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  • [医薬品] GMPにおいてバリデーション(validation)とクオリフィケーション(qualification)の違い,使い分けられますか? プロセス・バリデーションの実施 [2025/03/23]

    [医薬品] GMPにおいてバリデーション(validation)とクオリフィケーション(qualification)の違い,使い分けられますか? プロセス・バリデーションの実施 [2025/03/23]

    プロセスバリデーション

    PV 3ロットと口癖のように言うが,現在のICHでは3ロットは基本的に要求しておらず,以下の説明にあるように「一貫して所定の仕様や品質基準を満たす」のかどうかを見るためには,複数回の実行が必要となる.これまで慣行として,3ロットの実行があった.しかし,3ロット実施したからといって,その評価結果として,一貫して所定の仕様,品質基準を満たしていないこともあり得る.例えば,少し幅のある結果だった場合,その幅をもうすこし知るために追加の1ロット,2ロットと実行する場合もあるだろう.逆に,一回の実行でこれまでの実績から「一貫して所定の仕様,品質基準を満たしている」と判断できる場合もある.ICHには,これらのことは,リスクに基づくアプローチや科学的根拠に基づくプロセス設計,即ち,「継続的バリデーション」や「製造プロセス設計」に関わっている.

    バリデーションとクオリフィケーション

    Q : 医薬品の開発や製造において,validationやqualificationとは

    Copilot : 医薬品の開発や製造におけるvalidation(バリデーション)qualification(適格性確認)は、品質保証と規制準拠を確保するための重要なプロセスです。それぞれの意味と目的を以下に説明します。

    Validation(バリデーション)

    • 定義: 製品やプロセスが一貫して所定の仕様や品質基準を満たすことを確認するシステム的な検証活動。
    • 対象:
      • プロセスバリデーション: 製造工程全体が安定して正しい結果を生み出すことを確認。例示: 培養・精製を実行しインプロセス試験(IPC)や得られる原薬が一貫(~3ロットなど)して仕様・品質基準を満たすかの評価.
      • 清浄度バリデーション: 製造設備が汚染リスクを排除するように清浄管理されていることを確認。例示: 据え付け型製造タンクの洗浄の手順や能力の評価.
      • 方法バリデーション: 試験法が正確で信頼性があり、製品特性を適切に測定できることを保証。例示: 分析バリデーション.
    • : 新しい医薬品の製造プロセスを検証して、そのプロセスが一貫して高品質な製品を生産することを保証する。

    Qualification(適格性確認)

    • 定義: 設備、システム、または材料が医薬品製造において適切に機能し、その目的に適していることを確認するプロセス。
    • 段階:
      • 設計時適格性確認(DQ: Design Qualification): 設計段階での適格性を確認。
      • 設置時適格性確認(IQ: Installation Qualification): 設置や取り付けが規定通りに行われたか確認。
      • 運転時適格性確認(OQ: Operational Qualification): 設備が正常に作動し、指定された条件を満たすかを確認。
      • 性能時適格性確認(PQ: Performance Qualification): 実際の稼働条件で適格性を確認。
    • : 新しい製造装置を導入した場合、その設計や運用が規格を満たしていることを各段階で確認する。

    違いと関係性

    • 違い: Validationは「プロセス」や「結果」に重点を置きます。一方でQualificationは「設備」や「システム」に焦点を当てます。
    • 関係性: QualificationはValidationの一部として捉えられることがあり、設備や装置の適格性を確認した後に、それを使ったプロセス全体のValidationを行います。

    これらのプロセスは、医薬品の安全性、有効性、および品質を保証するために必須です。

    バリデーションの回数

    Q : CHでは,バリデーションでの実行回数は3回と規定されているか,最近では3回の実行ということは言われくなくなったと思うか,それは本当か

    Copilot : ICH(国際会議調和)ガイドラインにおいて、バリデーションの実行回数について直接「3回」という具体的な規定は存在していません。ただし、プロセスバリデーションでは、従来の業界慣行として3回の実行(通称「PVバッチ」)が一般的に行われてきました。この「3回」の基準は、過去の経験や統計に基づいて、一貫性のあるプロセスの確認に十分であると考えられてきたものです。

    しかし、最近の規制やガイドライン(例えば、ICH Q8, Q9, Q10, Q11)では、リスクに基づくアプローチや科学的根拠に基づくプロセス設計が強調されるようになりました。その結果、バリデーションの実行回数を厳密に「3回」とする必要性が薄れ、以下のような方向に変化しています:

    • 継続的プロセスバリデーション(Continued Process Verification): 製造のライフサイクル全体でプロセスの一貫性を評価。
      • 製造プロセスが日常の生産活動を通じて一貫して行われているかどうかを確認するための手法です。生産プロセスにおけるデータを継続的にモニタリングし、品質と一貫性が保証されていることを確認します。これにより、プロセスのパフォーマンスや製品の品質をリアルタイムで評価することが可能です。
      • 長期的視点
    • コンカレントプロセスバリデーション (Concurrent Validation)
      • コンカレントバリデーションは、通常の生産活動中にバリデーションを実施する方法です。この場合、製品はバリデーションデータが取得されている間に製造されますが、バリデーションが終了するまで出荷が保留されることがあります。コンカレントバリデーションは、例えば新しいバッチや設備を導入した際に、迅速な確認が必要な場合に使用されることが多いです。
      • 短期的視点
    • 製造プロセス設計(Process Design): 実験や統計的分析に基づき必要な回数を柔軟に設定。

    したがって、「3回の実行」が絶対的ではなくなり、製造プロセスや製品特性に応じて適切な実行回数を設定することが推奨されています。

    具体的には,日本のGMP事例集(2022年版)のGMP13-30には以下の質問/回答があります.要件は,

    1. プロセスバリデーションとしてコンカレントバリデーションを実施する合理的な根拠
    2. バリデーション計画書に予めPV回数が明記されていること
    3. PVの完了を前提に出荷の判断が可能
    4. GMP適合性調査権者に相談すること
    5. 希少疾患では
      • コンカレントバリデーション実施の合理的な根拠及びロット構成について、バリデーション計画書にあらかじめ明記
      • GMP適合性調査実施前までに1ロットで商業生産スケールでの確認を実施
      • 承認取得後,残りの2回のPVの実施で差し支えない

    ・GMP事例集(2022年版)について ( 令和04年04月28日事務連絡)

    GMP13―30(プロセスバリデーション)[問]バリデーション指針(5)②ア及びイ(エ)に「通常、当該工程を経た製品について、その製造所からの出荷の可否を決定する前までに、PVが完了していること」とあるが、例えば、年1回しか生産しない製品であっても製品の出荷の前までに原則3ロットでのプロセスバリデーションを実施しなければならないのか。

    [答]プロセスバリデーションとしてコンカレントバリデーションを実施する合理的な根拠があり、それがバリデーション計画書にあらかじめ明記されている場合には、製品の出荷の前までに3ロットでのプロセスバリデーションを実施しなくても認められる場合がある。GMP適合性調査権者に相談すること。なお、希少疾病医薬品に指定されている医薬品については、コンカレントバリデーションを採用し、GMP適合性調査実施前までに1ロットで商業生産スケールでの確認を実施し、承認取得後に残りの2ロットの商業生産スケールでの確認を行うことで差し支えない。ただし、コンカレントバリデーションを実施する合理的な根拠及びロット構成について、バリデーション計画書にあらかじめ明記しておくこと。

    編集履歴

    2025/03/23 Mrはりきり,Copilot

  • 医薬品の品質マニュアル

    医薬品の品質マニュアル

    医薬品の品質マニュアルに関する省令は、主にGMP(Good Manufacturing Practice: 医薬品及び医療機器の製造管理及び品質管理基準)に基づいています。GMPは、医薬品の製造および品質管理に関する基準を定めており、医薬品の安全性、有効性、品質を確保するための重要な規制です。

    主なポイント

    1. 品質マニュアルの目的:
      • 医薬品の品質を保証し、法令遵守を確保するための基本方針を示します。
      • 製品ライフサイクル全体を通じて品質管理を行うことを目的としています。
    2. 適用範囲:
      • 医薬品の製造、品質管理、技術開発に関するすべてのプロセスに適用されます。
    3. 要求事項:
      • 品質方針の策定とその実行。
      • 品質リスクマネジメントの実施。
      • 継続的な改善活動の推進。
    4. 関連する省令やガイドライン:
      • 医薬品医療機器等法(薬機法)。
      • GMP省令(医薬品及び医療機器の製造管理及び品質管理基準)。
      • ICH Q10(医薬品品質システムに関する国際的なガイドライン)。

    医薬品における品質マニュアル(Quality Manual)は、製品の品質を確保し、規制要件を満たすために重要な文書です。以下のような項目が一般的に含まれます:

    1. 目的: 品質マニュアルの目的や適用範囲を明確に記載します。
    2. 品質方針: 企業の品質に関する基本的な方針を示します。
    3. 医薬品品質システムの用範囲: 品質マニュアルが適用される製品やプロセスの範囲を定義します。
    4. 医薬品品質システムにおける経営陣の責任: 経営陣や従業員の役割と責任を明確にします。
    5. 医薬品品質管理システム: 全体像や構成要素を説明します。
      • 品質目標の策定
      • 目標達成のための各業務プロセスの実施
      • 製造プロセスの稼働性能及び製品品質のモニタリングシステム
      • CAPAシステム
      • 変更管理システム
      • 外部委託作業及び購入原材料の管理
      • 自己点検
      • 教育訓練
      • マネジメントレビュー

