タグ: measurement

  • [抗体医薬] ゾレア; Omalizumab (ノバルティス) – 花粉症を対象とする抗IgE抗体 – 重症に限定 – 効能変化再算定 により薬価引き下げ  [2021/05/11]

    [抗体医薬] ゾレア; Omalizumab (ノバルティス) – 花粉症を対象とする抗IgE抗体 – 重症に限定 – 効能変化再算定 により薬価引き下げ [2021/05/11]

    最初に

    ゾレアは、花粉症の体内における発症メカニズムにおいて、IgEと結合して、IgEとマスト細胞との結合を抑制し、その後の反応経路を抑える抗体医薬です。ただし、誰でも投与できる薬ではありません。重症の患者に限定されています。

    アレルギー反応では、アレルゲンに対するIgEが多く作られ、このIgEのFc部分がマスト細胞(肥満細胞)の細胞表面にあるIgE受容体(FcεRI; エプソーイプシロンレセプターワン)に結合し、さらにアレルゲンとIgEが結合します。

    よく知られた反応では、その後の体内での反応は、マスト細胞内でヒスタミンの放出シグナルが発生し、ヒスタミンが細胞外に放出されますsource(奥羽大学)

    ゾレア(Zolair, 皮下注,オマリズマブ、ノバルティスファーマ)は、このアレルギー反応におけるIgEの経路を抑制することで、花粉症というアレルギー反応を改善する抗体医薬です。

    2020年に日本で承認されましたが、承認とともに使用方法についてのガイドラインが発出されています。

    アレルギーが起こるしくみを理解する

    -新規抗アレルギー薬の開発をめざして-, 研究紹介 – 奥羽大学

    http://www.ohu-u.ac.jp/faculty/research/researchP5.html

    適性使用ガイドライン

    ガイドライン(1)ガイドライン(2)、季節性アレルギー性鼻炎の成人の患者に対して、75~600mg/回、2週または4週おきに皮下に注射する。類似の抗体医薬であるアトピー性皮膚炎(デュピルマブ)では、一般的には、初回600mg投与、2週おきに300mg投与との情報もある。

    検査

    適性使用する場合、重症度の指標である血中のIgE濃度が検査される。検査方法は、FEIA, CLIEAなどがあり、それぞれで感度がことなることから、それぞれの閾値は異なるものの設定される。CLEIA, FEIAの詳細は、検査方法の略称と概要を参照のこと。

    • FEIA : Fluorescence Enzyme Immunoassay, 蛍光酵素免疫測定法, 抗原抗体反応の最終産物として蛍光が得られる。蛍光は、一般的な色素より微量で測定できるため感度が高い
    • CLIEA : Chemiluminescent Enzyme Immunoassay, 化学発光・酵素免疫測定法, 反応の最終産物として化学的な光が得られる。感度は、FEIAとより高い(化学発光は蛍光より感度が高い*1)。

    *1 : シングル検出(化学発光)から マルチ検出(蛍光)へ – Bio-Rad –

    一般的に、化学発光は、蛍光より感度が高いが、高コスト、同時多種測定は不可、発光強度の経時的な変化が大きく再現性に課題、などかある。

    https://www.bio-rad.com/webroot/web/pdf/lsr/japan/japanese/literature/C11682L_wb_news_vol3.pdf

    薬価

    薬価は、KEGGサイトで参照できる。

    薬価サーチサイト KEGG MEDICUS 薬価

    https://www.kegg.jp/kegg/medicus/
    • ゾレア皮下注用150mg: 46,422円, (2019/12)
    • ゾレア皮下注150mgシリンジ: 46,490円, (2019/12)

