) IN HOSPITALIZED COVID-19 PATIENTS, 2020/04/27

    https://investor.regeneron.com/news-releases/news-release-details/regeneron-and-sanofi-provide-update-us-phase-23-adaptive/
    編集履歴
    2020/05/15 はりきり(Mr)
    2020/09/02 追記 (バイテク企業の株価比較)
    2020/10/05 追記 (REGN-COV2臨床治験中のカクテル抗体をトランプ大統領に投与)

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    [抗体医薬] Regeneron社の抗NGF抗体 fasinumab 開発中止/NGF単独では開発は難しい [2023/12/11]

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    今日の英語 – 実行可能な商用生産 – viable [2022/10/07]

    今日の英語 – 実行可能な商用生産 – viable [2022/10/07] はコメントを受け付けていません

    今日の英語 – COVID-19蔓延防止阻止対策の解除 – to lift (解除) COVID-19 quasi-emergency measures (対策) nationwide [2022/03/16]

    今日の英語 – COVID-19蔓延防止阻止対策の解除 – to lift (解除) COVID-19 quasi-emergency measures (対策) nationwide [2022/03/16] はコメントを受け付けていません

    [健康] 新型コロナウイルス感染後の後遺症について

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    [COVID-19] オミクロン株 – 感染力が強いBA.1、更に感染力も重症化リスクも強いとされる亜型のBA.2も日本で検出さた – スパイクタンパク質に30か所の変異 [2022/02/27]

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    [COVID-19] ファイザーが開発している飲むCOVID-19治療薬 ritonavir (Paxlovid) – EUの当局(EMA)が臨床データ検討を開始 [2021/11/19]

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    [COVID-19] 飲む治療薬 Molnupiravir (Lagevrio) – EUの当局(EMA)が各国に対して使用に関するアドバイスを発行した [2021/11/19]

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    [COVID-19] 飲む治療薬 Molnupiravir イギリスで世界初承認、日本にも承認申請 [2021/11/06]

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    [抗体医薬] COVID-19治療用抗体医薬カクテル[2021/09/13]

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    [Vc] 各社が開発したCOVID-19ワクチン情報リンク – [2021/10/08]

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  • [用語] FDA483

    [用語] FDA483

    FDA483; 査察結果について指摘事項が返される様式。指摘事項がない場合は出されない。

    FDA483

    http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/ucm256377.htm
  • [用語] NOAEL ; No Observed Adverse Effect Level:無毒性量 – 薬物の毒性評価

    [用語] NOAEL ; No Observed Adverse Effect Level:無毒性量 – 薬物の毒性評価

    NOAEL : No Observed Adverse Effect Level ; 無毒性量

  • [Bio-Edu] mRNAワクチンの剤形 – LNP; Lipid Nano Particle – [2021/12/05]

    [Bio-Edu] mRNAワクチンの剤形 – LNP; Lipid Nano Particle – [2021/12/05]

    ID15607

    はじめに

    mRNAワクチンの細胞内への伝達としてLNP技術が用いられます。Lipid Nano Particle; LNPの基礎知識を解説します。

    因みに、LNPの代わりに病原性のないウイルス (アデノウイルスなど)の外枠(殻;カラ)を使うデザインもあります。AstraZeneca社の新型コロナウイルスに対するワクチンがそれです。

    その前に、以下の参考文献の解説では、遺伝子治療薬が何を指しているのか誤解しがちなので、遺伝子治療薬について少し解説しておきます。

    在のmRNAやpDNAを使ったワクチンは、基本的に遺伝子治療薬ではありません。遺伝子治療薬は、半永久的な治療を目的として、1回の投与で治療できるようにデザインされたものです

    現在のmRNAやpDNAを用いたワクチンの場合は、その遺伝子が半永久的に体の細胞には取り込まれないデザインとなっているため、遺伝子治療薬には当たらないということです。

    また、LNP技術を使用しているのは、(1)物理化学的な安定性が低いという課題の克服と、(2)細胞の外膜(細胞膜)と融合して内容物であるmRNA/pDNAを細胞内に運搬する目的のためです。それでも、mRNAの場合、体内や細胞内に到達できたとしても(1)物理化学的な安定性が低いこと、(2)その宿主の細胞のゲノムに取り込まれることはないこと、により半永久的な治療効果は起こりません。従って、mRNAは半永久的な効果を発揮する伝子治療薬にはなり得ません。

    一方、pDNAの場合は、(1)細胞室内に永続的に存在できたり(細胞が分裂するときに、同じように細胞と共に増えることが可能にできる)、(2)細胞のゲノムに対して意図的なデザインによりインテグレーション(挿入)させたり、できるため半永久的に効果を発揮できる遺伝子治療薬になり得ます。

    以上の解説のように、現在のmRNA, pDNAを用いるワクチンは遺伝治療薬ではありません(2021/12/05, 追記 by Mr.Harikir)。

    参考文献よりLNPを解説

    以下の解説は、参考文献の一説です。

    低分子干渉RNA(siRNA)、mRNA、またはプラスミドDNAなどの遺伝子治療薬は、病理学的遺伝子のサイレンシング、治療用タンパク質の発現、または遺伝子編集アプリケーションを通じて、ほとんどの疾患を治療する潜在的な遺伝子治療を提供します。 しかし、遺伝薬を臨床で使用するためには、高度なデリバリーシステムが必要です。 脂質ナノ粒子(LNP)システムは現在、遺伝子治療薬の臨床的可能性をより高めるための主要な非ウイルス送達システムです。