    ■参考:

    医薬品の品質マニュアル作成の参考 : 000218596.pdf

    医療機器や体外診断用医薬品の参考 : 品質マニュアル(QMS省令2021年版対応)

  • PIC/SとICHの関係性? 役割について簡単な比較

    PIC/SとICHの関係性? 役割について簡単な比較

    PIC/SとICHについて

    PIC/S とICHについてCopilotを活用して比較しました.

    簡単にPIC/SとICHを述べると以下の通りになります.

    1. PIC/Sは,欧州における規制当局が主導してまとめられた原薬及び製剤に関するGMP関連のガイドラインです.
    2. ICHは日米欧が主導して規制の共通化を目指してまとめられた医薬品の開発・申請などに係わるガイドラインです.

    Copilotとの質疑応答:


    Q1 : PIC/S GMPガイドラインについて,主導しているものは誰か,また,ICHとの関係性.

    Copilot : PIC/S GMPガイドラインは、Pharmaceutical Inspection Cooperation Scheme(医薬品査察協同スキーム)によって主導されています。このガイドラインは、医薬品の製造における基本的な品質管理基準を定めています。

    ICH(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)との関係性については、PIC/S GMPガイドラインはICHのQ7Aガイドライン(Active Pharmaceutical Ingredients)の基礎となっています。つまり、PIC/S GMPガイドラインはICHの基準を取り入れており、両者は製造基準の国際的な調和を目指しています。


    Q2 : PIC/S GMPとは

    PIC/S GMP(Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme Good Manufacturing Practice)は、医薬品の製造における品質管理基準を定めた国際的なガイドラインです。このガイドラインは、医薬品の安全性と効果を確保するために設けられています。

    PIC/S GMPは、以下のような内容を含んでいます:

    • 序論:ガイドラインの概要や目的。
    • Part I:製剤GMP:医薬品の基本要件。
    • Part II:原薬GMP:医薬品有効成分の基本要件。
    • Annex(付属書):特定の製造プロセスやシステムに関する詳細な基準。

    このガイドラインは、国際的な調和を目指しており、多くの国々が参加しています。日本も2014年にPIC/Sに加盟し、国際的な品質基準に準拠しています。


    Q3 : PIC/S GMPガイドラインとICH GMPガイドラインの関係性

    PIC/S GMPガイドラインとICH GMPガイドラインは、両者ともに製薬業界における製品の品質を確保するための基準ですが、それぞれ異なる背景と目的を持っています。

    PIC/S GMPガイドラインは、Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme(PIC/S)によって策定されたもので、主にヨーロッパ諸国の規制当局が共通の基準を持つことを目的としています。PIC/Sは、製品の品質を確保するための国際的な協力を促進するための組織です。

    一方、ICH GMPガイドラインは、International Council for Harmonisation(ICH)によって策定されたもので、世界中の規制当局が共通の基準を持つことを目的としています。ICHは、製薬業界の国際的な協力を促進し、製品の開発と製造の品質を向上させるための組織です。

    つまり、PIC/S GMPガイドラインはヨーロッパに焦点を当てたものであり、ICH GMPガイドラインは世界的な規制当局に対応したものです。両者は共通の目標を持ちつつも、その適用範囲と背景に違いがあります。


    Q4. PIC/S GMPとIHC GMPのとりまとめ主体は何か?

    PIC/S GMP(Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme Good Manufacturing Practice)は、国際的な薬品製造基準の取りまとめを行うための組織です。この組織は、薬品製造の品質を確保するために、各国の規制当局が協力して作られました。

    一方、IHC GMP(International Harmonization Council Good Manufacturing Practice)は、国際的な製品の品質と安全性を確保するための基準を設定する組織です。この組織は、製品の製造プロセス全体にわたる品質管理を強化することを目指しています。

    どちらの組織も、製品の品質と安全性を確保するために重要な役割を果たしていますが、それぞれ異なる焦点と目的を持っています。


    Q5. PIC/S GMPとICHについて,ヒストリーに関して発足時期やその他イベントについて退避して教えて

    PIC/S GMP (Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme)