    類似のアトピー性皮膚炎の治療薬である「デュピルマブ」の薬価は、300mgで83152円(2019/12)であり、ゾレアとほぼ同等の薬価となっている。

    参考

    ノバルティス、抗体製剤オマリズマブのスギ花粉症に対する国内第Ⅲ相臨床試験結果発表 – ノバルティス –

    https://www.novartis.co.jp/news/media-releases/prkk20190226

    効能変化再算定による薬価引き下げ

    ゾレアの主たる効能は、2019年12月の適応拡大の承認に伴って、「気管支喘息」から「季節性アレルギー性鼻炎」と判断され、効能効果再算定の特例の適応を受けている。

    • 効能変化再算定 : 主たる効能に変化があった医薬品の薬価を、類似した医薬品の薬価に近づくように引き下げるルール。
    • 2020年度より、特例が新設され、類似薬がなくても、患者数が、10倍以上に拡大する、などの要件が揃うと適用される。
    • 2020/4の薬価改訂により、ゾレアは、以下のように薬価が引き下げられた。
      • 23,625円 → 14,812円 (75mgシリンジ)
      • 46,490円 → 29,147円 (150mgシリンジ)

    「ゾレア」効能変化再算定の特例で37.5%の引き下げ、335成分55品目に新薬創出加算 – 20年度薬価改定 | トピックス

    https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17895/

    編集履歴

    2019/12/09 はりきり(Mr)
    2020/06/23 文言整備
    2021/02/12 追記(FEIAとFCIEAの解説、文言整備)
    2021/05/11 追記(2020/04,効能変化再算定による薬価引き下げ)
    重篤副作用疾患別対応マニュアルアナフィラキシー
    承認情報
    公知申請への該当性に係る報告書
    最適使用推進GL 等
     承認年月日等 報告書 申請資料概要 備考
     2019年12月11日  季節性アレルギー性鼻炎(最適GL) –  – 
     2019年12月11日  審査報告書 申請資料概要季節性アレルギー性鼻炎(既存治療で効果不十分な重症又は最重症患者に限る)の効能・…
     2017年03月24日  審査報告書 申請資料概要特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)の効能・効果を追加とする新…
     2013年08月20日  審査報告書 申請資料概要気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)を…
     2009年01月21日  審査報告書 申請資料概要気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)を…
    改訂指示
    DSU 等
     発出日 文書名
     2017年05月08日  DSU259.pdf
     2013年10月01日  DSUNo.223
     2012年10月01日  DSUNo.213
     2010年03月01日  DSUNo.187
  • [抗体医薬] イラリス; Canakinumab – 高IgD血症として知られている難病治療薬 by Novartis/中外 [2020/06/23]

    [抗体医薬] イラリス; Canakinumab – 高IgD血症として知られている難病治療薬 by Novartis/中外 [2020/06/23]

    最初に

    高IgD症候群(Hyper IgD Syndrome:HIDS)は、別名メバロン酸キナーゼ欠損症(Mevalonate Kinase Deficiency:MKD)とも言い、コレステロール生合成経路に関わるメバロン酸キナーゼ(MVK)の活性低下により発症する周期性発熱症候群である。血清IgDが高値である症例が多いことで命名がなされているが、本邦での初診時にIgDの上昇を認めないことが多い。

    Novartisは、IL-1βを標的とした抗体医薬イラリス;canakunumabを持っており、適応症を多数に拡大している。

    編集履歴
    2020/06/23 はりきり(Mr)

    適応症

    • 以下のクリオピリン関連周期性症候群
      • 家族性寒冷自己炎症症候群
      • マックル・ウェルズ症候群
      • 新生児期発症多臓器系炎症性疾患
    • 高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
    • TNF受容体関連周期性症候群
    • 既存治療で効果不十分な下記疾患
      • 家族性地中海熱
      • 全身型若年性特発性関節炎

    臨床試験以外の薬理活性など

    • IL-1βに結合(解離定数:40pM)することで、受容体に結合した場合のシグナルを抑制する
    • IL-1β刺激による皮膚線維芽細胞からのIL-6産生を抑制
    • IL-1β刺激による黒色主細胞におげるIL-8のプロモーター活性を抑制
    • IL-1βで誘発されるマウス関節空気嚢への好中球浸潤を抑制
    • IL-1βで誘発されるラットの発熱を抑制

    高IgD症候群(指定難病267)

    https://www.nanbyou.or.jp/entry/4751

    イラリス皮下注射液150mg – Novaritisサイト – より

    https://drs-net.novartis.co.jp/siteassets/common/pdf/ila/pi/pi_ila_t_202004.pdf
  • [健康] コロナウイルス抗原検査キット(SARS-CoV-2)の原理をわかり易く解説 [2022/01/24更新]