    2017年に食品医薬品局(FDA)に申請され、トランスサイレチン誘発アミロイドーシス(現在は治療不可能な疾患)を治療するためのLNP siRNA薬が承認されています。

    ここでは、まず、全身投与後の肝細胞の標的遺伝子をサイレンシングできるLNP siRNAシステムの開発につながる研究をレビューします。 続いて、LNPテクノロジーをタンパク質置換、ワクチン、および遺伝子編集アプリケーション用のmRNAおよびプラスミドに拡張するために行われた進展が要約されています。

    遺伝子治療用のLNPシステムの起源は、低分子の薬剤用としてリポソーム薬物送達システム(リポソームシステム)の開発にあります。リポソームシステムは、二層構造の脂質を含むLNPです。 ホスファチジルコリン(PC)などの多くの膜脂質は、水性媒体に分散すると自発的に二重層構造となります(文献中のFigure 1より)。

    • Ethanolに以下を混ぜる
      • cationic lipid
      • structural lipid
      • PEG lipid
      • cholesterol
      • nucleic acid
    • 急速なミキシング
      • ミキシングの条件、時間により最適な大きさ、強度、能力のものを作る

    ドラッグデリバリーアプリケーションに有用であるリポソームには、いわゆる大きな単層構造(large unilamellar vesicles; LUVs)です。 サイズは100nmの範囲です。現在、世界中の規制当局によって承認されている、静脈内(iv)投与用の9つのリポソームベースの薬剤があります(表2を参照)。

    これらのシステムのほとんどは、小分子抗がん剤を含み、iv後の腫瘍部位で優先的に血管外遊出する小さな(<100 nm直径)LNPシステムです。この大きさは腫瘍組織へ浸透(enhanced penetration and retention; EPR)できます。EPR効果は、循環寿命の長いLUVと組み合わせると、腫瘍の送達を10倍以上改善できるとされています。

    より詳細は、以下の文献をご覧ください。

    Lipid Nanoparticle Systems for Enabling Gene Therapies (2017)

    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5498813/

    LNPの組成

    次に紹介する参考文献では、以下の原材料でLNPを作っています。

    • 1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine (DSPC)
    • cholesterol
    • ionizable cationic lipid (6Z,9Z,28Z,31Z)-heptatriaconta-6,9,28,31-tetraen-19-yl4-(dimethylamino) butanoate (DLin-MC3-DMA)
    • (R)-2,3-bis(octadecyloxy)propyl-1-(methoxy polyethylene glycol 2000) carbamate (PEG-DMG)
    • (R)-2,3-bis(stearyloxy)propyl-1-(methoxy poly(ethylene glycol)2000 carbamate (PEG-DSG) 

    siRNAに関する参考文献中で紹介されている文献のレビュー1), 2)では、以下の記載がある。

    LNPは一般に直径が約50 nmで、コレステロール(cholesterol)、リン脂質(phospholipids)、ポリエチレングリコール結合脂質 (polyethylene glycol-conjugated lipids)、およびイオン化可能(ionizable)なカチオン性脂質(cationic lipids)で構成されています。

    • cholesterol (コレステロール)
    • phospholipids (ホスフォリピッド)
    • polyethylene glycol (ポリエチレングリコール) – lipids
    • ionizable cationic (“イオンになりやすい正荷電体”)lipids

    以下の参考文献中の文献レビューでは、LNPの見かけのpKaが約6.4のイオン化可能(ionizable)なアミノ脂質(amino lipids)は、キーコンポーネントであり以下を可能にする、とある。

    • 低pH(≤4)でのLNP生成中の効率的なsiRNAカプセル化
    • 生理的 (physiological)なpHで循環するLNPの中性表面電荷を確保し、
    • ターゲットの細胞内在化後のエンドソーム脱出を促進する

    Modular lipid nanoparticle platform technology for siRNA and lipophilic prodrug delivery, 2020, bioRxiv

    https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.01.16.907394v1.full
    1. Rational design of cationic lipids for siRNA delivery. Nat Biotechnol 28, 172–176 (2010).
    2. Maximizing the potency of siRNA lipid nanoparticles for hepatic gene silencing in vivo. Angew Chem Int Ed Engl 51, 8529–8533 (2012).

    LNPを作る装置

    LNPは、以前はリポソームと呼ばれていたもので、脂質二重膜などの構造になっており、目的物を閉じ込めるための器です。

    昔は、エバポレータという減圧乾固する装置で、少量調製していましたが、現在では、Precision NanoSystems Incが連続的にNano Perticleにする装置を開発しているようです。スケーラビリティーもあり、臨床試験にも使用可能で、原理的には、コマーシャル製造でも適用可能です。

    Precision NanoSystems Incの技術

    図1.)ナノ粒子を製造するためのマイクロ流体混合技術:溶解した脂質を含む有機溶媒と核酸を含む水溶液
    NanoAssemblrカートリッジの2つの注入口チャネルに注入されます。 層流の下では、2つの溶液はすぐには混合されません。
    しかし、チャネルに組み込まれた微視的な機能により、2つの流体が混ざり合います。
    分子が拡散によって互いに相互作用する、制御された再現可能な方法で。 1ミリ秒以内に2つの流体が完全に混合され、核酸がロードされたナノ粒子の均一な自己組織化をトリガーする溶媒極性の変化を引き起こします。

    編集履歴

    2020/05/10 はりきり(Mr)
    2020/05/27 追記(Precision Nanoparticle Systems紹介)
    2021/07/08,追記(文言整備)
    2021/12/05,追記(遺伝子治療薬について解説しmRNA/pDNAを用いたワクチンはそれでは無いことを解説)