最初に
ゾレアは、花粉症の体内における発症メカニズムにおいて、IgEと結合して、IgEとマスト細胞との結合を抑制し、その後の反応経路を抑える抗体医薬です。ただし、誰でも投与できる薬ではありません。重症の患者に限定されています。
アレルギー反応では、アレルゲンに対するIgEが多く作られ、このIgEのFc部分がマスト細胞(肥満細胞)の細胞表面にあるIgE受容体(FcεRI; エプソーイプシロンレセプターワン)に結合し、さらにアレルゲンとIgEが結合します。
よく知られた反応では、その後の体内での反応は、マスト細胞内でヒスタミンの放出シグナルが発生し、ヒスタミンが細胞外に放出されますsource(奥羽大学)。
ゾレア(Zolair, 皮下注,オマリズマブ、ノバルティスファーマ)は、このアレルギー反応におけるIgEの経路を抑制することで、花粉症というアレルギー反応を改善する抗体医薬です。
2020年に日本で承認されましたが、承認とともに使用方法についてのガイドラインが発出されています。
アレルギーが起こるしくみを理解する
-新規抗アレルギー薬の開発をめざして-, 研究紹介 – 奥羽大学
http://www.ohu-u.ac.jp/faculty/research/researchP5.html
適性使用ガイドライン
ガイドライン(1)、ガイドライン(2)、季節性アレルギー性鼻炎の成人の患者に対して、75~600mg/回、2週または4週おきに皮下に注射する。類似の抗体医薬であるアトピー性皮膚炎(デュピルマブ)では、一般的には、初回600mg投与、2週おきに300mg投与との情報もある。
検査
適性使用する場合、重症度の指標である血中のIgE濃度が検査される。検査方法は、FEIA, CLIEAなどがあり、それぞれで感度がことなることから、それぞれの閾値は異なるものの設定される。CLEIA, FEIAの詳細は、検査方法の略称と概要を参照のこと。
- FEIA : Fluorescence Enzyme Immunoassay, 蛍光酵素免疫測定法, 抗原抗体反応の最終産物として蛍光が得られる。蛍光は、一般的な色素より微量で測定できるため感度が高い
- CLIEA : Chemiluminescent Enzyme Immunoassay, 化学発光・酵素免疫測定法, 反応の最終産物として化学的な光が得られる。感度は、FEIAとより高い(化学発光は蛍光より感度が高い*1)。
*1 : シングル検出(化学発光)から マルチ検出(蛍光)へ – Bio-Rad –
一般的に、化学発光は、蛍光より感度が高いが、高コスト、同時多種測定は不可、発光強度の経時的な変化が大きく再現性に課題、などかある。
https://www.bio-rad.com/webroot/web/pdf/lsr/japan/japanese/literature/C11682L_wb_news_vol3.pdf
薬価
薬価は、KEGGサイトで参照できる。
薬価サーチサイト KEGG MEDICUS 薬価
https://www.kegg.jp/kegg/medicus/
- ゾレア皮下注用150mg: 46,422円, (2019/12)
- ゾレア皮下注150mgシリンジ: 46,490円, (2019/12)
類似のアトピー性皮膚炎の治療薬である「デュピルマブ」の薬価は、300mgで83152円(2019/12)であり、ゾレアとほぼ同等の薬価となっている。
参考
ノバルティス、抗体製剤オマリズマブのスギ花粉症に対する国内第Ⅲ相臨床試験結果発表 – ノバルティス –
https://www.novartis.co.jp/news/media-releases/prkk20190226
効能変化再算定による薬価引き下げ
ゾレアの主たる効能は、2019年12月の適応拡大の承認に伴って、「気管支喘息」から「季節性アレルギー性鼻炎」と判断され、効能効果再算定の特例の適応を受けている。
- 効能変化再算定 : 主たる効能に変化があった医薬品の薬価を、類似した医薬品の薬価に近づくように引き下げるルール。
- 2020年度より、特例が新設され、類似薬がなくても、患者数が、10倍以上に拡大する、などの要件が揃うと適用される。
- 2020/4の薬価改訂により、ゾレアは、以下のように薬価が引き下げられた。
- 23,625円 → 14,812円 (75mgシリンジ)
- 46,490円 → 29,147円 (150mgシリンジ)
「ゾレア」効能変化再算定の特例で37.5%の引き下げ、335成分55品目に新薬創出加算 – 20年度薬価改定 | トピックス
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17895/
編集履歴
2019/12/09 はりきり(Mr) 2020/06/23 文言整備 2021/02/12 追記(FEIAとFCIEAの解説、文言整備) 2021/05/11 追記(2020/04,効能変化再算定による薬価引き下げ)
重篤副作用疾患別対応マニュアル | アナフィラキシー |
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承認情報 公知申請への該当性に係る報告書 最適使用推進GL 等 | 承認年月日等 | 報告書 | 申請資料概要 | 備考 |
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2019年12月11日 | 季節性アレルギー性鼻炎(最適GL) | – | – | |
2019年12月11日 | 審査報告書 | 申請資料概要 | 季節性アレルギー性鼻炎(既存治療で効果不十分な重症又は最重症患者に限る)の効能・… | |
2017年03月24日 | 審査報告書 | 申請資料概要 | 特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)の効能・効果を追加とする新… | |
2013年08月20日 | 審査報告書 | 申請資料概要 | 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)を… | |
2009年01月21日 | 審査報告書 | 申請資料概要 | 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)を… |
改訂指示 DSU 等 | 発出日 | 文書名 |
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2017年05月08日 | DSU259.pdf | |
2013年10月01日 | DSUNo.223 | |
2012年10月01日 | DSUNo.213 | |
2010年03月01日 | DSUNo.187 |