    [健康] コロナウイルス抗原検査キット(SARS-CoV-2)の原理をわかり易く解説 [2022/01/24更新]

    はじめに

    検出感度が高いPCRよりも感度は低いものの、15分程度で抗原の検出が可能な測定方法で、「イムノクロマト」と原理を利用しています。

    2022/01/末、世界では、デルタ株からオミクロン株への感染シフトが進む中、日本においてもオミクロン株への感染シフトが進展しており、抗原検査試薬の不足が生じています。

    反応概要

    (1) サンプルは、本反応の前に、コロナウイルスと結合できる標識Antibody-3 (色素や酵素が標識されている)と混合させ前もって反応させ、「標識Antibody-3とコロナウイルス結合体」を作らせる。
    (2) 反応メンブランには、コロナウイルスに対する別抗体: Antibody-1 (ELISAにおけるサンドイッチ法と同様)と、Antibody-3に対する抗体: Antibody-2の2種類が、1ラインづづ塗布されている。
    (3) 「標識Antibody-3とコロナウイルス結合体」を(2)のメンブランに反応させる。

    図を見ながら解説

    キットは、図1のような構造になっている。図1だけでは不十分であったため、図2にも別のサイトから参照した原理図を示した。

    図1で説明する。「サンプルパッド」部分に、コロナウイルスを含む検体を添加すると、以下のような機序により2本のバンドが発色し、陽性であることを判定できる。

    1. 「サンプルパッド」(図1,黄色)にサンプル(唾液)を添加(数十μL)
    2. 「コンジュゲートパット」(図1,青色)には、色素や酵素が標識されたコロナウイルスに対する抗体(標識Antibody-3)が染み込ませてある。標識とは、酵素や色素をその他の物に結合させた状態を呼ぶ。
    3. 「サンプルパッド」から「コンジュゲートパッド」にコロナウイルスを含む水分が染み込んでくることで、「サンプルパッド」から「吸収パッド」への方向に、液体の流れが生じる
    4. 「コンジュゲートパット」で、標識Antibody-3とコロナウイルスが結合し、コロナウイルスとAntibody-3の比率の程度によっては、標識Antibody-3には、コロナウイルスが結合していない抗体分子も存在する。そのような状態のまま、「メンブラン」に染み込んでくる。
    5. 「メンブラン」(図1,水色)には、コロナウイルスに対する抗体(Antibody-1)と、コロナウイルスに結合でき標識Antibody-3に対する抗体(Antibody-2)が、それぞれ、2箇所(2ライン)に塗布してある(結合しているので位置は移動しない)。このメンブラン上を、4のサンプルが順次染み込みながら進む(これをクロマトと呼び、免疫反応も関連しているので、イムノクロマトと言う)
    6. 最終的には、「メンブラン」中のテストラインには、「標識Antibody-3とコロナウイルスとAntibody1の3つの結合体」が出来上がり、標識Antibody-3による発色ラインが現れる。
    7. 更に、「メンブラン」中のコントロールラインには、「標識Antibody-3と(コロナウイルスの量に反映されてされた量のコロナウイルス)とAntibody-2の2又は3結合体」が出来上がり、標識Antibody-3による発色ラインが現れる。
    図1. ForDxから参照した原理図
    図2. ACUTECAREから参照した原理図

    参考文献

    イムノクロマト法とは – ForDx -より

    https://www.fordx.co.jp/immunochromatography/

    イムノクロマト法- ACUTECARE-より

    https://www.acute-care.jp/ja-jp/learning/course/immunoassay/ria/ic

    SARSコロナウイルス抗原キット ADTest 対外診断用医薬品、アドテック株式会社

    SARS-CoV-2 操作方法 : https://www.adtec-inc.co.jp/wp-content/uploads/2021/07/adtest-pamphlet210712.pdf

    SARS-CoV-2 製品概要 : https://www.city.usa.oita.jp/material/files/group/49/kaigo20210204-6.pdf
    編集履歴
    2020/05/16 はりきり(Mr)
    2020/08/02 文言整備
    2022/01/24、追記(ADTest関連情報)