はじめに
APR(Annual Product Review)は米国FDA、PQR(Product Quality Review)はEU(EMA)で採用されている用語で、いずれも医薬品の品質を年次で総合評価するGMP要件です。日本ではPQR(製品品質レビュー)の用語が採用されており、製造・試験結果、逸脱、安定性などをレビューし、品質の一貫性や改善点を把握する目的で実施されます。
APR/PQRはQMS(品質マネジメントシステム)に沿って実施される活動です。
* QMS : Quality Management System
その位置づけ:
APR(Annual Product Review)や PQR(Product Quality Review)は、GMPの枠組みにおけるQMSの重要な構成要素のひとつであり、ICH Q10「医薬品の品質システム」にも明確に記載されています。
ICH Q10での明記ポイント(抜粋):
- 継続的改善の一部
- 品質の一貫性評価
- プロセス性能のレビュー
- CAPA(是正・予防措置)活動との連動
実務上は:
- QMSの中で定めた**手順書(SOP)**に従って、定期的・体系的に実施
- 逸脱・変更・安定性データなどQMS全体の記録と連動して評価
- PQRの結果は、マネジメントレビューや改善活動にも活用されます
つまり、APR/PQRは単なる「年次報告」ではなく、QMSによる継続的品質改善(CQI)の中核的プロセスといえます。
目次
- はじめに
- その位置づけ:
- ICH Q10での明記ポイント(抜粋):
- 実務上は:
- APR / PQR の意味と違い
- 主なレビュー内容(APR/PQR共通)
- 目的
- 実務的には?
- APR/PQRの【具体的なプロセス】とは?
- APR/PQRはどのくらい重要?
- 編集履歴
APR / PQR の意味と違い
略称 | 正式名称 | 内容 | 欧米/日本の使われ方 |
---|---|---|---|
APR | Annual Product Review | 年次製品レビュー(アメリカ中心) | 主に米国FDAの文脈で使用される |
PQR | Product Quality Review | 製品品質レビュー(ヨーロッパ中心) | 主にEU(PIC/S)やICH Q7/Q10で使用される |
※両者は目的・内容がほぼ同じであり、地域や規制により名称が異なるだけです。
日本国内ではGMP省令改正(2021年施行)以降、**PQR(製品品質レビュー)**が正式に用いられています。
主なレビュー内容(APR/PQR共通)
以下の項目を「1年間ごと」などの周期でレビューします:
- 製造バッチの一覧・傾向(出荷可否・再作業の有無など)
- 規格外試験結果(OOS)、逸脱(Deviations)、変更管理(Change Control)
- 安定性試験結果の推移
- 苦情(Complaint)の傾向と対応
- 回収(Recall)の履歴(あれば)
- CAPA(是正・予防処置)の進捗と有効性
- 改善提案、トレンド分析、継続的改善(継プロ)
目的
- 品質トレンドの把握と予防措置
- プロセスや規格の見直し判断材料
- 規制当局への適合性確認(GMP遵守の証明)
- QMS(品質マネジメントシステム)強化
実務的には?
- **品質保証部門(QA)**が中心となり、製造部門・分析部門と連携してデータ収集
- 年1回(品目ごと)、決まった様式で報告書(レビューサマリ)を作成
- 内部監査やGMP適合性調査(当局査察)でも提出を求められる重要文書
APR/PQRの【具体的なプロセス】とは?
APR/PQR(Annual Product Review / Product Quality Review)は、**医薬品の品質保証と継続的改善の要(かなめ)**となるプロセスであり、GMPにおける重要なQMS活動のひとつです。
以下のような体系的かつ段階的なステップで進められます👇
Step 1:レビュープロセスの計画(計画書の作成)
- 年次レビューの対象製品とレビュー期間の設定
- 関連するバッチのリストアップ
- 各部門(製造・分析・QA・薬事・安定性など)から収集すべき情報の項目定義
- 進行スケジュールと担当者の割当
📌 文書例:PQR実施計画書(PQR Plan)
Step 2:データ収集と分析(部門連携で実施)
収集する主な情報は以下のとおり:
分類 | 主な内容 |
---|---|
🧪 製造情報 | 実製造バッチの一覧、ロット番号、収率、製造日時、使用原料 |
📉 品質試験結果 | 規格外試験(OOS/OOT)、分析結果のトレンド分析 |
⚠️ 逸脱・苦情 | Deviations、Change Control、顧客クレームなどの件数・傾向 |
📦 安定性データ | 安定性試験結果(中間点/期限)、有効期間延長判断材料 |
🚨 回収情報 | 製品リコールの有無と内容、是正処置の進捗状況 |
🔄 CAPA・変更管理 | 開始/完了状況、根本原因、予防策の有効性レビュー |
※ 必要に応じて:微生物モニタリング、機器校正・バリデーション履歴も含む場合あり
Step 3:レビューと評価(QA主導)
- 品質トレンド分析:不良発生率・規格外傾向など
- システムの適格性評価:製造・試験が規格通りに機能していたか
- 改善提案とアクションの検討:
- 製造条件の見直し
- 教育訓練の強化
- 分析法バリデーションの再評価など
📌 文書例:PQR報告書(PQR Report)
Step 4:報告書の作成と承認
- 全体レビューを取りまとめた正式文書を作成
- 品質保証責任者によるレビューと承認
- **必要な改善・是正処置(CAPA)**があれば、実施計画と期日を明記
Step 5:改善措置(CAPAの実施)
- PQRで挙げられたリスクや課題に対し、具体的な改善策を実行
- 定期的なフォローアップにより、改善の効果を確認
APR/PQRはどのくらい重要?
- GxP領域での**継続的改善(Continual Improvement)**の中心的なツール
- 規制当局(FDA、EMA、PMDAなど)のGMP査察で頻出の重点項目
- しっかりやっておくと、「品質文化」や「QRM(リスクマネジメント)」への信頼にもつながります
編集履歴
2025/04/03 Mrはりきり