    • 発足時期: 1995年に設立されました。これは、1970年に設立されたPharmaceutical Inspection Convention (PIC)を発展させたものです。
    • 背景: PICは、欧州自由貿易連合 (EFTA) によって設立され、医薬品の製造に関する査察の相互承認を目的としていました。しかし、1990年代初頭には、EU法との不整合が問題となり、新たな加盟国を受け入れることが難しくなりました1。そのため、PICと並行してPIC Schemeが設立され、これらが共にPIC/Sとして知られるようになりました。
    • 主な目的: 医薬品の製造に関するGMP (Good Manufacturing Practice) の国際的な調和と、査察当局の品質システムの開発・実施・保守を目指しています。

    ICH (International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)

    • 発足時期: 1990年に設立されました。
    • 背景: ICHは、アメリカ、ヨーロッパ、日本の規制当局が協力して設立されました。当初は、医薬品の開発に関する技術要件の調和を目的としていましたが、その後、医薬品の品質、安全性、有効性に関する要件の調和にも取り組むようになりました。
    • 主な目的: 医薬品の開発と製造に関する国際的な調和を促進し、医薬品の品質、安全性、有効性を向上させることを目指しています。

    事務連絡 平成24年2月1日 PIC/SのGMPガイドラインを活用 …

    PIC/SのGMPガイドライン

    編集履歴

    2025/02/15 Mrはりきり

  • PIC/S GMP 英語用語集

    PIC/S GMP 英語用語集

    概要 : general overview

    適応範囲 : scope

    原則 : principle

    医薬品品質システム : pharmaceutical quality system (PQS)

    建物 : premises

    設備 : euqipment

    ユーティリティ : utilities

    人員 : personnel

    特有の技術 : specific technologies

    環境と工程のモニタリング : environmental and process monitoring

    品質管理 : quality control

    用語解説 : glossary

    外部委託作業の管理 : management of outsourced activities

    予防的な保守管理 : preventative maintenance

    清浄化及び消毒 : cleaning and disinfection

    リスクマネジメント : risk management

    無菌製品 : sterile producrts

    アクセス制限バリアシステム : restricted access barrier systems (RABS)

  • [GMP] OOS/OOTについて、いずれも規格品質試験の結果の態様、対処方法が異なる

    [GMP] OOS/OOTについて、いずれも規格品質試験の結果の態様、対処方法が異なる

    目次

    先ずは、規格とは,

    specificationのことです.OOS/OOTを説明するためには,最初に規格について説明をする必要があります.以下、バイオ医薬品に関して説明を進めます。

    規格を検査するための試験があります。

    この規格試験とは,医薬品の品質をできるだけ網羅的に把握するために一般的には複数の試験で構成されています.

    ある医薬品の製造ロットが完成すれば,QC部門で規格試験が実施されます。設定されている全ての規格試験で合格すれば,その製造ロットは使用可能,即ち出荷可能との判定が得られます.

    一方,構成されている規格試験の内の1つでも試験結果が規格範囲内に収まらない場合,その製造ロットは使用も出荷されず廃棄されることになります.

    OOS/OOT

    1. * OOS : out of specification
    2. * OOT : out of trend

    OOSとは,

    検査結果が規格外となった試験検査結果のことです。公定書、または社内で定められた許容基準の外側となった試験結果を指します.もしも.規格試験に組み込まれた試験項目の内,1つの試験項目でその分析結果が「不適」と判断されれば、そのロットは廃棄されなければなりません.
     OOS結果への対処法としては、「欠陥調査」と呼ばれる手法があります。この手法はFDAのガイダンスに基づいて、実験室の欠陥を明確に立証できれば、再試験を実施して「適」の判定結果がでると,前回のOOS結果を無効にすることも可能です.
     OOS結果の調査には、「実験室の調査」、「製造工程の調査」、「再試験の実施」などのフェーズがあります.OOS結果は、製品の品質に影響を与える重要な問題なので、適切な対応が必要です.

    OOTとは,

    検査結果がこれまでに製造してきたロットの検査結果のトレンド(傾向)に合致しないことを指します.

    以下は,CoPilotの説明をもとに添削した説明です.

    OOT(Out of Trend)とは、傾向外試験結果のことを指します。試験結果が規格外(OOS: Out of Specification)とはならないものの、これまでに得られたデータの傾向から外れていることを意味します。このため、OOTは品質管理において、将来の規格外結果を予防するための重要な警告指標とされています。
    一方でOOSは、試験結果が既存の規格から逸脱した場合を指し、直ちに調査や対応が必要となります。OOTとOOSは異なる概念でありながら、どちらも医薬品の品質管理を維持する上で重要な役割を果たします。

     OOSとOOTの対処法としては,以下の手順があります.

