[日本薬局方] 微生物限度試験法・無菌試験法の操作の具体例 [2025/04/04]

無菌試験法の具体例2(直接接種法(Direct Inoculation)

目的・適用製剤

  • 試料を直接培地に加えて微生物の発育を確認。
  • 通常はろ過が難しい製剤に適用されます。

主な対象例:

  • 油性注射剤(例:ビタミンE注射)
  • 乳剤製剤
  • 軟膏剤
  • 粉末製剤(凍結乾燥製剤など)

使用材料・培地

材料/培地用途
大豆-カゼイン消化物液体培地(TSB)好気性菌用(20~25℃、14日間培養)
流加チオグリコール酸培地(FTM)嫌気性菌用(30~35℃、14日間培養)
滅菌済試験容器、シリンジ、注射針など試料添加・操作用

以下に日本薬局方「4.06 無菌試験(Sterility Test)」において使用される主な培地を、役割ごとに明確にまとめます。


日本薬局方「4.06 無菌試験」で使用される主な培地一覧


【1】主要培地(試験本体で使用)

培地名使用目的培養条件備考
Fluid Thioglycollate Medium(FTM)
(チオグリコール酸液体培地)
主に好気性および通性嫌気性細菌の検出30~35℃、14日間酸化還元指示薬(レサズリン)を含む。培地の透明性が重要。嫌気性にも対応。
Soybean-Casein Digest Medium(SCDM)
(大豆-カゼイン消化液体培地)
真菌(酵母・カビ)および好気性細菌の検出20~25℃、14日間一般的な微生物の広範な検出に対応する汎用培地。pH 7.1±0.2が望ましい。

【2】性能確認・培地の適格性試験で使用される標準微生物(参考)

これらの菌株を使用して、上記培地の性能(微生物の発育能)を確認します。

微生物名(例)使用する培地の一例
Staphylococcus aureus(ATCC 6538)FTM, SCDM
Escherichia coli(ATCC 8739)FTM, SCDM
Bacillus subtilis(ATCC 6633)FTM
Candida albicans(ATCC 10231)SCDM
Aspergillus brasiliensis(ATCC 16404)SCDM
Salmonella Abony(NCTC 6017など)FTM, SCDM

【3】補助培地(場合により使用)

これらは日局に明記されてはいませんが、洗浄液の無菌性確認やろ過工程の検証など、試験補助に用いられることがあります:

培地名使用例
Tryptic Soy Broth(TSB)補助的な増菌やバリデーション用
Buffered Sodium Chloride Peptone Solution試料の希釈・洗浄液として使用される場合あり

培養条件のポイント

培地温度日数使用理由
FTM30~35℃14日間嫌気・通性嫌気性菌対応
SCDM20~25℃14日間真菌・一般細菌対応

※両方とも14日間継続培養が必要。毎日または定期的に混濁や菌塊の有無を観察します。


補足情報

  • 培地は無菌性を保証するために、使用前に無菌試験および性能確認試験(Growth Promotion Test)を実施する必要があります。
  • **FTMの酸化状態(表層がピンク色になっていないか)**も使用前に確認する必要があります。

試験の具体的な流れ

ステップ①:試料の接種

  1. 試験対象(例:注射剤、軟膏など)を無菌操作下で準備。
  2. TSBおよびFTMに、決められた量の試料を直接加える(通常、10mLあたり最大1mLまで)。
  3. 混和して、すぐに培養へ。

※製剤が濁っている場合や防腐剤を含む場合は、中和剤の添加が必要になることがあります。


ステップ②:培養条件

培地温度期間
TSB20~25℃(好気)14日間
FTM30~35℃(嫌気)14日間
  • 培養中は、濁りや沈殿など発育兆候を目視観察
  • 防曇ガラス容器や傾斜容器が用いられることもあります

ステップ③:判定

判定基準結果
合格14日間、いずれの培地にも発育兆候がない(透明)
不合格濁り、沈殿、ガス産生、膜形成などがあれば不合格

まとめ:直接接種法の特徴

項目内容
対象製剤ろ過困難なもの(油性、軟膏、乳剤、粉末など)
メリット簡便、器具が少なくて済む
注意点製剤が培地に干渉する場合がある(中和・希釈・事前検証が必要)
合否判断微生物の発育が完全にゼロであることが必須

【無菌試験における性能確認(陽性対照試験)】

Ⅰ. 性能確認とは?

  • 無菌試験では、使用する培地や試験操作が微生物の検出に適しているかを確認する必要があります。
  • これを「性能確認(適格性試験, Validation / Suitability Test)」と呼びます。
  • 性能確認では、**少量(≦100 CFU程度)**の既知の微生物を試験に用い、それらが培養で増殖するかを確かめます。

Ⅱ. 使用される陽性対照菌(試験菌株)

日本薬局方では、以下の微生物を性能確認に使用することが推奨されています:

微生物名(学名)推奨株(ATCCなど)例特徴
バチルス・スブチリスBacillus subtilisATCC 6633グラム陽性、好気性芽胞菌
クラウディア・アルビカンスCandida albicansATCC 10231酵母
アスペルギルス・ニゲルAspergillus brasiliensisATCC 16404カビ
大腸菌Escherichia coliATCC 8739グラム陰性桿菌
サルモネラ・アバニSalmonella AbonyNCTC 6017グラム陰性桿菌
スタフィロコッカス・アウレウスStaphylococcus aureusATCC 6538グラム陽性球菌

Ⅲ. 試験方法と評価

試験手順(概要)

  1. 選択した菌株から、**微量(≦100 CFU)**の懸濁液を調製する。
  2. それを実際の試験と同様の方法(直接接種法または膜ろ過法)で試験培地に添加。
  3. 指定の条件下(温度・期間)で培養する。
  4. 微生物が増殖して検出できることを確認。

判定基準

  • 各菌株が適切な培地と条件で明確に増殖すること。
  • 結果が不適合の場合は、培地、操作、試験条件を再評価・再確認する必要があります。

Ⅳ. 実施タイミングと頻度

  • 性能確認は以下のタイミングで実施される:
    • 新しい培地ロットを使用する前
    • 試験法の初導入・変更時
    • 定期的なバリデーションまたは疑義発生時

Ⅴ. なぜ重要か?

  • 無菌試験は、「微生物が**いないことを確認する試験」」なので、微生物がいた場合にちゃんと見つけられるかを確認する性能試験が不可欠。
  • これが確認できていないと、**偽陰性(本当は汚染されているのに検出されない)**リスクが高まります。

最後に

  • 直接接種法は、膜ろ過法に比べて簡便ですが、製剤成分による干渉が起きやすいため、慎重な事前評価(バリデーション)が必要です。
  • 中和剤や希釈剤の選定、陽性菌回収率の検証などが重要です。

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