    対処手順

    OOSへの対処

    1. 初期調査(Phase Ia)

      • OOSが発生した場合、まず分析担当者と監督者が初期調査を行います。この段階で以下を確認します:
        • 試験方法、機器、試料、標準品に明確なエラーがないか。
        • 試験データに疑わしいピークや異常が含まれていないか。
        • 明確なエラーが認められた場合:
          • 試験を無効としてOOSデータも無効とします。
          • 再試験を実施します。
        • エラーが特定できない場合、更なる詳細な調査(Phase Ib)に進みます。

        2. 詳細調査(Phase Ib)

        • 試験担当者と監督者が試験結果やプロセス(*)をさらに詳細に調査します:
          • 根本原因の特定を試みます。
          • 試験結果の傾向や差異を確認します。
          • 他成分や潜在的な干渉の可能性を検討します。
        • 原因が特定された場合:
          • 是正措置・予防措置(CAPA)を策定し、試験結果を記録します。
        • 原因が特定できない場合、製造部門やQAと連携して製造に関する調査(Phase II)を行います。
        • * : プロセスとは,
          • 試験の手順
          • 試験で使用する機器の状態
            • 試験機器のキャリブレーション(校正)やメンテナンスが適切に行われていたか。
            • 機器のエラーや異常動作がなかったか。
          • 試薬や試料の取り扱い
            • 試薬や試料の保存条件や管理が適切だったか。
            • 使用した標準品や試料に劣化や汚染がなかったか。
          • 操作環境
            • 試験が実施された環境(温度、湿度、清潔度など)が適切だったか。
            • 試験室の条件が試験への影響を与えないものであったか。
          • 人為的ミス
            • 担当者が試験操作中に手順を誤った可能性。
            • 試験データの記録方法に間違いや抜け漏れがなかったか。
          • つまり、「プロセス」とは試験全体の流れや環境、手順を指し、問題が生じている箇所を特定するために、試験を構成するすべての要素を包括的に見直すことを意味しています。

          3. 製造に関する調査(Phase II)

          • 製品品質に影響を与える可能性のある以下の要素を調査します:
            • 製造工程、操作方法、設備の問題。
            • 原材料の品質など。
          • 製造で原因が特定された場合:
            • 是正措置・予防措置(CAPA)を策定し、記録します。
          • 製造で原因が特定できない場合、製品の品質への影響を評価する「インパクト調査」(Phase III)に進みます。

            4. 製品へのインパクト調査(Phase III)

            • OOS結果が製品の品質、安全性、有効性に影響を与えるかどうかを科学的根拠や統計的分析に基づいて評価します。
            • 製品に影響がない場合
              • 試験結果を記録し、調査を終了します。
            • 製品に影響がある場合
              • バッチ廃棄、リコールなどの必要な対応を実施します。

              OOTへの対処

              「OOT(Out of Trend)への対処では、試験結果が規格内であることを考慮し、再試験や再サンプリングは基本的に行わないことが推奨されます。これは、OOTは規格外(OOS)とは異なり、品質基準を満たしているため、再試験を実施することでデータの一貫性を損なうリスクがあるからです。

              代わりに、OOTへの対処では試験結果の傾向や変動を分析することが重要です。このため、以下の手法を活用します:

              • 品質照査: 過去の試験結果やバッチ間の一貫性を確認し、異常な傾向が繰り返されていないかを確認します。
              • トレンド分析: 通常値管理幅(Control Limits)や予測区間(Prediction Intervals)を設定し、試験結果の異常値を統計的に評価します。
              • 潜在異常の推定: 傾向からの逸脱が将来的に規格外(OOS)につながる可能性を検討し、リスク評価を行います。

              これらの分析結果をもとに、必要に応じて(*1)CAPA(是正措置・予防措置)を発動し、試験結果と対応を記録します。OOTは早期警告の指標として、品質管理における予防的な役割を果たします。

              *1 : 必要に応じてCAPA発動のケース:

              1. 傾向の持続的な逸脱

              • OOTが単発ではなく、複数のロットや時間経過にわたり繰り返して発生している場合。
              • この場合は、プロセスや操作に根本的な問題がある可能性があり、それを是正するためにCAPAを発動します。
              • 問題について具体的には例えば、「製造プロセス中の一貫性の欠如、あるいは定期的なメンテナンス不足が該当する可能性がある場合.

              2. 将来のOOSのリスクが高い

              • トレンド分析の結果、傾向外試験結果(OOT)が規格内にとどまっているものの、今後OOS(規格外試験結果)に発展する可能性が示唆される場合。
              • OOSに発展する可能性の例: 「予測区間を超える変動が観察された場合」や「統計的に有意な傾向が確認された場合」といった客観的な基準。
              • この場合は、予防措置を講じる必要があります。

              3. 製造工程や管理基準の不備が判明

              • OOTの分析から、製造工程、試験手順、または管理基準に問題があり、逸脱が発生している原因が特定された場合。
              • 例えば、機器の微細な不具合、設定ミス、または環境条件(湿度や温度)の変動などが該当します。
              • その他,工程記録の不備や人為的ミス

              4. OOTが複数のバッチに波及している

              • 特定のバッチのみならず、他のバッチにも同様の傾向が見られ、製品シリーズ全体にわたり同様の傾向が観察され影響が懸念される場合。
              • これにより製品の一貫性や信頼性が損なわれる可能性があります。

              5. 患者の安全性や品質への潜在的影響

              • OOTの原因が製品の品質、安全性、または有効性に何らかの潜在的影響を与える可能性が示された場合。
              • たとえば、有効成分の濃度が異常に変動する可能性がある場合などです。
              • 具体的な影響は,科学的根拠や臨床的リスク評価を用いて分析する必要がある。

              6. 法規制または監査対応

              • 規制当局や内部監査によって、OOTが重大な問題として指摘された場合や、それに対する明確な対応が求められる場合。
              • 特にGMP(医薬品製造管理基準)の遵守が重要な場合です。
              • OOT問題として例えば, 「OOT管理が不十分であると判断された場合や、逸脱が文書化されていない場合」など。

              7. データの傾向を説明できない場合

              • 詳細な調査を行ってもOOTの原因が特定できず、なおかつ将来的なリスクを否定できない場合。
              • このようなケースでは、予防措置としてCAPAを発動することが一般的です。
              • 予防措置として例えば,管理基準の再設定や試験条件の見直しを行う。

              参考:

              1. Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical production – Guidance for Industry (FDA/CDER 2022)
              2. Handling of Out of Trend (OOT) Analytical Test Results (2020)
              3. OOSとOOT – OOS Phase 1初期調査の進め方 (2017)
              4. 【用語集】医薬品の英略語
              5. 規格外に対する取り扱い (2008)
              6. OOT管理手順
              7. Copilotの回答

              編集履歴

              2024/01/25, Mrはりきり
              2025/03/18, 内容整備

            1. [医薬品製造] 原料等の供給者の管理に関する手順書 [2025/01/24]

              [医薬品製造] 原料等の供給者の管理に関する手順書 [2025/01/24]

              あじめに

              医薬品の製造には,多くの種類の原料・基材などを使用する.医薬品の製造業者の仕事は,その供給業者の管理が主体業務といっても過言ではない.

              2022年の改正GMP省令により新たに作成が必要となった手順書として,題記の手順書がある.大阪府のホームページに手順書案がアップされている.

              GMP省令改正に伴い新たに作成が必要となった手順書

              原料等の供給者の管理に関する手順書 (案) – 大阪府ホーム …

              改正GMP(2022)での必要な手順書
              4つの基準書が手順書として新しく加わり,施行規則(2013/08/30では追加されていた手順書がGMP省令に明記された.
              1. 構造設備および職員の衛生管理に関する手順 (新規,以前は基準書)
              2. 製造工程、製造設備、原料、資材および製品の管理に関する手順 (新規,以前は基準書)
              3. 試験検査設備および検体の管理その他適切な試験検査の実施に必要な手順 (新規,以前は基準書)
              4. 安定性モニタリングに関する手順 (GMP施行通知 2013/8/30では追加されていた手順書)
              5. 製品品質の照査に関する手順(GMP施行通知 2013/8/30では追加されていた手順書)
              6. 原料および資材の供給者の管理に関する手順(GMP施行通知 2013/8/30では追加されていた手順書)
              7. 製造業者等の委託を受けて試験検査その他の製造・品質関連業務の一部を行う他の事業者の管理に関する手順(GMP施行通知 2013/8/30では追加されていた手順書)
              8. 製造所からの出荷の管理に関する手順
              9. バリデーションに関する手順
              10. 第14条の変更の管理に関する手順
              11. 第15条の逸脱の管理に関する手順
              12. 第16条の品質情報および品質不良等の処理に関する手順
              13. 回収等の処理に関する手順
              14. 自己点検に関する手順
              15. 教育訓練に関する手順
              16. 文書および記録の作成、改訂および保管に関する手順
              17. その他適正かつ円滑な製造・品質関連業務に必要な手順

              廃止された基準書と手順書化

              従来の3つの基準書 (衛生管理基準書、製造管理基準書、品質管理基準書) が廃止され、それぞれ手順書となり具体的な記述が必要な文書となった。(上記の赤字部分)

              その他必要なSOP

              データインテグリティと品質リスクマネジメントは、当然に全ての部門、全てのプロセスに必要でいる.改正GMP省令において,これら2つの手順書の作成は必要ではないものの,この2つの考え方は盛り込まれている必要がある.あるいは,これら,データインテグリティ,品質マネジメントに関する考え方や具体的な作業の方法について手順書化することは望ましいと考える.

              因みに、
              品質リスクマネジメントに関するガイドラインは,2005年に発出されている.
              データインテグリティに関するガイドラインは,日本では存在しない。

              編集履歴

              2025/01/24 Mrはりきり

            2. 文書の内容を理解するには,文書に出てくる単語を知ることから始まる / 出現する単語をリストするサイト [2024/12/24]

              文書の内容を理解するには,文書に出てくる単語を知ることから始まる / 出現する単語をリストするサイト [2024/12/24]

              はじめに

              法律やガイドラインなどの内容を理解するには,先ずは頻出する単語の理解をすることで短期間に可能になると理解している.

              KH CODEなど,テキストマイニングするツールが存在するが,最小限の機能として単語の抽出が可能で無料のサイトを以下に示す.

              医薬品に携わる者として,改定されたGMP省令を理解するために使用してみた.改正GMPでは以前では基準書とされていた文書は,手順書に改定され,詳細な内容の記載が求められるようになった.このように文書の名称の違いが理解できれば,求められていることが分かりやすくなってくる.

              専門用語(キーワード)自動抽出サービス 「言選Web」

              編集履歴

              2024/12/24 Mrはりきり

            3. 改正GMP (2022) 理解するために知っておきたい文書集 [2024/05/24]

              改正GMP (2022) 理解するために知っておきたい文書集 [2024/05/24]

              はじめに

              GMP省令が2022に改正されました.旧GMP省令との違いや指摘事例を知ることができ,改正GMP省令の理解に役立つリンク集です.

              ■ 承認審査関連業務 GMPラウンドテーブル会議 事例集あり
              GMPラウンドテーブル会議 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 (pmda.go.jp)

              ■ 改正GMP省令について 最近の指導事例を中心に R4.9.9 – pmda
              https://www.jpma.or.jp/information/quality/jirei/gbkspa00000017ws-att/2022_1.pdf

              ■ 改正QMS省令の概要及び調査での指摘事例等につい R4.12.1
              000252669.pdf (pmda.go.jp)

              ■ GMP 事例集(2022年版)について 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
              000246306.pdf (pmda.go.jp)

              GMP事例集 (2022年版)には,設備に関する事例を含む.

              1. 設備共用ディシジョンツリー GMP9-18を参照

              編集履歴

              2024/05/24 Mr.HARIKIR
              2024/08/28 追記 (GMP事例集 (2022年版))

            4. [Bio-Edu] バイオ医薬品の製造で使用するTFF膜の管理 / バリデーションについて[2023/11/12]

              [Bio-Edu] バイオ医薬品の製造で使用するTFF膜の管理 / バリデーションについて[2023/11/12]

              はじめに

              バイオ医薬品(biopharmaceutical)では,限外ろ過膜によるプロダクトの濃縮やバッファー置換が,必ず1つは,プロセスとして組み込まれている.TFF膜は高価であり再利用されて,繰り返し製造がおこなわれる.TFF膜の性能や洗浄不十分によるキャリーオバーなどが生じるリスクがあるが,プロダクトの品質を一定に保つためには,TFF膜の性能,キャリーオーバー管理は重要な項目である.

              TFFの使用期限に関わる評価パラメータは,キャリーオーバーと性能です.キャリーオーバー(carryover)とは,前回の使用でクリーニングしきれなかった物質の持ち越しです.性能(performance)はろ過するものはろ過し,補足するものは補足する,というろ過能力とろ過流速です.

              TFF膜の寿命(lifespan)を確認するアプローチには,前向き評価,同時評価があります.

              1. 前向き評価(prospective validation) : 製造承認申請前にデータを取得する.
              2. 同時評価(concurrent validation) : 実製造スケジュールに組み込まれる.

              どちらのアプローチをとるかはを判断しなければなりません.

              1. 実製造スケジュールがタイトである場合は,予め評価データを取得する(prospective validation).その場合,製造承認申請データとして取得する期間が余分に必要となる.
              2. 同時評価(concurrent validation)とする場合は,実製造スケジュールに影響を及ぼさない場合に採用できる

              評価パラメータ

              1. 洗浄条件(薬剤,蒸気など各種パラメータ)
              2. 経年劣化
              3. プロダクト,エンドトキシン,不純物残存量(carryover)
              4. ろ過性能

              評価項目と方法など

              1. NWP (Normalized Water Permeation)
              2. バイオバーデン
              3. Host Cell DNA
              4. Host Cell Protein
              5. 収率
              6. 完全性試験(巨大な穴によるリーク)
              7. TMP(膜貫通圧; TMP対フラックス曲線)
              8. FTIR(フーリエ変換赤外)やラマン分光法による膜の状態分析(タンパク質蓄積など)
              9. 定期的なブランク分析(例えば水により運転し,リークする物質の分析,上記に記載の試験の実施,HPLC分析,ELISA,SDS-PAGE分析,TOC分析)

              前向きバリデーション

              前向き評価(prospective validation)小規模の膜システムを使用して寿命(lifetime)を評価パラメータから評価するアプローチです.その評価を使用後20回毎に行ったとします.その結果120回が使用可能(resusable)と判断された場合,実製造スケールでの使用には,その回数以内での使用期限を規定できます.例えば100回の使用が可能と規定します.

              同時バリデーション

              同時バリデーション(concurrent validation)は,例えば,他の事例から100回の使用が可能である情報があったとします.そこで使用目標回数を100回と定めて実製造を開始し,同時に同時バリデーションをスケジュールに組み込みます.

              用語

              NWP: Nomalized Water Permeability

              NWPとは、ノーマライズド・ウォーター・パーミアビリティ(Normalized Water Permeability)の略で、TFFのメンブレンの透過性を表す指標です.NWPは、メンブレンの孔径や材質、水の流量や圧力,温度などによって変化します。NWPが高いほど、メンブレンの透過性が高く、ろ過流量が大きくなります。NWPが低いほど、メンブレンの透過性が低く、ろ過流量が小さくなります。NWPは、メンブレンの性能や劣化の評価に用いられます.NWPの計算式は以下の通りです。

              NWP=PJ​×Sμ​

              J: 水の透過流速(単位面積あたりの水の流量,L/h/m2)
              P: メンブレンにかかる圧力(bar)
              μ: 水の粘度(?, この式に納得できないので,後日調べて訂正予定)
              S: メンブレンの有効面積(m2)
              NWPの単位は、L/m2/h/bar

              参考文献

              Lifetime Studies for Membrane Reuse: Principles and Case Studies – BioPharm, 2007

              Lifetime Studies for Membrane Reuse: Principles and Case Studies (biopharminternational.com)

              Protein Concentration and Diafiltration by Tangential flow Filtration – MILLIPORE

              MILLIPORE_TFF.pdf (huji.ac.il)

              KrosFlo® KMPi TFF System – REPLIGEN

              KrosFlo® KMPi Tangential Flow Filtration (TFF) Systems | Repligen

              MF / UF技術の進展と展望

              MF / UF技術の進展と展望 (jst.go.jp)

              Validation Guide.

              T-Series TFF Cassettes with Delta Membrane USTR 2661 – PALL – For use with Centramate™ and Centrasette™ TFF Systems

              12.8028_USTR2661(2)_T-Series_Cassettes_Delta_TS_VG_EN.pdf

              TangenX® TFF Cassette Air Integrity Testing – REPLIGEN

              IF.UG.027.pdf (repligen.com)

              Protocol Guide

              Pellicon(R) Ultrafiltration (UF)/Diafiltration (DF) Operations – Millipore

              rf1159en-mk.pdf (sigmaaldrich.com)

              Evaluation of Novel Large Cut-Off Ultrafiltration Membranes for Adenovirus Serotype 5 (Ad5) Concentration (2014)

              Summary: 500kDa cut-off used for Ad5 concentration, 10-fold concentration factor with 100% recovery.

              Evaluation of Novel Large Cut-Off Ultrafiltration Membranes for Adenovirus Serotype 5 (Ad5) Concentration | PLOS ONE

              編集履歴

              2023/11/12, MR.HARIKIRI

            5. [用語] RTRT; real time release testing [GMP]

              [用語] RTRT; real time release testing [GMP]

              RTRT; real time release testing

              1. 医薬品品質に関わる用語
              2. 工程管理試験の結果もリリース試験の全部にすることができる.
              3. at-line, on-line分析機器を使用してRTRTとするが,これら装置の故障時には従来法でのリリース試験を実施できるバックアップ体制は必須.
              4. 従来は工程検査は抜き取り検査などを行うため,リアルタイムでの検査はできない.
              5. RTRTでは,試験時間やコストの削減が可能

              Quality by Design (QbD)アプローチ – リアルタイムリリース試験(RTRT)の事例 – MSD株式会社 CMC薬事グループ –

              https://www.cytivalifesciences.co.jp/newsletter/biodirect_mail/technical_tips/tips63.html

              編集履歴

              2022/09/04, Mr. Harikiri